重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金は、重度身体障害者や知的障害者、精神障害者などを多数かつ継続して雇用する事業所が、雇用を維持・拡大するために必要な施設や設備を整備する際に利用できる制度です。
対象になるには、支給対象障害者を10人以上雇用しているだけでは足りません。全労働者に占める障害者の割合が20%以上であり、認定申請日時点で対象障害者を1年を超えて継続雇用していることなどが求められます。
助成率は原則2/3で、1認定あたりの支給限度額は5,000万円です。一定の特例要件を満たす場合は助成率3/4、支給限度額が最大1億円まで引き上げられます。
対象となるのは、作業施設だけではありません。管理施設や休憩室・食堂などの福祉施設、それらに必要な設備も対象になり得ます。
一方で、中古設備や自社施工、認定前に契約・発注した工事などは対象外となる場合があります。高額な整備では相見積や競争入札も必要です。
重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金とは?

重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金は、多数の障害者を継続して雇用する事業所が、安定した雇用を続けるために必要な事業施設や設備を整備する際に利用できる助成金です。
単にバリアフリー化を行えば使える制度ではありません。対象障害者数や雇用割合、継続雇用期間など、事業所側にも一定の要件があります。
重度身体障害者・知的障害者・精神障害者を多数継続雇用する事業所の施設整備を支援する制度
この助成金は、多数の障害者を雇用する事業所が、障害者の能力に応じた雇用を安定的に続けられるよう、施設や設備の整備を支援するものです。
たとえば、
- 作業場の新設・改修
- 作業に必要な設備の導入
- 管理施設の整備
- 休憩室や食堂などの福祉施設整備
などが対象になり得ます。
一般的なオフィス改修や老朽設備の更新ではなく、対象障害者の雇用継続との関係が明確な整備であることが重要です。
助成率は2/3・支給上限は1認定5,000万円
通常の助成率は、支給対象費用の2/3です。
1認定あたりの支給限度額は5,000万円となっています。
たとえば、支給対象費用が3,000万円であれば、
3,000万円×2/3=2,000万円
が計算上の助成額です。
ただし、支給対象費用として認められない工事や設備が含まれている場合は、その分を除いて計算します。
特例では助成率3/4・最大1億円になる
一定の要件を満たす事業所では、特例として助成率が3/4となり、1認定あたりの支給限度額が最大1億円まで引き上げられる場合があります。
ただし、すべての事業所が最大1億円を利用できるわけではありません。
多数の重度障害者を新たに雇い入れるなど、所定の条件を満たしたうえで特例の適用を受ける必要があります。
また、同一事業所について過去の関連助成金も含めた累計支給額には上限があります。
重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金の対象事業所

この助成金では、施設や設備の内容より先に、自社が対象事業所の条件を満たしているか確認する必要があります。
基本となるのは、「10人以上」「20%以上」「1年超」の3つです。
対象障害者を10人以上雇用していることが必要
認定申請時点で、支給対象となる障害者を10人以上雇用していることが必要です。
制度名に「重度障害者」とありますが、重度身体障害者だけを10人雇用する必要があるわけではありません。
一定の知的障害者や精神障害者も対象人数へ含まれます。
ただし、対象者ごとに雇用形態などの条件があるため、単純に障害者雇用人数だけを数えないようにしてください。
全労働者に占める対象障害者の割合が20%以上必要
対象障害者を10人以上雇用していても、それだけでは要件を満たしません。
事業所で働く全労働者のうち、支給対象障害者が20%以上を占めている必要があります。
たとえば全労働者が100人なら、支給対象障害者が20人以上必要です。
一方、全労働者が50人なら10人で20%となるため、人数要件と割合要件の両方を満たします。
対象障害者を認定申請時点で1年を超えて継続雇用していることが必要
「継続雇用」は、単に現在在籍していればよいという意味ではありません。
認定申請日時点で、対象障害者を1年を超えて継続して雇用していることが必要です。
新たに障害者を10人採用し、すぐに大規模施設整備を申請する制度ではありません。
継続した雇用実績がある事業所を対象としている点が特徴です。
安定した雇用継続と障害者雇用事業所としてのモデル性が求められる
人数や割合だけでなく、障害者雇用を安定して続けられる事業所であることも確認されます。
事前審査では、
- 事業計画
- 経営状況
- 障害者の雇用管理
- 整備内容の必要性
- 障害者雇用事業所としてのモデル性
などが確認されます。
そのため、要件の数字だけを満たせば自動的に助成される制度ではありません。
重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金の対象障害者

対象人数へ含められる障害者には一定の範囲があります。
「重度」という名称だけで判断すると、対象者を狭く捉えすぎる可能性があります。
重度身体障害者・知的障害者・精神障害者が対象
主な支給対象障害者は、
- 重度身体障害者
- 知的障害者
- 精神障害者
です。
知的障害者については、重度に限らず対象となる場合があります。
精神障害者も制度上の対象です。
そのため、「身体障害者だけを多数雇用する事業所向け」と考えないようにしてください。
重度でない知的障害者の短時間労働者は対象外
知的障害者であれば、雇用形態に関係なく人数へ算入できるわけではありません。
重度ではない知的障害者について、一定の短時間労働者は支給対象障害者から除かれます。
対象人数を計算するときは、障害区分だけでなく労働時間や雇用形態まで確認してください。
在宅勤務者は支給対象障害者に含まれない
この助成金では、在宅勤務を行う障害者は支給対象障害者に含まれません。
事業所へ出勤して働く障害者を多数雇用し、そのための事業施設等を整備する制度だからです。
他の障害者雇用関係助成金では在宅勤務者が対象になる場合もあるため、制度を混同しないようにしましょう。
重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金の対象施設・設備

支給対象となる施設・設備は、大きく「作業施設」「管理施設」「福祉施設」「設備」に分けられます。
個別の設備名だけで判断するのではなく、どの施設区分に該当し、障害者雇用にどのように必要なのかを確認します。
作業施設は労働者が実際に作業する施設が対象
作業施設は、対象障害者が実際に働くために使用する施設です。
製造業であれば作業場や生産施設、その他の業種であれば業務を行うスペースなどが考えられます。
ただし、一般的な事業拡張だけを目的とした施設ではなく、多数の障害者を継続雇用するために必要な整備であることが求められます。
管理施設は作業施設と併せて整備する場合に対象
管理施設も支給対象になる場合があります。
たとえば、障害者を多数雇用する事業所の運営に必要な管理スペースなどです。
ただし、管理部門の施設だけを単独で整備することが目的ではありません。
作業施設等との関係や、障害者雇用を安定して続けるための必要性が確認されます。
福祉施設は住宅・休憩室・食堂・職業訓練施設などが対象
福祉施設としては、
- 労働者住宅
- 保健施設
- 休憩室
- 洗面所
- 食堂
- 職業訓練施設
などが対象になり得ます。
多数の障害者を継続雇用するには、作業場所だけでなく休憩や健康管理、職業訓練などの環境整備が必要になるケースがあります。
ただし、単に福利厚生を充実させる目的だけでは対象になりません。
作業・管理・福祉施設に必要な設備や備品も対象
施設そのものだけではなく、対象施設で使用する設備も支給対象になり得ます。
たとえば、障害特性に対応した作業設備や、施設の利用に必要な設備などです。
設備名だけで対象可否が決まるわけではありません。
対象障害者の雇用を継続するために必要であることを説明できるかが重要です。
対象施設は原則として申請事業主が所有する必要がある
支給対象となる事業施設等は、原則として申請事業主自身が所有するものです。
賃借している建物へ大規模な設備投資を行う場合などは、同じように対象になるとは限りません。
整備予定の土地や建物の所有関係も、計画段階で確認してください。
重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金の対象外となる費用

障害者雇用に関係する設備であっても、すべての費用が支給対象になるわけではありません。
工事内容や購入方法、取引先によって対象外になる場合があります。
中古設備・自社製品・自社施工は対象外
中古設備や中古製品は、原則として支給対象になりません。
また、
- 自社で製造した設備
- 自社で施工した工事
なども対象外です。
支給対象費用を明確に確認できる第三者との取引であることが基本となります。
関係会社や役員・親族との一定の取引は対象外
申請事業主と密接な関係がある企業や個人との取引には制限があります。
たとえば、
- 親会社
- 子会社
- 役員が関係する企業
- 役員の近親者等が関係する取引
などでは、支給対象費用として認められない場合があります。
形式上は別会社であっても、実質的に利益が還流するような取引は避ける必要があります。
既存設備の解体・撤去・廃棄費用は原則対象外
新しい施設や設備を導入するために既存設備を撤去する場合でも、解体・撤去・廃棄費用がすべて対象になるわけではありません。
支給対象となる本体工事費と、対象外経費を見積書上で分けておく必要があります。
工事一式としてまとめて見積もると、対象費用の確認が難しくなるため注意してください。
通常の維持管理・保守費用は対象外
施設や設備を取得した後に必要となる、
- 保守費
- 修繕費
- 維持管理費
- 日常的なメンテナンス費
などは、原則として施設設置等の費用には含まれません。
助成金は新たな施設・設備整備を支援する制度であり、通常のランニングコストを継続的に補助するものではありません。
重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金の申請方法

この助成金は、一般的な補助金のように、最初から工事見積を付けて交付申請すればよい制度ではありません。
事前審査を経てから受給資格認定申請へ進みます。
1.JEED都道府県支部へ事前相談する
最初に、事業所所在地を管轄するJEEDの都道府県支部へ相談します。
相談時には、
- 対象障害者数
- 全労働者数
- 継続雇用期間
- 整備予定の施設
- 整備の必要性
- 概算費用
などを整理しておくと進めやすくなります。
高額な施設整備になる可能性が高いため、自己判断で工事計画を確定する前に相談することが重要です。
2.事業計画書を提出して事前審査を受ける
次に、施設整備や障害者雇用の計画をまとめた事業計画書を提出します。
事前審査では、単に設備の必要性だけを見るわけではありません。
事業の継続性や経営状況、障害者雇用の実績、施設整備後の雇用計画なども確認されます。
ここで事業所としてのモデル性や計画の妥当性が審査されます。
3.採択後に受給資格認定申請を行う
事前審査を通過した後、正式な受給資格認定申請へ進みます。
認定申請では、
- 施設・設備の設計内容
- 見積書
- 雇用状況
- 対象障害者の情報
- 土地・建物の所有関係
- 資金計画
などを確認できる書類が必要になります。
この時点でも、まだ工事や設備発注を先に進めないようにしてください。
4.認定後に工事・設備購入の契約や発注を行う
工事や設備購入は、原則として受給資格認定後に行います。
認定前に、
- 工事契約
- 設備購入契約
- 発注
- 着工
- 支払い
などを行うと、支給対象外になる可能性があります。
高額な工事では工期や納期の調整が必要ですが、助成金利用を優先するなら認定後に正式契約してください。
5.認定から1年以内に整備・支払い・支給請求を完了する
受給資格認定後は、原則として認定日から1年以内に、
- 施設・設備の整備
- 代金の支払い
- 支給請求
まで完了する必要があります。
大規模工事では、設計・施工・設備納入まで時間がかかることがあります。
認定後に計画が大幅に遅れないよう、申請前から現実的な工程を組んでおきましょう。
高額な施設整備を行うときの見積・入札ルール

重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金は、数千万円規模の施設整備にも対応する制度です。
そのため、支給対象費用が高額になる場合は、業者選定にもルールがあります。
150万円以上1,000万円以下は原則3者以上の相見積が必要
支給対象費用が150万円以上1,000万円以下の場合は、原則として3者以上から相見積を取得します。
単に最も付き合いの長い業者1社だけへ発注するのではなく、価格の妥当性を確認する必要があります。
相見積を取るときは、
- 同じ仕様
- 同じ工事範囲
- 同程度の設備性能
で比較できるようにしてください。
見積条件が異なると、価格の比較が難しくなります。
1,000万円を超える場合は原則として競争入札が必要
支給対象費用が1,000万円を超える場合は、原則として一般競争入札または指名競争入札が必要です。
高額な施設整備では、事業者側が自由に業者を選んで契約するだけでは足りません。
入札方法や手続きにも条件があるため、工事会社を先に決めてしまう前にJEEDへ確認することが重要です。
重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金を利用するときの注意点

この助成金は支給額が大きい一方、申請前・整備中・支給後まで守るべき条件があります。
施設整備が終わればすべて完了する制度ではありません。
認定前に工事・購入を契約すると助成対象にならない
最も注意したいのが、契約・発注の時期です。
事業計画の事前審査を通過しただけでは、工事を開始してよい段階ではありません。
正式な受給資格認定を受ける前に契約や発注を行うと、助成対象として認められない可能性があります。
設計段階から助成金を利用する予定であることを施工会社などへ伝え、契約時期を調整しましょう。
支給後は原則5年以上の雇用継続が必要
助成金を受け取った後も、対象障害者の雇用継続が求められます。
原則として、支給決定から5年以上は対象施設等を対象障害者の雇用のために使用し、安定した雇用を続ける必要があります。
助成金で施設を整備した直後に障害者雇用を縮小するような利用は想定されていません。
長期的な採用・雇用計画まで含めて申請する必要があります。
対象者が離職した場合は代替雇用が必要になることがある
支給後に対象障害者が退職した場合、直ちに助成金の全額返還になるとは限りません。
自己都合退職など一定の事情で離職した場合は、所定の期間内に代わりとなる対象障害者を雇用し、JEEDの承認を受けることで雇用人数を維持できるケースがあります。
一方、対象者数や雇用割合が継続的に要件を下回る場合は、助成金の取扱いに影響する可能性があります。
離職が発生した段階で早めに相談してください。
施設整備資金を借り入れる場合は利息助成も利用できる
大規模な施設整備では、助成金が支給されるまでの資金を自社だけで用意するのが難しい場合があります。
一定の要件を満たして金融機関等から施設・設備整備資金を借り入れた場合は、その借入金の利息について助成を受けられることがあります。
利息助成の対象となる借入金には上限があり、助成期間も最長5年間です。
本体の施設整備助成とは計算方法が異なるため、融資を利用する予定がある場合は事前相談時に確認しておきましょう。
2026年度は企画競争型ではなく随時受付・審査
2026年度は、企画競争型による認定は実施されず、認定申請を随時受け付けて審査する運用となっています。
ただし、「いつでもすぐ工事を始められる」という意味ではありません。
事前相談や事業計画の確認、認定手続きが必要です。
施設整備の予定がある場合は、工事開始時期から逆算して早めに準備しましょう。
重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金は人数要件と整備計画を確認しよう

重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金は、多数の障害者を継続雇用する事業所が、安定した障害者雇用を続けるために必要な施設・設備を整備する際に利用できる制度です。
基本となる対象事業所の条件は、
- 支給対象障害者を10人以上雇用
- 全労働者に占める対象障害者の割合が20%以上
- 認定申請日時点で1年を超えて継続雇用
です。
対象障害者には、重度身体障害者だけでなく、一定の知的障害者や精神障害者も含まれます。
助成率は原則2/3、1認定あたりの支給上限額は5,000万円です。
一定の特例要件を満たす場合は、助成率3/4、最大1億円まで引き上げられます。
対象となる施設は、
- 作業施設
- 管理施設
- 福祉施設
- それらに必要な設備
の4区分で考えると分かりやすくなります。
一方、中古設備や自社施工、認定前の契約・発注などは対象にならない場合があります。
さらに、150万円以上の支給対象費用では相見積、1,000万円を超える場合は原則として競争入札が必要です。
申請するときは、
- 自社が10人・20%・1年超の要件を満たすか確認する
- 障害者雇用を継続するために必要な施設・設備を整理する
- JEEDへ事前相談する
- 事業計画の事前審査を受ける
- 受給資格認定後に契約・工事を開始する
- 認定から原則1年以内に整備・支払い・支給請求を完了する
という順番で進めます。
支給額が大きい制度だからこそ、単なる施設改修ではなく、長期的な障害者雇用計画まで含めて準備することが重要です。
