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賃上げで使える助成金は?2026年の対象制度・支給額・申請方法を解説

従業員の賃金を引き上げる企業は、条件を満たせば国の助成金を利用できる可能性があります。

2026年度は厚生労働省が「賃上げ支援助成金パッケージ」を設けており、生産性向上、非正規雇用労働者の処遇改善、人材育成などを通じた賃上げを支援しています。主な制度は次のとおりです。

賃上げの目的主な助成金
事業場内最低賃金を引き上げる業務改善助成金
パート・有期雇用労働者の基本給を引き上げるキャリアアップ助成金
研修・リスキリングと処遇改善を行う人材開発支援助成金
賃金規定・人事評価制度を整える人材確保等支援助成金
労働時間改善とあわせて賃上げする働き方改革推進支援助成金

たとえば、事業場内最低賃金を50円以上引き上げ、あわせて設備投資を行う場合は業務改善助成金が候補です。

一方、パートや有期雇用労働者の基本給を3%以上引き上げる場合は、キャリアアップ助成金の賃金規定等改定コースを確認します。

助成金ごとに対象労働者、賃上げ幅、申請時期は異なります。

この記事では、2026年に賃上げで利用できる主な助成金、支給額、対象条件、選び方、申請時の注意点まで解説します。

目次

2026年に賃上げで使える主な助成金

賃上げ支援の助成金は、「給与を上げれば一律で支給される制度」ではありません。

誰の賃金を、どのような理由で引き上げるかによって利用できる制度が変わります。

最低賃金を引き上げるなら業務改善助成金

業務改善助成金は、事業場内最低賃金を引き上げるとともに、生産性向上につながる設備投資等を行う中小企業・小規模事業者を支援する制度です。

2026年度は、

  • 50円コース
  • 70円コース
  • 90円コース

の3コースです。

助成上限額は、賃上げ額と対象労働者数などによって異なり、90円コースでは最大600万円となります。

POSレジ、自動釣銭機、業務用設備など、生産性向上につながる設備投資と賃上げをセットで行いたい事業者に向いています。

パート・有期雇用労働者の賃上げならキャリアアップ助成金

非正規雇用労働者の基本給を引き上げる場合は、キャリアアップ助成金の「賃金規定等改定コース」が候補です。

対象となるのは、

  • 有期雇用労働者
  • 短時間労働者
  • 派遣労働者

などです。

2026年度は、有期雇用労働者等の基本給に関する賃金規定を3%以上増額改定し、実際に適用した場合に助成されます。

賃上げ率によって、1人あたりの助成額も変わります。

人材育成と賃上げを進めるなら人材開発支援助成金

従業員へ職業訓練やリスキリングを実施する場合は、人材開発支援助成金があります。

2026年度も、

  • 人材育成支援コース
  • 人への投資促進コース
  • 事業展開等リスキリング支援コース

などが実施されています。

訓練経費や訓練期間中の賃金の一部が助成されるほか、一定の賃金要件を満たすことで助成内容が有利になる場合があります。

単純な給与引き上げではなく、

スキルアップ
↓
生産性向上
↓
処遇改善

という流れで賃上げを行いたい企業に向いています。

賃金制度そのものを整えるなら人材確保等支援助成金

賃金規定や人事評価制度を整備し、従業員の定着につなげる場合は、人材確保等支援助成金の「雇用管理制度・雇用環境整備助成コース」が候補です。

対象となる制度には、

  • 賃金規定制度
  • 諸手当等制度
  • 人事評価制度
  • 職場活性化制度
  • 健康づくり制度

などがあります。

中小企業が賃金規定制度を導入する場合、基本助成額は40万円で、賃金要件を満たした場合は50万円となります。複数制度を導入した場合の上限は80万円、賃金要件を満たす場合は100万円です。

労働時間改善と賃上げを進めるなら働き方改革推進支援助成金

残業時間の削減や年次有給休暇の取得促進などとあわせて賃上げを行う場合は、働き方改革推進支援助成金も候補です。

2026年度も、

  • 労働時間短縮・年休促進支援コース
  • 勤務間インターバル導入コース
  • 業種別課題対応コース

などが実施されています。

賃上げだけを目的とした制度ではありませんが、労働時間改善や生産性向上と組み合わせて職場環境を改善したい中小企業は確認しておきましょう。

業務改善助成金で最低賃金を引き上げる

賃上げ助成金の中でも代表的なのが、業務改善助成金です。

特に、事業場内最低賃金に近い水準で働く従業員の賃上げを検討している場合に重要です。

2026年度は50円・70円・90円コース

2026年度は、事業場内最低賃金の引き上げ額によって、

コース賃上げ額
50円コース50円以上
70円コース70円以上
90円コース90円以上

に分かれます。

前年までの30円・45円・60円・90円コースとは異なるため、古い情報を使わないよう注意が必要です。

賃上げと設備投資をセットで行う

業務改善助成金は、単に従業員の時給を上げれば支給される制度ではありません。

基本的には、

事業場内最低賃金の引き上げ
+
生産性向上につながる設備投資等

を行います。

たとえば、

  • POSレジ
  • 自動釣銭機
  • 業務用機械
  • 生産設備
  • 作業効率化システム

などを導入し、業務時間や作業負担を減らしながら賃上げを行うケースです。

助成上限額は賃上げ額と対象人数で変わる

2026年度の助成上限額は、

  • 50円コース:30万~130万円
  • 70円コース:40万~300万円
  • 90円コース:90万~600万円

です。

上限額は賃上げする労働者数などによって変わります。

「設備費が600万円なら600万円もらえる」という意味ではありません。

従業員がいない事業者は対象外

業務改善助成金は、従業員の賃金引き上げを支援する制度です。

そのため、自分一人だけで事業をしている個人事業主など、従業員がいない場合は利用できません。

賃上げ対象となる従業員がいることが前提です。

2026年度は申請期限が地域によって異なる

2026年度の申請受付は9月1日から始まっています。

締切は、

事業場所在地の地域別最低賃金発効日の前日
または
2026年11月30日

のいずれか早い日です。

都道府県によっては9月中に締め切られるため、利用を考えている場合は早めに確認しましょう。

キャリアアップ助成金で非正規社員を賃上げする

パートやアルバイト、有期契約社員などの基本給を引き上げる場合は、キャリアアップ助成金の賃金規定等改定コースを確認します。

業務改善助成金とは対象者や賃上げ方法が異なります。

基本給の賃金規定を3%以上引き上げる

2026年度は、有期雇用労働者等に適用する基本給の賃金規定等を3%以上増額改定し、その規定を実際に適用した場合に助成されます。

一部の対象者だけではなく、職種別・雇用形態別など一定の区分ごとに改定することも可能です。

賃上げ率が高いほど1人あたりの助成額が増える

2026年度の中小企業における1人あたり助成額は次のとおりです。

基本給の引き上げ率中小企業の助成額
3%以上4%未満4万円
4%以上5%未満5万円
5%以上6%未満6.5万円
6%以上7万円

たとえば10人の有期雇用労働者について基本給を5%以上6%未満引き上げた場合、単純計算では65万円が助成額の目安です。

就業規則・賃金規定の整備が必要

このコースでは、実際に給与を上げるだけでなく、対象となる賃金規定等を増額改定することが重要です。

そのため、

  • 就業規則
  • 賃金規程
  • 雇用契約
  • 賃金台帳

などの整備が必要になります。

支給申請時には、制度上の賃上げが実際に行われたことを確認できる書類をそろえます。

職務評価や昇給制度の導入で加算される場合がある

職務評価の手法を活用して賃金規定を改定した場合、中小企業では1事業所あたり20万円の加算があります。

また、有期雇用労働者等を対象とする昇給制度を新たに設けた場合も、中小企業では20万円が加算されます。

一時的な賃上げではなく、継続的な賃金改善を進めたい企業は確認しておきましょう。

人材開発支援助成金で研修と賃上げを進める

従業員の給与水準を上げるためには、スキルアップや生産性向上が必要になるケースもあります。

そのような場合に利用できるのが人材開発支援助成金です。

職業訓練やリスキリングを支援する

人材開発支援助成金は、事業主が従業員へ職務に関連する訓練を行った場合に、

  • 訓練経費
  • 訓練期間中の賃金

などの一部を助成します。

2026年度も複数のコースが実施されています。

デジタル人材・新事業向け研修にも使える

人への投資促進コースでは、デジタル人材や高度人材を育成する訓練、定額制研修などが支援対象です。

事業展開等リスキリング支援コースでは、新規事業や事業転換に必要な知識・技能を習得する訓練が対象になります。

たとえば、

新しいITシステム導入に合わせて従業員を研修する
↓
担当できる業務範囲が広がる
↓
処遇を改善する

といった取り組みです。

一定の賃金要件で助成内容が有利になる場合がある

人材開発支援助成金では、コースや訓練内容によって、一定の賃金要件などを満たした場合に助成内容が加算・拡充される仕組みがあります。

2026年度の申請様式にも、賃金要件等確認シートが用意されています。

単に研修費を補助してもらうだけではなく、その後の処遇改善まで計画することが重要です。

原則として訓練前の手続きが必要

人材開発支援助成金では、訓練を開始してから申請するのではなく、事前に必要な計画届などを提出することが基本です。

「すでに研修を受けたから後から助成金を申請する」という使い方ができない場合があります。

研修会社へ申し込む前に、2026年度の支給要領を確認しましょう。

人材確保等支援助成金で賃金制度を整える

個別の従業員だけでなく、会社全体の賃金制度や人事制度を整えたい場合は、人材確保等支援助成金が候補になります。

賃金規定制度の導入は中小企業40万円

雇用管理制度・雇用環境整備助成コースでは、中小企業が新たに賃金規定制度を導入する場合、40万円が助成されます。

一定の賃金要件を満たした場合は50万円です。

単に給与を上げるだけではなく、賃金ルールを制度として整備したい企業に向いています。

人事評価・諸手当制度なども対象

対象となる制度には、

  • 諸手当等制度
  • 人事評価制度
  • 職場活性化制度
  • 健康づくり制度

などがあります。

賃上げとあわせて評価制度を見直すことで、従業員が処遇改善を実感しやすい仕組みを作れます。

複数制度導入の場合は上限80万円

雇用管理制度を複数導入した場合の助成上限は80万円です。

賃金要件を満たす場合は、上限100万円となります。

賃金規定だけでなく、人事評価や手当などを総合的に改善したい場合は、個別制度ごとの助成額と上限を確認しましょう。

離職率の低下にも取り組む必要がある

人材確保等支援助成金は、単なる給与引き上げ支援ではありません。

魅力ある職場づくりを進め、人材確保・定着につなげることが目的です。

そのため、賃金制度を導入するだけでなく、一定の離職率低下などの目標を満たすことが求められる場合があります。

賃上げ助成金は誰の賃金を上げるかで選ぶ

賃上げ助成金を選ぶときは、金額の大きさから探すより、「誰の賃金をどう上げたいか」で判断すると分かりやすくなります。

賃上げの内容主な助成金設備投資
事業場内最低賃金を50円以上引き上げる業務改善助成金原則必要
パート・有期社員の基本給を3%以上引き上げるキャリアアップ助成金不要
研修・リスキリング後に処遇改善人材開発支援助成金不要
賃金規定・評価制度を整備人材確保等支援助成金制度による
労働時間改善と賃上げを組み合わせる働き方改革推進支援助成金取組内容による

最低賃金層なら業務改善助成金

時給水準が低い従業員について、50円・70円・90円と大きく賃上げする場合は業務改善助成金を優先して確認します。

設備投資も同時に必要になる点が特徴です。

非正規社員ならキャリアアップ助成金

パートやアルバイト、有期契約社員などの基本給を3%以上引き上げる場合はキャリアアップ助成金が中心です。

設備投資を行わず、賃金規定そのものを改定する場合はこちらが使いやすくなります。

人材育成とセットなら人材開発支援助成金

単純な時給アップではなく、

研修によって生産性を高め、その結果として待遇改善を進めたい

という場合は人材開発支援助成金を確認します。

賃金制度全体を見直すなら人材確保等支援助成金

全従業員の給与体系や評価ルールを見直したい場合は、人材確保等支援助成金が候補です。

個々の賃金額だけでなく、会社全体の制度設計を改善するための助成金と考えると分かりやすいでしょう。

賃上げ助成金を申請する流れ

助成金によって手続きは異なりますが、基本的には賃上げを実施する前から準備することが重要です。

対象労働者と現在の賃金を確認する

まず、

  • 正社員
  • 有期契約社員
  • パート
  • アルバイト

など、誰を賃上げするのか確認します。

そのうえで、

  • 現在の基本給
  • 時間給
  • 事業場内最低賃金
  • 雇用保険加入状況
  • 雇用期間

などを整理します。

制度によって対象労働者の条件が異なるためです。

利用する助成金の要件と申請時期を確認する

次に、

  • 何円・何%の賃上げが必要か
  • いつまでに申請するか
  • 事前計画が必要か
  • 設備投資が必要か

を確認します。

特に業務改善助成金は地域ごとに申請期限が異なるため、注意が必要です。

就業規則・賃金規定・計画書を整える

キャリアアップ助成金や人材確保等支援助成金では、賃金規定や就業規則の整備が重要です。

実態として給与を上げていても、制度上必要な規定が整っていなければ対象にならない場合があります。

変更内容・適用日・対象者を明確にしておきましょう。

要件に沿って賃上げや設備投資を実施する

申請・計画認定など必要な手続きを終えたら、制度の要件に沿って取り組みを実施します。

業務改善助成金では、交付決定後に設備投資等を行う必要があります。

賃上げや設備購入の順番を誤らないよう注意してください。

賃金台帳などをそろえて支給申請する

取り組み実施後は、

  • 賃金台帳
  • 出勤簿
  • 就業規則
  • 賃金規定
  • 雇用契約書
  • 設備の領収書

などを提出して支給申請します。

制度ごとに必要書類が異なるため、申請時だけでなく取り組み実施中から証拠書類を保存しておきましょう。

賃上げ助成金を利用するときの注意点

助成金を使うためだけに先に賃上げを行うと、かえって対象外になることがあります。

制度ごとの申請順序を確認することが重要です。

賃上げ後では申請できない制度がある

助成金によっては、賃上げや制度変更の前に計画書の提出が必要です。

たとえば、

先月給与を上げたから、その分を助成金で補填したい

という申請ができるとは限りません。

取り組み前に対象制度を確認しましょう。

制度ごとに対象労働者と賃上げ幅が違う

同じ「賃上げ」でも、

業務改善助成金
→ 50円・70円・90円以上

キャリアアップ助成金
→ 基本給3%以上

という違いがあります。

1つの賃上げ条件をすべての助成金へ当てはめないようにしましょう。

助成金は人件費増加分を全額補填する制度ではない

たとえば年間100万円人件費が増えたとしても、その100万円がそのまま助成されるわけではありません。

制度ごとに、

  • 定額支給
  • 設備投資費への助成
  • 研修経費への助成

など支援方法が異なります。

助成金は、継続的な賃上げによる負担を一部軽減する制度として考えましょう。

補助金や税制による賃上げ支援とは分けて考える

賃上げ支援には、厚生労働省の助成金以外にも、

  • ものづくり系補助金
  • 省力化投資系補助金
  • デジタル化・AI導入系補助金
  • 賃上げ促進税制

などがあります。

ただし、これらは主に設備投資・生産性向上・税負担軽減を通じて賃上げを後押しする制度です。

従業員の賃金や処遇改善そのものを支援する助成金
と
設備投資等によって賃上げ原資を作る補助金

は分けて考えた方が、自社に合う制度を選びやすくなります。

2026年の賃上げ助成金は賃上げする対象から選ぼう

2026年度も、従業員の賃上げを支援する複数の助成金があります。

代表的な選び方は、

事業場内最低賃金を引き上げる
→ 業務改善助成金

パート・有期社員の基本給を引き上げる
→ キャリアアップ助成金

研修・リスキリングと処遇改善を進める
→ 人材開発支援助成金

賃金規定・人事評価制度を整える
→ 人材確保等支援助成金

労働時間改善とあわせて賃上げする
→ 働き方改革推進支援助成金

です。

特に2026年度は、業務改善助成金が50円・70円・90円の3コースとなっています。

また、キャリアアップ助成金の賃金規定等改定コースでは、非正規雇用労働者の基本給を3%以上引き上げることで、賃上げ率に応じて中小企業なら1人4万円から最大7万円が支給されます。

賃上げ助成金を探すときは、

①誰の賃金を上げるのか
↓
②何円・何%上げるのか
↓
③設備投資や研修も行うのか
↓
④事前申請が必要か
↓
⑤賃金規定・就業規則を変更するか

という順番で確認すると、自社に合った制度を選びやすくなります。

賃上げ後に制度を探すのではなく、給与改定や設備投資を行う前に2026年度の最新要件を確認して準備を進めることが重要です。

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