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賃上げ助成金ガイド:中小企業が申請前に知っておくべき対象と条件とは?

近年、最低賃金の引き上げや物価高騰を背景に、従業員の賃上げに踏み切る中小企業が増えています。

しかし一方で、「賃上げによって経営が苦しくなるのでは」「どこかから支援は受けられないか」と悩む企業も少なくありません。

そんな中、政府は“賃上げを実施した中小企業”に対して助成金や補助制度を用意しており、活用次第でコスト負担を大きく軽減できます

とはいえ、対象企業の条件や支給内容は制度によって異なり、「自社が対象になるのか?」「どうやって申請すればいいのか?」と迷うケースも多いのが実情です。

この記事では、賃上げ助成金の対象となる企業・事業場の要件、賃金改定の基準、支給額や期間の構造、申請の流れ、そして注意点までを網羅的に解説します。

読み終えたときには、自社が申請できるかどうかが明確になり、前向きな導入判断ができる状態になっていることを目指します。

目次

賃上げ助成金とは何か

政府が用意する「賃上げ助成金」は、単に賃金を上げれば自動的にもらえる制度ではありません。

国が目指す最低賃金引き上げ・生産性向上といった政策目標の達成を支援する仕組みとして設計されています。

このセクションでは、制度の背景や導入目的、助成制度の体系、対象となる企業区分などの全体像をわかりやすく整理します。

支援制度の目的と背景(最低賃金引き上げ・生産性向上)

政府が賃上げ支援に本格的に取り組み始めた背景には、最低賃金の段階的な引き上げ方針があります。

経済成長・物価上昇に見合った所得改善を図るため、最低賃金はここ数年で連続して上昇。
2025年度には全国平均1,000円超えも視野に入ってきました。

ただし、賃上げは企業、特に中小企業にとっては人件費増加という経営上の大きな負担にもなります。

そのため、国は「賃上げを実施する企業を支援するための助成制度」を多数整備し、賃上げの推進と経営安定の両立を狙っているのです。

賃上げ助成金パッケージ制度の概要(制度体系・関係制度)

「賃上げ助成金」と一口に言っても、実際には複数の制度がパッケージとして運用されています
主な制度は以下の通りです。

・業務改善助成金 – 中小企業が最低賃金を引き上げる際の設備投資費用などを支援
・キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース) – 非正規労働者の基本給引き上げに対する支援
・人材開発支援助成金の一部(企業内訓練+賃上げ型) – スキル向上と賃上げをセットで支援

これらは単独でも利用できますが、組み合わせて活用することで、より広範囲なコスト支援が可能となります。
また、制度ごとに申請窓口や条件が異なるため、自社の方針や対象労働者に合わせた制度選択がカギになります。

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中小企業・大企業いずれが対象か/除外されるケース

基本的に、これらの賃上げ助成制度は中小企業・小規模事業者を対象としています。

大企業も一部の制度で対象となる場合がありますが、多くは中小企業限定で助成率や上限額が手厚く設定されています。

中小企業の定義は業種別で異なりますが、以下が代表的な目安です。

小売業 – 資本金5,000万円以下 or 従業員50人以下
製造業・その他 – 資本金3億円以下 or 従業員300人以下

また、「みなし大企業」(資本関係やフランチャイズによる実質的支配を受ける事業所)は対象外とされることがあるため、関連企業との関係性にも注意が必要です。

制度全体の構造と対象企業の基本を押さえる

賃上げ助成金は、国の政策目標を支援するための戦略的な制度パッケージであり、単独の制度ではありません。
自社が対象となるか、どの制度を活用できるかを把握するためには、制度の全体像と中小企業の定義を正しく理解しておくことが出発点です。

対象企業・事業場の要件

「中小企業だからきっと対象だろう」と思っていても、実際には要件を満たさないケースも少なくありません

また、企業全体ではなく「事業場単位」で条件が判定される制度もあり、注意が必要です。

ここでは、賃上げ助成金を受けられる企業・事業場の具体的な要件を整理し、見落としやすいポイントもあわせて解説します。

中小企業・小規模事業者など対象事業者の区分

賃上げ助成制度の大半では、「中小企業基本法」に基づく中小企業・小規模事業者が対象とされます。

代表的な基準は以下のとおりです。

業種資本金・出資金常時使用従業員数
製造業等3億円以下300人以下
小売業5,000万円以下50人以下
サービス業5,000万円以下100人以下

さらに、小規模事業者(常時使用20人以下など)には優遇措置がある制度も存在します。

対象かどうか判断がつかない場合は、制度窓口または商工会議所への確認が推奨されます

事業場内最低賃金との関係/「みなし大企業」除外要件

業務改善助成金では、「事業場内最低賃金(最も低い賃金)」が制度の起点になります。

たとえば、事業場内で最も賃金が低い労働者の時給が950円だった場合、それを960円・970円へと段階的に引き上げることで、助成金の対象になります。

また、以下のような「みなし大企業」は制度対象から外れる場合があります。

親会社が大企業である(資本関係)
フランチャイズ本部から実質的支配を受けている
収益の過半を1社に依存している(実態大企業)

このように、企業規模だけでなく、事業の実態・関係性も審査対象になるため、注意が必要です。

賃金引き上げ対象労働者の条件(非正規、有期社員、継続雇用など)

賃上げ助成金の対象は、すべての従業員ではありません。

制度ごとに、対象労働者に関する要件が細かく定められています

たとえばキャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)では、以下のような条件があります。

有期契約から無期または正社員へ転換した者
就業規則や賃金規定によって昇給が反映された者
一定期間以上継続勤務している者(例:6か月以上)

一方で、短期間だけ在籍しているアルバイトや試用期間中の従業員などは助成対象外となるケースも多いため、賃上げをどの従業員に適用するかを明確にしておくことが大切です。

「自社が対象かどうか」を正確に見極める

助成金制度の対象となるには、企業規模だけでなく事業場単位での賃金水準や対象従業員の属性にも条件があることを理解しておく必要があります。
特に、「みなし大企業の除外」や「短期在籍者の除外」など、見落としやすいルールを事前に把握することで、スムーズな申請につながります

賃上げ助成金の要件(賃金改定の要件)

賃上げ助成金は、「賃金を上げれば誰でももらえる」制度ではなく、賃金改定の幅や方法、継続雇用の有無など細かい要件が定められています。

このセクションでは、どの程度の賃金改定が必要か、いつまで雇用を継続する必要があるか、他制度との併用制限など、制度の根幹となる要件を整理します。

賃金改定率・改定幅(例:最低3%以上等)

多くの賃上げ助成制度では、一定以上の賃金引き上げ率を条件にしています
たとえば、

・キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース) – 基本給を3%以上引き上げることが原則
・業務改善助成金 – 事業場内最低賃金を30円以上引き上げること(加算要件あり)

といった具合に、制度によって改定幅が異なります。
「一律1%だけ上げる」といった微少な改定では対象外になることが多いため、公募要領にある「最低改定幅」を必ず確認することが大切です。

適用期間・継続雇用要件(改定後一定期間勤務など)

賃上げを実施しただけでは助成金が支給されないケースもあります。

多くの制度で求められるのは、「改定後一定期間の継続雇用」です。

賃金改定後、対象従業員を6か月以上雇用していること
継続勤務が確認できる給与台帳・労働者名簿の提出
適用後に賃金が下がっていないことの証明

こうした条件を満たさないと、支給決定が取り消される・返還を求められる場合もあります。

したがって、賃上げ計画を立てる時点で、改定後の雇用計画を明確にしておくことが重要です。

併用制限・他の助成金との組み合わせ条件

補助制度の中には、他の助成金との併用が制限されているものもあります
たとえば、

同じ経費について、複数制度で重複して受給することは不可
同一従業員に対して異なる助成を同時適用できない場合あり
一方で「賃金引き上げ」と「設備投資支援」を併用可とする制度も存在

このように、「何が併用できるか」は制度ごとに異なるため、申請前に必ず確認しましょう。

併用できない場合は、補助率や助成額が高い方を選ぶのが基本戦略です。

賃金改定要件を満たす計画を立てる

賃上げ助成金は、改定幅・継続雇用・併用条件という3つの軸がポイントです。
「条件を満たしていなかった」という理由で不採択にならないために、計画段階から要件をクリアする体制を整えることが成功への近道です。

支給額・期間・助成率の構造

賃上げ助成金は、制度ごとに支給額や助成率、申請できる期間が異なります

ここでは、代表的な2つの制度(キャリアアップ助成金・業務改善助成金)を例に、支給額の目安や助成率、支給までの流れを整理します。

キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コースなど)の支給額の目安

キャリアアップ助成金の「賃金規定等改定コース」では、有期契約労働者やパート従業員の基本給を一定以上引き上げることで助成金が支給されます。

支給額の目安(2025年度例)

・賃金規定改定1人あたり:最大5万円〜7万円程度
・複数人対象の場合、人数に応じて加算あり
・正社員転換や処遇改善を組み合わせるとさらに加算

制度改正により金額は年度ごとに変動するため、最新の公募要領で金額を確認することが重要です。

業務改善助成金における賃上げ助成の上限・助成率の改定点

業務改善助成金は、事業場内最低賃金を一定額引き上げることを条件に、生産性向上に資する設備投資費用などを補助する制度です。

主な特徴

・助成率 – 最大4/5(小規模事業者は5/6)
・上限額 – 30万円〜最大600万円(引き上げ幅・生産性要件に応じて増加)
・対象経費 – 機械設備、システム導入費、研修費など

2025年度は対象経費や助成率が一部拡充され、より使いやすい制度に改定されています。

支給期間・支払タイミング(改定後期間・申請期間など)

賃上げ助成金は、申請から支給までに一定の時間を要します。

一般的な流れ

1.賃上げ計画書の提出・認定
2.賃上げ実施(改定後一定期間の雇用維持)
3.実績報告書・証明書類の提出
4.審査完了後に支給決定・振込

このため、「賃上げした直後にすぐ助成金が支給されるわけではない」点に注意が必要です。
スケジュールに余裕を持ち、キャッシュフロー計画を立てておくことが重要です。

支給額・助成率・期間を把握して戦略的に活用

賃上げ助成金は、制度ごとに支給額・助成率・支給時期が異なるため、「どの制度が自社に合っているか」を比較して選ぶことが大切です。
支給までに時間がかかることを前提に、早めに計画・申請を進めることで、キャッシュフローの不安を最小限に抑えられます

申請手順と重要ポイント

賃上げ助成金の制度内容を理解しても、実際の申請手順が分からないままでは活用に踏み出せません。

制度ごとに細かな書類やスケジュールの違いはあるものの、共通する“基本の流れ”を押さえておくことが成功への第一歩です。

このセクションでは、申請準備・書類作成・交付後の対応まで、失敗しない申請プロセスを段階的に解説します。

計画届・賃上げ計画の提出時期・書式

助成金の多くは、事前に「計画届(計画書)」の提出が必要です。
たとえば、

キャリアアップ助成金では、「賃金規定等改定計画書」
業務改善助成金では、「賃金引上げ計画」と「改善内容記載書」

など、制度ごとにフォーマットと記載項目が異なります。

また、計画書の提出は“着手前”でなければならないという点が非常に重要です。

「すでに賃金を上げた後」に計画を出しても、原則として対象外となるため、計画→申請→実施という順番を厳守しましょう。

証明書類や添付資料(賃金台帳、労働者名簿、賃金規定など)

申請には、計画書に加えて客観的に賃上げを証明する資料の添付が求められます。
代表的な書類は以下の通りです。

・賃金台帳(改定前後の支給状況が確認できるもの)
・労働者名簿(対象労働者の在籍・雇用形態確認用)
・就業規則・賃金規定(改定内容が明文化されていること)
・支給明細や振込記録(実際に賃上げが行われた証拠)

これらの書類が不備なく揃っていることが、審査通過の鍵になります。

必要に応じて、社労士や制度サポート機関に確認してもらうことも有効です。

交付決定後の実施・報告・確認プロセス

計画書が受理され、賃上げ実施後の対象期間が経過したら、実績報告と確認のフェーズに進みます。

一般的な流れ

1.賃上げ実施後、6か月程度の継続雇用を達成
2.実績報告書を作成し、証明書類と共に提出
3.審査後に助成金の交付決定通知
4.金融機関への振込による支給(通常は1〜2か月後)

制度によっては現地確認やヒアリングが入る場合もあり、導入前・導入後ともに記録管理を丁寧に行うことが求められます。

申請手順は「準備→提出→報告」が基本

賃上げ助成金の申請では、事前計画の提出・証拠書類の整備・計画通りの実施と報告という一連の流れを正確に踏むことが重要です。
「着手のタイミング」「書類の整合性」「報告期日の遵守」を徹底することで、審査での差戻しや不支給のリスクを防げます。

注意点・落とし穴と対策

制度を理解しても、申請が通らなければ意味がありません。

賃上げ助成金には、見落としやすい“落とし穴”や“失敗パターン”が多数存在します。

このセクションでは、特に多い3つの注意点を取り上げ、事前に対策しておくためのポイントを解説します。

改定前着手禁止・タイミング失敗

最も多い失敗の一つが、「賃金を改定した後に申請しようとして失敗する」パターンです。

ほぼすべての賃上げ系助成金では、申請(計画届)前に賃上げや制度改定を行うと対象外となります。

たとえば、

賃金規定を先に変更してしまった
実際の支給を先に始めていた
契約書や就業規則の改定日が申請前だった

といった事例では、どれだけ条件を満たしていても助成金が出ないことも。

制度活用を検討し始めた時点で、必ず「実施前に申請」するようにスケジュールを組みましょう。

対象外事業者・除外規定(みなし大企業等)

「中小企業」として認識していたのに、実は“みなし大企業”だったため対象外だったというケースも散見されます。

以下のようなケースは要注意です。

・資本関係で大企業と繋がっている(子会社・グループ企業)
・実質的に大企業と一体経営されている
・店舗がフランチャイズで本部の経営支配を受けている

これらに該当すると、中小企業枠の助成金が使えなかったり、助成率が下がることがあります。

自社の資本関係や経営実態を、制度ごとの定義に照らしてしっかり確認しておきましょう。

書類不備・適用対象者漏れ・申請遅延リスク

賃上げ助成金では、「ちょっとしたミス」が審査差戻しや不支給につながることも少なくありません。

ありがちなミス例

対象労働者が労働者名簿に記載されていない
改定日が就業規則に反映されていない
賃金台帳の金額と申請内容にズレがある
期日までに申請書が届いていない

こうした事務的ミスは、提出前のセルフチェックや第三者の確認で未然に防げます。

申請書類のフォーマットや提出期限は、制度別にこまめに確認する習慣を持つことが肝心です。

「制度理解+実務対応」で失敗を防ぐ

賃上げ助成金は、実際に使えるかどうかは“申請の正確さ”次第です。
「制度理解はしていたけど、形式ミスで不支給になった」という例は少なくありません。
事前に注意点を押さえ、準備・確認・スケジューリングを徹底することで、制度活用の成功率を大きく高められます。

成功確率を高めるコツ・チェックリスト

賃上げ助成金の申請は、制度の趣旨に合致していてもちょっとしたミスや準備不足で不支給となるケースもあります。

ここでは申請成功の確率を上げるための実践的なコツやチェック項目を紹介します。

制度の正確な理解だけでなく、準備・資料・外部支援の活用まで含めて対策を講じることが重要です。

賃上げインパクトのシミュレーションと根拠提示

申請にあたって、賃上げの影響を数字で可視化し、計画性を示すことが非常に重要です。

たとえば、人件費の上昇が売上や生産性にどのように連動するか、どのような経営判断に基づいて賃上げを実施するのかを説明できると、助成金担当機関からの信頼度が高まります。

具体例としては以下のような資料が有効です。

人件費増加分と売上見込みの推移表
賃金引き上げ後の業務改善計画書
過去の評価制度や成果連動型給与制度の実績

こうした裏付け資料があると、単なる「形式的な賃上げ」ではなく、中長期的な経営戦略としての賃上げであることが伝わります。

制度併用可否・最も有利な制度選択

「キャリアアップ助成金」や「業務改善助成金」など、賃上げに関連する複数の制度が存在しますが、制度によって併用可否や助成額、申請タイミングが異なります。

たとえば、

・キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース) – 非正規社員の待遇改善に重点
・業務改善助成金 – 事業場内最低賃金を上げることが条件
・人材開発支援助成金(人材育成+賃上げ) – 研修+賃上げの複合施策向け

企業の状況によって最も有利な選択肢は変わるため、制度の組み合わせや戦略的活用が求められます。

社労士・助成金支援事業者の活用法

制度の複雑さや書類の煩雑さから、専門家のサポートを受けるのも有効な手段です。

特に以下のような場面で社労士や専門業者が力を発揮します。

書類作成のチェックと整備
最適な助成金制度の選定
助成金申請スケジュール管理
労務体制・社内規程の整備提案

報酬が発生する場合もありますが、不支給リスクを回避し、スムーズに受給するための投資と捉えると非常に有効です。

成功率を高めるには「事前の根拠ある準備」が鍵

助成金の審査では、実行可能性・継続性・裏付けのある計画性が問われます。
制度の選択から書類整備、シミュレーション、外部専門家の活用まで、事前の準備を徹底すれば受給率は大きく向上します。
企業にとって無駄のない申請を実現するため、自社に合った助成金活用戦略を早期に構築しましょう。

よくある疑問と回答(FAQ)

賃上げ助成金について調べていると、「うちも対象になるの?」「すでに賃上げしてしまったけど申請できる?」といった現場ならではの素朴な疑問が出てくるはずです。

ここでは、よくある質問に対してわかりやすく回答をまとめました。

すでに賃上げした後でも申請できるか?

原則として、助成金の多くは「計画届の提出前に実施された賃上げ」は対象外となります。

たとえば、キャリアアップ助成金の「賃金規定等改定コース」では、提出前に賃金改定を行ってしまうと助成対象にならない可能性が高くなります。

ただし、一部例外的に遡及が認められるケースもあるため、制度ごとの要項や支給要件を詳細に確認することが重要です。

テナント・賃貸事業場でも対象になるか?

助成金の対象は法人形態や事業形態によらず、要件を満たせばテナントや賃貸物件でも対象になります。

ただし、「事業場単位」での助成制度(例:業務改善助成金)では事業場の最低賃金や独立性が問われるため、同一建物内で複数事業者が混在している場合は注意が必要です。

また、「みなし大企業」扱いとされる条件(資本関係や親会社の有無など)にも留意する必要があります。

賃上げ後すぐ辞めたら返還される?

基本的には、賃上げ対象労働者が一定期間以上継続して在籍することが要件になっているため、早期離職があった場合には不支給・一部返還となる可能性があります。

たとえば、助成金の中には「賃金改定後、6か月以上の継続雇用が必要」と定められているものがあり、この期間を満たさずに退職した場合、該当者分の助成は受けられないケースが一般的です。

雇用の安定性も申請時に評価されるポイントなので、制度を活用する際は、労働者との合意形成と職場環境の整備も重要です。

申請前に「よくある落とし穴」を回避しよう

よくある疑問には、制度の根幹に関わる重要なポイントが多く含まれています。
事前の確認不足や思い込みによるミスを防ぐためにも、公式要項の精読や専門家への相談を早い段階で行いましょう。
疑問点をクリアにすることで、安心して申請準備を進めることが可能になります。

賃上げ助成金活用の第一歩は「正確な理解」から

賃上げ助成金は、中小企業が人材確保と生産性向上を両立するための強力な制度です。

しかし、申請には複雑な要件や書類、タイミングの制約が伴い、正確な理解なしに進めると不支給や返還のリスクもあります。

制度を活用するには、まず「自社が対象となるかどうか」を見極め、賃上げ計画の根拠づけや適切な申請スケジュールを組み立てることが重要です。

また、キャリアアップ助成金や業務改善助成金といった関連制度との併用可否や有利な制度選択も成功のカギとなります。

さらに、制度に精通した社労士や支援事業者の協力を得ることで、書類作成や要件確認、実施報告などの負担を軽減し、確実な受給に近づけることができます。

申請を検討している企業は、「とりあえず動き出す」のではなく、制度全体を俯瞰しながら冷静に準備を始めることが肝要です。

まずは最新の制度情報を確認し、自社の状況に照らして具体的な行動計画を立てるところからスタートしてみてください。

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