高齢者を採用したり、定年を延長して継続雇用したりする企業は、国の助成金を利用できる可能性があります。
「高齢者雇用の補助金を探している」という場合、まず確認したいのは次の制度です。
| 高齢者雇用で行うこと | 主な制度 |
| 60歳以上の人を新しく採用する | 特定求職者雇用開発助成金 |
| 定年を65歳以上へ引き上げる | 65歳超雇用推進助成金 |
| 定年を廃止する | 65歳超雇用推進助成金 |
| 66歳以上まで働ける継続雇用制度を導入する | 65歳超雇用推進助成金 |
| 高齢者向けの賃金・評価・健康管理制度を整える | 65歳超雇用推進助成金 |
| 50歳以上の有期契約労働者を無期雇用へ転換する | 65歳超雇用推進助成金 |
2026年度は65歳超雇用推進助成金が改正され、65歳超継続雇用促進コースの支給額は15万円から最大240万円となりました。高年齢者無期雇用転換コースは、中小企業の場合1人40万円です。
また、60歳以上の人を新たに採用する際に利用できる特定求職者雇用開発助成金も、2026年5月から対象要件が変更されています。
この記事では、2026年に高齢者雇用で利用できる主な助成金、支給額、対象条件、申請方法をわかりやすく解説します。
高齢者の雇用で使える主な助成金

高齢者雇用に関する支援制度は、「高齢者を雇えば一律で○万円」という仕組みではありません。
新しく採用するのか、現在働いている従業員の定年を延長するのか、有期雇用から無期雇用へ切り替えるのかによって利用する制度が変わります。
60歳以上を新しく採用するなら特定求職者雇用開発助成金
60歳以上の高年齢者を新規採用する場合は、「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」を利用できる可能性があります。
2026年度の中小企業の支給額は、高年齢者の場合、
- 短時間労働者以外:60万円
- 短時間労働者:40万円
です。
中小企業以外では、それぞれ50万円、30万円となります。
ただし、60歳以上の人を雇用すれば自動的に対象になるわけではありません。
2026年5月1日以降の職業紹介からは、ハローワーク等で就労に向けた個別支援を受けている60歳以上の高年齢者であることが重要な条件となっています。
定年延長・継続雇用なら65歳超雇用推進助成金
すでに働いている従業員について、
- 定年を65歳以上へ引き上げる
- 定年制度を廃止する
- 66歳以上まで働ける継続雇用制度を導入する
といった取り組みを行う場合は、65歳超雇用推進助成金の「65歳超継続雇用促進コース」が候補です。
2026年4月8日に制度が改正され、支給額は15万円から最大240万円となりました。
支給額は、制度の内容や対象となる被保険者数などによって変わります。
高齢者向けの雇用管理制度を整える助成金もある
高齢者が働き続けやすいように、
- 賃金制度
- 人事評価制度
- 短時間勤務制度
- 健康管理制度
などを整備する場合は、「高年齢者評価制度等雇用管理改善コース」を利用できる可能性があります。
2026年度は、中小企業が高年齢者向けの賃金・人事処遇制度を導入・改善した場合に60万円、それ以外の対象となる雇用管理制度を導入・改善した場合に30万円が支給されます。
50歳以上の有期社員を無期雇用にすると助成対象になり得る
50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を無期雇用へ転換する場合は、「高年齢者無期雇用転換コース」が候補です。
2026年度は、中小企業の場合、対象労働者1人につき40万円です。
中小企業以外は30万円で、1適用事業所につき年度10人までが対象となります。
特定求職者雇用開発助成金で60歳以上を採用する場合

高齢者を新しく雇用する企業にとって、最初に確認したいのが特定求職者雇用開発助成金です。
ただし、通常の求人で60歳以上の人を採用するだけでは対象にならない場合があります。
2026年5月以降は個別支援を受けた60歳以上が対象
2026年5月1日以降の紹介から、高年齢者に関する対象要件が変更されています。
60歳以上の高年齢者については、ハローワーク等で就労に向けた個別支援を受けている人が助成対象者となります。
そのため、
60歳以上の人をハローワークから紹介してもらえば必ず対象
というわけではありません。
採用前に、その求職者が助成対象となる紹介を受けられるか確認することが重要です。
ハローワーク等の紹介による雇入れが必要
特定求職者雇用開発助成金では、ハローワークや一定の職業紹介事業者等の紹介による雇入れが必要です。
自社サイトや知人からの紹介など、通常の採用だけでは助成対象にならない場合があります。
助成金を利用する予定であれば、採用後ではなく求人・紹介の段階から制度要件を確認しましょう。
通常労働者は中小企業で60万円
60歳以上の高年齢者を短時間労働者以外として雇い入れた場合、中小企業では1人あたり60万円が支給されます。
支給対象期間は1年間で、30万円ずつ2期に分けて支給される仕組みです。
中小企業以外の場合は50万円です。
短時間労働者は中小企業で40万円
対象となる高年齢者を短時間労働者として雇用した場合、中小企業の支給額は40万円です。
20万円ずつ2期に分けて支給されます。
高齢者をパートや短時間勤務で採用したい事業者でも、条件を満たせば助成対象になる可能性があります。
65歳超雇用推進助成金の3つのコース

65歳超雇用推進助成金は、高齢者を長く雇用できる職場環境を整える事業主を支援する制度です。
2026年度は主に3つのコースがあります。
| コース | 主な取り組み |
| 65歳超継続雇用促進コース | 定年延長・定年廃止・継続雇用 |
| 高年齢者評価制度等雇用管理改善コース | 賃金・評価・健康管理など |
| 高年齢者無期雇用転換コース | 50歳以上の有期社員を無期雇用へ転換 |
65歳超継続雇用促進コースは定年延長などを支援
65歳超継続雇用促進コースでは、
- 65歳以上への定年引き上げ
- 定年制度の廃止
- 66歳以上の継続雇用制度の導入
- 他社による継続雇用制度の導入
などを行った事業主を支援します。
2026年度は支給額が拡充されるとともに、従来の「1事業主1回限り」という取り扱いも廃止されました。
高年齢者評価制度等雇用管理改善コースは雇用環境の整備を支援
高齢者を長く雇用するためには、定年年齢だけでなく、年齢に合った評価・処遇・勤務制度も重要です。
このコースでは、高年齢者向けの、
- 賃金・人事処遇制度
- 短時間勤務制度
- 健康管理制度
- 高齢者に適切な役割を付与する制度
などの導入・改善を支援します。
2026年度からは支給方法も見直され、定率助成から定額助成を中心とする制度へ変更されています。
高年齢者無期雇用転換コースは50歳以上の有期労働者が対象
このコースは、50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を、無期雇用労働者へ転換する事業主を支援します。
2026年度からは、転換日までの有期契約労働者としての雇用期間について、通算1年以上という条件へ変更されています。
すでに高齢の有期社員がいる企業では確認しておきたい制度です。
65歳超継続雇用促進コースはいくらもらえる?

2026年度の65歳超継続雇用促進コースは、措置内容と対象となる被保険者数によって支給額が変わります。
定年を65歳以上へ引き上げる場合
65歳以上への定年引き上げでは、対象者数や引き上げ幅に応じて15万円以上が支給されます。
たとえば対象者が1~3人の場合、
- 65歳以上への定年引き上げ:15万円
- 66~69歳への定年引き上げで5歳未満:25万円
- 66~69歳への定年引き上げで5歳以上:40万円
- 70歳以上への定年引き上げ:45万円
です。
対象人数が増えるほど支給額も大きくなります。
定年廃止は最大240万円
定年制度そのものを廃止する場合は、対象となる被保険者数に応じて、
- 1~3人:60万円
- 4~6人:120万円
- 7~9人:180万円
- 10人以上:240万円
が支給されます。
2026年度改正によって、従来より支給額が拡充されています。
66歳以上の継続雇用制度導入も対象
定年を変更せず、希望する高齢者が一定年齢まで働ける継続雇用制度を導入する場合も対象です。
たとえば希望者全員を70歳以上まで継続雇用する制度を導入した場合、対象者10人以上なら130万円です。
対象者基準を設ける継続雇用制度も、2026年度から一定条件で助成対象に加わっています。
他社による継続雇用制度も助成対象
自社だけでなく、他社で継続して雇用する制度を整備する場合も支援対象になります。
2026年度は他社による継続雇用制度について、定率助成から定額助成へ変更されました。
事業承継やグループ企業間の人材活用など、高齢者の働く場所を自社以外へ広げる場合も確認する価値があります。
高年齢者評価制度等雇用管理改善コースの支給額

高齢者を継続雇用するために、評価・賃金・勤務制度などを整える場合はこちらのコースを確認します。
2026年度は取り組み内容によって定額で支給されます。
賃金・人事処遇制度の導入・改善は中小企業60万円
高年齢者向けの、
- 賃金制度
- 人事評価制度
- 専門職制度
- 高齢者に適切な役割を与える制度
などを導入または改善した場合、中小企業では60万円です。
中小企業以外は45万円となります。
単に規程を作成するだけではなく、制度上の支給要件に沿って実施する必要があります。
その他の雇用管理改善は中小企業30万円
賃金・人事処遇制度以外の対象となる雇用管理改善措置を行った場合、中小企業では30万円、中小企業以外は23万円です。
たとえば、高齢者が働き続けやすい勤務制度や健康管理制度などが考えられます。
必要な機器・システムを導入すると追加支給される場合がある
雇用管理制度の整備に伴って必要な機器・システム・ソフトウェア等を導入した場合、その導入経費に応じた追加支給があります。
中小企業では対象経費の60%、中小企業以外では45%です。
ただし、導入する機器等が雇用管理改善措置に必要であることが前提になります。
高年齢者無期雇用転換コースの支給額

50歳以上の有期契約社員を長期的に雇用したい場合は、高年齢者無期雇用転換コースを確認します。
50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者が対象
対象となるのは、50歳以上で定年年齢未満の有期契約労働者です。
2026年度は、無期転換日までの有期契約労働者としての雇用期間が通算1年以上必要です。
企業側が無期雇用転換制度を整備し、認定された計画に基づいて転換する必要があります。
中小企業は1人40万円
2026年度の支給額は、
- 中小企業:1人40万円
- 中小企業以外:1人30万円
です。
高齢の有期契約社員を安定した無期雇用へ移行する企業にとって活用しやすい制度です。
1事業所あたり年度10人まで対象
支給申請年度に対象とできる人数は、1適用事業所あたり10人までです。
たとえば中小企業で10人を対象として条件を満たした場合、単純計算では400万円の支給対象となる可能性があります。
ただし、対象労働者ごとの条件や認定計画に沿った転換が必要です。
高年齢雇用継続給付は企業向け助成金ではない

高齢者雇用の制度を調べると、「高年齢雇用継続給付」もよく出てきます。
ただし、65歳超雇用推進助成金などとは性質が異なります。
高年齢雇用継続給付は労働者本人への雇用保険給付
高年齢雇用継続給付は、60歳以降も働き続ける一定の雇用保険被保険者に支給される制度です。
原則として、
- 60歳以上65歳未満
- 雇用保険の一般被保険者
- 被保険者期間5年以上
- 60歳時点と比べて賃金が75%未満へ低下
などの条件があります。
企業に対して設備費や人件費を補助する助成金ではありません。
2025年4月以降は支給率が最大10%
2025年4月1日以降に受給資格を満たす人については、支給率が従来の最大15%から最大10%へ変更されています。
2026年に高年齢雇用継続給付を確認する場合も、この変更後の支給率を基準に考えます。
企業側は手続きを行うことがありますが、制度上の給付対象は労働者本人です。
高齢者雇用の助成金を申請するときの流れ

高齢者雇用の助成金は、制度ごとに申請手順が異なります。
「高齢者を雇った後に申請先を探せばよい」と考えず、取り組み前に確認しましょう。
新規採用では求人・紹介の段階で対象要件を確認する
特定求職者雇用開発助成金を利用する場合は、ハローワーク等の紹介が重要です。
2026年5月以降は、60歳以上の求職者について個別就労支援の要件も加わっています。
そのため、
求人を出す
↓
対象者か確認
↓
ハローワーク等から紹介
↓
雇入れ
↓
一定期間雇用
↓
支給申請
という流れを意識しましょう。
定年延長・定年廃止では就業規則を整備する
65歳超継続雇用促進コースでは、定年年齢や継続雇用制度を就業規則等で明確にする必要があります。
単に、
会社として70歳まで働いてもらうことにした
という口頭運用だけでは不十分です。
制度変更の内容、対象者、施行日などを適切に規定し、必要な手続きを行います。
評価制度・無期転換は実施前に計画申請する
高年齢者評価制度等雇用管理改善コースでは、雇用管理整備計画書を提出して認定を受けたうえで、対象となる措置を実施します。
高年齢者無期雇用転換コースも、計画に基づいて無期転換を進めます。
制度を変更した後に、
そういえば助成金があったから申請しよう
という進め方では対象にならない場合があります。
65歳超雇用推進助成金はJEEDへ申請する
65歳超雇用推進助成金の申請書類や2026年度の手引きは、高齢・障害・求職者雇用支援機構で公開されています。
一方、特定求職者雇用開発助成金は、労働局やハローワークが関係する制度です。
同じ高齢者雇用の助成金でも申請先が異なるため、制度名を確認してから準備しましょう。
高齢者雇用の助成金を利用するときの注意点

2026年度は制度改正が複数行われています。
過年度の記事や資料をそのまま使わないことが重要です。
2026年度の支給額・要件を確認する
65歳超雇用推進助成金は2026年4月8日に改正されています。
主な変更として、
- 継続雇用促進コースの支給額拡充
- 高年齢者評価制度等雇用管理改善コースの定額化
- 無期雇用転換コースを1人40万円へ変更
などがあります。
以前の「最大160万円」などの情報をそのまま使わないようにしましょう。
60歳以上を採用するだけでは助成対象にならない
特定求職者雇用開発助成金についても、
高齢者を1人採用すれば60万円
という制度ではありません。
2026年5月以降は個別就労支援を受けた高年齢者であることなど、対象者の条件があります。
採用後ではなく、紹介を受ける段階で助成対象か確認することが重要です。
助成金目的だけで形式的に制度を変更しない
定年延長や無期雇用転換は、助成金を受け取ることだけを目的に形式的に行うものではありません。
制度変更後も実際に高齢者を安定して雇用できるよう、
- 賃金
- 職務内容
- 労働時間
- 評価制度
- 健康管理
- 安全対策
まで考える必要があります。
助成金は、その取り組みに伴う企業負担を軽減するための支援制度として活用しましょう。
制度ごとに申請時期が違う
特定求職者雇用開発助成金は採用経路・対象労働者が重要です。
一方、評価制度等雇用管理改善コースや無期雇用転換コースでは、実施前の計画認定が重要になります。
高齢者雇用に関する制度を利用するときは、
誰を雇うのか
↓
何を変更するのか
↓
先に計画申請が必要か
↓
いつ支給申請するのか
まで確認してください。
高齢者雇用の助成金は「新規採用」と「継続雇用」で選ぼう

2026年に高齢者雇用で使える主な助成金は、企業が何を行うかによって異なります。
60歳以上を新しく採用する
→ 特定求職者雇用開発助成金
定年を65歳以上へ引き上げる
→ 65歳超継続雇用促進コース
定年を廃止する
→ 65歳超継続雇用促進コース
高齢者向けの賃金・評価・健康管理制度を整える
→ 高年齢者評価制度等雇用管理改善コース
50歳以上の有期契約労働者を無期雇用へ転換する
→ 高年齢者無期雇用転換コース
という選び方が基本です。
2026年度の主な支給額をまとめると、
| 取り組み | 主な支給額 |
| 60歳以上を通常労働者として新規採用 | 中小企業60万円 |
| 60歳以上を短時間労働者として新規採用 | 中小企業40万円 |
| 定年引上げ・継続雇用制度導入 | 15万~140万円等 |
| 定年廃止 | 最大240万円 |
| 賃金・人事処遇制度の改善 | 中小企業60万円 |
| その他の雇用管理制度改善 | 中小企業30万円 |
| 50歳以上の有期社員を無期化 | 中小企業1人40万円 |
また、高年齢雇用継続給付は企業が受け取る助成金ではなく、条件を満たした60歳以上65歳未満の労働者本人への雇用保険給付です。混同しないようにしましょう。
高齢者雇用の助成金を検討するときは、まず、
新しく採用するのか
↓
今いる社員を継続雇用するのか
↓
雇用制度を改善するのか
↓
有期雇用から無期雇用へ転換するのか
を整理します。
そのうえで、2026年度の最新要件を確認し、採用や制度変更を行う前に必要な手続きを進めることが重要です。
