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中小企業成長加速化補助金の対象条件を徹底解説|対象事業・企業規模・申請時の注意点まで

経済産業省が新たに打ち出した「中小企業成長加速化補助金」は、これまでの補助金とは一線を画すスケールの大きい支援策です。

従来の「ものづくり補助金」や「事業再構築補助金」と異なり、“年商10億円以上100億円未満の中堅中小企業”を主な対象とし、1億円以上の投資を条件とした、成長志向型の企業支援が中心となっています。

つまりこの補助金は、単なる資金支援ではなく、「中小企業が次のステージへ成長するための投資を後押しする制度」なのです。

一方で、対象企業の範囲や投資要件はかなり明確に定められており、「うちは申請できるのか?」「どんな事業内容が対象になるのか?」という疑問を持つ経営者も少なくありません。

この記事では、

・補助金の対象となる事業者・企業規模の条件
・投資要件や対象経費の具体例
・採択されやすい事業の特徴や注意点

をわかりやすく整理し、“自社が補助金の対象に該当するかどうか”を判断できるように解説します。

補助金活用を「成長戦略の一部」として捉えることで、自社の未来を大きく変えるチャンスにつながるかもしれません。

目次

補助金の対象となる事業者・企業規模

「中小企業成長加速化補助金」は、成長を続ける中堅中小企業を支援する目的で設計された新しい補助制度です。

従来の補助金よりも明確な“企業規模・事業内容”の条件が設定されており、「どの企業が対象になるのか」を正確に理解しておくことが、申請の第一歩になります。

ここでは、制度の基本的な対象範囲と、該当・非該当を分ける具体的な基準を整理します。

「中小企業者」の定義(資本金・従業員数)

この補助金の対象は、中小企業等経営強化法に基づく「中小企業者」とされています。

業種ごとに資本金または常時使用する従業員数の上限が異なり、一般的には以下の基準で判断されます。

業種区分資本金の上限従業員数の上限
製造業・建設業・運輸業3億円以下300人以下
卸売業1億円以下100人以下
小売業5,000万円以下50人以下
サービス業5,000万円以下100人以下

これらの基準を超える企業は原則として対象外となりますが、「中堅中小企業層(売上10億〜100億円未満)」に該当する企業については、本補助金の中心的な支援対象となります。

つまり、「中小企業の枠内にとどまらず、次のステージを目指す企業」が想定されています。

売上高10億円以上100億円未満という基準(“100億円企業”を目指す企業)

「中小企業成長加速化補助金」は、特に売上高10億円以上100億円未満の企業層を対象としています。

この層は、経済産業省が「次世代の中堅企業」「地域の中核企業」と位置づけており、“100億円企業”を目指す企業を重点支援する狙いがあります。

対象となる企業の特徴としては、

直近の売上高が10億円を超えている
設備投資・海外展開・新市場開拓などで成長投資を予定している
今後5年以内に売上高100億円を目指す事業計画を策定している

といった条件を満たすことが求められます。

このため、単なる小規模事業者や赤字企業ではなく、“成長投資が実現可能な企業”であることが前提条件となっています。

対象外となる業種・制限(一次産業、資産運用的事業など)

全ての業種が対象となるわけではありません。
以下のような事業は、制度の趣旨に合わないため対象外となります。

・一次産業(農林漁業) – 他省庁の助成制度で対応しているため
・金融・保険・不動産業 – 資産運用的な事業であるため
・風俗営業・ギャンブル関連 – 社会的影響を考慮した除外業種
・補助金対象経費に関連しない業務委託 – 本事業の目的外支出と見なされる場合

また、過去に同種の補助金(例:事業再構築補助金・ものづくり補助金)で不正受給や実績報告の遅延があった企業も、審査段階で対象外または減点対象となるケースがあります。

複数回申請/他補助金との併用の制限

「中小企業成長加速化補助金」は、同一法人による複数申請や他補助金との併用に制限があります。

・同一年度内に複数申請は不可(1法人1件まで)
・同一事業内容で他補助金を併用することはできない
・異なる事業目的での申請は可能(例:IT導入補助金との併願)

また、同一グループ会社内で複数法人が申請する場合も、実質的に同一事業であると判断されれば不支給となる可能性があるため注意が必要です。

特に、コンサルティングや支援機関を通じた「重複申請」や「再申請」は審査で厳しくチェックされます。

対象要件の“3つの視点”を押さえるのが第一歩

「中小企業成長加速化補助金」の対象条件を整理すると、次の3つの視点を満たすかどうかが判断の鍵となります。

1.中小企業等経営強化法上の中小企業者であること
2.売上10億円以上100億円未満で、成長投資を実行できる体制があること
3.事業内容・業種・申請方法が制度の趣旨に沿っていること

この補助金は、単に「規模が小さい企業」ではなく、「次のステージを目指す成長中の中小企業」を支援するために設けられています。

自社の売上規模や投資計画を見直しながら、まずは“自社がどの条件に該当するのか”を明確にすることが、申請成功への第一歩です。

対象となる事業・投資要件

「中小企業成長加速化補助金」は、単に経営を維持するための支援ではなく、“成長を目的とした投資”を促す制度です。

そのため、採択されるためには事業内容や投資金額に明確な要件が設けられています。

ここでは、補助対象となる投資の種類・規模・期間・成果の基準をわかりやすく整理します。

最低投資額1億円以上(専門家・外注費を除く)

この補助金の最大の特徴は、「最低投資額1億円以上」という明確な下限が設けられている点です。

これは単発的な設備導入ではなく、企業の中長期的な成長につながる本格的な投資を想定しているためです。

補助対象となる投資額には、以下の条件が適用されます。

・対象経費総額が1億円以上であること(税抜)
・専門家費用・委託費・外注費は対象外(純粋な設備・建設・開発投資が対象)
・支出の発生が補助事業期間内に完了していること

この要件を満たさない場合は、申請時点で形式不備とされるため、「単年度的なプロジェクト」や「実証段階の小規模投資」は原則対象外となります。

設備投資型(機械装置・ソフトウェア・建物)等の対象経費

本補助金は、設備投資・建物改修・ソフトウェア開発など、企業の成長に直結する投資を広く対象としています。

主な補助対象経費の例は以下の通りです。

投資区分具体例補助対象の考え方
機械装置費生産設備、加工機、検査装置、物流システム生産効率・品質向上につながるもの
建物費・改修費工場新設、倉庫拡張、研究開発拠点整備事業拡大や拠点強化を目的とする投資
ソフトウェア費ERP導入、AI分析システム、IoTプラットフォーム経営・生産のデジタル化を目的とする投資
技術導入費特許使用料、ライセンス契約費新技術・新製品開発のための投資

一方、次のような費用は対象外です。

土地購入費
広告・宣伝・販売促進費
通常の修繕・保守費用
融資利息・人件費

補助金の趣旨は「既存事業の延命」ではなく、“新たな事業フェーズへ成長させる投資”にあります。

賃上げ・事業計画・5年程度の継続要件(給与支給総額等)

中小企業成長加速化補助金では、賃上げや持続的な事業成長に対するコミットメントも求められます。

具体的には、以下のような数値目標や継続条件が設定されています。

・事業計画期間:おおむね5年間
・給与支給総額を年率1.5%以上増加させる目標を設定
・事業終了後も一定期間、設備を維持・運用し続けること
・赤字転落・事業中止などの場合は一部返還対象となる場合あり

つまり、補助金を受けた時点で終わりではなく、「補助金を使って成長を継続できるか」が問われる制度設計になっています。

このため、採択を目指す企業は単なる投資計画書ではなく、財務・雇用・市場戦略を含む一体的な成長計画を提示することが重要です。

波及効果・地域経済・輸出拡大などの審査ポイント

審査では、企業単体の利益だけでなく、地域・産業全体への波及効果も重視されます。

これは「中小企業の成長を日本経済全体の底上げにつなげる」という政策目的があるためです。

具体的な審査ポイントとしては次の通りです。

・地域経済への波及効果(地元企業との連携・雇用創出など)
・技術的優位性・新規性(特許、独自技術、海外市場での競争力)
・輸出・海外展開への貢献(販路拡大・輸出比率の向上)
・ESG/脱炭素への取り組み(省エネ・環境負荷低減)

特に最近では、「成長=環境配慮・地域貢献と両立すること」が重視されており、“自社の投資が社会的意義を持つか”を明確に説明できるかどうかが採択を左右します。

採択のカギは「規模・成長・波及」の3要素

中小企業成長加速化補助金における投資要件を整理すると、採択のためには次の3要素が必須といえます。

1.規模要件 – 最低投資額1億円以上の本格的な成長投資であること
2.成長要件 – 賃上げ・事業計画・財務面での持続性を示せること
3.波及要件 – 地域・業界・社会への広がりを生むプロジェクトであること

この補助金は、単なる設備更新ではなく、「中小企業が日本経済の次の柱へ成長するための挑戦を後押しする制度」です。

したがって、申請を検討する際は、“金額”ではなく“成長ストーリー”で勝負できる事業計画を準備することが成功の鍵となります。

企業規模・実績・条件の具体例

「中小企業成長加速化補助金」は、単に“中小企業支援”という枠組みではなく、明確な数値条件と成長意欲を兼ね備えた企業を対象にしています。

ここでは、補助上限額や売上高条件、“100億円企業”を目指す企業に求められる申請条件などを具体的に整理し、「自社がどの条件に該当するのか」を判断できるように解説します。

補助上限額5億円・補助率1/2という条件

本制度の支援規模は極めて大きく、補助上限額は最大5億円、補助率は原則1/2以内です。

つまり、10億円規模の設備投資に対して最大5億円が補助される設計であり、中小企業向け補助金としては異例の大型支援です。

項目内容
補助上限額5億円
補助率1/2以内
最低投資額1億円以上
対象経費設備・建物・ソフトウェアなどの資産形成投資
補助対象期間採択日から約1年間(※年度による)

この規模感からもわかる通り、単なるコスト削減ではなく「成長加速への本格投資」を前提にしているのが特徴です。

なお、実際の補助金額は審査結果や事業計画内容によって減額される場合もあります。

直近決算売上高の条件(10億円以上100億円未満)と“100億宣言”の提出要件

この補助金の対象は、直近決算で売上高が10億円以上100億円未満の企業に限定されています。

「中堅中小企業」を中心に、次のステージ(売上100億円規模)を目指す企業を後押しする目的です。

また、申請時には“100億円企業を目指す旨を明記した成長計画(通称:100億宣言)”の提出が求められます。

この宣言には以下の要素を含めることが推奨されています。

5年間の売上・利益・雇用の成長目標
成長ドライバーとなる新事業・技術開発・海外展開戦略
賃上げや雇用拡大に関する定量的なコミットメント

つまり、単なる目標設定ではなく、「どのようにして100億円企業へ成長するのか」という実現計画を数値で示すことが審査で重視されます。

この要件により、売上10億円未満の企業や、短期的な補助目的の申請は対象外となります。

中小企業等経営強化法上の中小企業者に該当するかチェックリスト

自社が「中小企業者」に該当するかどうかは、申請前に必ず確認が必要です。
以下のチェック項目で概ね判断できます。

【中小企業該当チェックリスト】

自社の業種が「製造・建設・運輸・サービス・小売・卸売」のいずれかである
資本金が中小企業等経営強化法の上限内である(例:製造業3億円以下)
常時使用する従業員数が基準以下である(例:製造業300人以下)
外資系企業・上場企業・親会社が大企業ではない
直近決算で売上10億円以上100億円未満
中期経営計画書に「成長投資」「雇用拡大」などの施策が含まれている

これらをすべて満たす企業が、「中小企業かつ成長志向の企業」として申請対象に該当します。

また、親会社やグループ企業が大企業の場合、実質支配関係(出資率・議決権など)で判断されるため注意が必要です。

投資開始前契約/対象外経費(土地取得・広告費等)の注意点

補助金申請において最も多いミスが、事業開始前契約や対象外経費の誤計上です。

特に注意すべきポイントは以下の通りです。

・交付決定前に契約・発注・支払いを行った費用は対象外
・土地購入費・借地料・金融費用・広告宣伝費は補助対象外
・社内人件費や社内設計コストも原則除外
・リース契約の場合、所有権移転型のみ対象となる

補助金はあくまで「新たな投資に対する支援」であり、過去の支出や通常運転経費は含まれません。

このため、事前に「交付決定後に契約・発注・支払いを行うスケジュール」**を設定しておくことが必須です。

対象判定の鍵は「数字」と「計画の整合性」

「中小企業成長加速化補助金」における企業規模・条件の判断は、“数字で語れるかどうか”が最も重要です。

以下の3つを満たす企業が、採択されやすい典型パターンといえます。

1.直近売上10億円以上100億円未満の企業
2.1億円以上の設備・成長投資を実行可能な財務体質
3.「100億円企業」を見据えた実行可能な事業計画を提示している

逆に、条件を満たしていても、計画が曖昧・実行性が乏しい場合は不採択となる可能性が高くなります。

中小企業にとって、この補助金は“飛躍のための一歩”です。
自社の数字を客観的に整理し、成長戦略と財務基盤の整合性をもって臨むことが、採択への最短ルートといえるでしょう。

成長加速化補助金を“次世代型中小企業支援”として活かすには

中小企業成長加速化補助金は、従来の補助金とは一線を画す“次世代型中小企業支援”です。

単なる資金援助や設備投資支援ではなく、企業が自ら成長をデザインするための戦略的な投資支援として設計されています。

この制度を最大限に活かすためには、「補助金をどう使うか」ではなく、「補助金でどう企業を成長させるか」という視点が欠かせません。

ここでは、成長加速化補助金を経営戦略に組み込むための3つのポイントを整理します。

補助金を「資金援助」ではなく「成長戦略投資」として捉える視点

採択される企業の多くは、補助金を単なる“資金の穴埋め”としてではなく、成長のためのレバレッジ(てこ)として捉えています。

この補助金の本質は、「企業の自己変革に公的資金を呼び水として活用する」ことにあります。

そのため、以下のような投資テーマが評価されやすくなっています。

・既存事業の生産性を抜本的に向上させる投資
 例:製造ラインの自動化・DX化による稼働率向上
・新たな市場・事業領域への参入
 例:国内から海外市場への輸出拡大・越境EC強化
・技術革新・ブランド強化による競争力の向上
 例:自社技術を応用した高付加価値製品の開発

つまり、採択のカギは「設備を買うこと」ではなく、“その投資で何を変え、どう成長させるか”を明確に示せるかです。補助金を“経営戦略を実行するための資金調達手段”として設計すれば、審査側の評価も高まりやすくなります。

経営革新・デジタル化・海外展開を一体で推進する補助金の位置づけ

本補助金は、個別の分野支援ではなく、経営全体を俯瞰した成長モデルを支援する構造になっています。

特に、経営革新・デジタル化・海外展開を一体的に推進する企業が高く評価されます。

たとえば、次のような一貫性を持つ計画は審査で好印象です。

取組テーマ投資内容成果イメージ
経営革新新製品・新サービス開発売上構造の転換・利益率改善
デジタル化IoT・AIによる工程最適化生産効率・品質の向上
海外展開現地販売網構築・物流最適化海外売上比率の拡大

このように、成長の3要素(革新・デジタル・海外)を連動させた“経営の一体改革”が、制度の理念と一致します。

単一分野の改善ではなく、事業全体の価値を高める統合的な戦略が求められている点で、
この補助金は“中小企業版・経営変革支援プログラム”といえます。

採択される企業に共通する“成長志向”の要素(人材・設備・戦略の連動)

過去の採択企業を見ると、業種に関わらず**“人材・設備・戦略”の3要素を連動させている企業**に共通点があります。

1. 人材への投資を重視している
DX人材・技術者の採用・育成を明確に計画化
経営者自身が変革をリードする姿勢を示している
2. 設備投資が“戦略の実現手段”になっている
投資目的が明確で、ROI(投資対効果)を数値で説明できる
補助金がなくても実行する意志を持っている
3. 経営戦略が長期ビジョンと整合している
5年後・10年後の企業像が定義されている
ESG・脱炭素・グローバル展開などの潮流を踏まえている

採択率の高い企業は、単に「条件を満たしている」だけではなく、補助金を通じて企業価値を高め、社会的影響を生み出す構想力を持っています。

この点で、成長加速化補助金は「書類審査」ではなく、“経営の覚悟を問う補助金”ともいえるでしょう。

補助金を“未来への資本”として活用する

「中小企業成長加速化補助金」を最大限に活かすポイントは、“資金支援”から“成長支援”へと発想を転換することにあります。

1.補助金=経営変革のための資本と捉えること
2.革新・デジタル・海外展開を組み合わせた総合的成長モデルを描くこと
3.人材・設備・戦略を一体化させた長期ビジョンを明示すること

この3点を意識することで、単なる資金獲得ではなく、企業の未来を創る補助金活用が実現します。

補助金を「もらう」ではなく「使いこなす」。
その発想の転換こそが、真に成長する中小企業の条件です。

成長を描ける企業こそ、中小企業成長加速化補助金の主役

「中小企業成長加速化補助金」は、単なる資金支援ではなく、企業の未来を描くための“成長装置”です。

補助金という枠を超えて、自社の中長期ビジョンを形にする経営戦略の一部として活用できるかどうかが、成功の分かれ道となります。

この記事で解説したように、採択の鍵を握るのは次の3つの観点です。

1.企業規模と財務体力の条件を満たしているか
 ─ 売上10億円以上100億円未満の「中堅中小企業」層が中心。
2.成長に直結する投資計画があるか
 ─ 1億円以上の本格投資、賃上げ・事業拡大・地域貢献などを明確に示す。
3.経営者自身が成長をリードする覚悟を持っているか
 ─ 人材・設備・戦略を連動させた「成長ストーリー」を提示できるかが重要。

この補助金は、財務基盤がある企業ほど活かしやすい制度ではありますが、“伸びしろ”と“挑戦意欲”を持つ中小企業であれば十分にチャンスがあります。

自社の売上・投資計画・人材戦略を見直し、「今の延長線上ではなく、次のステージを描けるか」を考えるタイミングにしてみてください。

中小企業成長加速化補助金は、まさにその“成長曲線を変える一歩”となる制度です。

この記事を書いた人

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