「障害者を雇用したいけれど、職場環境の整備や定着支援に不安がある」「採用後のサポート体制まで含めるとコストがかさむ」
そんな企業の悩みに寄り添う制度が障害者雇用安定助成金です。
この制度は、障害のある方の雇用を一時的な採用支援にとどまらず、定着・活躍の促進までを支援する国の助成金制度で、最大240万円の支給が受けられるケースもあります。
しかも、その支援内容は「短時間勤務から正社員への転換支援」や「職場復帰のフォロー体制整備」「社内研修による理解促進」など、全7種類の支援措置に対応しており、柔軟に活用できるのが特徴です。
この記事では、「障害者雇用安定助成金」の具体的な支給額・対象者・申請手順から、他制度との違いや併用の可否、さらに「制度を通じてやさしい職場づくりを進める視点」までを、法人の人事・総務担当者向けにわかりやすく解説していきます。
「障害者雇用=助成金をもらうこと」だけで終わらせない、戦略的かつ持続可能な活用方法を、ぜひこの機会にご確認ください。
障害者雇用安定助成金とは

障害者の雇用は、単に採用するだけでなく長期的な職場定着と働きやすい環境づくりが不可欠です。
とはいえ、業務や職場環境を調整したり、支援者を配置したりと、企業側の負担が大きくなることもあります。
そうした課題に対応するために設けられているのが「障害者雇用安定助成金」です。
これは、障害のある方の雇用の安定化や職場復帰支援など、継続的な就労サポートを行う企業を経済的に支援する制度です。
障害者雇用安定助成金は、厚生労働省が所管する雇用支援制度の一つで、障害のある方を雇用している企業が職場への定着や働きやすさの改善に取り組む際の費用を助成する制度です。
対象となる措置や支援内容は、単一の取り組みに限定されず、以下のように多岐にわたります。
・短時間労働者の勤務延長支援
・正社員・無期雇用への転換支援
・職場復帰の支援体制整備
・職場支援員の配置
・社内での障害理解促進のための研修費補助
・中高年の障害者の継続雇用への支援
・時間管理・休暇取得など柔軟な勤務体制づくり
これらの支援は、事前に「職場定着支援計画」を作成・提出することで申請可能となります。
つまり、企業がどのような支援を実施するかを明文化した上で取り組み、実行後に助成金が支給される流れです。
制度の対象となる企業には、一定の条件(雇用保険の適用や過去の不正受給歴がないなど)がありますが、特定の業種や企業規模に限定されるものではありません。
中小企業も対象となるため、積極的な活用が期待されています。
また、助成金は原則として措置内容ごとに区分されており、それぞれ支給額・期間が異なります。
支給総額は、措置の種類や対象者(重度障害者か否か等)により変動しますが、年間最大240万円の支給が可能なケースも存在します。
制度の理解が職場改革の第一歩に
障害者雇用安定助成金は、単なる「補助金」ではなく、障害のある方と共に働き続けられる環境を整備するための“仕組みづくり”を後押しする制度です。
支援措置は7種類に分類されており、自社の実情に合った取り組みを選択して導入できる点が特徴です。
この制度を正しく理解し活用すれば、雇用の安定化だけでなく、企業のダイバーシティ推進や社内の意識改革にもつながる可能性があります。
次のセクションでは、具体的にどのような措置が助成対象となり、申請にはどのような手順が必要かについて詳しく見ていきましょう。
支給対象となる措置と受給の流れ概要

障害者雇用安定助成金は、障害のある方が安心して長く働けるようにするための「具体的な支援行動」に対して支給されます。
単に雇用しただけでは対象とはならず、職場内での配慮や体制整備など、一定の措置を実施することが前提条件です。
このセクションでは、助成対象となる7つの支援措置と、申請に必要な流れをわかりやすく整理します。
7つの支援措置の種類
障害者雇用安定助成金では、以下の7つの支援措置を講じた事業主が対象となります。
各項目ごとに条件や支給内容が定められており、複数の措置を組み合わせて申請することも可能です。
1.柔軟な時間管理・休暇取得の促進
障害特性に応じた出勤・退勤時刻の調整や短時間勤務の導入、定期通院のための有給休暇制度の創設など。
労務管理面での柔軟な配慮が対象となります。
2.短時間労働者の勤務時間延長
既に雇用している短時間労働の障害者の所定労働時間を延長し、雇用安定を図った場合に支援されます。
3.正規・無期雇用への転換
有期契約で雇用していた障害者を、正規社員または無期雇用へ転換した場合、一定額が支給されます。
重度障害者への転換にはより高額の支援が用意されています。
4.職場支援員の配置
職場において障害者と上司・同僚との円滑なコミュニケーションを図る支援員を配置した場合、その人件費の一部が助成されます。
5.職場復帰支援
疾病やメンタル不調などにより休職した障害者に対し、段階的な復職支援やサポート体制を構築した場合に適用されます。
6.中高年障害者の雇用継続支援
50歳以上の障害者について、定年後も含めた雇用継続に向けた措置を行った場合に支給対象となります。
7.社内理解の促進
障害者への理解を深めるための社内研修やハンドブック作成などの啓発活動を実施した場合も助成対象となります。
これらの措置は単独でも申請可能ですが、複合的に実施することで職場全体の受け入れ体制が整備され、長期的な定着へとつながります。
「職場定着支援計画」の提出タイミングと申請の基本手順
助成金を受け取るためには、単に措置を講じるだけでなく、事前に「職場定着支援計画」を作成し提出することが大前提となっています。主な流れは以下の通りです。
1.事前準備・対象者の特定
支援措置を講じたい障害者を特定し、雇用契約や勤務形態、障害特性などを把握します。
2.職場定着支援計画の作成
実施する支援措置の内容・実施時期・担当部署などを記載した「職場定着支援計画」を策定します。
この計画が助成金審査の基礎資料となります。
3.計画書の提出(※原則は措置の実施前)
原則として、支援措置の実施前日までに最寄りの都道府県労働局へ提出する必要があります。
遅れると申請が無効になることもあるため要注意です。
4.措置の実施と記録管理
計画に基づいて支援措置を実施し、実施状況や成果を記録します。
支給申請時にこれらの記録が求められます。
5.支給申請の提出
支援措置の実施後、所定の期間内に申請書類と証明資料を提出します。
支給は原則として後払い方式です。
ポイントは「計画の提出は実施前に」「措置の実行と記録を忘れずに」「期限を守る」の3点です。
これらを遵守することで、スムーズに助成金を活用することが可能になります。
措置の理解と正確な計画提出がカギ
障害者雇用安定助成金を活用するうえで最も重要なのは、どのような支援措置が助成対象になるのかを正しく把握し、計画的に実施・申請することです。
7つの支援措置は、単なる雇用の維持にとどまらず、働きやすい職場づくりへの投資でもあります。
また、「職場定着支援計画」の提出をはじめとした申請の流れは、時期・手順・書類において明確なルールがあるため、慎重な対応が必要です。
各支給措置ごとの支給額と仕組み

障害者雇用安定助成金は、実施した支援措置の内容に応じて支給額が異なります。
すべての措置が一律ではなく、「支援の内容」「対象者の属性(重度か否か、年齢など)」「実施期間」によって細かく金額が設定されている点が特徴です。
ここでは、各支給措置ごとにどのような金額が受給できるのか、仕組みとともに具体的に解説していきます。
正規・無期転換の支給額(重度障害者/それ以外)
有期雇用で雇用していた障害者を、正規雇用または無期雇用に転換した場合に支給される金額は以下の通りです。
転換対象 | 支給額(1人あたり) |
重度障害者 | 60万円 |
上記以外(一般障害者) | 40万円 |
この支援は、単なる更新ではなく「雇用形態の明確な転換」が条件となっており、労働契約書などの提出が求められます。
また、転換後の雇用が6か月以上継続されていることも支給要件に含まれます。
勤務時間延長に対する支援額一覧
短時間労働者として雇用されている障害者の週所定労働時間を延長する取り組みに対しても、助成が行われます。
延長後の労働時間 | 支給額(1人あたり) |
週20時間以上30時間未満へ延長 | 20万円 |
週30時間以上へ延長 | 30万円 |
なお、対象となるのは障害者手帳等を保有する短時間雇用労働者で、かつ雇用保険の被保険者要件を満たすことが条件です。
また、勤務時間の延長後も、一定期間その条件で継続雇用されていることが求められます。
職場支援員の配置および職場復帰支援の支給額(月額×期間)
障害者が職場に定着できるように支援員を配置した場合や、休職からの復帰支援を行った場合にも、人件費や支援体制整備の費用を補助する形で助成されます。
【職場支援員の配置】
・月額3万円 × 6か月間(最大18万円)
・対象 – 障害者1人につき支援員1名の体制を原則とし、定着支援や日常の業務補助、相談対応などを実施する体制が求められます。
【職場復帰支援】
・月額4万円 × 最大3か月間(最大12万円)
・対象 – メンタルヘルス不調等で一時休職していた障害者の段階的な復帰サポートプログラムを実施した場合に助成。
どちらも、「職場定着支援計画」にこれらの取り組みが明記されていることが前提であり、日々の支援記録などエビデンスが必要になります。
中高年障害者の雇用継続支援、社内理解促進の支給額
【中高年障害者の雇用継続支援】
・支給額 – 30万円(1人あたり)
・対象 – 50歳以上の障害者を定年後も継続雇用する場合、または定年延長制度を導入した場合
・注意点 – 継続雇用に関する制度整備や、実際の就業継続が確認できる雇用契約書類が必要となります。
【社内理解の促進】
・支給額 – 10万円(1事業所あたり/単年度)
・対象 – 障害者雇用に関する社内研修、マニュアル作成、啓発イベントの実施など
・留意点 – 参加者リストや研修資料など、実施の証拠となる記録提出が必要です。
これらの取り組みは、助成金という目的だけでなく、職場全体の理解醸成や差別のない組織づくりにもつながる重要な施策です。
支給金額は「行動」と「継続性」によって決まる
障害者雇用安定助成金は、実施した支援の内容と深さに応じて細かく金額が設定されている制度です。
「雇うだけ」では対象にならず、職場定着に向けた行動(転換・支援・研修など)を伴うことが支給のカギとなります。
また、重度障害者や中高年層、短時間勤務者など、個別の状況に応じて支援金額が変動するため、自社の人事制度や雇用形態に合った措置を選ぶことが重要です。
その他の関連助成金との違い(比較)

障害者雇用に関する助成制度は複数存在しており、それぞれ支援の目的や助成対象、支給額、併用可否などが異なります。
本セクションでは、障害者雇用安定助成金と似た制度としてよく比較される「ジョブコーチ支援(職場適応援助コース)」「障害者介助等助成金」などと、制度の違いや併用の可否、金額の違いをわかりやすく整理し、活用の最適な組み合わせを検討する材料を提供します。
▼障害者職場適応援助コース(ジョブコーチ支援)と設置型コースの金額比較
「障害者職場適応援助コース(ジョブコーチ支援)」は、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)が実施する助成制度です。
障害者が職場に定着できるよう、専門支援者(ジョブコーチ)を派遣・設置することで助成金が支給されます。
この制度には2つのコースがあります。
コース名 | 支給主体 | 支援内容 | 支給額 |
派遣型 | JEEDまたは委託機関 | 外部のジョブコーチが職場に訪問 | 支援回数に応じて最大20万円程度(目安) |
設置型 | 事業所内にジョブコーチ配置 | 自社スタッフがジョブコーチの役割を担う | 研修・配置費用として10~15万円程度 |
一方、「障害者雇用安定助成金(職場支援員配置)」では、月額3万円×6か月(最大18万円)が支給されます。
両者の違いは以下の通りです。
・目的の違い – ジョブコーチ支援は「就労初期の定着」をサポート、安定助成金は「就労後の継続支援」にも対応。
・人材の位置づけ – ジョブコーチは専門支援者、安定助成金では社内支援員でも対象となる。
・併用の可否 – 対象者が異なる時期に利用される場合などは併用可だが、同時支援で同一の支援内容は不可重複とされるため注意が必要。
導入直後はジョブコーチ、定着段階で職場支援員というフェーズごとの使い分けが実務的です。
▼職場復帰支援(介助等助成金)、設置設備への高額助成制度などとの併用可能性
障害者雇用支援には、他にも以下のような特定目的型の助成制度が存在します。
【1. 障害者介助等助成金(厚生労働省)】
・内容 – 障害のある労働者に対し、通勤・業務遂行上必要な介助員や通訳者を配置した場合に支給
・支給額 – 最大10万円/月(対象者1人あたり)
・併用可否 – 障害者雇用安定助成金と支援対象者や内容が重ならなければ併用可能
例:介助員配置と、社内理解研修を別対象に実施
【2. 障害者のための設備等設置費助成金(JEED)】
・内容 – 障害者が働く上で必要な作業機器の調整、トイレのバリアフリー化、段差解消、スロープ設置などのハード面整備
・支給割合 – 費用の1/2(中小企業は2/3)、上限は100万円以上のケースもあり
・併用可否 – 基本的には安定助成金と重複しないカテゴリ(設備 vs.人的支援)のため、併用可能
このように、人的支援(支援員・介助者)と物的支援(設備整備)で制度を使い分けることで、助成の最大化が図れます。
また、各制度は実施主体や申請窓口が異なるため、申請スケジュールの調整や書類準備の負担軽減を考慮することも重要です。
目的とタイミングで最適な制度を選ぶ
障害者雇用安定助成金は、主に職場定着を目的とした人的支援の制度であり、他の助成金と目的が異なるため、組み合わせ次第で併用が可能です。
特に以下のような分け方での利用が推奨されます。
・ジョブコーチ支援と職場支援員配置 – 導入初期と定着段階でフェーズを分けて活用
・設備設置助成 – バリアフリー改修や作業支援器具など物理的支援に活用
・介助等助成金 – 業務補助や通勤支援を対象とした個別対応策
各制度の目的・支給額・重複要件を丁寧に見極めることで、助成金の効果を最大化し、より安定的な障害者雇用の実現が可能になります。
制度ごとの要件や併用条件は毎年見直されることもあるため、申請前に最新情報を確認し、専門家や支援機関への相談も視野に入れると安心です。
申請時の注意点と共通条件

障害者雇用安定助成金を適切に活用するには、制度の対象条件や申請スケジュール、書類提出のタイミングを正確に把握する必要があります。
本セクションでは、助成金をスムーズに申請するために知っておくべき共通の提出ルールや申請条件、よくある失敗例や注意点について解説します。
計画書の提出期限、助成対象期の申請期間や提出窓口
障害者雇用安定助成金は、あらかじめ計画書(職場定着支援計画)を提出することが必須であり、これを怠ると支給対象にならないため要注意です。
【提出タイミングの基本ルール】
・計画書提出のタイミング:原則、助成の対象となる措置を開始する前日までに提出が必要
・たとえば、「職場支援員を4月1日から配置する」場合、3月31日までに計画書を提出しなければなりません。
【申請スケジュールと助成対象期の扱い】
・対象期間の終了後2か月以内に、支給申請書類を提出
・各措置ごとに対象期間が異なるため、詳細は支給要領または管轄労働局のHPで確認が必要です。
【提出先】
・申請書類・計画書の提出先は、事業所所在地を管轄するハローワークまたは都道府県労働局です。
・一部の手続きはオンライン申請(電子申請)にも対応していますが、対応範囲が限定されるため事前に確認を。
【よくあるミス】
・措置開始後に計画書を出してしまう
・対象者の情報に漏れがある
・計画内容と実施内容が乖離している
これらのミスは助成金の不支給や返還の原因になり得ます。
実施前に提出書類を確認・相談できる体制を整えておくことが重要です。
助成要件(雇用保険適用・不正受給の経歴確認など)
障害者雇用安定助成金を受けるには、企業および対象労働者に対して一定の共通要件が設けられています。
【事業主側の主な要件】
・雇用保険適用事業所であること(常用労働者が1人以上かつ31日以上雇用見込み)
・過去3年間に不正受給など重大な違反歴がないこと(虚偽申請・助成金の目的外使用など)
・対象障害者と適切な雇用契約を結んでいること(雇用形態に応じた勤務条件の明示など)
【対象労働者の条件】
・雇用保険の被保険者であること(短時間労働者も対象可)
・支援措置の対象期間において継続的に雇用されていることが原則
・支援対象者の職場適応状況を定期的に記録・報告することも求められます
【注意点】
・一時的な契約雇用であっても、勤務実績・雇用保険加入が不十分な場合は対象外となる可能性があります。
・過去の不正受給歴がある場合、原則3年間は制度の利用ができません。
これらの共通要件を満たしていない場合、事後的に不支給となるリスクがあるため、申請前にチェックリストで事前確認を行うことを推奨します。
「申請前の確認」が助成成功のカギ
障害者雇用安定助成金を確実に活用するには、計画書提出のタイミングを厳守すること、そして企業・労働者の双方が助成対象条件を満たしていることが前提です。
特に注意すべきポイントは以下の通りです。
・支援措置開始前に計画書を提出しないと不支給
・雇用保険未加入の労働者は助成対象外
・提出書類の記載ミス・遅れが審査遅延や不支給の原因に
申請制度は年度によって微細な変更もあるため、最新の支給要領の確認や、労働局・ハローワークとの事前相談が助成獲得の成功につながります。
「計画・準備・確認」を事前に徹底することが、企業にとって最も効果的なリスク回避策です。
助成金で“やさしい職場づくり”を進めるという視点

障害者雇用安定助成金は、金銭的な支援制度という枠組みを超え、「働くすべての人にとってやさしい職場環境」を構築するための後押しでもあります。
企業にとってはコスト軽減という面が目立ちますが、その本質は、障害の有無を問わず誰もが安心して働ける仕組みづくりを促すという社会的な意義にあります。
ここでは、助成金をきっかけとしてどのように職場づくりの視点を変えるか、その意識変革の重要性に焦点を当てます。
支援金はゴールではなく、“共に働く”環境整備のスタート地点
障害者雇用安定助成金の目的は、単に金銭的な補助を行うことではありません。
むしろそれは、共に働くための環境を整備する第一歩にすぎないのです。
「やさしい職場」とは何か
やさしい職場とは、障害のある方が特別扱いされる場所ではなく、誰もが自分らしく力を発揮できる空間です。
具体的には以下のような状態を指します。
・情報伝達がわかりやすく整理されている(例:マニュアルの視覚化)
・コミュニケーションが一方向でなく、双方向の関係性が尊重されている
・誰かが“配慮を受ける側”ではなく、自然な支え合いの関係がある
助成金によって配置される職場支援員の存在や、定着支援計画の実施は、こうした組織文化の土台づくりを支援する役割も果たしています。
「制度活用」よりも大切な“意識のアップデート”
制度の利用はあくまで手段であり、最終的に目指すのは従業員同士の相互理解の促進です。
たとえば、社内理解促進のための研修費用に対する助成制度もありますが、これを活用するだけで終わらず、
・研修内容を日常業務に落とし込む仕組み
・定期的なフィードバックや対話の機会づくり
といった継続的な取り組みが重要になります。助成制度があるからやるのではなく、“続けたくなる文化”を社内に根づかせることが最終目標です。
成功事例に共通する“社内の巻き込み”
障害者雇用を成功させている企業では、人事部だけでなく現場部門の理解と参加が深いという共通点があります。
経営層・管理職・現場社員がそれぞれの立場で障害者雇用を自分ごととして捉えていると、制度の活用以上の効果が生まれます。
たとえば、
・「自分の職場にも活かせる改善ポイントに気づいた」
・「特性を理解したうえで業務を調整したら、全体の作業効率が上がった」 といった波及的な好循環も期待できます。
助成金は“やさしい職場文化”への入口にすぎない
障害者雇用安定助成金は、制度の活用によって“配慮”を形にできるという強みを持ちつつも、それだけでは本当の意味での職場改善は実現しません。
本当のスタートは、
・「制度をきっかけに、社内の在り方を見つめ直すこと」
・「共に働く仲間としての意識を深めること」
・「誰もが働きやすい環境が、結果として障害者雇用を後押しする」
という気づきと行動にあります。
助成金制度は、その“第一歩”を支える強力な味方です。ですがそれを「企業文化の変革」にまでつなげられるかどうかは、企業の姿勢と現場の取り組みにかかっています。
「やさしい職場づくり」は、人の力でこそ育つもの。助成金はその成長を支える“肥料”として活用しましょう。
制度を理解し、長期的な職場づくりの一歩を
障害者雇用安定助成金は、一人ひとりの多様な働き方に対応する企業を支援する制度です。
支援措置ごとの助成金額や条件を把握し、自社の雇用戦略やダイバーシティ推進に組み込むことで、制度を“使う”だけでなく“活かす”という発想が求められます。
「助成金があるから取り組む」のではなく、「取り組みをより良くするために助成金を活用する」という視点で、長期的な職場定着・雇用継続の仕組み化を進めていくことが、これからの企業の信頼にもつながるはずです。