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重度障害者等通勤対策助成金とは?対象者・8種類の支給額・申請方法を解説

重度障害者等通勤対策助成金は、障害によって通勤が難しい労働者を雇用する事業主が、住宅の確保や通勤用自動車、駐車場、通勤用バス、通勤援助者などの措置を行った場合に、その費用の一部を支援する制度です。

基本となる通勤対策は8種類あり、助成率は原則3/4です。たとえば、通勤用自動車の購入は1台150万円、駐車場の賃借は対象障害者1人につき月5万円、単身用住宅の賃借は月6万円など、それぞれ支給限度額が異なります。

対象になるのは、単に障害者を雇用している事業主ではありません。障害特性によって通勤が困難であり、一定の通勤対策を行わなければ雇入れや雇用継続が難しいことが必要です。

また、雇入れから長期間が経過している場合は対象になりにくいほか、住宅に関する助成と通勤手段に関する助成を同じ対象者について併用できない場合があります。

制度ごとに対象者や申請期限も異なるため、必要な通勤対策を整理したうえで利用する助成金を選びましょう。

目次

重度障害者等通勤対策助成金とは?

重度障害者等通勤対策助成金は、障害によって通常の方法では通勤が難しい労働者について、事業主が必要な通勤対策を実施する場合に利用できる助成金です。

仕事をするための設備や休憩施設ではなく、「自宅から職場まで通うこと」に関する支援が中心となります。

障害による通勤上の課題を解消する事業主向けの助成金

対象となるのは、障害特性によって通勤が困難な労働者を雇用する事業主です。

たとえば、

  • 公共交通機関の利用が難しい
  • 職場近くへ転居しなければ通勤できない
  • 自動車でなければ通勤できない
  • 通勤経路の習得に援助者が必要
  • 複数の対象障害者をバスで送迎する必要がある

といったケースが考えられます。

単なる通勤距離の長さや交通費負担の大きさだけではなく、障害による通勤上の課題があることが重要です。

住宅・バス・自動車・駐車場・通勤援助など8種類の措置がある

基本となる助成金は、通勤方法に応じて8種類に分かれています。

主な制度は次のとおりです。

種類主な支援内容
重度障害者等用住宅の賃借助成金事業主が住宅を借りる
指導員の配置助成金対象者が入居する住宅に指導員を配置する
住宅手当の支払助成金対象障害者へ住宅手当を支給する
通勤用バスの購入助成金複数の対象障害者を送迎するバスを購入する
通勤用バス運転従事者の委嘱助成金バス運転者を委嘱する
通勤援助者の委嘱助成金公共交通機関の利用などを援助する人を委嘱する
駐車場の賃借助成金自動車通勤用の駐車場を借りる
通勤用自動車の購入助成金対象障害者本人が運転する自動車を購入する

通勤上の課題によって選ぶ制度が変わります。

重度訪問介護サービス利用者向けの通勤援助制度もある

基本8種類とは別に、重度訪問介護や同行援護、行動援護などのサービスを利用する障害者向けの通勤援助制度も設けられています。

こちらは、福祉サービス事業者へ通勤援助を委託した場合の費用を助成する仕組みです。

基本8種類とは対象者や助成率が異なるため、別制度として考える必要があります。

重度障害者等通勤対策助成金の対象者

対象になるかどうかは、障害の種類や等級だけで決まりません。

障害特性によって通勤が困難であり、雇用するために必要な対策であることが求められます。

重度身体障害者・知的障害者・精神障害者などが対象

主な対象者には、

  • 重度身体障害者
  • 一定の視覚障害者
  • 一定の体幹機能障害者
  • 一定の下肢障害者
  • 知的障害者
  • 精神障害者

などが含まれます。

身体障害者手帳1級・2級だけを対象とする制度ではありません。

ただし、8種類すべてで対象となる障害区分が完全に同じではないため、利用する助成金ごとの条件を確認する必要があります。

障害特性によって通勤が困難であることが必要

障害者手帳を持っているだけでは対象になりません。

助成金を利用するには、障害によって通勤に具体的な支障があり、その対策を行わなければ雇用や雇用継続が難しいことが必要です。

たとえば、公共交通機関を利用できるにもかかわらず、本人の希望だけで自動車通勤へ変更するケースでは、必要性が認められない可能性があります。

重要なのは、「障害特性」と「必要な通勤対策」が結び付いていることです。

雇入れから6か月を超える場合は原則として対象になりにくい

対象障害者を雇い入れてから6か月を超えている場合は、原則として助成対象になりにくくなります。

すでに6か月以上問題なく通勤できている場合、

これまで通勤できていたのであれば、新たな措置がなくても雇用を継続できる

と判断されるためです。

そのため、新規採用した障害者について制度を利用する場合は、雇入れ後できるだけ早い段階で通勤上の課題を確認する必要があります。

中途障害・重度化・人事異動では6か月経過後も対象になり得る

6か月を過ぎたら必ず対象外になるわけではありません。

たとえば、

  • 在職中に障害を負った
  • 障害が重度化した
  • 人事異動で勤務地が変わった
  • 通勤経路が大きく変わった

など、新たに通勤対策が必要になった合理的な理由がある場合は対象になり得ます。

重要なのは、現在なぜ通勤支援が必要になったのかを説明できることです。

重度障害者等通勤対策助成金の種類・支給額

基本8種類の助成率は原則3/4です。

ただし、助成上限額や支給期間は制度ごとに異なります。

住宅の賃借は世帯用月10万円・単身用月6万円が上限

事業主が対象障害者のために住宅を借りる場合は、重度障害者等用住宅の賃借助成金を利用できます。

支給限度額は、

  • 世帯用住宅:月10万円
  • 単身用住宅:月6万円

です。

助成率は3/4で、支給期間は最長10年間です。

職場近くへ住まなければ通勤が難しい場合などに利用を検討できます。

指導員の配置は1人月15万円が上限

対象障害者が入居する住宅に指導員を配置する場合は、指導員の配置助成金が対象です。

主な条件として、対象となる重度障害者等が5人以上入居している必要があります。

助成率は3/4で、指導員1人につき月15万円が支給限度額です。

支給期間は10年間です。

住宅手当は対象障害者1人月6万円が上限

対象障害者本人が住宅を借り、事業主が通常より高い住宅手当を支給する場合は、住宅手当の支払助成金を利用できることがあります。

支給限度額は、対象障害者1人につき月6万円です。

助成率は3/4で、最長10年間支給されます。

事業主が住宅そのものを借りる制度とは異なるため、住宅の契約主体によって利用する制度を選びます。

通勤用バスは1台700万円が上限

複数の対象障害者を送迎するために通勤用バスを購入する場合は、通勤用バスの購入助成金があります。

主な対象は、5人以上の重度障害者等を通勤させるために必要な場合です。

助成率は3/4で、1台につき700万円が上限です。

一般的な社用車の購入費を補助する制度ではありません。

バス運転従事者は委嘱1回6,000円が上限

通勤用バスを運行するために、外部の運転従事者などを委嘱する場合は、通勤用バス運転従事者の委嘱助成金を利用できます。

支給限度額は、委嘱1回につき6,000円です。

助成率は3/4で、支給期間は最長10年間です。

こちらも、原則として5人以上の対象障害者を通勤させるための措置であることが必要です。

通勤援助者は委嘱1回2,000円・交通費1認定3万円が上限

公共交通機関を利用して通勤する際に、通勤方法の習得や一時的な援助が必要な場合は、通勤援助者の委嘱助成金を利用できます。

主な支給限度額は、

  • 委嘱1人1回につき2,000円
  • 交通費は1認定につき3万円

です。

支給期間は原則1か月です。

長期間にわたり毎日の通勤介助費を補助する制度ではなく、通勤経路や交通機関の利用方法を身につけるための短期的な支援として使われます。

駐車場の賃借は対象障害者1人月5万円が上限

対象障害者本人が自動車を運転して通勤する必要があり、事業主が駐車場を借りる場合は、駐車場の賃借助成金を利用できます。

助成率は3/4で、対象障害者1人につき月5万円が上限です。

支給期間は最長10年間となります。

対象になるのは「駐車場を借りる費用」です。

駐車場を新しく造成したり、改修したりする工事費を補助する制度ではありません。

通勤用自動車は1台150万円・一定の両上肢障害者は250万円が上限

対象障害者本人が運転して通勤するために自動車が必要な場合は、通勤用自動車の購入助成金を利用できます。

助成率は3/4で、基本的な支給限度額は1台150万円です。

ただし、1級または2級の両上肢障害者については、1台250万円まで上限が引き上げられます。

事業主が一般業務で使用する営業車や社用車は対象ではありません。

重度訪問介護サービス利用者等通勤援助助成金とは?

重度訪問介護サービス利用者等通勤援助助成金は、基本8種類とは別に設けられている制度です。

重度の障害によって通勤時にも継続した介助が必要な人を対象とします。

重度訪問介護・同行援護・行動援護の利用者等が対象

主な対象者は、

  • 重度訪問介護
  • 同行援護
  • 行動援護

などの福祉サービスを利用している障害者です。

対象障害者を雇用する事業主が、サービス事業者へ通勤援助を委託した場合の費用を支援します。

基本8種類の通勤援助者制度とは対象や支援方法が異なります。

中小企業は委託費の9/10・月8万4,000円まで助成

通常の助成率は4/5ですが、中小企業の場合は9/10です。

支給限度額は、

  • 通常:月7万4,000円
  • 中小企業:月8万4,000円

となっています。

支給対象期間は、委託開始から3か月までです。

長期間の通勤介助費を恒久的に全額支援する制度ではありません。

利用前に市町村への確認・相談が必要

この助成金は、市町村が実施する「雇用施策との連携による重度障害者等就労支援特別事業」と連携して利用する仕組みです。

そのため、事業主だけで判断してサービス事業者へ依頼するのではなく、事前に市町村やJEEDへ相談する必要があります。

自治体側の事業実施状況によっても利用可否が変わるため、早めの確認が重要です。

重度障害者等通勤対策助成金の申請方法

申請方法は利用する助成金によって細部が異なりますが、基本的には対象障害者の通勤上の課題を整理し、必要な措置を選んでJEEDへ申請します。

1.対象障害者の通勤困難性を整理する

最初に、

  • 現在どのように通勤しているか
  • どこに困難があるか
  • 障害特性と通勤困難の関係
  • どの措置があれば通勤できるか

を整理します。

「自動車通勤の方が便利」という理由ではなく、障害によりその措置が必要であることを明確にします。

2.必要な通勤対策と利用する助成金を選ぶ

通勤上の課題によって利用する制度が変わります。

たとえば、

  • 職場近くへの転居が必要 → 住宅賃借・住宅手当
  • 本人が車を運転する必要がある → 自動車購入・駐車場
  • 複数人を送迎する → 通勤用バス
  • 公共交通機関の利用練習が必要 → 通勤援助者

といった形で選びます。

複数制度が候補になる場合は、併給制限にも注意してください。

3.JEED都道府県支部へ受給資格認定申請を行う

申請先は、JEEDの都道府県支部です。

必要書類には、対象障害者の状況や雇用関係、通勤上の課題、契約内容などを確認できる資料が含まれます。

申請期限は助成金ごとに異なります。

そのため、「すべて契約前に申請すればよい」「契約後でもいつでも申請できる」と一律に考えないようにしてください。

4.認定された措置を実施する

受給資格が認定されたら、認定内容に沿って住宅の賃借や自動車購入、駐車場契約などを進めます。

購入系の助成金では、認定前の発注・購入が対象外となる可能性があります。

一方、賃借系などでは契約後一定期間内の申請が認められるケースもあります。

制度ごとの期限を確認して進めましょう。

5.必要書類をそろえて支給請求を行う

対象となる措置を実施した後は、所定の期間ごとに支給請求を行います。

その際は、

  • 契約書
  • 領収書
  • 賃貸料の支払記録
  • 賃金台帳
  • 出勤状況
  • 通勤状況

など、実際に助成対象措置を行っていることを確認できる書類が必要になる場合があります。

継続的に支給される住宅・駐車場などの制度では、支給請求を一度行えば終わりではありません。

6.e-Govによる電子申請も利用できる

障害者雇用納付金関係助成金は、e-Govによる電子申請にも対応しています。

重度障害者等通勤対策助成金も対象です。

電子申請を利用する場合でも、必要書類や提出期限がなくなるわけではありません。

紙申請・電子申請のどちらを使う場合でも、最新の様式と申請期限を確認してください。

重度障害者等通勤対策助成金を利用するときの注意点

制度を利用するときは、対象障害者の条件だけでなく、申請期限や他制度との組み合わせにも注意が必要です。

助成金ごとに対象障害者と申請期限が異なる

8種類の助成金は、すべて同じ条件で申請できるわけではありません。

たとえば、

  • 対象となる障害区分
  • 雇入れからの期間
  • 契約日
  • 購入日
  • 支給期間

などが制度ごとに異なります。

特に購入・契約を先に進めてしまうと申請できなくなる制度もあるため、措置を実施する前にJEEDへ相談する方が安全です。

住宅に係る助成金と通勤手段に係る助成金は同じ対象者で併給できない

同じ対象障害者について、住宅関係の助成と通勤手段関係の助成を自由に組み合わせることはできません。

たとえば、

  • 住宅賃借
  • 住宅手当

などの住宅系と、

  • 通勤用自動車
  • 駐車場
  • 通勤用バス

などの通勤手段系は、同じ対象者について併給できない場合があります。

複数の対策が必要な場合でも、先に制度上の併給可否を確認しましょう。

一般的な通勤手当や通常の交通費を補助する制度ではない

重度障害者等通勤対策助成金は、一般的な電車代やバス代を補助する通勤手当制度ではありません。

対象となるのは、障害による通勤上の課題を解決するために特別に必要となる措置です。

通常の従業員と同じ方法で問題なく通勤できる場合は、本制度の対象にはなりません。

通勤目的以外の自動車・住宅・駐車場には利用できない

制度を利用して整備・契約したものは、対象障害者の通勤に必要であることが前提です。

たとえば、

  • 営業活動が中心の自動車
  • 通勤とは関係のない住宅
  • 一般社員も自由に利用する駐車場

などは対象にならない可能性があります。

私的利用や通常の事業経費との区分を明確にしておくことが重要です。

重度障害者等通勤対策助成金は通勤方法に合う制度を選ぼう

重度障害者等通勤対策助成金は、障害によって通勤が難しい労働者を雇用する事業主が、必要な通勤対策を行う場合に利用できる制度です。

基本となる助成金は8種類あり、

  • 住宅の賃借
  • 指導員の配置
  • 住宅手当
  • 通勤用バス
  • バス運転従事者
  • 通勤援助者
  • 駐車場の賃借
  • 通勤用自動車

に対応しています。

基本8種類の助成率は原則3/4です。

代表的な上限額は、

  • 単身用住宅:月6万円
  • 世帯用住宅:月10万円
  • 駐車場:月5万円
  • 通勤用自動車:150万円
  • 一定の両上肢障害者用自動車:250万円
  • 通勤用バス:700万円

となっています。

ただし、最も重要なのは金額ではありません。

利用を検討するときは、

  1. 対象障害者が制度上の要件を満たすか
  2. 障害特性によって通勤が実際に困難か
  3. 住宅・自動車・駐車場など、どの対策が必要か
  4. 雇入れから6か月以内か、または例外となる事情があるか
  5. 他の通勤対策助成金との併給が可能か
  6. 契約・購入前後の申請期限を守れるか

を確認します。

同じ障害者雇用関係助成金でも、作業設備を整備する制度や休憩室などを整備する制度とは目的が異なります。

「仕事をする場所」ではなく、「職場まで通うこと」に課題がある場合に検討する制度として整理すると、適切な助成金を選びやすくなります。

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