障害のある方が安心して働ける環境を整えることは、企業にとっても重要な社会的責任のひとつです。
しかし、実際の現場では「介助者をどう確保するか」「手話や要約筆記など、専門的なサポートをどう手配するか」など、課題は少なくありません。
そんなときに活用したいのが「障害者介助等助成金」です。
この制度は、障害のある労働者に対して必要な支援を行う人材の配置やサポート体制の構築にかかる費用を助成するもので、実務的な支援を通じて働く環境の整備を後押ししてくれます。
「うちの会社も対象になるのだろうか?」「どんなケースで助成が受けられるのか?」と疑問に思う方に向けて、本記事では障害者介助等助成金の制度概要から対象となる支援内容、申請方法、実際の活用例までをわかりやすく解説していきます。
「職場の介助体制を整えたい」「障害者の雇用を前向きに支援したい」と考える企業担当者の方に、ぜひ知っていただきたい内容です。
制度を上手に活用することで、サポート人材の配置が現実的な選択肢になるはずです。
障害者介助等助成金とは?概要と対象範囲

障害のある方が職場でスムーズに働き続けるためには、物理的なバリアの解消だけでなく、人的な支援体制の整備が欠かせません。
その支援を実現するための一手として、多くの企業が注目しているのが「障害者介助等助成金」です。
この助成金は、職場における介助者の配置や、手話通訳者・要約筆記者などの支援者を手配する費用を国が助成する制度で、企業にとっても金銭的・制度的な後押しになります。
まずはこの制度の背景や目的、そしてどのような支援が対象になるのかを詳しく見ていきましょう。
▼助成金の目的と制度の位置づけ
障害者介助等助成金は、厚生労働省の障害者雇用施策の一環として設けられており、「障害者がその能力を十分に発揮し、継続して就労できるよう支援すること」を目的としています。
障害のある方が働くうえでは、移動や排泄などの日常的な身体介助を必要とするケースや、聴覚障害などによって情報伝達支援が必要なケースもあります。
これらを企業がすべて自社負担で対応するのは現実的には難しいこともあり、公的にその負担を軽減し、雇用の継続性を高める仕組みとして助成金制度が機能しています。
この制度は、「障害者雇用安定助成金」の中の「介助等助成金」コースの一つとして位置づけられており、特に以下のような支援に対して助成が行われます。
・職場介助者の配置・委嘱
・手話通訳や要約筆記者の手配
・職場復帰支援員の配置
・障害者相談窓口担当者の配置
いずれも、障害者本人の職務遂行を支援する「人的・環境的サポート」に重点を置いており、形式的な整備ではなく実際に役立つサポート体制の整備を後押しするものです。
▼主な支援内容と助成対象者の分類
障害者介助等助成金で支援される内容は、大きく以下のように分類されます。
1. 職場介助者の配置・委嘱に対する助成
身体障害や視覚・聴覚障害などの理由により、日常業務において補助が必要な障害者に対し、職場で介助を行う人材を雇用または委託する場合に助成が受けられます。
たとえば、トイレへの移動補助、業務内容の一部補助などが該当します。
2. 手話通訳・要約筆記者の委嘱に対する助成
聴覚障害のある方が業務上のコミュニケーションをスムーズに行えるよう、手話通訳者や要約筆記者を配置・委嘱した場合に助成されます。
会議や研修など、情報保障が必要な場面での利用が中心です。
3. 職場復帰支援・障害者相談担当者の配置
長期離職後の復職支援や、障害者が抱える業務上の悩み・トラブルへの対応を行う社内相談窓口担当者の配置も対象となります。
精神障害や発達障害など、継続的な支援が求められるケースでは、こうした人的支援が特に有効です。
なお、支援対象となる障害者は障害者手帳の所持者に限定されていません。
医師の診断書や意見書などで障害の状態が明確に示されていれば対象になる場合もあります。
また、重度障害者・中高年齢障害者・精神障害者など、支援の必要性が高い層に対しては助成額が増額されることもあるため、自社で雇用している障害者の属性に応じた制度活用が可能です。
制度理解が“使える助成金”への第一歩
障害者介助等助成金は、「制度があることは知っているけど、詳細がよくわからない」「うちの会社に合うのかどうか判断できない」といった理由で、活用されていないケースも多く見られます。
しかし実際には、小規模事業者や中堅企業でも活用しやすく、障害者雇用のハードルを下げる現実的な支援策として機能しています。
特に、人的サポートが必要な場面での助成対象が広いこと、障害の程度や雇用形態を問わず利用可能な柔軟性がある点は、他の助成制度と比較しても大きな魅力です。
対象となる障害者の具体例

障害者介助等助成金を検討する際、まず最初に確認すべきポイントは「自社で雇用している、あるいはこれから採用する障害者が制度の対象となるかどうか」です。
この助成金は、障害の種類や程度にかかわらず、「職場において特別な支援が必要な状況」であれば幅広く適用される可能性があるのが特徴です。
ここでは、具体的にどのような障害者が対象となりうるのかを、支援の種類ごとに詳しく見ていきましょう。
職場介助者の配置・委嘱が対象とする障害者とは?
「職場介助者の配置」または「委嘱」が対象とするのは、身体的な支援を必要とする障害者です。たとえば以下のようなケースが該当します。
・肢体不自由(車椅子利用など)
→トイレ移動や職場内の移動補助、書類の整理補助などが必要な場合
・視覚障害
→点字や読み上げによる情報補助、移動時の誘導が必要な場合
・重度の内部障害(心臓や呼吸器の障害など)
→業務中に体調管理のサポートが必要なケース
これらの障害者は、日常的に業務を行う上で第三者のサポートがなければ就労継続が難しい場合があります。
そのため、企業が専任の介助者を雇用・委託する場合に助成が行われる仕組みになっています。
なお、介助者の配置・委嘱は、週当たりの就労時間や頻度に応じて助成額が変動するため、利用前には計画的な配置設計が重要です。
手話通訳・要約筆記等の支援対象
聴覚障害者に対する支援としては、手話通訳者や要約筆記者の手配に対する助成が用意されています。
支援対象となる障害者には、以下のようなケースがあります。
・ろう者・難聴者で、口頭での会話が困難な場合
・聴覚過敏や聴覚処理に困難を抱える発達障害者(状況によっては対象になる可能性あり)
・音声情報に代わる手段(手話・文字情報)を必要とする障害者
特に、社内会議や電話応対、顧客対応など、リアルタイムでの情報伝達が発生する場面では、通訳者や筆記者のサポートが必要不可欠になります。
これらを社外の専門家に委託することも対象となるため、社内にスキルを持った人材がいない場合でも制度を活用しやすい点がメリットです。
また、常時ではなくスポット的に支援が必要な場合も対象になるため、「会議のときだけ」「研修のときだけ」など、柔軟に利用できる制度設計となっています。
幅広い障害種別を対象とする支援
障害者介助等助成金の魅力の一つは、対象となる障害の範囲が非常に広いことです。
典型的な身体障害や視覚・聴覚障害のほか、以下のような障害者も対象となり得ます。
・精神障害・発達障害(例:うつ病、双極性障害、自閉スペクトラム症、ADHDなど)
・知的障害(作業手順の理解やコミュニケーションに支援が必要なケース)
・内部障害(腎臓・心臓・呼吸器等の障害による就業制限)
これらの障害は、外見からは分かりづらく、支援の必要性が見過ごされがちですが、実際には職場内で適切な支援がなければ長期雇用が困難になる場合も多いです。
たとえば、精神障害者や発達障害者に対しては、職場内に相談窓口を設置し、定期的な面談や体調管理を行う支援体制を整えることで、継続雇用が実現しやすくなるため、配置助成金などの活用が有効です。
また、「障害者手帳がない場合」でも、医師の意見書などで障害の状態が明らかになれば助成対象になる場合もあります。
これにより、見落とされがちな潜在的な支援ニーズにも制度的に応えられる体制が整っているのです。
多様な就労ニーズに応じた柔軟な支援設計を
障害者介助等助成金は、単に「障害者であれば助成される」という単純な制度ではありません。
むしろ、「何を支援すればその人が働きやすくなるか?」という視点に基づいて制度が構築されている点が大きな特徴です。
企業としては、まずは障害のある従業員が日常業務で困難を感じている場面を具体的に洗い出し、そのサポートに必要な人材や設備、体制が何かを考えることが重要です。
そこから逆算して、助成金を活用すれば、費用負担を抑えつつ最適な支援体制を構築できる可能性があります。
特例的な対象ケース|重度訪問介護を利用する障害者

障害者介助等助成金の支給対象には、通常の職場内支援だけでなく、より日常生活に密着した支援を必要とする重度障害者への対応も含まれます。
その中でも特例的に対象とされているのが、「重度訪問介護サービス」を利用している障害者です。
この制度は、特に重い障害のある方が就労を継続するために、職場でも生活支援レベルの手厚いサポートが必要になるケースを想定しており、通常の介助配置とは異なる視点での支援を可能にしています。
ここでは、どのような要件を満たす障害者がこの特例の対象となるのか、そして対象となる障害の種類について詳しく見ていきましょう。
▼重度訪問介護サービス等利用者の要件
「重度訪問介護」とは、障害者総合支援法に基づく居宅介護サービスの一種で、重度の肢体不自由者や重複障害者などが、常時介助を必要とする場合に提供されるサービスです。
日常生活における介護だけでなく、外出時や就労時の支援も含まれる点が特徴です。
障害者介助等助成金では、この重度訪問介護を「日常的に利用していること」が一つの大きな要件となります。
具体的には以下のような条件を満たす必要があります。
・障害支援区分が区分6(最重度)または区分5以上であること
・厚生労働省が定める「重度訪問介護の対象基準」に合致していること
・就労にあたっても、職場における介助が日常生活レベルで必要と認められる状態であること
たとえば、就労中にトイレや食事、医療的ケアなどを随時行う必要がある場合には、単なる業務補助だけでは対応しきれず、訪問介護のような包括的支援が必要になるケースがあります。
このような場合には、職場における重度訪問介護的支援を含む助成対象として、通常の職場介助者配置とは別枠での助成措置が認められます。
▼支援対象に含まれる障害の種類
この特例の対象となる障害は、以下のような「重度かつ日常的な支援を必要とする障害」に限定されます。
・重度の肢体不自由(例:四肢麻痺、人工呼吸器装着者など)
・重複障害(例:視覚障害+肢体不自由、知的障害+身体障害など)
・医療的ケアが必要な内部障害(例:心疾患・呼吸器疾患等で日中も支援が必要なケース)
・筋ジストロフィーなどの進行性難病による重度障害
これらの障害は、単なる業務補助だけでは対応が難しく、職場でも生活支援と同等の対応が求められるため、特例措置としての助成が設けられています。
また、重度訪問介護の支給決定を受けていること自体が、国から「継続的な支援が必要」と認定されている証明となるため、企業側にとっても制度活用の際の判断基準として明確です。
ただし、注意点として、この助成を受けるには通常の職場介助助成とは異なる書類や申請手順が必要になるため、あらかじめ管轄のハローワーク等と相談のうえで準備を進めることが推奨されます。
重度障害者への支援こそが制度の本質を体現する
重度訪問介護を利用する障害者に対する助成は、「働くことが困難とされてきた人にこそ、働く選択肢を開く」という障害者雇用政策の理念を色濃く反映した制度です。
企業にとっては、対応の難しさや負担感を感じる部分もあるかもしれません。
しかし、この制度をうまく活用すれば、重度障害者の就労という高いハードルを、制度的・経済的に下支えすることが可能になります。
また、重度障害者の雇用実績は、企業の社会的責任(CSR)やダイバーシティ推進の観点でも大きなアピールポイントとなり得ます。
この特例的な支援枠を理解し、適切に活用することで、「どんな人も安心して働ける職場環境づくり」に一歩近づけるはずです。
対象者の確認ポイントと申請準備へのヒント
障害者介助等助成金の申請において、まずクリアすべきなのが「支援の必要性がある障害者を正しく見極めること」です。
助成対象は限定的であり、雇用主が単に「支援が必要そう」と感じただけでは不十分で、制度上の要件を満たすかどうかを正確に把握することが欠かせません。
このセクションでは、対象者となり得る従業員の「雇用の継続性」や「障害特性への配慮」の観点からの確認方法を解説するとともに、支援が必要かどうかを判断するための簡易的なチェックリストの考え方をご紹介します。
助成金申請を成功させるための準備の第一歩として、対象者特定の精度を高めるための視点を提供します。
「雇用の継続性」「障害特性に応じた配慮要件」の確認方法
障害者介助等助成金を申請するには、以下のような観点で対象者の状況を把握・整理する必要があります。
1. 雇用の継続性
この助成金の前提は「支援を行うことで、障害者が安定して継続的に雇用されることが期待できる」状態であることです。
つまり、短期のアルバイトや試用期間中だけの一時的な雇用ではなく、一定期間以上の継続雇用が見込まれているかが重要になります。
たとえば、
・雇用契約期間が6ヶ月以上ある
・就労意欲が高く、企業としても継続的な雇用を望んでいる
・雇用形態が常用型(契約社員や正社員等)
こうした要素が整っていれば、「雇用の継続性」はクリアとみなされやすくなります。
2. 障害特性に応じた配慮の必要性
もう一つの重要な判断基準は、「障害の特性により、日常的または定期的な支援・介助が必要であること」です。
ここでいう支援には、移動の補助、作業手順の口頭補足、書類代筆、手話通訳、要約筆記などが含まれます。
この条件を確認するためには、
・障害者本人の意向や希望
・医師の意見書や支援機関の就労アセスメント
・現場での支援実態の有無(介助をしている社員の存在など)
を総合的に見て判断する必要があります。特に事業主と障害者本人との間で支援内容に齟齬がないかを確認しておくことが、後の申請段階でのトラブル回避につながります。
支援が必要なケースを判別するためのチェックリスト案
助成金の申請準備においては、対象者となる障害者が制度要件に該当するかを一目で判断できるようにするための「社内チェックリスト」の整備が有効です。
以下はその一例です。
【対象確認チェックリスト(例)】
確認項目 | 判定 | 備考 |
障害者手帳の有無 | □あり □なし | 身体・知的・精神等の区分も確認 |
障害の程度(等級) | □1〜2級 □3〜4級 □5級以上 | 高度支援が必要かを判定 |
現在の雇用形態 | □正社員 □契約社員 □短期雇用 | 継続性の見通しを加味 |
支援の種類 | □移動補助 □手話通訳 □要約筆記 □その他________ | 日常的な必要性の有無 |
介助の頻度 | □毎日 □週数回 □月1回以下 | 日常性が強いほど対象になりやすい |
支援者の配置状況 | □専任あり □兼務 □未配置 | 新たな委嘱・配置の必要性を判断 |
支援がない場合の業務支障度 | □大きい □ややある □問題なし | 就労維持に支障が出るなら支援必要 |
このようなチェックリストを活用することで、事業主と人事・労務担当者が共通認識を持ちやすくなり、制度利用の判断が迅速かつ正確に行えるようになります。
また、事前にこのような情報を整理しておくことで、助成金申請時の書類作成もスムーズになります。
対象者の理解が制度活用の第一歩
障害者介助等助成金を最大限に活用するためには、まず「誰を支援対象として申請できるか」を明確に把握することが何より重要です。
そのためには、制度要件に則った観点から雇用の継続性と障害特性に基づいた配慮の必要性を丁寧に確認する必要があります。
今回ご紹介したチェックリストのようなツールを活用することで、支援が必要か否かを社内で客観的に判断できる体制づくりが可能となります。
結果として、制度の適正な利用が進み、障害者本人にとっても安心して働き続けられる環境の整備へとつながっていきます。
このような視点を取り入れた準備こそが、企業と障害者双方にとって「納得感のある支援体制」を構築する鍵になるでしょう。
申請から提出までの基本フローと期限スケジュール

障害者介助等助成金を円滑に活用するためには、各助成金の手続きの流れと期限を正しく理解することが不可欠です。
とくに新規の支援配置を行う場合や、継続措置を申請する際には、準備期間や申請締切を見落とすと助成が受けられないケースもあるため注意が必要です。
このセクションでは、申請の基本ステップと、代表的な3つの申請パターンに応じたスケジュールの考え方を解説します。
職場介助者・手話通訳者等の新規配置に関する申請方法
新たに職場介助者や手話通訳者を配置する場合、まず配置の必要性に関する社内判断が求められます。
その上で、以下の流れに従って申請手続きを進める必要があります。
1.事前相談(任意)
ハローワークや独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)に対し、支援対象者の状況や配置の必要性について相談できます。
制度適用の可否を事前に確認することで、後のトラブルを防ぐ効果があります。
2.支給申請書の提出
対象となる障害者の雇用状況や支援内容に関する書類を整え、配置開始後速やかに申請書を提出します。
一般的には配置開始から2か月以内が提出期限の目安です。
3.審査・支給決定
提出書類の内容をもとに審査が行われ、適正と認められた場合に助成金が支給されます。
審査には1か月〜数か月かかることがあるため、余裕を持った申請計画が重要です。
なお、助成対象となる職場介助者や通訳者には、業務内容に即した研修や経験が求められるケースもあるため、事前の人選・育成も準備段階で考慮する必要があります。
職場介助者の継続配置に関する助成申請の進め方
すでに職場介助者等を配置しており、継続して支援が必要と判断される場合は、継続措置に関する申請を行うことができます。
新規申請とは一部異なる手順とタイミングがあるため、以下のポイントを押さえておきましょう。
・支給期間満了の前に継続申請を行う必要がある
たとえば、1年間の支援が終了する場合、満了の約1か月前には継続に向けた申請書を提出するのが理想です。
・継続理由の明示が求められる
障害者本人の状態に加えて、職場内での業務状況や、引き続き支援が不可欠である合理的理由を明記する必要があります。
・中断のない支援体制を確保する
継続申請が遅れると、一時的に支援が途切れたり、助成金が不支給となるリスクもあるため注意が必要です。
このように、継続配置に関する申請では、「切れ目ない支援体制」と「事前準備」が成功の鍵となります。
障害者相談担当者の配置・職場復帰支援の申請ステップ
障害者雇用をより安定的に行うために、「障害者相談窓口担当者の配置助成金」や「職場復帰支援助成金」の活用を検討するケースも増えています。
これらの申請フローも基本的には類似していますが、相談体制の整備や職場復帰計画の策定が重要な要件となります。
・対象者の選定と役割の明確化
相談窓口担当者に関しては、職場内での相談対応能力や守秘義務の理解がある人材の選定が求められます。
・就業規則や相談体制の整備
制度上の要件として、担当者の役割が明記された就業規則や相談ルールの文書化が必要です。
・復職支援の場合は、復職計画書の作成が必須
職場復帰支援助成金においては、医師の診断書やリハビリ計画と連動した復職計画書の提出が求められるため、医療機関や労務管理者との連携が重要です。
これらの助成金は、配置や制度整備そのものに対する支援であるため、計画性と組織体制の明確化が重視される傾向にあります。
早めの準備と適切なフロー理解が申請成功のカギ
障害者介助等助成金は、多様な障害者雇用のニーズに応えるための実用的な支援制度ですが、助成対象の範囲や手続きの流れが細かく分類されているため、誤解や申請漏れが発生しやすい点に注意が必要です。
とくに、新規配置と継続措置ではフローが異なり、それぞれに応じた準備と期限管理が求められます。
制度の目的や支援対象、社内での役割明確化を意識しながら、適切なタイミングで申請を進めることで、最大限の助成効果が得られるでしょう。
現場から見た“本当に助かる”障害者介助等助成金の使い方

障害者介助等助成金は、単なる介助者の人件費を補うための制度ではありません。
企業の現場における障害者雇用の“実効性”を高め、職場全体の共生環境を整備するためのツールとして捉えることで、その価値は何倍にも広がります。
このセクションでは、現場で本当に助かったとされる助成金の活用事例や、制度の真価が発揮された使い方を紹介します。
▼介助者の配置だけでなく、業務設計やマニュアル整備にも使える
多くの企業は、障害者介助等助成金=介助者の人件費支援と考えがちです。
しかし、制度の適用範囲には業務設計や支援マニュアルの整備といった“職場環境の構築”も含まれています。
たとえば、視覚障害のある従業員を採用したある事業所では、単にガイド役の介助者をつけるだけでなく、音声案内システムを導入した業務フローを新たに設計。
その設計支援にかかった外部専門家のコンサルティング費用も、間接的に助成の対象となる範囲に含まれ、コスト負担を抑えることができました。
さらに、マニュアル整備の例では、知的障害や発達障害のある方が作業内容を理解しやすくするために、「やることリスト」や「作業動画」を作成。
このような教材制作にも助成金を活用できるケースがあり、実際に離職率の低下や職場の理解向上につながったと報告されています。
制度を単なる人員配置ではなく、業務全体のアクセシビリティを高めるための“改善投資”と捉える視点が求められます。
▼従業員全体の意識改革を助成で後押しする事例
障害者支援の質は、介助者1人の能力や対応力だけでなく、周囲の理解と協力の姿勢に大きく左右されます。
そのため、現場では「従業員全体への障害理解研修」や「対応ガイドラインの共有」といった取り組みも重要視されています。
実際にある企業では、全従業員を対象としたユニバーサルマナー研修を実施し、その一部を助成金でまかなうことに成功しました。
障害特性への理解や支援方法の基本を学ぶことで、介助者だけに支援を任せるのではなく、職場全体での支援体制が形成されたのです。
また、「職場介助者」の名目で配置された人材が、支援対象者へのサポートだけでなく、チーム内の橋渡し役として、円滑なコミュニケーションを促す存在になっている例もあります。
このように、助成金を活用することで“場の雰囲気”そのものを変えるきっかけを作ることが可能です。
▼予算消化のための申請ではなく、“職場改善”という視点での活用
助成金制度には予算枠があるため、「とりあえずもらっておこう」という姿勢で申請が進められることもあります。
しかし、現場の実感として本当に助かったと語られるのは、“職場の課題を明確にし、それを制度でどう解決するか”という視点で助成を活用したケースです。
たとえば、ある中小企業では、支援対象者が異動になったことで新しい部署での業務に支障が出る恐れがありました。
そこで、異動先の業務内容に合わせた支援体制をゼロから設計し直す際、助成金を申請して一時的に外部支援者を導入。環境が整うまでの“つなぎ”として制度をうまく活用しました。
このように、制度を柔軟に捉え、「何が職場に必要なのか?」という視点から申請することで、一時的なコスト支援ではなく、組織力そのものを底上げする機会として助成金が活用されているのです。
制度を“補助”ではなく“戦略”として活かす視点を
障害者介助等助成金は、単なる資金補助という側面を超えて、職場の在り方そのものを再設計する“ツール”としての活用価値があります。
介助者の配置にとどまらず、業務マニュアルの整備、従業員の意識改革、さらには異動や組織変更時の体制再構築まで、柔軟な使い方が可能です。
本当に助かる助成金の使い方とは、予算を消化することではなく、職場の未来に向けた“投資”として制度を活用する視点を持つことです。
現場の課題を拾い上げ、その解決策として制度を取り入れることで、障害者も健常者も共に働きやすい職場環境の実現が見えてくるはずです。
制度の理解から実践へ——障害者介助等助成金で“できる”ことを形に

障害者介助等助成金は、障害のある方が安心して職場で活躍するための支援体制を整えるための制度です。
特定の職場介助者や通訳者の配置だけでなく、障害特性に応じた配慮の設計や、チーム全体の理解促進など、職場全体を支える施策の実行にも活用できる柔軟性のある助成制度です。
また、対象となる障害種別や支援内容の幅も広く、「自社にはまだ関係ない」と思っていた企業が実は対象だったというケースも少なくありません。
とくに、重度訪問介護を利用する障害者や、復職支援が必要な従業員への対応においても活用の余地が広がっています。
この記事を通じて、「うちの職場も対象になりそうだ」「制度を使えば、無理なく介助体制を構築できるかもしれない」と感じていただけたなら、それが第一歩です。
必要なのは、“配慮”を“制度”で実現する行動力です。
まずは、自社の状況に照らして、対象要件や支援範囲を一つひとつ丁寧に確認してみましょう。
そして制度を、コストの軽減策ではなく、“共に働く場”を実現する戦略的なツールとして活用していくことをおすすめします。