業務改善助成金は、事業場内最低賃金を引き上げるとともに、生産性向上につながる設備投資などを行う中小企業・小規模事業者を支援する制度です。
2026年度は、50円・70円・90円の3コースが設けられています。助成率は、引上げ前の事業場内最低賃金が1,050円未満なら4/5、1,050円以上なら3/4です。
助成上限額は、賃金の引上げ額や対象労働者数によって変わります。最大600万円ですが、すべての事業者が600万円を受け取れるわけではありません。90円コースで10人以上の賃金を引き上げるなど、所定の条件を満たす必要があります。
また、設備を購入するだけでは対象になりません。賃金引上げと、生産性向上につながる設備投資等を組み合わせて実施することが基本です。
2026年度は申請時期や対象条件にも変更があります。設備購入や賃上げを先に進めると対象外になる場合があるため、申請手順を確認してから取り組みましょう。
業務改善助成金とは?

業務改善助成金は、賃金引上げと生産性向上を同時に進める中小企業・小規模事業者を支援する助成金です。
事業場内最低賃金を一定額以上引き上げ、そのための原資確保につながる設備投資等を行った場合に、対象経費の一部が助成されます。
最低賃金の引上げと生産性向上の設備投資を支援する助成金
業務改善助成金では、主に次の2つをセットで行います。
- 事業場内最低賃金を一定額以上引き上げる
- 生産性向上や労働能率改善につながる設備投資等を行う
たとえば、これまで人手で行っていた作業を機械化し、作業時間を短縮したうえで従業員の賃金を引き上げるケースです。
単に最低賃金を上げただけ、または設備を購入しただけでは、基本的な制度要件を満たしません。
2026年度は50円・70円・90円の3コース
2026年度は、事業場内最低賃金をいくら引き上げるかによって、
- 50円コース
- 70円コース
- 90円コース
の3つに分かれています。
過年度にあった30円・45円・60円などのコースとは異なります。
以前の制度内容を確認している場合は、2026年度の条件へ読み替えず、最新のコースを基準にしてください。
最大600万円だが支給額は賃上げ額と対象労働者数で決まる
業務改善助成金の最大額は600万円です。
ただし、
90円賃上げしたら600万円もらえる
という意味ではありません。
助成上限額は、
- 賃金引上げ額
- 賃金を引き上げる労働者数
- 特例事業者に該当するか
によって変わります。
さらに、実際の助成額は対象経費に助成率を掛けた金額と、コース別上限額のいずれか低い方となります。
業務改善助成金の助成率・助成上限額

2026年度の助成率は、引上げ前の事業場内最低賃金によって決まります。
事業規模が小さいから自動的に高い助成率になるわけではありません。
事業場内最低賃金1,050円未満なら助成率4/5
賃金引上げ前の事業場内最低賃金が1,050円未満の場合、助成率は4/5です。
たとえば支給対象経費が200万円なら、
200万円×4/5=160万円
が助成額の計算上の目安になります。
ただし、コースと対象労働者数に設定された上限額が160万円より低ければ、その上限額までです。
1,050円以上なら助成率3/4
引上げ前の事業場内最低賃金が1,050円以上の場合、助成率は3/4です。
対象経費が200万円なら、
200万円×3/4=150万円
が計算上の金額となります。
助成率を確認するときは、賃上げ後ではなく、引上げ前の事業場内最低賃金を基準にします。
50円コースは最大130万円
50円コースは、事業場内最低賃金を50円以上引き上げる場合に利用します。
対象労働者数によって助成上限額が変わり、最大130万円です。
大きな設備投資を行ったとしても、50円コースでは設定された上限を超えて助成されません。
70円コースは最大300万円
70円コースでは、事業場内最低賃金を70円以上引き上げます。
対象労働者数に応じて上限額が設定され、最大300万円です。
50円コースより賃金引上げ幅が大きいため、助成上限額も高くなっています。
90円コースは最大600万円
90円コースは、事業場内最低賃金を90円以上引き上げる場合のコースです。
所定の条件を満たせば、最大600万円まで助成されます。
ただし、最大600万円は10人以上の労働者について賃金を引き上げる場合など、限られた条件で利用できる上限です。
少人数の事業場が90円引き上げただけで600万円になるわけではありません。
10人以上区分を利用できるのは特例事業者
助成上限額には「10人以上」の区分がありますが、すべての事業者が利用できるわけではありません。
一定の特例事業者に該当する場合に利用できます。
そのため、自社の助成上限額を確認するときは、
- 何円引き上げるか
- 何人の賃金を引き上げるか
- 特例事業者に該当するか
の順に確認すると分かりやすくなります。
業務改善助成金の対象事業者・条件

業務改善助成金を利用するには、企業規模だけでなく、事業場内最低賃金や対象労働者などの要件を満たす必要があります。
中小企業・小規模事業者が対象
業務改善助成金の対象は、中小企業・小規模事業者です。
法人だけでなく、要件を満たす個人事業主も対象になり得ます。
一方、大企業が一般的な設備投資に利用する制度ではありません。
業種ごとに中小企業の範囲が異なるため、自社が対象規模に含まれるか確認してください。
事業場内最低賃金が2026年度改定後の地域別最低賃金未満であること
2026年度は、対象となる事業場の範囲が見直されています。
事業場内最低賃金が、2026年度改定後の地域別最低賃金額未満となる事業場が対象です。
過年度では「地域別最低賃金との差が50円以内」といった条件がありましたが、2026年度は同じ条件ではありません。
古い要件をそのまま適用しないようにしてください。
事業場内最低賃金を50円以上引き上げる
2026年度は、最低でも50円以上の引上げが必要です。
50円・70円・90円のいずれかのコースを選択し、そのコース以上の金額を引き上げます。
たとえば現在の事業場内最低賃金が1,050円で、50円コースを利用するなら、1,100円以上へ引き上げる必要があります。
なお、賃上げを行う時期にも条件があります。
申請前に自己判断で賃上げを済ませるのではなく、2026年度の手続きに沿って実施してください。
賃金を引き上げる労働者は雇用保険被保険者が対象
2026年度は、賃金引上げ人数として算定する対象労働者について、雇用保険被保険者であることが求められます。
また、事業場内最低賃金の引上げ対象については、雇入れ後6か月を経過している労働者の賃金を引き上げることが基本です。
短期間だけ雇用した従業員を追加し、助成上限額を増やすような利用はできません。
生産性向上につながる設備投資等を行う
賃金引上げとあわせて、生産性向上や業務効率化につながる設備投資等を行います。
重要なのは、
その設備によって、どの業務がどのように効率化されるか
を説明できることです。
古い設備を新しくするだけではなく、作業時間削減や処理能力向上などにつながる取組が求められます。
業務改善助成金の対象経費

業務改善助成金では、生産性向上や労働能率改善につながる設備・サービス等が助成対象となります。
ただし、通常の事業運営費や職場を快適にするだけの設備まで幅広く対象になるわけではありません。
機械設備・POSシステムなど生産性向上につながる設備が対象
代表的な対象経費として、
- 生産設備
- 業務用機械
- POSシステム
- 自動化設備
- 省力化機器
- 業務効率化システム
などがあります。
たとえば、手作業で行っていた工程を自動化する設備や、レジ業務を効率化するPOSシステムなどです。
対象になるかどうかは設備名だけで決まりません。
導入前より業務効率や労働生産性が向上することが必要です。
コンサルティングや教育訓練も対象になり得る
業務改善助成金は、機械設備だけを対象とする制度ではありません。
生産性向上につながる、
- 経営コンサルティング
- 業務フロー改善
- 人材育成
- 教育訓練
なども対象になる場合があります。
ただし、通常の顧問契約や業務と関係の薄い研修が広く対象になるわけではありません。
賃金引上げの原資を生み出すための生産性向上につながる内容であることが前提です。
PC・タブレット等は物価高騰等の特例事業者のみ対象が拡大される
パソコン、スマートフォン、タブレットなどは、通常の申請で自由に購入できる設備ではありません。
一定の物価高騰等要件に該当する特例事業者では、対象経費の範囲が拡大される場合があります。
「業務用のパソコンだから対象になる」と判断せず、特例要件を満たしているか確認してください。
一般的な自動車や職場の快適化だけを目的とする設備は対象外
2026年度は、一般的な自動車について過年度と同じ特例が使えるわけではありません。
特殊用途自動車などを除き、通常の車両購入を前提に申請しない方が安全です。
また、
- エアコン
- 送風機
- 空調服
など、単に職場環境を快適にすることを目的とする設備も対象外となります。
暑さや不快感の軽減だけではなく、生産性向上との直接的な関係が必要です。
業務改善助成金の特例事業者とは?

業務改善助成金には、一定の条件を満たす事業者を対象とした特例があります。
特例の種類によって利用できる内容が異なるため、ひとまとめに考えないことが重要です。
事業場内最低賃金1,050円未満なら10人以上区分を利用できる
賃金要件による特例では、事業場内最低賃金が1,050円未満の事業場が対象になります。
この特例に該当すると、助成上限額の「10人以上」区分を利用できます。
たとえば90円コースで10人以上の賃金を引き上げる場合、条件を満たせば最大600万円の上限が適用されます。
最大額を利用したい場合は、まず特例事業者に該当するか確認してください。
利益率が前年同期より3%ポイント以上低下すると対象経費も拡大される
もう一つが物価高騰等要件による特例です。
申請前の最近6か月間のうち任意の3か月平均の利益率と、前年同期の利益率を比較し、一定以上低下している場合などが対象です。
この特例では、通常より対象経費の範囲が広がる場合があります。
パソコンやタブレットなどを対象経費として検討する場合も、この要件を確認する必要があります。
賃金要件の特例と、物価高騰等要件による経費拡大は別の仕組みです。
業務改善助成金の申請期間・期限

2026年度の業務改善助成金では、申請期間と賃金引上げのタイミングが重要です。
全国一律で11月30日まで申請できるわけではありません。
2026年度の受付は9月1日から開始
2026年度の申請受付は、9月1日から開始されています。
設備導入や賃金引上げを予定している場合は、申請開始後できるだけ早く準備する方が安全です。
地域別最低賃金の発効日によっては、申請できる期間が短くなります。
申請期限は地域別最低賃金発効日の前日または11月30日の早い方
申請期限は、
- 各都道府県の2026年度地域別最低賃金発効日の前日
- 2026年11月30日
のいずれか早い日です。
そのため、自社所在地によって実質的な申請期限が異なります。
「全国一律で11月30日まで」と考えず、自社所在地の地域別最低賃金発効日を確認してください。
賃金引上げは申請後から地域別最低賃金発効日前日までに行う
2026年度では、賃金引上げの実施時期にも注意が必要です。
原則として申請後に賃金を引き上げます。
また、地域別最低賃金の改定に合わせて賃金を上げる場合でも、発効日当日ではなく、その前日までに実施する必要があります。
申請前や発効日当日に賃上げした場合、助成対象として認められない可能性があります。
設備導入・支払い・賃上げは原則1月31日までに完了する
交付決定後は、所定の事業完了期限までに、
- 設備の納品
- 支払い
- 賃金引上げ
などを完了します。
2026年度は原則として、交付決定年度の1月31日までが事業完了期限です。
一定の条件では延長が認められる場合がありますが、最初から延長を前提にしない方が安全です。
設備の納期も含めてスケジュールを組みましょう。
業務改善助成金の申請方法

業務改善助成金は、先に設備を買ってから補助金を申請する制度ではありません。
賃金引上げ計画と設備投資計画を作成し、交付決定後に事業を実施します。
1.事業場内最低賃金と申請コースを確認する
最初に、自社の事業場内最低賃金を確認します。
そのうえで、
- 50円
- 70円
- 90円
のどのコースを利用するか決めます。
あわせて、賃金を引き上げる対象者数と、助成率が4/5か3/4かを確認します。
2.賃金引上げ計画と設備投資計画を作成する
次に、
- 誰の賃金をいくら上げるか
- どの設備を導入するか
- 現在どの業務に時間がかかっているか
- 設備導入によってどう改善するか
を整理します。
単に設備の仕様を書くのではなく、生産性向上との関係を示すことが重要です。
3.管轄の都道府県労働局へ交付申請する
申請書類をそろえたら、事業場所在地を管轄する都道府県労働局へ交付申請します。
申請時には、賃金引上げ計画や事業実施計画、見積書などの提出が必要です。
申請した時点では、まだ設備を購入・契約してはいけません。
4.交付決定後に賃上げと設備投資を実施する
交付決定を受けた後、認められた事業計画に沿って賃金引上げや設備導入を進めます。
設備の仕様や導入内容を大きく変更する場合は、自己判断で進めないようにしてください。
変更承認などの手続きが必要になることがあります。
5.事業完了後に実績報告・支給申請を行う
設備導入や賃上げが完了したら、実績報告を行います。
この段階では、
- 設備を導入したこと
- 代金を支払ったこと
- 賃金を引き上げたこと
- 申請内容どおりに事業を実施したこと
を確認できる資料が必要です。
審査後に助成額が確定し、助成金が支給されます。
つまり、設備代金を先に助成金で支払える仕組みではありません。一定期間は自社で資金を負担する必要があります。
6.Jグランツによる電子申請も利用できる
業務改善助成金は、Jグランツによる電子申請にも対応しています。
電子申請にはGビズIDプライムが必要です。
都道府県によって申請フォームが分かれているため、事業場所在地に対応する申請先を確認してください。
紙申請と電子申請のどちらを利用する場合でも、申請期限や交付決定前着手禁止のルールは同じです。
業務改善助成金を利用するときの注意点

業務改善助成金は、賃金引上げと設備投資を正しい順序で進めることが重要です。
対象条件を満たしていても、タイミングを間違えると助成対象外になる可能性があります。
交付決定前に設備を購入・契約しない
最も注意したいのが、設備の発注時期です。
交付申請を出しただけでは、設備を購入してよい段階ではありません。
交付決定前に、
- 契約
- 発注
- 購入
- 納品
などを進めると、対象経費として認められない可能性があります。
設備業者には、助成金を利用する予定であることを伝え、正式発注の時期を調整してください。
賃金引上げを申請前に実施しない
2026年度は、申請後に賃金引上げを行うことが基本です。
以前の制度や特例を参考にして、
先に賃金を上げて後から申請すればよい
と判断しないようにしてください。
特に地域別最低賃金の改定時期と重なるため、申請日と賃上げ日を事前に整理する必要があります。
単なる設備更新や職場環境改善は対象にならない
古くなった設備を新しいものに取り替えるだけでは、業務改善助成金の目的を満たさない場合があります。
また、
- エアコンを新しくする
- 職場を快適にする
- 備品を買い替える
といった取組も、生産性向上との関係を示せなければ対象になりません。
設備導入によって作業時間や必要人数がどの程度減るのかまで考えておきましょう。
地域別最低賃金改定前に申請期限を確認する
2026年度は、地域別最低賃金の発効日前日が申請期限に関係します。
そのため、「11月30日まで時間がある」と思っていると、実際にはすでに申請期限を過ぎていることがあります。
利用を検討した時点で、
- 自社所在地の地域別最低賃金
- 2026年度の発効日
- 実際の申請期限
を確認してください。
業務改善助成金は賃上げ額・人数・設備投資をセットで確認しよう

業務改善助成金は、事業場内最低賃金を引き上げながら、生産性向上につながる設備投資等を行う中小企業・小規模事業者を支援する制度です。
2026年度は、
- 50円コース
- 70円コース
- 90円コース
の3コースに分かれています。
助成率は、引上げ前の事業場内最低賃金が1,050円未満なら4/5、1,050円以上なら3/4です。
助成上限額は賃金引上げ額と対象労働者数によって異なり、条件を満たせば最大600万円となります。
ただし、最大額だけで利用可否を判断するのは避けましょう。
申請するときは、
- 自社の事業場内最低賃金を確認する
- 50円・70円・90円のどのコースを利用するか決める
- 賃金を引き上げる対象人数を確認する
- 生産性向上につながる設備投資を計画する
- 申請期限内に交付申請する
- 交付決定後に賃上げと設備導入を実施する
という順番で進めることが基本です。
2026年度は制度内容だけでなく、申請受付期間や対象事業場の条件も変更されています。
過年度の30円・45円・60円コースや、古い助成率基準をそのまま参考にせず、申請時点の最新条件を確認しましょう。
