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重度障害者等通勤対策助成金の対象は誰?条件・支給内容・申請の流れまとめ

重度障害者等通勤対策助成金は、重度障害者の通勤を支援するために企業や事業主が受けられる助成制度です。

障害者雇用を進めたいと考える企業にとって、通勤環境の整備や送迎手段の確保は大きな課題ですが、その費用負担を軽減できるのがこの制度の魅力です。

助成金は、住宅の賃借料補助、通勤用バスや車の購入、駐車場の設置や改修、通勤援助者の委嘱費用など、具体的な通勤対策に活用できます。

対象者や事業主の条件を満たすことが前提ですが、正しく申請すれば大きなサポートを受けることが可能です。

この記事では、

制度の概要や対象範囲
支給対象と条件
助成措置の種類と支給額
申請方法と必要書類
注意点やよくある失敗例を体系的に解説します。

読後には、「自社でも重度障害者等通勤対策助成金を申請できるかもしれない」と前向きに感じ、具体的な申請準備へ一歩踏み出せるようになるはずです。

目次

重度障害者等通勤対策助成金とは

重度障害者等通勤対策助成金は、重度の障害を持つ人が働きやすい環境を整備するための通勤支援費用を助成する制度です。

雇用に積極的な事業主が負担する住宅確保や通勤用車両の購入などに対し、国が一部費用を補助します。

ここでは制度の目的、対象障害者の基準、事業主側の要件について解説します。

▼重度障害者等通勤対策助成金の目的と制度の位置づけ

この助成金は、障害者雇用納付金制度の一環として設けられています。

・障害者の通勤に関する物理的・経済的ハードルを取り除くこと
・障害者の就労継続と企業側の雇用促進を支援することが主な目的です。

特に、通勤の困難さは障害者雇用の大きな障壁となるため、通勤手段や住環境を整える取り組みに助成を行うことで、企業と労働者双方にメリットをもたらす仕組みとなっています。

▼対象となる障害者の定義と基準

助成金の対象となる「重度障害者」とは、法律や制度で定められた基準を満たす人を指します。

・身体障害者手帳1級・2級所持者
・知的障害の程度が重度と判定された者
・精神障害者で通勤に著しい制約があると認められる者

さらに、「通勤困難性」があることが条件です。

具体的には、公共交通機関の利用が著しく難しい、介助者を必要とする、といったケースが該当します。

▼助成対象事業主・事業主団体の要件

この助成金を受けられるのは、一定の要件を満たす事業主や事業主団体です。

・雇用保険適用事業所であること
・障害者を実際に雇用しており、その通勤支援を行うこと
・法令遵守を徹底していること(労働基準法、最低賃金法など)
・納付金制度の対象事業主団体である場合は、その団体を通じて申請可能

つまり、「障害者を雇用し、かつ適正な労務管理を行っている事業主」が対象になります。

制度の意義を理解することが第一歩

重度障害者等通勤対策助成金は、

障害者の通勤環境を整備し、雇用を後押しする制度
対象障害者は重度の身体・知的・精神障害者で、通勤に困難を抱える人
事業主は雇用保険適用事業所で、適正な労務管理を行っている必要がある

といった特徴を持っています。
制度の背景と対象範囲を理解することが、申請を検討する第一歩です。

対象者・要件(支給対象と条件)

重度障害者等通勤対策助成金は、「誰に」「どのような条件で」支給されるのかが最も重要なポイントです。

対象となるのは、重度障害者本人だけでなく、雇用している事業主や事業主団体にも条件が課されています。

さらに、助成対象となる通勤支援措置にも実施上の制約があります。

ここでは、障害者・事業主・措置内容それぞれの条件を詳しく整理します。

対象障害者の要件(障害の種類・等級・通勤困難性)

助成対象となる障害者は、「重度」と認定される障害を有し、かつ通勤に困難を抱える人です。

主な条件は以下のとおりです。

・身体障害者
身体障害者手帳 1級または2級 を所持している人。
特に移動や日常生活に大きな制約がある場合が該当します。
・知的障害者
判定区分において「重度」とされる人。
療育手帳に「A判定」などが付与されているケースが典型です。
・精神障害者
精神障害者保健福祉手帳を持ち、かつ通勤に著しい困難があると認められる人。
例えば、通勤時に介助を必要とする場合などが含まれます。
・通勤困難性
公共交通機関を単独で利用することが難しい、または長距離移動に制約がある場合に「通勤困難性あり」と判断されます。
例:
 ・車いす利用者で駅やバス停の利用が困難
 ・医療的ケアを伴うため、公共交通が利用できない
 ・通勤時に支援者の付き添いを必要とする

つまり、障害等級や手帳の有無だけでなく、通勤上の制約が具体的に存在するかどうかが重要です。

対象事業主・事業主団体の条件

助成金は、障害者を実際に雇用する事業主や、一定の条件を満たす事業主団体が対象です。

事業主の条件

雇用保険の適用事業所であること
障害者を常用雇用していること
法令(労基法、最賃法など)を遵守していること
障害者雇用納付金制度の対象事業主であること

事業主団体の条件

納付金制度の適用事業主で構成される団体であること
団体を通じて複数の障害者に対する通勤支援措置を行う場合、助成の対象となることがある

要するに、雇用実態があり、適正な労務管理をしている事業主でなければ対象外となります。

単に「障害者雇用に興味がある」だけでは申請できません。

助成対象措置を行うための要件(実施要件・制限事項)

助成金の対象となるのは、重度障害者の通勤を支援するための具体的な措置ですが、そこにも条件があります。

・事前申請が必須
措置を講じる前に「受給資格認定申請」を行わないと助成対象外になります。
契約や購入を済ませてからの申請は原則不可。
・助成対象となる措置の種類
 ・通勤用住宅の確保(賃借料助成)
 ・通勤用バス・自動車の購入
 ・通勤援助者(ヘルパー等)の委嘱
 ・駐車場の設置や改修
 ・通勤指導員の配置
・助成対象外となるケース
 ・公共交通機関を前提にしており、特別な支援を必要としない場合
 ・親会社や関連会社が所有する施設を利用するなど、助成趣旨に反する場合
 ・通勤以外の目的で利用される措置(例えば私用の車両購入)は対象外
・所有関係や耐用年数の制限
車両や駐車場整備などは、耐用年数や所有権の帰属に関する制約があります。
転売や転用は不正受給に該当するため注意が必要です。

つまり、助成措置を導入する際は「通勤のために限定して活用されるもの」であることが必須です。

障害者・事業主・措置の三位一体で要件を満たすことが必要

重度障害者等通勤対策助成金は、

・対象障害者 – 重度の身体・知的・精神障害があり、通勤に困難を抱える人
・対象事業主 – 雇用保険適用事業所で、適正な労務管理を行う企業や団体
・対象措置 – 通勤支援に限定した措置で、事前申請を行ったもの

という三つの条件が揃って初めて活用できます。
不支給や返還のリスクを避けるためには、「誰に」「どの事業主が」「どの措置を」実施するかを明確に整理しておくことが重要です。

助成対象措置と支給パターン

重度障害者等通勤対策助成金は、単に「障害者を雇用している」だけではなく、通勤を容易にするための具体的な支援措置を講じることが前提です。

住宅の確保や車両購入など多岐にわたり、助成率や上限額も措置内容によって異なります。

ここでは、代表的な対象措置と支給額のパターンを解説します。

助成対象となる通勤支援措置の具体例(住宅、バス、車、駐車場など)

対象となる措置は、重度障害者の通勤に直接資するものに限られます。

主な例は以下のとおりです。

・通勤用住宅の賃借料助成
障害者の自宅から事業所までの距離を短縮するために、事業主が住宅を借り上げた場合、その賃借料の一部を助成。
・通勤用バス・自動車の購入助成
事業主や事業主団体が通勤用のバス・自動車を購入した場合、その購入費用の一部を助成。
→ 例:車いす利用者が多い事業所で専用送迎車を導入するケース。
・駐車場の設置や改修助成
車いす対応の駐車場や送迎用スペースを新設・整備する場合の費用が対象。
・通勤援助者・指導員の配置助成
通勤時に介助が必要な障害者に対し、通勤援助者(ヘルパー等)を委嘱する際の委嘱料や交通費を助成。

ポイントは、これらすべてが「就労のための通勤を容易にする」ことに直結している点です。

各コース別の助成率・支給限度額

助成率や支給額は、措置ごとに異なります。代表例を整理すると以下のようになります。

・住宅助成金 – 賃借料の 3分の2 を助成、ただし 月額上限 4万円程度
・通勤用バス購入助成 – 購入費用の 3分の1、上限 数百万円単位(車種・規模により異なる)
・通勤用自動車購入助成 – 購入費用の 3分の1、上限 100万円前後
・駐車場設置・改修助成 – 工事費用の 3分の1、上限 数十万円程度
・通勤援助者委嘱助成金 – 委嘱費・交通費の実費をベースに助成、上限は月額数万円

措置によっては高額な支援もあり、特にバスや住宅関係の助成は企業の負担軽減効果が大きいといえます。

助成期間・継続支援の制限・耐用年数要件

助成金は一度きりではなく、継続支援が可能なケースもありますが、期間や耐用年数に制限があります。

・住宅助成 – 最長 5年間 の継続助成が可能。
・車両購入助成 – 耐用年数(通常 7年程度)が過ぎるまでは再度の助成を受けられない。
・駐車場整備助成 – 1回限りが原則。
・通勤援助者委嘱助成 – 必要性が認められる限り継続支援あり。

また、助成を受けた設備や車両を本来目的以外に転用した場合、不正受給として返還を求められる可能性があります。

対象措置と助成内容を正しく理解することが重要

重度障害者等通勤対策助成金では、

・住宅・車両・駐車場・通勤援助者配置など、多様な通勤支援措置が対象
・助成率は原則3分の1〜3分の2、上限額は措置内容により数万円〜数百万円
・助成期間や耐用年数に応じた制限があるため、計画的な活用が必須

となっています。
助成対象の具体例と金額感を把握しておくことで、「自社でどの支援を導入すれば最も効果的か」をシミュレーションしやすくなります。

申請方法・手続きの流れ

重度障害者等通勤対策助成金を受けるには、「資格認定」から「支給請求」までの手続きを正しく進めることが不可欠です。

申請は事後報告では認められず、計画段階から所轄機関への届出が必要です。

ここでは、申請の流れを4つのステップに分けて解説します。

▼受給資格認定申請の手順・提出先

まず行うのは「受給資格認定申請」です。

助成対象となる通勤措置を実施する前に、独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)の各都道府県支部へ申請を行います。
提出書類には、措置の内容・対象障害者の情報・実施計画などを記載。
認定を受けてからでなければ、以降の支給申請はできません。

「契約や購入をしてから申請」では対象外になるため、必ず事前申請が必要です。

▼支給請求(支給申請)のタイミングと手続き

認定を受け、実際に通勤措置を実施した後に「支給請求」を行います。

請求は、原則として措置完了後一定期間内に行う必要があります。
申請先は認定申請と同じく JEED支部 です。
措置の実施結果やかかった費用を示す証拠資料を添えて提出します。

実施後の報告と支給請求がワンセットになっている点を押さえておきましょう。

▼提出書類例と記入上の注意点

提出書類は措置内容によって異なりますが、代表的なものは以下の通りです。

受給資格認定申請書・支給請求書
障害者本人の障害者手帳の写し
契約書・領収書・請求書などの費用証明書類
施工写真や利用状況の確認資料(駐車場や設備の場合)
雇用契約書、就業規則などの労務関係資料

注意点

金額や日付の不一致は審査遅延の原因になるため、添付資料は正確に揃える必要があります。
障害者本人の氏名や住所が、他の書類と一致しているかを必ず確認すること。
書類不備で差し戻されると、期限内に補正できず不支給となるリスクがあります。

▼申請期限・補正・再申請のルール

申請には明確な期限があり、これを過ぎると原則受理されません。
不備があった場合、所定の期間内に補正(修正提出)すれば認められるケースもあります。
期限を超えた場合や要件を満たさない場合は不支給ですが、翌年度以降に条件を満たせば再申請は可能です。

つまり、期限管理と正確な書類作成が最重要ポイントです。

事前申請と期限管理が成功のカギ

重度障害者等通勤対策助成金の申請は、

1.受給資格認定申請(事前必須)
2.通勤措置の実施
3.支給請求(証拠資料添付)
4.審査・支給決定

という流れで進みます。
最大の注意点は、「事前に認定申請を行うこと」と「期限を厳守すること」です。
これを徹底することで、スムーズに助成金を受け取ることができます。

支給額・算定例

重度障害者等通勤対策助成金は、実際にどれくらいの金額が支給されるのかが最も気になるポイントです。

助成率は措置ごとに異なり、住宅の賃借料補助から車両購入費、駐車場整備、通勤援助者の配置まで多岐にわたります。

ここでは代表的な算定例を紹介し、支給額のイメージを具体的に掴めるように整理します。

▼住宅助成金:賃貸料 × 助成率モデル例

事業主が障害者の通勤距離を短縮するために住宅を借り上げる場合、賃貸料の3分の2が助成されます。
例:月額賃貸料が 6万円 の場合
 ・助成額:6万円 × 2/3 = 4万円
 ・事業主負担:2万円
上限は月額 約4万円程度 までとされているため、高額な物件を借りても助成額は一定です。

長期的にみると、最大で年間48万円程度の補助が受けられる計算になります。

▼通勤用バス・車購入助成金:購入価格に対する助成例

通勤用にバスや自動車を購入する場合、購入価格の3分の1が助成されます。
例:送迎用バスを 900万円 で購入した場合
 ・助成額:900万円 × 1/3 = 300万円
自動車の場合は規模が小さいため、100万円前後を上限とするケースが多いです。

車両購入は一度に高額な投資となるため、この助成金が事業主負担を大きく軽減します。

▼駐車場・指導員・通勤援助者の助成例

・駐車場整備
障害者用スペースの設置や改修にかかる費用の 3分の1 が助成。
例:工事費 90万円 → 助成額 30万円。
・通勤指導員の配置
新規雇用者が通勤に慣れるまで指導員を配置した場合、その人件費の一部が助成。
・通勤援助者の委嘱
通勤時に介助が必要な障害者にヘルパーをつける場合、委嘱料や交通費の実費相当が助成されます。
→ 上限は月数万円程度とされ、継続的に利用可能。

▼複数措置を組み合わせたケースシミュレーション

実際の企業では、1つの措置だけでなく複数を組み合わせて活用するケースが多いです。

ケース例

通勤距離短縮のために住宅を借り上げ(月6万円)
さらに、通勤援助者を月2万円で委嘱
 → 支給額の合計住宅助成金:4万円/月
通勤援助者助成金:2万円/月
合計:月6万円、年間で72万円の助成

組み合わせ次第で負担軽減効果が大きくなり、障害者の就労環境改善と企業のコスト削減を両立できます。

支給額は措置の種類と組み合わせで変動する

重度障害者等通勤対策助成金の支給額は、

・住宅助成 – 月最大4万円程度(年48万円)
・バス・車購入 – 費用の1/3、最大数百万円
・駐車場整備 – 工事費の1/3
・通勤援助者配置 – 月数万円の継続支援

といった水準で算定されます。
単独措置でも効果は大きいですが、住宅・車・援助者などを組み合わせて導入することで、より強力な支援を受けることが可能です。

留意点・よくある失敗例

重度障害者等通勤対策助成金は制度として非常に有益ですが、要件や手続きを誤ると不支給や返還につながるリスクがあります。

実際に不支給となるケースは少なくなく、「申請したのに認められなかった」という事例も存在します。

ここでは、特に注意すべき失敗パターンを解説します。

▼措置実施前の契約や届出漏れによる不支給リスク

助成金は 事前に「受給資格認定申請」を行った上で措置を実施することが必須です。
車や住宅を先に契約・購入してしまい、その後で申請した場合は原則対象外。
駐車場整備なども、契約書の日付が申請日より前であれば助成対象になりません。

「申請前に実施した措置は全て無効」 という点を徹底して押さえる必要があります。

▼助成対象外となる通勤支援(公共交通利用前提型など)

公共交通機関の利用を前提とした一般的な定期券購入や通勤手当の支給は助成対象外です。

障害者専用の設備導入や介助体制の整備など、通勤困難を解消するための特別措置に限定されます。
例:既存の電車・バスの利用費補助は対象外だが、専用送迎車の導入は対象。

「通常の福利厚生的な通勤支援」は対象外であることに注意が必要です。

▼所有関係・親会社・役員関係の制限

助成対象となる住宅や車両が、親会社や役員個人の所有物である場合は不支給。

「企業が障害者雇用のために新たに整備したもの」であることが前提です。
所有権や使用権が曖昧な場合も不正受給と判断される可能性があります。

組織内の資産をそのまま流用するのではなく、助成目的に沿った新規導入でなければ対象になりません。

▼申請期限超過・補正期限漏れ・書類不備

支給請求の提出期限を過ぎると、原則として受理されません。

書類不備があっても、補正期限内に修正提出しなければ不支給となります。
特に多いのは、領収書・契約書・写真などの証拠書類の不足。
些細な誤記や日付の不一致でも、審査が遅れたり不認定になることがあります。

期限管理と書類整備は、助成金活用の成否を左右する最大のポイントです。

失敗パターンを避けることが受給の近道

重度障害者等通勤対策助成金は、

・事前申請を忘れると即不支給
・公共交通利用前提の措置は対象外
・親会社や役員所有物は対象外
・期限や書類不備で不支給になるケースが多い

といったリスクが潜んでいます。
制度を有効に活用するためには、「申請前に契約しない」「対象措置を正しく理解する」「期限と書類を厳格に管理する」ことが不可欠です。

助成金活用後の効果と制度持続性

重度障害者等通勤対策助成金は、申請して終わりではありません。

実際に通勤支援を導入することで、障害者の職場定着や企業の人材確保に直結する効果が期待できます。

また、他の助成制度との組み合わせ方や、助成終了後の運用コストをどう管理するかが長期的な成功のカギです。

ここでは、制度活用後に得られる効果と持続的な運用のポイントを解説します。

通勤支援導入後の定着効果と人材維持

通勤が困難で離職リスクが高かった障害者が、支援措置により安心して働き続けられるようになります。

例:送迎車や住宅の借り上げにより、長距離通勤や複雑な乗り換えの負担が解消
これにより 離職率が下がり、定着率が向上。企業側にとっても人材の確保と育成が安定します。
職場に「障害者が働きやすい環境がある」という実績は、企業のCSR(社会的責任)や採用広報にもプラスに働きます。

短期的な助成金獲得にとどまらず、長期雇用を見据えた人材戦略につながります。

助成金との兼用可能性と制度の最適配置戦略

障害者雇用に関しては、他にも複数の助成制度(例:障害者雇用安定助成金、職場定着支援助成金など)が存在します。

ただし、同一経費に対して二重で助成を受けることは不可

そのため、通勤支援は本助成金で、職場内環境整備や教育訓練は他の助成金で、というように役割を分担させるのが理想です。

制度を横断的に把握し、「どの経費をどの助成でカバーするか」を設計することで、企業負担を最小化できます。

助成金を点ではなく線で活用する戦略が、長期的に効率のよい資金調達方法になります。

通勤支援導入後の運用コストと持続性の確保

助成金は一時的な支援であり、恒久的に続くわけではありません。

例:住宅助成は最長5年、車両購入助成は耐用年数内は再申請不可、などの制限があります。
助成終了後も継続して障害者が働き続けられるよう、企業が自立的に運用コストを負担する体制づくりが必要です。
長期的には、通勤コスト削減策(職場近隣での採用、テレワーク併用など)を組み合わせ、助成依存からの脱却を目指すことが重要です。

助成金は「持続的な仕組みづくりへの後押し」と捉えると、企業にとって最も価値のある活用になります。

助成金は通勤支援のきっかけ、持続性は企業努力で

重度障害者等通勤対策助成金を活用すると、

・通勤負担の軽減による定着率向上と人材確保
・他の助成金との使い分けによる総合的な資金戦略
・助成終了後も継続できる運用体制の確立

といった効果を得られます。
助成金はあくまでスタート地点であり、長期的に持続する制度設計と運用を組み合わせることが、真の成果につながります。

重度障害者等通勤対策助成金を活用して雇用と通勤環境を支える

重度障害者等通勤対策助成金は、重度障害者の通勤を支えるために設けられた重要な制度です。

企業にとっては採用や定着を進める後押しとなり、障害者本人にとっては働きやすい環境づくりにつながります。

制度の仕組みや申請条件を理解することで、申請の不安を減らし、自社での活用を前向きに検討できるようになります。

主なポイントを整理すると以下の通りです。

重度障害者の通勤支援を目的とした制度であり、住宅借り上げ、車両購入、駐車場整備、通勤援助者配置 などが対象
助成率は 3分の1〜3分の2、支給額は 数万円から数百万円規模 と幅広い
申請には 事前申請・期限管理・正確な書類提出 が必須条件
助成終了後も運用できる仕組みを整えれば、人材定着や長期的な雇用改善につながる

「自社でも申請できるかもしれない」と感じたら、まずは対象となる措置や条件を確認し、JEEDの窓口や専門家に相談することから始めましょう。

制度を賢く活用すれば、障害者雇用の推進と企業の人材戦略の両立が可能になります。

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