特定求職者雇用開発助成金は、高年齢者や障害者、母子家庭の母等、就職が難しい一定の求職者を継続して雇用する事業主を支援する制度です。
対象者の属性によってコースが分かれており、支給額も異なります。たとえば特定就職困難者コースでは、中小企業が高年齢者や母子家庭の母等を雇用した場合は最大60万円、身体・知的障害者は最大120万円、重度障害者等は最大240万円が支給対象です。
ただし、対象属性に該当する人を採用すれば自動的に助成金を受給できるわけではありません。ハローワーク等の紹介を受けることや、一定期間継続して雇用する見込みがあることなど、制度ごとの要件を満たす必要があります。
2026年度は、高年齢者の対象要件や申請時の必要書類にも変更があります。旧制度の情報をそのまま使わず、現在の条件を確認して申請を進めましょう。
特定求職者雇用開発助成金とは?

企業にとって「人材確保」は大きな課題です。
特定求職者雇用開発助成金は、就職することが難しい一定の求職者を継続雇用する事業主に対して、賃金の一部を助成する制度です。
対象者の雇用機会を広げ、安定した就職につなげることを目的としています。
就職が困難な求職者を継続雇用する事業主を支援する制度
対象になるのは、一般の求職者よりも就職が難しい事情を抱える人です。
代表的には、
- 60歳以上の高年齢者
- 障害者
- 母子家庭の母等
- 父子家庭の父
- 発達障害者
- 難治性疾患患者
- 生活保護受給者等
- 一定の中高年層
などが挙げられます。
ただし、すべての対象者を同じコースで扱うわけではありません。
対象者の属性によって利用するコースが異なり、支給期間や支給額も変わります。
ハローワーク等の紹介による雇入れが必要
特定求職者雇用開発助成金では、ハローワークや制度上認められた職業紹介事業者等から紹介を受け、対象労働者を雇い入れる必要があります。
そのため、
自社サイトから直接応募してきた人を採用した後、対象者だったので助成金を申請する
という使い方は基本的にできません。
助成金を利用する可能性があるなら、採用前から紹介経路を確認しておく必要があります。
特に2026年度は、一部の対象者について、助成金対象者であることを明示した職業紹介が重要になっています。
対象者・コースによって支給額と助成期間が異なる
特定求職者雇用開発助成金は、コースごとに支給額が設定されています。
さらに、
- 中小企業か大企業か
- 短時間労働者か
- 障害の程度
- 対象者の属性
によって金額が変わります。
一括で全額が支給されるのではなく、6か月ごとなど一定の支給対象期に分けて支給されるのが基本です。
特定求職者雇用開発助成金の主なコース

2026年度の特定求職者雇用開発助成金では、対象者ごとに複数のコースが設けられています。
旧制度ではすでに廃止されたコースもあるため、現在の名称と対象者を確認することが重要です。
高年齢者・障害者・母子家庭の母等は「特定就職困難者コース」
特定就職困難者コースは、特定求職者雇用開発助成金の中心的なコースです。
主な対象者には、
- 60歳以上の高年齢者
- 母子家庭の母等
- 父子家庭の父
- 身体障害者
- 知的障害者
- 精神障害者
- 重度障害者等
が含まれます。
対象者をハローワーク等の紹介で雇い入れ、継続して雇用することが必要です。
対象者の区分によって支給総額が大きく異なります。
35歳以上60歳未満の対象者は「中高年層安定雇用支援コース」
中高年層安定雇用支援コースは、35歳以上60歳未満の中高年層のうち、十分なキャリア形成がされておらず、正規雇用での就職が難しい人を対象とする制度です。
単に35歳以上であれば対象になるわけではありません。
一定の就職支援を受け、正規雇用を希望していることなど、対象者要件を満たす必要があります。
中小企業の場合、支給総額は60万円です。
一般的には6か月ごとに30万円ずつ、2期に分けて支給されます。
発達障害者・難治性疾患患者は専用コース
発達障害者や難治性疾患患者を継続雇用する場合は、発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コースが候補になります。
中小企業の場合の支給額は、
- 短時間労働者以外:最大120万円
- 短時間労働者:最大80万円
です。
対象者の障害や疾患が制度上の範囲に該当するか確認する必要があります。
一般の障害者と同じ条件で判断せず、専用コースの要件を確認しましょう。
生活保護受給者・生活困窮者は「生活保護受給者等雇用開発コース」
生活保護受給者や生活困窮者などを雇用する場合は、生活保護受給者等雇用開発コースがあります。
中小企業の場合、
- 短時間労働者以外:最大60万円
- 短時間労働者:最大40万円
です。
対象者については、自治体やハローワーク等の就労支援を受けていることなどの条件があります。
生活保護を受けているという理由だけで、自動的に対象になるわけではありません。
特定就職困難者コースの対象者と支給額

特定就職困難者コースでは、対象者の属性によって支給額と助成期間が異なります。
中小企業の場合、代表的な支給額は次のとおりです。
| 対象者 | 短時間労働者以外 | 短時間労働者 |
| 高年齢者・母子家庭の母等 | 最大60万円 | 最大40万円 |
| 身体・知的障害者 | 最大120万円 | 最大80万円 |
| 重度障害者等 | 最大240万円 | 対象区分に応じて異なる |
高年齢者・母子家庭の母等は中小企業で最大60万円
中小企業が高年齢者や母子家庭の母等を短時間労働者以外として雇用した場合、支給総額は最大60万円です。
通常は、
- 第1期:30万円
- 第2期:30万円
のように、6か月ごとに分割して支給されます。
最初から60万円が一括で振り込まれるわけではありません。
また、各支給対象期に実際に支払った賃金額が支給額の上限になります。
身体・知的障害者は中小企業で最大120万円
身体障害者または知的障害者を短時間労働者以外として雇用した場合、中小企業では最大120万円が支給されます。
一般的には、
30万円×4期
のように、6か月ごとに分けて支給されます。
助成期間が長いため、対象労働者を継続雇用しながら、支給対象期ごとに申請を行う必要があります。
重度障害者等は中小企業で最大240万円
重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者など一定の対象者では、中小企業の支給総額が最大240万円となります。
一般的には、
40万円×6期
のように複数回に分けて支給されます。
最大額だけを見ると大きく感じますが、長期間の継続雇用が前提です。
途中で雇用が終了した場合などは、以降の支給に影響します。
短時間労働者は支給額が異なる
週所定労働時間が短い対象者は、通常の労働者と支給額が異なります。
たとえば中小企業では、
- 高年齢者・母子家庭の母等:最大40万円
- 身体・知的障害者:最大80万円
などです。
「対象者を雇えば最大額が支給される」と考えるのではなく、労働時間の区分まで確認してください。
2026年度から変わった特定求職者雇用開発助成金のポイント

2026年度は、高年齢者の対象要件や支給申請時の必要書類に変更があります。
特に、過年度の記事やパンフレットを参考にしている場合は注意が必要です。
60歳以上は個別支援を受けた対象者が中心になった
2026年5月1日以降、60歳以上の高年齢者については、単に年齢要件を満たすだけでは足りません。
ハローワーク等で就労に向けた個別支援を受けているなど、制度で定められた条件を満たす必要があります。
つまり、
60歳以上の人を採用すれば特定就職困難者コースが使える
という単純な制度ではなくなっています。
高年齢者を採用する際は、紹介前に対象者要件を確認しましょう。
対象労働者であることを明示した職業紹介が重要
2026年度では、一部の対象者について、紹介時に「特定求職者雇用開発助成金の対象労働者であること」が明示されることが重要です。
採用後に対象属性が判明しても、紹介要件を満たしていなければ助成金の対象にはできません。
特に高年齢者については、個別支援と紹介の手続きがこれまで以上に重要になっています。
助成金を利用するなら、求人を出す段階からハローワーク等へ相談しておく方が安全です。
2026年4月以降は賃金台帳の提出が必須
2026年4月以降の支給申請では、賃金台帳の添付が重要な要件になっています。
支給対象期に実際に賃金を支払ったことを確認するためです。
賃金台帳が確認できない場合は、不支給につながります。
そのため、
- 賃金台帳
- 出勤簿
- 雇用契約書
- 雇用保険関係書類
などを日常的に整備しておく必要があります。
申請直前に過去分をまとめて作るのではなく、毎月適切に管理しましょう。
成長分野等人材確保・育成コースは廃止された
2025年度まで存在した成長分野等人材確保・育成コースは、2025年度限りで廃止されています。
過去の記事では、
- 成長分野への採用
- 人材育成
- 最大360万円
などの情報が掲載されていることがあります。
しかし、2026年度の新規申請でそのまま利用することはできません。
旧制度の最大支給額を、現在の特定求職者雇用開発助成金全体の上限として扱わないようにしてください。
特定求職者雇用開発助成金を受給する主な条件

特定求職者雇用開発助成金では、対象者の属性だけでなく、採用方法や雇用期間なども重要です。
主な条件を一つずつ確認していきましょう。
ハローワーク等の適正な紹介で雇い入れる
対象労働者は、ハローワークや制度上認められた職業紹介事業者等から紹介を受けて雇い入れる必要があります。
自社への直接応募や、単なる求人広告を通じた採用では、紹介要件を満たしません。
たとえば、
- 自社ホームページから直接応募
- SNSの採用募集へ応募
- 求人広告を見た本人が直接連絡
といった採用は、そのままでは助成金の対象にならない場合があります。
助成金利用を検討するなら、採用経路を先に確認してください。
雇用保険の被保険者として雇い入れる
対象労働者は、原則として雇用保険の被保険者として雇い入れる必要があります。
ただし、「雇用保険に入ればすべて対象」という意味ではありません。
対象者の属性、労働時間、雇用期間など、各コースの要件も満たす必要があります。
事業主側も雇用保険適用事業所であることが基本です。
65歳以上まで継続して2年以上雇用する見込みが必要
特定就職困難者コースなどでは、対象労働者を65歳以上に達するまで継続して雇用し、かつ雇入れ日から2年以上継続して雇用することが確実と認められる必要があります。
つまり、
半年だけ雇えば助成金がもらえる
という制度ではありません。
有期契約の場合でも、契約更新の考え方や継続雇用の見込みが確認されます。
助成金を目的に短期雇用するのではなく、安定した雇用を前提に採用することが必要です。
雇用関係助成金の共通要件を満たす
各コース固有の条件に加えて、雇用関係助成金の共通要件も満たさなければなりません。
主に確認されるのは、
- 雇用保険適用事業主である
- 労働保険料を適切に納付している
- 必要な労務関係書類を整備している
- 一定の労働関係法令違反等の不支給要件に該当しない
などです。
対象労働者だけでなく、事業所側の労務管理も確認しておきましょう。
特定求職者雇用開発助成金はいくら・いつ支給される?

特定求職者雇用開発助成金は、最大支給額が一括で支払われる制度ではありません。
対象労働者を一定期間雇用し、各支給対象期を経過するごとに申請します。
助成金は6か月ごとの支給対象期に分けて支給される
多くのコースでは、雇入れ後6か月ごとに支給対象期が設定されています。
たとえば中小企業が高年齢者を雇用し、最大60万円の対象になる場合、
雇入れ
↓
6か月経過
↓
第1期30万円
↓
さらに6か月
↓
第2期30万円
という流れです。
身体・知的障害者や重度障害者等の場合は、支給期間がさらに長くなります。
支給額は対象者・企業規模・労働時間で変わる
同じコースでも支給額は一律ではありません。
主に、
- 中小企業か大企業か
- 短時間労働者か
- 障害の区分
- 対象者属性
によって変わります。
そのため、「特定求職者雇用開発助成金はいくら?」という質問には、まず対象者と労働条件を確認する必要があります。
各期の支給額は実際に支払った賃金額が上限
支給額には各コースの上限がありますが、支給対象期に実際に支払った賃金額を超えて助成されるわけではありません。
たとえば支給予定額が30万円でも、その期間の対象となる賃金額がそれより少なければ、実際の支給額はその範囲内になります。
最大額だけを前提に採用計画を組まず、実際の賃金と助成期間まで確認しましょう。
特定求職者雇用開発助成金の申請方法
特定求職者雇用開発助成金は、採用した後に一度だけ申請する制度ではありません。
紹介、雇入れ、一定期間の雇用、支給対象期ごとの申請という順番で進めます。
1.ハローワーク等から対象労働者の紹介を受ける
最初に、ハローワーク等を通じて対象労働者の紹介を受けます。
この段階で、
- どのコースの対象者か
- 助成金対象者として紹介されているか
- 雇用条件は要件を満たすか
を確認します。
特に2026年度は高年齢者の紹介要件が変更されているため、採用前の確認が欠かせません。
2.対象労働者を条件に沿って雇い入れる
紹介を受けたら、制度要件に沿った条件で雇い入れます。
雇用契約では、
- 雇用期間
- 所定労働時間
- 賃金
- 雇用区分
- 更新条件
などを明確にします。
労働条件通知書や雇用契約書は、支給申請時にも確認される重要な資料です。
3.支給対象期ごとに必要書類を準備する
雇入れ後は、支給対象期ごとに勤務実績と賃金支払いを確認できる書類を整備します。
代表的には、
- 賃金台帳
- 出勤簿
- 雇用契約書
- 雇用保険関係書類
などです。
対象者によっては、障害や対象属性を確認する書類が必要になることもあります。
申請直前ではなく、雇用開始時から整理しておきましょう。
4.支給申請期間内に労働局・ハローワーク等へ申請する
各支給対象期が終了したら、所定の支給申請期間内に申請します。
申請期限を過ぎると、要件を満たしていても支給されないことがあります。
1回目の申請が終わっても、複数期にわたるコースでは次回の申請が必要です。
対象労働者ごとに支給対象期間を管理しておくと、期限漏れを防ぎやすくなります。
5.2026年度は賃金台帳を必ず添付する
2026年4月以降の支給申請では、賃金台帳の添付が必須となっています。
給与明細だけで代用できると自己判断せず、最新の申請書類を確認してください。
賃金台帳には、
- 賃金計算期間
- 基本給
- 手当
- 支給額
- 支払日
などを適切に記録します。
賃金台帳が確認できなければ不支給につながるため、2026年度申請では特に重要な書類です。
特定求職者雇用開発助成金を利用するときの注意点

特定求職者雇用開発助成金は、対象者の属性だけで申請可否が決まるものではありません。
採用前の紹介から申請時の書類まで、制度要件に沿って進める必要があります。
求人サイトや自社への直接応募では紹介要件を満たさない
対象者が高年齢者や障害者だったとしても、採用経路が制度要件を満たさなければ助成対象にはなりません。
特に注意したいのが、
採用してから助成金を探す
という流れです。
特定求職者雇用開発助成金は、原則として採用前の紹介が必要です。
求人を出す段階で制度利用の可能性を確認しましょう。
年齢や障害などの属性だけで自動的に対象にはならない
60歳以上、障害者、母子家庭の母等といった属性に該当していても、それだけでは十分ではありません。
コースごとに、
- 紹介要件
- 雇用保険
- 雇用条件
- 継続雇用見込み
- 対象者確認
などの条件があります。
特に高年齢者は2026年5月から要件が変更されています。
過去の「60歳以上なら対象」という情報だけで判断しないようにしてください。
対象労働者を短期間で離職させると支給に影響する
特定求職者雇用開発助成金は継続雇用を支援する制度です。
対象者が途中で離職すると、その後の支給対象期について助成金を受けられなくなることがあります。
また、離職理由や事業主都合の解雇状況などが確認される場合もあります。
支給額だけを目的に採用するのではなく、長期的な雇用を前提に職場環境や業務内容を整えましょう。
旧コース・旧年度の支給額をそのまま使わない
特定求職者雇用開発助成金は制度改正が比較的多い助成金です。
過去には、
- 就職氷河期世代安定雇用実現コース
- 成長分野等人材確保・育成コース
など、現在は廃止されたコースもあります。
さらに、対象者要件や必要書類も変更されています。
検索で見つけた古い金額や対象者条件をそのまま参考にせず、申請年度の公式資料で確認してください。
特定求職者雇用開発助成金は対象者と紹介要件を確認して利用しよう

特定求職者雇用開発助成金は、高年齢者や障害者、母子家庭の母等、安定した就職が難しい求職者を継続雇用する事業主を支援する制度です。
主なコースには、
- 特定就職困難者コース
- 中高年層安定雇用支援コース
- 発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース
- 生活保護受給者等雇用開発コース
があります。
特定就職困難者コースでは、中小企業の場合、高年齢者・母子家庭の母等は最大60万円、身体・知的障害者は最大120万円、重度障害者等は最大240万円が支給対象です。
ただし、最大額が一括で支給されるわけではありません。6か月ごとなどの支給対象期に分けて申請し、実際に支払った賃金額も支給額の上限になります。
また、2026年度は制度変更にも注意が必要です。
2026年4月以降は支給申請時の賃金台帳が必須となり、5月以降は60歳以上の高年齢者について個別支援や紹介要件が見直されています。
制度を利用するときは、「対象者を採用したから後から申請できる」と考えず、採用前にハローワーク等へ相談し、紹介要件・雇用条件・継続雇用要件を確認して進めましょう。
