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知らなかったでは済まない!雇用調整助成金の不正受給と法的ペナルティ

新型コロナウイルスの影響により、多くの企業が活用した「雇用調整助成金」。

しかしその一方で、制度への理解不足や不適切な運用によって“不正受給”とみなされるケースが急増しています

「うちは悪意なんてない」「まさか不正だとは思わなかった」

そう語る企業ほど、申請ルールを正確に把握できていないことが多いのが現実です。

この記事では、雇用調整助成金における不正受給の定義や発覚のきっかけ、実際の事例、そして企業が取るべき対策について詳しく解説します。

申請前にチェックしておくべきポイントを押さえ、意図せぬ違反を防ぐための第一歩を踏み出しましょう。

目次

雇用調整助成金の不正受給とは何か?

雇用を守るための制度として、多くの企業に活用されてきた「雇用調整助成金」。

しかし、その恩恵の裏で、不正受給のリスクや摘発が相次いでいることをご存じでしょうか?

このセクションでは、雇用調整助成金における不正受給の具体例や、うっかりやってしまう違反パターンについてわかりやすく解説します。

「知らなかった」では済まされない落とし穴を未然に防ぐために、今こそ制度の本質とリスクを理解しましょう。

制度の概要と本来の目的

雇用調整助成金は、経済的な理由で事業活動の縮小を余儀なくされた企業が、労働者の雇用維持を目的に利用できる国の支援制度です。

本来の趣旨は、事業主が労働者を解雇せず、休業や教育訓練などで対応した際の賃金の一部を補助することにあります。

たとえば新型コロナ禍では、企業の雇用維持に貢献する重要な支援策となりました。

しかし、この制度の恩恵を不正に利用する企業も一部に存在します。

補助金の不正受給は、労働行政の信頼を損ねるだけでなく、適切に利用している企業にとっても不利益をもたらす深刻な問題です。

不正受給と見なされる行為の代表例

雇用調整助成金における不正受給には、いくつか典型的なパターンがあります。

実際には休業していないのに、休業実績を偽って申請
実在しない労働者を対象として助成金を申請
給与を支払っていないのに支払ったように装う
同一労働者の実態を二重に報告し、過大に受給する

このような行為は、意図的かつ悪質であるとされ、刑事罰や助成金の返還命令の対象になります。

悪質度が高い場合、社名公表や詐欺罪による告発にまで発展するケースも少なくありません。

うっかりやってしまいがちな違反パターン(例:休業実態の虚偽報告など)

一見すると悪意がないように見えるケースでも、不正受給と判断される可能性はあります。

労働者の休業時間と就労時間が曖昧で、報告が実態と乖離している
記録の保管が不十分で、監査で裏付けができない
助成金の対象となる賃金を誤って多く計上してしまった
外注スタッフやパートなど、対象外の労働者を含めてしまった

こうした“うっかりミス”も、結果として不正受給に該当するリスクがあります。「知らなかった」では済まされないケースが多いため、正確な運用と記録の保管が不可欠です。

見落としがちな支援制度を活用し、導入コストを賢く削減しよう

雇用調整助成金は、企業と従業員を守るための強力な支援制度です。
しかし、その利用には正しい知識と慎重な運用が欠かせません
制度を誤って利用した結果、悪意がなかったとしても不正受給と判断され、返還やペナルティの対象になる可能性があります。

特に、休業の実態と報告内容が一致しない・記録が曖昧・対象外の従業員を含めてしまったといった“うっかりミス”は、多くの企業で起こりうる事象です。
日々の業務が忙しい中でも、助成金を適切に活用するためには社内でのルール整備と記録管理、定期的な見直しが重要となります。

不正受給が発覚する主なきっかけ

雇用調整助成金の不正受給は、制度を悪用した意図的なケースだけでなく、「知らず知らずのうちにルールに抵触していた」という事例も少なくありません。

こうした違反は、必ずしも即座に発覚するわけではなく、ある“きっかけ”を契機に調査が入り、結果として不正が露見するという流れが一般的です。

ここでは、不正受給が明るみに出る典型的なきっかけについて解説します。

◎内部通報・従業員の告発によるケース

不正受給が発覚する最大のきっかけの一つが、従業員や元従業員による内部通報です。

実際、助成金の申請内容と現場での実態が食い違っていた場合、それに気付いた従業員が労働局や厚生労働省などに告発することで、調査が開始されるケースが多くあります。

一例として、助成金の申請では「休業中」とされた従業員が実際には通常勤務していた場合、その矛盾を当該従業員自身が感じ、外部へ相談・通報したことがきっかけで発覚した事案もあります。

特に雇用調整助成金は、従業員の勤怠実態が核心となる制度のため、“内部の人間しか知り得ない事実”が通報のカギとなるのです。

また、厚労省は不正の兆候に関して匿名での通報も受け付けており、通報者の保護も図られているため、リスクの高い制度利用をしている企業にとっては、常に“見られている”という自覚が必要です。

◎助成金受給後の監査や報告書提出義務との関係

雇用調整助成金の受給後には、事後的な審査や報告義務が課されます。

これに対する対応がずさんだったり、整合性のない報告が提出されたりした場合、調査が入り不正の発覚につながることがあります。

具体的には、以下のようなケースが引き金になります。

報告された休業日数と実際の勤怠データに大きな乖離がある
実績報告書に誤りが多く、再三の修正を求められている
雇用調整助成金の対象とならない業務を従業員が行っていた証拠(メールやSNSの投稿など)が提出される

また、受給金額が大きいほど、後日監査の対象となる可能性は高くなります

そのため、申請時点では審査が通っても、後日まで適切な証憑や記録を残しておかないと、不正とみなされるリスクがあるのです。

中には、助成金の支給決定後、定期報告を怠ったり、誤った資料を提出したりして「故意の隠ぺい」と判断される例もあります。

透明性と誠実さが企業経営の信頼を守る

助成金制度は本来、経営難に直面した企業が従業員の雇用を守るための公的支援です。
しかし、その制度を利用するには、厳格なルールと運用責任が伴います
不正受給が発覚する多くのきっかけは、内部からの告発や提出書類の不備といった、「日頃の管理の甘さ」が露呈した瞬間です。

雇用調整助成金を安全に活用するためには、従業員との信頼関係、正確な実務運用、そして必要な書類の整備と保管が不可欠です。
企業として一時的な利益に目を向けるのではなく、長期的な信頼構築を意識することが、結果として事業の安定と継続につながります。

雇用調整助成金で不正が発覚した場合のペナルティ

雇用調整助成金を不正に受給した場合、企業は重大な法的・財政的リスクを負うことになります。

単なる返還にとどまらず、刑事罰や将来的な公的支援の利用停止にまで及ぶ可能性もあるため、決して軽視できません。

本章では、不正が発覚した際に企業が直面する主なペナルティについて解説します。

助成金の返還義務と加算金(最大3倍)

不正が判明した場合、当然ながら助成金の全額返還が求められます。

これに加え、悪質性の程度に応じて最大で支給額の3倍にあたる加算金(違約金)が課されることもあります。

たとえば、100万円の不正受給があった場合、最大で300万円の返還義務が発生するということです。

さらに、返還までに時間がかかれば、延滞金や利息が加わることもあります。

この加算金制度は、単なる不正利益の回収にとどまらず、抑止力としての意味合いが強く、意図的な虚偽申請や偽装工作に対して厳しく適用される傾向があります。

刑事罰(詐欺罪)や企業名の公表の可能性

不正受給が詐欺罪(刑法246条)に該当すると判断された場合、懲役10年以下の刑事罰が科される可能性があります。

これは法人に対してだけでなく、関与した代表者や経理担当者など個人にも刑事責任が及ぶケースが多く、前科がつくことにもなりかねません。

さらに、厚生労働省は悪質な不正受給事案について企業名を公表する方針を打ち出しており、企業の社会的信用を大きく損なうリスクがあります。

実際に過去の事例では、従業員数名規模の企業から上場企業まで、企業名や内容が詳細に公開されるケースがありました。

他の補助金・助成金の利用停止リスク

雇用調整助成金の不正が発覚すると、他の補助金・助成金制度の利用資格が一定期間停止される可能性もあります。

たとえば、事業再構築補助金や人材開発支援助成金など、経済産業省や厚生労働省管轄のさまざまな制度に影響が及ぶことがあります。

自治体や商工会議所などが提供する支援策でも、申請時に「過去に不正受給歴がないこと」が条件とされることが多く、公的支援の道が閉ざされるリスクは非常に深刻です。

中長期的な経営戦略にも影響を及ぼすため、企業としては慎重な対応が求められます。

不正はリスクが高すぎる。制度の正しい理解と運用を

雇用調整助成金の不正受給が発覚した場合、単なる返還にとどまらず、加算金・刑事罰・企業名の公表・補助金利用停止といった重いペナルティが課されます。
これらは企業経営にとって取り返しのつかないダメージとなり得ます。

「知らなかった」「少しぐらいなら」という油断や軽い判断が、大きな損失につながることを肝に銘じ、制度の適正な運用を心がけることが何より重要です。
助成金の活用は正しい知識と管理体制のもとで行いましょう。

実際にあった不正受給の事例

雇用調整助成金の不正受給は、制度の趣旨を損なう重大な違反行為です。

近年では、事業規模や業種を問わず、多数の企業で不正受給が発覚しており、ニュースにもたびたび取り上げられています。

ここでは、実際に公表された典型的な不正受給の事例を3つ紹介し、再発防止への注意喚起を促します。

◎従業員に休業を命じていないのに申請したケース

これは最も基本的な不正の一つでありながら、意外と見落とされやすい典型例です。実際には従業員を通常通り働かせていたにもかかわらず、「休業扱い」として申請を行った事例が多数存在します。

たとえば、小売業を営むある企業では、店舗の営業を継続しながら一部従業員の勤務時間を短縮したにもかかわらず、全日休業と見なして助成金を受給。その後、従業員の証言とタイムカード記録により実態が発覚し、数千万円の返還命令と加算金、さらには社名の公表に至りました。

このようなケースでは、「人手不足だから仕方なく勤務させた」といった事情があるにせよ、制度の適用対象外である限り不正受給と見なされる点に注意が必要です。

◎シフト調整で実働していたのに虚偽申告したケース

勤務実態をごまかす形での不正も後を絶ちません。特に、パートやアルバイトなど時間帯が不規則な労働形態においては、出勤簿やシフト表の改ざんが行われやすくなります。

たとえば飲食業界では、表向きには「休業期間」として助成金を申請していたにもかかわらず、裏ではランチ営業やテイクアウト業務などを継続していた店舗もあります。

後にレジ記録やPOSデータから営業実績が明らかになり、虚偽申告が発覚。監査の結果、全額返還と加算金の対象となりました。

一見「グレーゾーン」と思われがちな対応であっても、助成金を申請する以上、実態に即した正確な記録・申告が求められるのです。

◎顧問社労士や第三者による関与があったケース

不正受給の中には、事業者自身ではなく社労士や代行業者が主導していた例も少なくありません。

信頼して任せたはずの専門家が、実態と異なる申請書類を作成し、企業に虚偽の説明をしていたというケースです。

実際に、ある中小企業では「助成金を確実に受給できる」と謳った社労士に申請を丸投げしてしまい、後に申請内容の虚偽が発覚。

企業も共犯扱いとなって返還義務・罰則対象となりました。

このような事例から学べるのは、外部に委託する場合でも、内容の確認責任は企業側にあるということです。

「知らなかった」「任せていた」は免責理由になりません。

事例から学ぶ、雇用調整助成金のリスク管理

実際に起きた不正受給のケースは、他人事ではありません。ちょっとした判断ミスや確認不足が、大きなペナルティにつながることもあるのです。

勤務実態と申請内容が一致しているか
第三者に任せすぎていないか
曖昧な運用をしていないか

これらを改めて社内でチェックし、制度を正しく理解・運用する体制の整備が不可欠です。
助成金制度は正しく使えば強力な経営支援ツールですが、誤った活用は信用と資金の両方を失う結果にもなりかねません。

万が一、不備や疑念があれば、早めに社労士や専門機関に相談することをおすすめします。

企業が注意すべき申請時のチェックポイント

雇用調整助成金をはじめとする公的支援制度は、企業にとって経営維持の大きな助けになります。

しかし、申請に関する手続きの誤りや管理不足が思わぬ不正受給とみなされるリスクもあるため、慎重な対応が必要です。

ここでは、助成金申請時に企業が特に注意すべきチェックポイントを解説します。

◎休業実態と記録の整合性確認

申請内容と実際の休業実態が食い違っていると、不正受給と判断される恐れがあります。

・休業命令を出したかどうか、その内容を明確に記録しておくことが重要です。
休業対象者の氏名や部署、休業日などは社内文書やメール、就業規則改訂記録などでエビデンスを残すべきです。
・実際の勤務記録と照らし合わせて整合性を確認しておくことで、監査時のトラブルを回避できます。

特に一部の従業員だけが実働していたり、部門ごとに対応が異なる場合は、その理由や例外処理の記録も必須です。

◎申請書類・タイムカード・給与台帳の保存

助成金の申請時に提出した書類や添付資料は、審査が終了した後も原則5年間は保存義務があります。

・タイムカード・勤怠記録
・給与台帳や支払い証明(振込記録)
・休業通知・社内通達

これらの書類は後の監査で求められることも多く、データで保管する際も改ざん防止の管理が必要です。

特に、申請と異なる勤務時間や支給額が後で発覚すると、虚偽申請と判断されかねません

また、電子申請を行った場合でも、紙媒体で裏付け資料を保存しておくのが望ましいとされています。

◎申請を社労士など外部に任せる場合のリスクと対策

申請業務を社会保険労務士(社労士)や代行業者に依頼するケースも増えていますが、依頼先の対応によっては不正に巻き込まれるリスクも否定できません。

書類作成を丸投げせず、内容を必ず確認・承認する体制を構築しましょう。
社労士とのやりとりはメールや文書で証跡を残し、指示・内容の記録を取ることが重要です。
不明点はそのままにせず、必ず企業自身でもガイドラインや制度内容を理解しておく姿勢が必要です。

過去には、企業側が不正と認識していなかったにもかかわらず、社労士が虚偽申請を主導していたケースも報告されています。

申請責任は最終的には企業にあることを忘れてはいけません。

「知らなかった」では済まされない。企業の自衛が未来を守る

助成金制度は経営を支える心強い仕組みですが、申請ミスや記録不備が「不正」と見なされるリスクも含んでいます。とくに休業実態の記録と書類管理、外部委託時の連携・チェック体制は、不正受給のリスク回避に直結します。
「制度に頼るなら、制度を理解し尽くす」。この姿勢が、企業と従業員の信頼を守るための第一歩と言えるでしょう。

不正受給を疑われたときの対応と相談先

雇用調整助成金の不正受給に関する摘発が相次ぐ中、企業側が「疑われたらどうなるのか」「調査が入ったらどうすべきか」といった不安を抱えるケースも増えています。

悪意のない申請ミスであっても、状況によっては不正とみなされることもあり、冷静な対応が求められます。

ここでは、不正受給を疑われた場合に取るべき初動対応や、相談すべき専門家、自主返還による減免措置の可能性について解説します。

◎調査の通知が来たらどうすべきか

まず重要なのは、調査の連絡があった段階で慌てずに対応することです。

ハローワークや労働局などから調査の通知が来た場合、通常は「実地調査」や「資料提出の要請」が行われます。

いきなり制裁が下るのではなく、状況の確認と説明の機会が与えられます。

この際、求められるのは過去の申請内容と休業実績、労働者の就労記録などの整合性です。

タイムカードや給与明細、シフト表、就業規則などの資料を求められることが多いため、可能な限り正確に保管されているかを即座に確認しましょう。

仮に申請ミスが判明した場合でも、意図的かどうかの違いで対応が変わります

悪質性がなければ、後述する自主返還による是正措置で解決する場合もあります。

◎弁護士・社労士への相談タイミング

調査通知を受けた時点で、すぐに専門家へ相談することを強く推奨します

自社の立場や状況に応じて、労務に強い社会保険労務士や、法的な側面をサポートする弁護士に早期に相談することで、リスクを最小限に抑えた対応が可能です。

とくに以下のような状況に該当する場合は、相談を急ぐべきです。

申請書類に記載ミスや虚偽の可能性がある
実態と異なるシフトや勤怠管理を行っていた疑いがある
顧問社労士など第三者の関与がある
過去に修正申請をしていない

相談時は、事実関係を正確に伝えることが極めて重要です。

意図的でない場合でも曖昧な説明をすると、逆に疑念を深めることになりかねません。

◎自主返還による減免措置の可能性はあるか?

助成金の不正受給が判明した場合でも、自主的に返還を申し出ることで行政側の評価が変わることがあります

これは「自主的な是正」として扱われ、過少請求や悪質性が低いと判断されれば、刑事告発や制裁処分を回避できる可能性もあります。

ただし、自主返還にはタイミングが非常に重要です

調査が進んでからではなく、初期段階で自ら申告することで、真摯な姿勢が伝わります。

過去には、全額返還と追加報告によって告訴を免れた事例もあります。

なお、自主返還を行ったからといって行政指導や返還命令が完全に免除されるわけではありません

あくまで情状酌量の一部として評価されるため、過信は禁物です。

弁護士等のアドバイスを受けながら進めましょう。

疑いを持たれたら冷静に、専門家と連携を

不正受給を疑われた際には、焦らず、事実確認と記録整理を最優先に行うことが肝心です。
調査通知を受けた段階で、速やかに弁護士や社労士と連携し、必要に応じて自主返還などの対応を進めることで、企業としての誠実さを示すことが可能です。

「知らなかった」「ミスだった」では通用しない場面もありますが、適切な初動と誠実な姿勢が、ダメージの最小化につながる可能性も大いにあります
不安を感じたときこそ、早めに信頼できる相談先に助けを求めることが重要です。

雇用調整助成金の“つもり”が招く落とし穴|知らずに不正受給とされるケースとは?

雇用調整助成金は、企業が従業員の雇用を維持するために休業手当を支払った際、その一部を国が補填してくれる制度です。

しかし、「制度を理解していたつもり」「書類を揃えたつもり」が、結果的に不正受給と見なされるリスクをはらんでいることをご存知でしょうか?

制度を悪用する意図はなくとも、申請ミスやルールの誤認によって不正とされるケースが後を絶ちません。

ここでは、知らずに違反とされる“落とし穴”とその背景を具体的に解説します。

◎見逃されがちな「形式的なミス」も不正扱いになる可能性

制度の誤用や記録ミスが、悪意なくしても「不正受給」として扱われることがあります。

たとえば以下のような形式的ミスです。

実際の休業日と申請書類の記載内容にズレがある
タイムカードと給与台帳の整合性が取れていない
休業手当を払っていない従業員についても申請してしまった

これらは企業側の単純な事務ミスであることが多いものの、助成金の審査においては厳格なチェック対象となります。

「間違えた」という理由では済まされず、返還や制裁措置の対象になる場合もあるため、形式面の精度も求められるのです。

◎「知らなかった」では済まされない申請ルールの誤認

雇用調整助成金には細かな申請ルールや要件が定められており、それを正確に理解していないことで不正と見なされる場合があります。

たとえば

労使協定を結ばずに休業を実施した
労働者代表の選出が適正でなかった
申請書の「様式変更」に気づかず旧様式を提出していた

こうしたケースでは、「知らなかった」では通用せず、結果として虚偽申請扱いになることもあります。

企業規模にかかわらず、常に最新の制度情報をキャッチアップする姿勢が求められます。

◎専門家が語る“グレーゾーン”の危険性

社労士や弁護士のあいだでも問題視されているのが、「明確な不正とは言えないが、適切とも言えない」という“グレーゾーン”の存在です。

たとえば

実際には一部業務を行っていたが、形式上は「休業」として処理して申請
雇用契約上、曖昧な立場にあるパート社員も助成対象に含めた
自社で判断して申請内容を変更・修正した

これらは一見合理的な判断にも思えますが、調査が入ると「制度の趣旨を逸脱している」と判断される可能性があります。

グレーゾーンの判断は非常に繊細で、企業単独では適切な判断が難しいため、早めの専門家への相談がリスク回避につながります。

“つもり”申請のリスクは想像以上に大きい

雇用調整助成金は、制度の趣旨を理解し、正確に運用すれば企業の大きな助けとなります。
しかし、「つもりでやっていた」申請ほど、思わぬ落とし穴に陥りやすく、知らぬ間に不正受給とされるリスクを伴います。

形式的なミスも重大な違反に繋がる可能性があるという前提に立ち、制度の最新情報に常にアンテナを張り、必要であれば専門家のサポートを得る姿勢が重要です。
不正の意図がなかったとしても、罰則や返還義務が生じることを念頭に、慎重かつ正確な運用を心がけましょう。

雇用調整助成金の活用と不正受給リスクの全体像を理解しよう

雇用調整助成金は、多くの企業にとって経営の継続を支える重要な制度ですが、その一方で「制度を知らなかった」「ミスをしただけ」では済まされない厳しい現実があります。

正しく活用すれば大きなメリットを得られる一方で、記録不備やルール誤認によって意図せぬ不正受給のリスクを背負う可能性も否定できません。

企業がこの制度を活用する際に押さえるべきポイントとしては、以下が挙げられます。

・申請内容と実態の整合性を常に確認すること
・タイムカード・給与台帳などの記録保存を徹底すること
・外部委託時の責任分担やチェック体制を明確化すること
・少しでも不安な点があれば、早めに社労士や弁護士に相談すること

また、調査通知を受けた場合の初動や、自主返還の選択肢“つもり申請”が不正と判断されるケースについても、制度の本質を理解しておくことが重要です。

制度は「企業を守る盾」であると同時に、「運用次第で刃にもなりうる」という両面性を持っています。

助成金を真に企業の成長と雇用安定につなげるためには、正確な理解と慎重な運用こそが不可欠です。

専門家との連携も視野に入れながら、制度を“正しく、賢く”使いこなしていきましょう。

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