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人材確保等支援助成金とは?コース別の違いと対象企業をわかりやすく解説

人材の採用・定着に悩む中小企業や業界特化型の事業者にとって、「人材確保等支援助成金」は強力なサポート制度です。

しかし、制度の種類が多岐にわたり、「結局どのコースが使えるのか」「うちの会社は対象なのか」といった疑問を感じる方も少なくありません。

この助成金制度には、雇用環境の整備外国人労働者の受け入れ体制の強化テレワークの導入支援若年者や女性の活用促進など、企業の課題に合わせた多様な支援コースが用意されています。

本記事では、人材確保等支援助成金の制度全体像とその目的をわかりやすく整理したうえで、2025年度に利用可能な各コースの違い・対象要件・支援内容を具体的に解説します。

さらに、自社に合ったコースの選び方や申請手順、ありがちな不支給リスクまで幅広くカバー。

「うちの会社でも対象になるのかも」と思えるようなヒントを得られる構成になっていますので、助成金活用を検討しているご担当者の方はぜひ最後までご覧ください。

目次

人材確保等支援助成金とは?制度の概要と目的

人手不足や離職率の高さが深刻化する中、企業が人材の確保と定着を図るには、制度的な支援が欠かせません。

人材確保等支援助成金は、まさにこうした経営課題に応えるために設けられた支援策です。

とはいえ、「名前は知っているが詳しくは分からない」「うちが対象かどうかが不安」という声も多く見られます。

このセクションでは、まず制度の設立背景や目的を明らかにしたうえで、誰が対象になり、どのような流れで受給できるのかを丁寧に解説していきます。

この助成金制度が生まれた背景とは

近年、少子高齢化による労働力人口の減少に加え、企業間の人材獲得競争が激化しています。

特に中小企業では、「採用しても定着しない」「職場環境が原因で早期離職が多い」といった課題が表面化していました。

こうした状況を受けて厚生労働省は、職場環境の改善や人事制度の整備を通じて“魅力ある職場づくり”を推進する支援策として、「人材確保等支援助成金」を創設しました。

この制度は単なる採用補助にとどまらず、定着・育成・多様な人材活用までをカバーする点が特徴です。つまり、「人材を増やす」だけでなく、「働きやすく辞めにくい会社を作る」ことがゴールとされています。

▼誰が対象?事業主・従業員の要件整理

助成金の対象となるのは、雇用保険適用事業所の事業主です。

さらに、以下のような条件を満たす必要があります。

雇用保険の適用を受けている従業員がいること
対象となる制度(例:雇用管理制度、テレワーク導入など)を計画に基づいて導入・実施すること
・支給対象となる従業員は「正社員(無期かつ所定労働時間がフルタイム)」が原則

また、支給対象の制度を実施するためには、計画書の提出・認定を受けたうえで、一定期間制度を運用することが求められます。

たとえば雇用管理制度助成では、人事評価制度や研修制度などの導入・運用が該当します。

なお、コースごとに建設業限定外国人労働者を受け入れている企業限定など、個別要件が設けられている場合もありますので、後述のコース解説を必ずご確認ください。

▼受給までの流れとスケジュール感

助成金の受給までには、以下のようなステップが必要です。

1.事前準備・社内整備の検討
導入予定の制度や整備内容を明確にする。
2.計画書の作成と提出
制度の導入前に、都道府県労働局等に「支給申請計画書」を提出。
※提出は「制度開始の1か月前まで」が原則。
3.制度の導入・運用
計画に基づき、3〜6か月程度の期間で制度を社内に定着させる。
4.実績報告・支給申請
導入後に「制度を実施した証拠書類(例:社内規程、研修記録など)」を提出。
5.審査後、助成金の支給
支給決定後、数週間〜数ヶ月で指定口座に振込。

なお、助成金の受付締切・公募期間はコースや年度によって異なるため、必ず最新の実施要領を確認することが重要です。

制度の目的を理解すれば導入の方向性が見える

人材確保等支援助成金は、「人材不足を補うための場当たり的な制度」ではなく、中長期的に人が定着する職場づくりを支援する戦略的な制度です。

どの企業が対象になり得るのか、どのような取り組みが助成対象になるのかを正しく理解すれば、「うちの会社にも使えるかもしれない」という視点が自然に生まれます
この理解が、助成金活用への第一歩です。

コース別にわかる支援内容と対象取組【2025年度対応】

人材確保等支援助成金は、2025年度現在で7つのコースに分かれており、企業の課題や業種に応じて選択できる仕組みになっています。

ただし、すべてのコースを詳細に把握する必要はなく、自社の状況に合った制度を選ぶことが最も重要です。

本セクションでは、特に活用の多い主要5コースを中心に詳しく解説しつつ、その他の限定的なコースについても簡単に触れ、制度全体の理解と自社に合った選択ができるよう整理しています。

雇用管理制度・雇用環境整備助成コース

もっとも多くの企業で活用されているコースで、従業員の定着や働きやすい環境整備に対する支援を目的としています。

主な対象取組

人事評価制度、研修制度、メンター制度の導入
1on1ミーティング、従業員満足度調査など
業務負担軽減を目的とした機器・設備導入

助成額例

制度整備 – 最大57万円
設備導入 – 最大190万円
※合計最大247万円

職場の定着率や人材育成に課題を感じている中小企業には、最初に検討すべきコースです。

外国人労働者就労環境整備助成コース

外国人労働者を受け入れている、または今後受け入れる予定の企業に対して、就労環境の整備を支援します。

主な対象取組

雇用労務責任者の選任
就業規則やマニュアルの多言語化
苦情相談体制の整備、帰国休暇制度の導入

助成額例

最大72万円(取組内容による)

外国人雇用の法的対応・社内整備を進めたい企業にとって必須のコースです。

テレワークコース

新たにテレワークを導入する、または再開・拡大する企業向けのコースで、ICT環境や制度整備への支援が行われます。

主な対象取組

テレワーク用の労務管理・人事評価制度の整備
導入に必要な機器・ソフトウェアの購入
労働時間制度の見直しと規定整備

助成額例

最大200万円

働き方改革や育児・介護との両立を推進する企業に有効です。

若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース

建設業等を対象とし、若手や女性の定着・入職促進を目的とした職場改善を支援します。

主な対象取組

女性専用更衣室・トイレなどの設置
作業環境の美化・安全性向上
雇用管理責任者の選任や職場定着制度の導入

助成額例

最大250万円

建設分野における女性活躍・若年層確保を支援する制度として注目されています。


作業員宿舎等設置助成コース

建設分野の作業員向けに、宿舎や訓練施設、女性専用設備を設置する場合に支給されるコースです。

支援対象

女性専用作業員宿舎やトイレ等の整備
訓練施設・シャワー室等の設置

助成額例

最大数百万円(地域・用途によって変動)

※一部コースは石川県限定東北復興地域限定など、地域要件があるため注意が必要です。

その他の制度

中小企業団体助成コース

商工会・組合等の中小企業団体が、共同で職場環境整備や雇用支援を行う場合に適用される特殊なコースです。

建設キャリアアップシステム等活用促進コース

建設技能者の能力評価やキャリア形成を支援する制度で、CCUS(キャリアアップシステム)導入等を対象としています。

これらは個別性が高く、対象となる事業者が限られるため、一般企業では該当しない場合も多いですが、該当する団体・事業主は積極的に検討すべきです。

制度全体を俯瞰し、自社に合ったコースから着手を

人材確保等支援助成金の7コースには、それぞれ異なる目的と対象がありますが、重要なのは「自社がどの課題を解決したいか」から逆算して選ぶことです。

まずは、従業員の定着支援・外国人雇用・テレワーク・女性活躍などの代表的な5コースから内容を把握し、必要に応じて他の限定的な制度もチェックすることで、制度の活用効果を最大限に引き出すことができます。

どのコースを選ぶべき?自社に合った助成金の選び方

人材確保等支援助成金には7つのコースがありますが、制度の全体像だけを眺めても、「結局どれを選べばいいのか分からない」というのが多くの企業の本音でしょう。

制度を活用する第一歩は、「自社の課題と一致するコースを選ぶ」ことです。

このセクションでは、よくある企業の課題別に、どのコースが最も適しているかを明確に解説していきます。

自社にとって活用価値の高いコースがどれなのか、整理しながら読み進めてください。

▼従業員の定着を強化したい企業におすすめのコース

「採用はできても、すぐに辞めてしまう」「人が定着しない」といった悩みを抱える企業には、雇用管理制度・雇用環境整備助成コースが最も適しています。

このコースでは、人事評価制度や研修制度、従業員との1on1ミーティング導入など、制度面から定着率を高める取組が対象となります。

また、業務効率化やストレス軽減を目的とした設備投資も支給対象に含まれます。

ポイントは「人が辞めにくくなる仕組みを整える」ことに助成金が出るという点です。

特に中小企業では制度整備に手が回らないことが多いため、初めての助成金活用にも向いています。

▼外国人採用を進める企業向けコースの選定基準

外国人労働者を既に採用している、または今後受け入れる予定の企業には、外国人労働者就労環境整備助成コースが最適です。

このコースでは、以下のような「外国人が安心して働ける環境整備」が支援対象となります。

雇用労務責任者の配置
社内規則やマニュアルの多言語化
苦情相談窓口の整備
帰国時の休暇制度の導入 など

単なる制度対応にとどまらず、「安心して働ける職場」をつくることが目的です。

特定技能や技能実習生を受け入れている事業者にとって、実務面でも活用価値は高く、今後の外国人雇用の基盤整備に直結します

▼テレワークの導入・拡大を計画している場合

「新たにテレワークを始めたい」「以前導入していたが再開したい」と考えている企業には、テレワークコースの活用が推奨されます。

対象となるのは、テレワークに関する制度・環境整備で、具体的には

就業規則・評価制度などの整備
テレワークに必要なPCやソフトウェアの導入
テレワーク勤務者への安全配慮措置(椅子・机など)

新しい働き方を実現するための初期投資を補助してくれる制度であり、特に「出社前提」の社風を変えたい企業には好適です。

また、育児・介護と仕事の両立や、多様な働き方を推進する場面でも有効です。

▼女性・若年層の活用を進めたい建設業などのケース

「女性の定着が難しい」「若手が入ってもすぐに辞めてしまう」といった建設業に多い悩みには、若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コースがマッチします。

このコースでは、建設分野に特化して、女性・若年層の職場環境を改善するための設備や制度整備に対して助成が行われます。

たとえば

女性専用トイレや更衣室の設置
作業環境の改善(清潔さ・安全性など)
雇用管理責任者の配置や定着支援制度の導入

「女性が安心して働ける」「若手が働き続けたいと思える」職場づくりに直結するコースであり、今後の人材戦略として非常に重要な施策です。

課題から逆算して選ぶのが正解

人材確保等支援助成金を最大限に活用するには、「制度内容から選ぶ」のではなく、「自社の課題から逆算して選ぶ」ことが重要です。

・定着率の低さに悩む → 雇用管理制度コース
・外国人雇用を始めたい → 外国人就労環境整備コース
・テレワークの再開や制度化 → テレワークコース
・建設業で女性や若手を採用・定着させたい → 若年者・女性支援コース

このように、自社が解決したい課題に合ったコースを選ぶことで、助成金の効果が最大化され、制度活用の失敗も防げます。

申請の流れと必要書類一覧|事前準備から支給まで

どのコースを使うかが決まっても、「いつ、どんな手続きが必要か」がわからなければ、助成金は活用できません。

人材確保等支援助成金は事前申請が必須であり、「整備してから申請」は原則NG

このルールを誤解している企業が多く、実際に不支給になるケースも少なくありません。

このセクションでは、申請までのステップを時系列で整理しながら、提出タイミング・必要書類・振込までの流れを丁寧に解説します。

▼計画書の提出タイミングと留意点

人材確保等支援助成金では、制度や設備を導入する前に「計画書」の提出と認定を受けることが必須です。

導入後に「遡って申請する」ことは原則できないため、スケジュール設計が非常に重要です。

計画書提出の基本ルール

計画開始予定日のおおむね1か月前までに提出(※余裕をもって準備するのが望ましい)
提出先は都道府県労働局やハローワーク(コースにより異なる)
書類審査が通った後でないと取組を開始できない

また、提出前には労働関係法令(労基法・労災など)に違反がないことが前提です。

法令違反があると助成金の審査対象外となるため、直近の是正勧告や指導履歴がないか事前確認しておくことが大切です。

▼必要書類と申請フォーマットの確認ポイント

各コース共通で求められる書類と、コースごとに必要な書類があり、事前に最新の公募要領・様式一覧を確認することが必須です。

一般的に必要となる主な書類

計画書本体(指定フォーマットあり)
会社概要・組織図・雇用保険適用事業所確認資料
取組対象の制度・設備の導入内容を示す資料(就業規則、見積書、研修プログラム等)

提出時の注意点

・記載内容に不備があると差し戻し・再提出になる
制度の導入時期や対象人数、対象社員の雇用区分(無期・有期)など、助成要件との整合性を重視

フォーマットは厚労省のサイトまたは各都道府県の労働局ページからダウンロード可能ですが、年度やコースごとに細かく分かれているため、誤った様式を使わないよう注意が必要です。

▼支給決定から実際の振込までのフロー

制度や設備を導入し、一定期間の運用・実施を終えた後は、実績報告と支給申請の手続きに入ります。

支給までのステップ概要

1.制度・設備の導入・実施完了(例:3か月間運用)
2.実績報告書の作成と提出
(導入内容の証明書類、運用記録、社員アンケートなど)
3.支給申請書の提出
(支給金額に応じて証憑の添付が必要)
4.審査・決定通知の受領
内容に問題がなければ、正式に支給が決定
5.指定口座に助成金が振り込まれる
※通常は申請から2〜4か月後

支給後は、必要に応じて報告義務や書類保管義務(5年間など)があるため、証憑類は整理しておくことが求められます。

「準備→実施→報告」の流れを逆算して進めよう

人材確保等支援助成金を活用するには、助成対象の取り組みを実施する前にしっかりとした計画と申請準備が必要です。

・制度の導入を検討し始めた時点で計画書の準備に入ること
・申請から支給までは数か月単位で時間がかかること
・助成金の条件と自社の取り組みが一致しているかを常にチェックすること

このように、申請の流れを理解して事前に逆算して行動することで、不支給リスクを回避し、制度を最大限に活用することができます。

申請時の注意点とよくある不支給ケース

人材確保等支援助成金は、要件を満たしていれば返済不要で活用できる非常に有用な制度です。

しかし一方で、制度の誤解や申請手続きの不備、運用上のミスなどによって「不支給」になるケースも少なくありません。

「うちにも当てはまりそうだ」と思った企業こそ、“受けられるはずだった助成金”を失わないよう、注意点を事前に理解しておくことが重要です。

ここでは、実際によくある不支給の理由と、その回避策を具体的に解説していきます。

▼制度廃止や要件改正で対象外になるリスク

制度は毎年度見直されるため、前年度まで存在していたコースが急に廃止されたり、要件が変更されることがあります。

たとえば

「介護福祉機器助成コース」「人事評価改善等助成コース」などは2025年度に廃止済み
「生産性要件」が廃止され、「賃金引き上げ要件」に変わったケースも過去にあり。

過去の事例やネット記事だけを参考にすると、現在の制度とズレが生じてしまうため、必ず厚労省や労働局の最新情報を確認することが基本です。

▼離職率など数値条件が達成できなかったケース

助成金には、「制度を導入すればOK」ではなく、その効果を数値で確認できることが求められるケースがあります。

特に雇用管理制度助成コースなどでは、離職率の改善や正社員転換率の向上など、数値目標が設定されることが多いです。

よくある失敗例

導入後に社員が複数人退職し、定着率が基準を下回った
雇用区分や契約更新の記録が不十分で、正社員化の証拠が不明確だった

対策としては、制度導入前から離職率や人事異動記録を定期的に管理し、評価期間中の従業員の動きを明確にしておくことが必要です。

▼他の助成金と併用できない場合の整理

助成金の中には、内容や対象が重複することで「ダブル受給不可」とされるケースがあります。

たとえば

同じ従業員に対し、キャリアアップ助成金(正社員化)と雇用管理制度助成金を重ねて申請することは原則不可
「省力化補助金」や「業務改善助成金」と設備導入内容が重複している場合も注意が必要

助成金は国費で運営されており、「同じ目的で二重にお金を受け取る」ことは基本的に認められていません

制度の趣旨と重ならないかを確認するには、事前に社労士や労働局に相談することが確実です。

▼建設業コースに特有の適用条件とは?

建設業関連のコースには、「建設業であること」を証明するための保険料率や事業区分の適用条件があります。

具体的には

・雇用保険の「建設の事業」率で適用を受けている必要がある
元請・下請の事業形態によっては、制度対象外となることもある
一部の助成は、女性専用施設が整備されていないと対象にならない

特に下請・多重構造の現場では、形式的に建設業に該当していないと判断されるケースもあるため、事前確認が非常に重要です。

▼予定通りの計画実施が難しかった場合の対処法

助成金は、「計画書に基づいて取組を実施し、そのとおりに報告する」ことが原則です。

しかし、実際には設備の納品遅延、従業員の離職、制度の導入延期など、計画どおりに進まないケースもあります。

そんな時の注意点

・自己判断で中止・変更せず、必ず労働局に相談・変更申請を行うこと
小さな変更でも、事前に認められないと不支給になることがある
一部のコースでは、代替取組やスケジュール変更が柔軟に認められる場合もある

つまり、計画と実施が完全に一致しないからといって、即失敗になるわけではありません。

早期の相談と正しい手続きが助成金確保のカギです。

「もらえるはずだった助成金」を失わないために

人材確保等支援助成金を有効に活用するには、「制度を知る」だけでなく、運用上の注意点をしっかり理解することが不可欠です。
特に以下のようなポイントを事前に押さえることで、不支給のリスクを大きく減らすことができます。

制度の最新情報を確認し、廃止や改正に対応する
数値目標の有無を確認し、効果検証の準備をしておく
他の助成金との併用可否をチェック
建設業など特定業種は、保険料率や区分の適用条件を確認
実施が難しい時は、放置せずすぐに相談・変更申請

これらを踏まえて行動すれば、せっかくの制度を無駄にせず、事業の成長と働きやすい職場づくりに直結させることが可能です。

【最新動向】2025年度の変更点と削除されたコース情報

人材確保等支援助成金は、制度設計の見直しが頻繁に行われており、コースの廃止・要件変更などが発表されています。

最新の制度動向を把握していないと、申請のために準備していた取組が対象外になっていた…というケースもありえます。

このセクションでは、2025年度時点で公式に廃止・削除されたコース・特例措置の終了内容を明確にし、「今後申請しようとしていたコースが使えるかどうか」を判断できるよう解説します。

▼人事評価改善等助成コースの廃止

・廃止日 – 令和7年(2025年)4月1日から。
・概要 – かつて、人事評価制度や賃金制度を整備し、生産性を向上させたり賃金の引き上げを行ったりする企業を対象としていたコース。
・扱い方 – 廃止後は、新規の申請受付が停止されています。過去に計画認定を得ていた分については経過措置があるものの、これから制度設計をして申請を考えている企業には適用されないコースです。

▼介護福祉機器助成コースの削除

・削除日 – 令和6年(2024年)3月31日をもって、介護福祉機器助成コースは廃止されました。
・対象内容 – 介護事業者が離職率低下を目的として、移動・昇降用リフト、装着型移乗介助機器、体位変換補助器具、特殊浴槽などの福祉機器を導入するもの。
・注意点 – 廃止前の申請計画認定を行っていた案件については、経過措置の対象となる場合があります。

▼地域・業種限定だった特例措置の終了内容

・特例措置の終了 – 一部のコースでは、地域や業種を限定した特例が設けられていたものがありましたが、そのうち幾つかが終了しています
・具体例 – たとえば、建設キャリアアップシステム等普及促進コースの一部特例、特定地域における宿舎設置助成の特例など。
・影響 – 地域特有の助成をあてにしていた企業では、該当していた制度の対象外となる可能性があるため、地域の最新の公募要領を必ず確認することが重要です。

今後の申請で「思っていた制度が使えない」を防ぐために

2025年度から、人事評価改善等助成コースや介護福祉機器助成コースなど、過去には人気だったコースが廃止または削除されています。これらを誤って前提に申請準備を進めると、時間とコストが無駄になる恐れがあります。
特に、経過措置の有無地域・業種の限定などは、制度の最新要項を確認しておかないと見落としが発生します。
今後申請を検討するなら、まず公式サイトで「対象コースが現在有効か」「新しい代替コースが設けられていないか」をチェックすることが必須です。

この最新動向を踏まえて、自社が申請可能なコースを再確認し、「使える制度」に今すぐシフトを図りましょう。

助成金で終わらせない!制度活用後に企業がすべき3つのアクション

人材確保等支援助成金を活用することで、制度や設備を導入し、職場環境を改善できた企業も多いはずです。

しかし、「助成金を受け取って終わり」では、本来の目的である“人材の定着と活躍”を十分に実現できません。

ここでは、助成金を最大限に活かすために企業が取るべき“次の一手”を3つの視点で解説します。

定着率の「見える化」で次回申請への布石を打つ

助成金を活用して制度を導入した後は、成果を定量的に把握する仕組みづくりが重要です。

たとえば、1on1ミーティングや評価制度を導入した場合、「その後、退職者数はどう変化したのか」「従業員満足度にどんな影響があったか」を測定していないと、改善の効果が見えません。

実施後の定着率や人材育成効果を「数値化」して記録することで、以下のメリットが得られます

次回の助成金申請時に、改善実績を証明できる
社内外に対して“変化の成果”を説明しやすくなる
改善効果の薄い制度を見直す判断材料になる

助成金を“単発の投資”ではなく、“継続改善の入口”に変えるためには、「数値で検証し、次の計画につなげる」姿勢が欠かせません。

助成対象にならなかった取り組みの再構築

人材確保等支援助成金は、要件に沿った取り組みしか支援対象になりません。

たとえば、「福利厚生の一環でカフェを導入したい」「最新型のリモート会議システムを入れたい」といった施策でも、助成金の枠外になる場合があります。

しかし、それらが“無駄”になるわけではありません。

むしろ、以下のような行動が重要です。

対象外だった取組について、別の助成金制度を探してみる
「なぜ対象外だったのか」を労働局や社労士に相談し、再設計する
将来的に制度変更があった際に備えて、一度却下された取組も記録として残しておく

つまり、「使えなかった=終わり」ではなく、“今は通らなかったけれど、将来の申請候補”として育てていく視点が大切です。

他の補助金・助成制度との組み合わせ戦略

人材確保等支援助成金だけで、企業の人材課題をすべて解決することは難しい場合もあります。
そこで意識したいのが、他の制度との“補完的な組み合わせ”です。

例として挙げると

・設備導入は「省力化補助金」や「業務改善助成金」で対応し、制度整備は本助成金で申請する
・正社員化・多様な働き方の導入は「キャリアアップ助成金」と並行して活用する
・デジタルツール導入や研修支援には「IT導入補助金」「人材開発支援助成金」も併用可能

もちろん、「併用できない制度」も存在するため、制度間の目的の違いや重複の有無は必ず確認が必要です。

複数の制度を戦略的に組み合わせることで、費用負担を抑えながら継続的な職場改革が可能になります。

助成金は「点」で終わらせず、「線」として活かす

助成金は、単なる資金補助ではなく、企業が継続的に働き方改革や職場改善を進めるための“起点”です。

成果を数値化して次の制度改善に生かす
対象外だった施策も再活用の可能性を探る
他制度との併用で、継続的な取り組みに拡張する

これらを意識することで、助成金の効果を「一時的」ではなく「持続的な成長」につなげられます。
助成金を“もらうこと”がゴールではなく、“人が辞めない仕組みを作ること”が本質である。
その視点を持つ企業こそ、次の成長機会をつかむことができるでしょう。

自社に合う制度が見つかれば、人材確保はもっと戦略的に進められる

人材確保等支援助成金は、単なる「人を雇うための資金援助」ではなく、職場環境の改善や人材の定着、外国人や女性の活躍推進といった中長期的な課題を支援する制度です。

この記事では以下のポイントを明確にしてきました。

・助成金の目的や背景、対象企業の基本要件
・2025年度に申請可能な7つのコースと、その支援内容の違い
・自社の状況に応じたコースの選び方
・申請の流れや必要書類、見落としがちな不支給リスク
・制度改正による最新動向と今後の留意点
・助成金を使ったあとに企業がさらに成長するためのアクション

ここまで読んで、「うちにも当てはまるかもしれない」と感じたなら、それが申請準備を始めるベストなタイミングです。

まずは、自社の課題を明確にする
その課題に近いコースの要件と支援内容を確認する
必要書類や計画書の準備に取りかかる

助成金は「制度を知っている企業」と「実際に活用できる企業」とで大きな差が生まれます。

本記事が、貴社の人材確保・職場改革を後押しする一歩になれば幸いです。

この記事を書いた人

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