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雇用関係助成金をまるっと解説!種類・条件・申請手順がこれ1本でわかる

採用や人材定着、職場環境の改善などに取り組む企業にとって、「雇用関係助成金」は心強い制度です。

しかし、「種類が多くてよくわからない」「自社に使えるものがあるのかわからない」と感じて申請を見送っている担当者も少なくありません。

そこで本記事では、雇用関係助成金の基本的な仕組みから種類・条件・申請の流れまでをまとめて解説します。

新規採用や継続雇用、労働環境の整備など、自社の取り組みがどの助成金に該当するかがわかれば、コスト面でも大きな支援となるはずです。

「うちにも使えるかも」と感じたその時が、制度活用の第一歩。

まずは概要をつかみ、申請への不安を一つずつ解消していきましょう。

目次

雇用関係助成金の種類と使われる目的

雇用関係助成金は、「人材の確保」「従業員の定着」「働きやすい職場づくり」など、企業の雇用に関わる多様な取り組みを金銭的に支援する制度です。

目的別にさまざまな助成金が用意されており、それぞれに条件や申請方法が異なります。

ここでは、活用の多い3つのジャンルに分けて、代表的な助成金の内容や企業が得られるメリットを紹介します。

新規雇用支援系の助成金(中途採用・トライアル雇用など)

新たに人を雇用する企業に向けて支援を行うのが「新規雇用支援系」の助成金です。

たとえば以下のような制度があります。

トライアル雇用助成金
職業経験が少ない求職者を一定期間試用し、適性を見極めたうえで本採用する場合に支給されます。
関連記事:トライアル雇用助成金で人材確保!対象となる企業と労働者の条件とは?

特定求職者雇用開発助成金
高齢者や障害者、母子家庭の母など、就職が困難な方を雇用した企業に支給されます。
関連記事:「人が足りない」を助成金で解決!特定求職者雇用開発助成金という選択肢

中途採用等支援助成金(中途採用拡大コースなど)
新卒偏重からの脱却を目指し、中途採用を積極的に行う企業を支援します。

これらは採用時に支給されるため、採用コストの一部補填として活用されるケースが多く、採用ハードルの高い人材にチャレンジしやすくなるのが大きなメリットです。

継続・定着支援系(定着率向上/定年延長・高年齢者活用)

人材の採用だけでなく、「辞めさせない」「長く働ける職場づくり」も雇用維持の重要な観点です。以下のような助成金がこれに該当します。

キャリアアップ助成金(正社員化コース)
有期雇用やパートなどの非正規労働者を正社員へ転換した際に支給されます。
関連記事:キャリアアップ助成金とは?申請条件・支給額・活用方法までまるごと解説

65歳超雇用推進助成金
定年の延長や定年廃止、再雇用制度の導入など、高年齢者の継続雇用に取り組む企業に対して支給されます。
関連記事:65歳超雇用推進助成金の対象条件・支給額・期間を詳しく解説

中途採用等支援助成金(UIJターンコース)
地方移住・Uターン人材の定着を支援する制度です。

このジャンルの助成金は、離職防止やノウハウの社内蓄積に直結するため、長期的な経営基盤の安定化を図る上でも効果的です。

労働環境改善系(テレワーク導入/働き方改革/職場改善)

働きやすい職場づくりを支援するための助成金も多く設けられています。

近年のニーズに対応したものとして、以下のような制度があります。

働き方改革推進支援助成金
労働時間の短縮、年休取得の促進、多様な働き方の導入(フレックスタイム制・週休3日制など)に取り組む企業に支給されます。
関連記事:助成金で職場環境を改善!「働き方改革推進支援助成金」の賢い活用法とは

業務改善助成金
生産性向上によって最低賃金を引き上げた企業に対し、設備投資費用の一部を補助する制度です。

人材確保等支援助成金(テレワークコース)
在宅勤務などのテレワーク導入にあたり、通信機器や就業規則整備費を支援します。
関連記事:人材確保等支援助成金とは?コース別の違いと対象企業をわかりやすく解説

これらは職場の魅力向上・従業員満足度の向上につながる取り組みに使えるため、採用や定着率改善との相乗効果が期待されます。

目的に合った制度を見極めることが活用の第一歩

雇用関係助成金は、企業の課題に応じて使い分けることが重要です。
「採用を増やしたい」「離職を防ぎたい」「職場の生産性を上げたい」といった目的ごとに適した制度を探すことで、助成金の活用が事業成長の一手になる可能性が高まります。

自社の取り組みがどのジャンルに当てはまるかを整理し、次のステップとして申請準備を進めていきましょう。

対象となる条件・要件の共通ポイントと注意点

雇用関係助成金は、制度によって要件が異なりますが、多くの制度に共通する“基本条件”や“見落としがちな注意点”が存在します。

助成金の申請を検討する際は、事業主・労働者・取り組み内容それぞれが要件に合致しているかを事前に確認することが欠かせません。

ここでは「どの助成金でも共通して問われる主な条件」と「申請前にチェックすべき注意点」について、わかりやすく整理します。

▼事業主の要件(業種・資本金・雇用保険適用など)

助成金の申請者である「事業主側」に関する基本要件には、以下のような共通ポイントがあります。

・雇用保険適用事業所であること
ほぼすべての雇用関係助成金は、雇用保険の適用を受けている事業所であることが前提です。
未加入事業所は、加入後の申請となります。
・対象事業の適正な運営
法令違反歴がないこと(労働基準法や雇用保険法、労働安全衛生法などの遵守)、過去に不正受給歴がないことも審査対象です。
・業種や資本金により対象外となる場合がある
一部の助成金(特に中小企業限定の制度)では、資本金や従業員数の上限を設けています。
中小企業基本法に基づく区分が参照されるため、企業規模に注意が必要です。
・対象制度の導入や実施体制が整っていること
就業規則の整備、計画届の提出、対象となる取り組みの社内準備が整っていないと申請不可となるケースもあります。

▼労働者の要件(被保険者・勤続年数・雇用形態)

助成金の多くは、「雇用する労働者」の属性や就労状況も条件となっています。

具体的には以下の要素に注意が必要です。

・雇用保険の被保険者であること
申請対象となる労働者は原則として雇用保険の適用対象者である必要があります。
短時間パートなどで条件を満たさないケースは注意です。
・所定の勤続年数を満たすこと
たとえば、正社員転換後6か月以上経過しているなど、制度によっては一定の継続雇用期間が条件となっていることがあります。
・雇用形態の明確な定義が必要
正規・非正規・契約・アルバイトなど、雇用形態ごとの支給条件が定められているため、労働条件通知書や契約書の内容が不明確だと不支給となるリスクがあります。
・本人の同意・確認が必要な場面もある
制度によっては、労働者本人の申請内容への理解や署名が必要なケースもあり、事前に説明・合意を得る必要があります。

▼助成対象経費・期間・措置内容の適合性(設備・研修・休業など)

助成金が支給されるためには、「何にいくら使うのか、どのような措置を講じたか」といった内容が、制度の要件に合致している必要があります。

・経費の使途が制度目的と合っているか
研修費用、設備投資、賃金補填など、対象となる支出が定められています。
対象外の支出(例:社内飲み会の費用、私的なPC購入など)を含めると却下されます。
・事前申請と実施スケジュールの整合性
「実施後の事後申請NG」の助成金も多く、事前に計画書の提出が必要です。
期間中の活動内容・支出内容が、届出内容と一致しているかが審査されます。
・証拠資料の保存義務
領収書、出勤簿、研修記録、雇用契約書など、助成対象の行動や支出を証明する書類の保管が必須です。
書類不備や紛失は大きな減点要因になります。
・対象期間の誤解によるミスも多い
支給対象となるのは「助成対象期間中に発生した支出」のみです。
事前準備段階の費用や、制度終了後の支出は対象外となるため注意しましょう。

3つの視点で“条件チェック”を怠らないことが成功の鍵

助成金申請においては、「事業主」「労働者」「取組内容」それぞれの視点で条件を満たしているかを多角的に確認することが欠かせません。
制度ごとの違いはあれど、上記のような共通要件を押さえておくことで、申請の土台をしっかり固めることができます。

申請を成功させるためには、制度概要だけでなく、実際の社内状況や取り組み計画との整合性を意識することが重要です。
少しでも不安な点があれば、早めに専門家や行政窓口へ相談することをおすすめします。

申請手続きのステップと申請先・必要書類

雇用関係助成金を申請するには、明確な手順と必要書類を正しく理解しておくことが不可欠です。

制度によって多少の違いはあるものの、一般的な流れとして「計画書の提出→取り組みの実施→支給申請」という3つのフェーズに分かれます。

また、助成金の種類によって提出先(ハローワーク、都道府県労働局、またはオンライン)や必要書類の内容が変わるため、「制度ごとの違い」を意識して手続きを進めることが重要です。

ここでは、初めてでも失敗しにくい申請手続きの基本を解説します。

計画書作成の前準備と提出タイミング

多くの雇用関係助成金では、事前に「計画書(計画届)」の提出が求められます。

助成金の対象となる取り組み(例:正社員転換、テレワーク導入、研修実施など)は、計画書の提出・受理後に実施した分からが助成対象となるため、タイミングを間違えると支給が受けられなくなるリスクがあります。

前準備として必要なこと

実施したい取り組み内容の明確化(目的、対象者、実施時期、担当者など)
労働条件や就業規則の整備(必要に応じて改訂)
取り組みに関する社内体制やスケジュールの構築
必要経費の見積もり(研修費、設備投資、人件費など)

計画書の提出時には、計画内容を証明する根拠書類(契約書案、研修プログラム案など)の添付が求められることもあります。

準備不足のまま提出すると、再提出を求められるケースもあるため注意しましょう。

必要書類一覧とそのポイント(契約書・就業規則・賃金台帳など)

助成金申請時には、計画段階・実施段階・支給申請段階ごとに多数の書類提出が必要です。

以下に主な書類と押さえておくべきポイントを整理します。

書類名主な提出段階注意ポイント
計画書(様式あり)事前提出制度ごとの書式に沿って、取り組み内容を明確に記載する必要あり
労働条件通知書・雇用契約書全段階共通雇用形態や賃金、勤務条件が明確で助成対象要件に合致していること
賃金台帳・出勤簿支給申請時賃金支給実績や労働実態を証明するものとして厳密にチェックされる
就業規則・育児・介護制度などの社内規程計画時または支給時該当の制度が規程に明記されていることが条件になる場合がある
経費の領収書・見積書・契約書など支給申請時設備費や研修費などの対象経費が制度の対象範囲内であるかを確認される
実施報告書・実績記録支給申請時実際に計画どおりの内容を実行したかを示す根拠資料となる

特に「賃金台帳」「契約書」「研修記録」などは、改ざん防止の観点から厳しいチェック対象となります。

Excel管理ではなく、勤怠システムなどの導入で証拠性を高める工夫も有効です。

申請先(ハローワーク・労働局等)/オンライン vs 紙提出の比較

雇用関係助成金の申請先は、制度によって以下のように分かれています。

ハローワーク
代表的なのは「トライアル雇用助成金」「特定求職者雇用開発助成金」など。企業所在地を管轄するハローワークへ提出します。
都道府県労働局
「人材確保等支援助成金」や「キャリアアップ助成金」の一部は労働局が窓口となります。
制度により部署も異なるため、要確認です。
オンライン(電子申請)
一部の助成金では、厚生労働省が提供する「電子申請システム(jGrants・e-Gov)」*利用できます。
オンライン申請に対応している場合でも、事前にアカウント登録や電子証明書が必要です。

紙提出とオンラインの比較ポイント

項目紙提出オンライン申請
提出先窓口持参または郵送jGrantsやe-Govを経由
手間書類の印刷・押印が必要データ準備や操作スキルが必要
受付時間窓口対応時間のみ24時間対応可能(但しメンテナンス時間を除く)
添付資料原本やコピー提出PDFなど電子データ化が必要
メリット対面で相談しながら進めやすい時間や場所を問わず申請可能。処理スピードも比較的早い

オンライン申請に対応している場合でも、一部の書類は原本郵送が必要なケースもあるため、最終的には要件の確認が必須です。

計画・証拠・提出方法の3軸で申請成功を目指す

雇用関係助成金の申請には、計画立案の段階から明確な目的と証拠書類の準備が求められます。
とくに、「取り組みの目的・実施内容」「実施記録と支出の証明」「適切な申請先・様式の選定」の3つを意識することで、助成金受給の成功率が大きく高まります。

スムーズな申請の鍵は“事前準備と段取り”です。
忙しい日常業務のなかでも、早い段階でスケジュールを組み、必要書類のチェックリストを活用することで、無理なく進められます。

不明点があれば、地域のハローワークや労働局、社会保険労務士などの専門家に相談することをおすすめします。
確実な準備が、助成金活用の第一歩となります。

支給額・助成率・期間の目安

雇用関係助成金を活用する際に、特に気になるのが「いくら支給されるのか」「いつまで続くのか」といった金銭面と期間の目安です。

助成金の種類によって支給額・助成率・期間の条件は大きく異なりますが、企業規模や対象事業の内容によっても変わるため、申請前にしっかりと確認することが重要です。

ここでは、中小企業と大企業での違いや、助成率・支給額の代表的なパターン、支給が複数回に分かれる助成金の条件などを具体的に解説していきます。

中小企業 vs 大企業での違い

多くの雇用関係助成金では、中小企業に対して「優遇措置」が設けられており、助成率や支給上限額が高めに設定されています。

これは、制度の目的が「人材育成や雇用環境整備に対するハードルが高い中小企業を支援する」ことにあるためです。

中小企業に該当する主な基準(業種別の一例)

業種資本金または出資総額常時雇用する従業員数
製造業、建設業など3億円以下300人以下
小売業5千万円以下50人以下
サービス業5千万円以下100人以下

たとえば、「キャリアアップ助成金(正社員化コース)」では、

・中小企業 – 1人あたり最大57万円
・大企業 – 1人あたり最大42万7,500円

といった差が生じます。

同じ取り組みでも、企業規模によって支給額に差が出る点には十分留意しましょう。

助成率や上限額のパターン例

雇用関係助成金の支給額は、「かかった費用の◯%」という助成率と、1回あたりの上限金額によって決定されます。

以下に、代表的な助成金における助成率・上限額のパターンを紹介します。

例:人材開発支援助成金(人材育成コース)

対象費用助成率(中小企業)助成率(大企業)上限額(例)
訓練経費75%60%最大1時間あたり1,600円程度
賃金助成960円/時間480円/時間訓練対象者1人あたり

例:働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進コース)

支給額 – 最大100万円(中小企業)
補助率 – 3/4(中小企業)、1/2(大企業)

このように、中小企業には「高い助成率」「高い上限額」が適用されることが一般的です。

特に「設備導入型」の助成金では、投資額が大きくなりやすいため、制度選びの時点で助成率・上限額の確認は必須となります。

支給回数・期間/継続要件付きの助成金の条件

一部の助成金では、支給が「複数回に分かれる」ものや、「一定期間の継続雇用」が支給条件となる」ケースがあります。

例:キャリアアップ助成金(正社員化コース)

支給は1回(正社員転換完了後)
転換後6か月間の継続雇用が必須(途中退職者は対象外)

例:トライアル雇用助成金

支給期間 – 最大3か月
支給額 – 月額4万円(最大12万円/人)
途中で辞めた場合でも、就労日数に応じて日割り支給されることもある

例:人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)

支給は2段階(制度整備+目標達成後の継続実施)
それぞれのタイミングで所定の報告書類提出が必要

このように、一時的な取り組みだけでは支給対象とならず、「計画的かつ継続的な運用」が求められる助成金も多数存在します。

特に「キャリアアップ」や「雇用安定」を目的とした助成金は、転換・採用後の定着率や勤務状況を重視するため、就業管理体制の整備も必要不可欠です。

助成金の金額だけでなく「条件」も合わせて確認を

雇用関係助成金の魅力は、企業の取り組みに対して国が費用の一部を補助してくれる点にありますが、制度ごとに支給額や助成率には大きな違いがあります

中小企業は支援の手厚さという点で有利ですが、「助成率が高くても上限額が低い」「継続雇用が必要」「複数回の報告義務がある」などの条件もあるため、金額だけに目を奪われず、全体の設計をしっかり見極めることが重要です。

申請前には、自社の事業計画と照らし合わせながら、「制度の特徴」「支給額の目安」「支給までの期間・回数」「満たすべき条件」を一覧化しておくとスムーズです。
迷ったときは、労働局の窓口や社労士に相談して、確実な情報収集を心がけましょう。

よくある失敗・対象外事例とその防ぎ方

雇用関係助成金は制度設計が複雑で、正しく理解していないと申請が通らなかったり、最悪の場合「全額不支給」となるケースもあります。

とくに中小企業では人事・労務の専任担当者がいないことも多く、書類不備や要件の誤解などで“本来受け取れるはずの助成金”を逃してしまう事例も少なくありません

このセクションでは、実際によくある失敗事例や対象外となる典型的なパターンを紹介しつつ、それらを事前に防ぐためのポイントを丁寧に解説していきます。

書類不備で申請が遅れるケース

申請に必要な書類は助成金ごとに異なりますが、「不備」「記載漏れ」「添付ミス」によって受理が遅れ、締切に間に合わなくなるトラブルが頻発しています。

特に以下のようなミスが多く見られます。

・契約書や就業規則が最新でない
・賃金台帳にタイムスタンプや押印がない
・対象者の在職証明や雇用保険の記載が不十分
・提出書類のPDF化で画像が不鮮明

こうしたミスは、提出前のダブルチェック体制を整えることで防止可能です。

とくに「紙ベースから電子提出に切り替えたばかりの企業」では、ファイル形式や容量制限でトラブルになるケースもあるため、提出様式のフォーマットを事前に労働局で確認することが重要です。

助成条件の読み違い(雇用保険未適用・対象労働者が基準外など)

助成金制度では、「誰を対象とした制度か」が非常に明確に定義されています。

にもかかわらず、適用条件の読み違いにより、不支給となるケースが後を絶ちません。

具体的には以下のようなケースがあります。

・雇用保険未加入の労働者を助成対象として申請していた
・短期アルバイトや日雇い契約者が対象と誤認されていた
・制度で求められる勤続期間(例:6か月以上)に満たなかった

とくに「キャリアアップ助成金(正社員化コース)」では、転換前に6か月以上の有期雇用契約が必要であることを見落とし、転換後の申請が無効になる例も多く見受けられます。

このような失敗を防ぐためには、労働者ごとの「雇用形態」「加入保険」「勤務実績」を一覧化し、制度要件と照らし合わせておくことが非常に効果的です。

また、迷ったときは労働局の無料相談窓口を活用するとよいでしょう。

制度変更・時期制限で助成対象外になる場合

助成金は、年度単位や補正予算によって突然制度が変更・終了することがあるため、情報の更新が遅れると申請できなくなる可能性があります。

実際に以下のような事例があります。

・申請締切を1日過ぎただけで不受理
・制度改定によって、昨年までOKだった取り組みが対象外に
・オンライン申請のシステム変更に気づかず、旧フォーマットで提出して返戻に

たとえば、「働き方改革推進支援助成金」では、年度ごとに補助対象の取り組み内容や支給上限額が変わることも珍しくありません。

そのため、制度の公式ページや労働局の案内を定期的にチェックし、常に最新版の要項を把握しておくことが重要です。

助成金ごとの「公募開始・締切時期」の一覧表を社内で管理しておくと、対応漏れの防止に繋がります。

申請の失敗は“理解不足”と“確認不足”から生まれる

助成金申請における失敗の多くは、「制度を正確に理解していなかった」「書類や手続きの確認が甘かった」という基本的なミスから起こっています。

とくに中小企業においては、担当者1人で制度調査から書類作成・提出までをこなすケースが多く、情報過多や作業の属人化が原因でミスが起こりやすくなります。

以下のような対策が効果的です。

・制度要項の最新版を読む習慣をつける
・労働局への事前相談で不明点を解消する
・申請スケジュールと必要書類のチェックリストを運用する
・外部の社労士に書類作成や提出サポートを依頼する

助成金は正しく活用すれば企業にとって非常に大きな後押しになります。
ミスを防ぐ体制づくりこそが、制度活用の最大のポイントです。

助成金申請で“選ばれる企業”になるには?

雇用関係助成金は、要件を満たせば受給できる「申請型」の制度が多い一方で、予算の都合や審査内容によって“不採択”となるケースもあります。

とくに人気の高い助成金では、「書類に不備がないこと」や「申請内容の整合性・実現性」が審査の分かれ道になることも。

つまり、同じ条件でも『選ばれる企業』と『落ちる企業』が存在するのが現実です。

ここでは、採択率を上げるための実務的なチェックリストと、助成金に強い企業体制の整備ポイントについて解説していきます。

採択率を上げるための実務的なチェックリストと運用体制の整備

助成金制度においては、制度要件を満たすだけでは不十分です。「わかりやすく、正確に伝える」「整った社内体制を示す」ことが採択の鍵になります。

以下に、実際の採択率を高める企業が行っているチェック項目と体制整備のポイントを紹介します。

✅ 書類の整合性を意識したチェック体制

・提出書類間で数字や内容が食い違っていないか(賃金台帳と出勤簿、計画書と就業規則など)
・誤字脱字・日付ズレ・印漏れがないかを複数人で確認
・電子申請なら添付ファイル名・ファイル形式のルールを統一

審査官は膨大な数の書類を見ており、齟齬や誤記があると「管理体制に不安がある」と判断されがちです。

チェックリストを用いた「申請前の事務処理監査」のようなステップを設けることで、形式面の信頼性が向上します。

✅ 「実現性」が伝わる計画書の作成

・助成対象の取り組みに明確な目的と数値目標を設定
・具体的なスケジュールと担当者の明示
・取り組みによる効果(従業員満足度の向上、生産性アップなど)も記載

抽象的な言葉よりも、「3か月以内に研修受講完了」「月次で効果測定」などの具体性が信頼感につながります。

✅ 過去の助成金活用履歴を管理

・過去に取得した助成金とその成果を一覧化
・厚労省への報告義務や実績報告が適切に行われているかのチェック
・不適切な申請履歴(返金・取消など)の有無を把握し、必要に応じて改善策を提示

助成金申請は過去の実績も見られることがあるため、「継続的に制度を活用し、適切に運用している企業」は採択されやすくなります。

✅ 労務・制度に強い外部専門家との連携

・社会保険労務士などとの顧問契約で制度改正に即応
・書類作成・添削の外注で品質担保とリスク低減
・採択後のフォロー(実績報告、変更届など)も依頼できる体制が理想

中小企業ほど「自社だけでの完結」に限界があるため、“外部の専門家の目”を取り入れることが助成金活用の継続性につながります。

信頼される企業体制が「採択率アップ」につながる

助成金申請は、書類の正確性や制度理解だけでなく、「この企業なら助成金を有効活用してくれそうだ」と思わせる実務体制があるかどうかも審査ポイントになります。

採択率を上げる企業に共通するのは、次のような姿勢です。

社内でのチェック体制を構築し、書類の整合性・信頼性を担保
計画書を具体的かつ効果的に記述し、「やる気」と「実現性」を伝える
過去の助成金履歴や活用結果を整理・評価し、継続性を示す
専門家のサポートを得て制度の変化にも柔軟に対応できる体制を整備

助成金を「一度きりの収入源」とせず、中長期的な経営戦略に組み込んでいく姿勢が、結果として「選ばれる企業」への第一歩となります。

助成金活用は企業成長への第一歩:制度理解から申請実行へ

雇用関係助成金は、単なる「コスト削減」ではなく、人材戦略や労働環境の改善に直結する制度です。

新規採用・定着支援・テレワーク導入など、活用の幅は広く、自社の経営課題に応じて最適な助成金を選ぶことが重要です。

また、助成金には共通する条件や手続き上のルールがあり、計画性を持った準備が欠かせません。

申請にあたっては、対象となる労働者や事業主の要件を丁寧に確認し、計画書や必要書類の整備を怠らないことが、スムーズな採択へのカギとなります。

「うちの会社でも使えるかもしれない」と思ったら、まずは一歩を踏み出してみてください。

制度を正しく理解し、申請のプロセスに沿って準備すれば、中小企業であっても十分に活用可能です。

採択される企業には共通する“整備された体制”があります。

ぜひこの記事を参考に、貴社でも雇用関係助成金の活用を前向きにご検討ください。

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