両立支援等助成金は、育児や介護、不妊治療、女性の健康課題などと仕事を両立しやすい職場環境づくりに取り組む事業主を支援する制度です。
2026年度は、男性の育児休業取得、育休からの職場復帰、育休・時短勤務中の業務代替、介護離職防止、柔軟な働き方、不妊治療や月経・更年期への対応など、目的に応じて6つのコースが設けられています。
ただし、制度を就業規則に追加しただけで自動的に助成金を受け取れるわけではありません。
コースごとに、制度の導入、対象労働者による実際の利用、面談や支援プランの作成、申請期限などの要件があります。
この記事では、2026年度の両立支援等助成金について、6コースの違い、主な支給額、どのような企業が利用できるのか、申請前に整えておきたい内容まで解説します。
両立支援等助成金とは?仕事と家庭の両立を支える事業主向け制度

両立支援等助成金は、従業員が育児・介護などを理由に仕事を辞めることなく、働き続けられる環境を整備した事業主を支援する雇用関係助成金です。
制度利用者本人だけでなく、育休中の業務を引き受ける従業員への手当や、代替要員の確保を支援するコースもあります。
2026年度は育児・介護・女性の健康課題など6コースがある
2026年度の両立支援等助成金は、次の6コースで構成されています。
| コース | 主な対象 |
| 出生時両立支援コース | 男性労働者の育児休業取得 |
| 介護離職防止支援コース | 介護休業・介護両立支援制度 |
| 育児休業等支援コース | 育休取得から職場復帰までの支援 |
| 育休中等業務代替支援コース | 育休・時短勤務中の業務代替 |
| 柔軟な働き方選択制度等支援コース | 育児期の柔軟な働き方 |
| 不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース | 不妊治療・月経・更年期 |
同じ「育児」に関係する制度でも、誰を支援するのかによって利用するコースが異なります。
特に、出生時両立支援コース、育児休業等支援コース、育休中等業務代替支援コースは混同しやすいため、目的を分けて考えることが重要です。
多くのコースは中小企業事業主を中心に支援している
2026年度の両立支援等助成金では、複数のコースが中小企業事業主を対象としています。
たとえば、介護離職防止支援コース、育児休業等支援コース、柔軟な働き方選択制度等支援コース、不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コースは、中小企業事業主が主な対象です。
一方、育休中等業務代替支援コースでは、手当支給等について全事業主を対象とする仕組みもあります。
そのため、「両立支援等助成金はすべて中小企業しか使えない」と一括りにせず、利用したいコースごとに企業規模要件を確認しましょう。
従業員の状況から使えるコースを選ぶ

両立支援等助成金は、制度名から選ぶよりも「どの従業員を、どのように支援するのか」から考える方が分かりやすくなります。
| 従業員・会社の状況 | 主に確認するコース |
| 男性社員が育休を取得する | 出生時両立支援コース |
| 育休取得から復帰まで支援する | 育児休業等支援コース |
| 育休者の仕事を他の社員が担当する | 育休中等業務代替支援コース |
| 家族介護のために休業・制度利用する | 介護離職防止支援コース |
| 時差出勤・テレワークなどを整備する | 柔軟な働き方選択制度等支援コース |
| 不妊治療・月経・更年期を支援する | 不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース |
男性社員が育休を取るなら出生時両立支援コース
出生時両立支援コースは、男性労働者が育児休業を取得しやすい雇用環境や業務体制を整え、実際に育児休業を取得した場合などに利用できるコースです。
2026年度は、対象労働者が子の出生後8週間以内に育児休業を開始した場合、1人目20万円、2人目・3人目はそれぞれ10万円が支給されます。
また、男性の育児休業取得率が一定以上上昇し、所定の要件を満たした特定事業主には60万円が支給されます。
育休取得から職場復帰まで支援するなら育児休業等支援コース
育児休業等支援コースは、育休を取得する本人の円滑な休業取得と職場復帰を支援する制度です。
「育休復帰支援プラン」を作成し、プランに沿って支援を行うことなどが求められます。
2026年度の支給額は、
- 育休取得時:30万円
- 職場復帰時:30万円
です。
なお、同じ労働者の同じ育児休業について、出生時両立支援コースの「男性労働者の育児休業取得」と育児休業等支援コースを重ねて受給することはできません。
育休・時短勤務中の業務を代替するなら育休中等業務代替支援コース
育児休業を取得する従業員が出ると、周囲の社員へ業務負担が偏ることがあります。
育休中等業務代替支援コースは、その業務を代替する社員へ手当を支払ったり、新たに代替要員を雇用したりした事業主を支援する制度です。
育休を取る本人ではなく、職場全体の負担軽減に重点を置いたコースと考えると分かりやすいでしょう。
介護休業や介護制度を利用するなら介護離職防止支援コース
家族の介護を理由として仕事を辞めることを防ぐための制度が、介護離職防止支援コースです。
介護休業の取得・職場復帰だけでなく、時差出勤や短時間勤務などの介護両立支援制度、業務代替、有給の介護休暇制度なども支援対象になります。
育児中の柔軟な働き方を整えるなら柔軟な働き方選択制度等支援コース
子育て中の従業員が働き続けられるよう、複数の柔軟な働き方を整備した場合に利用できるコースです。
対象となる制度には、
- フレックスタイム
- 時差出勤
- 育児のためのテレワーク
- 短時間勤務
- 保育サービスの手配・費用補助
- 養育を容易にするための休暇制度
などがあります。
不妊治療・月経・更年期を支援するなら女性の健康課題対応コース
2026年度は、不妊治療だけでなく、月経に起因する症状や更年期なども支援対象です。
正式名称は「不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース」となっています。
制度を整えるだけでなく、相談体制を構築し、対象労働者が実際に制度を利用することが必要です。
男性育休と育児休業で受けられる助成内容

両立支援等助成金の中でも、育児関連はコースが複数あるため、支援内容を分けて確認しましょう。
出生時両立支援コースは男性育休取得で1人目20万円
男性労働者が子の出生後8週間以内に育児休業を開始し、必要な雇用環境整備などを実施した場合、1人目は20万円が支給されます。
2人目・3人目はそれぞれ10万円です。
単に男性社員が育休を申請しただけではなく、育休を取得しやすくするための環境整備なども要件になります。
男性育休取得率が上昇した事業主には60万円を支給
男性育休取得率が30%以上上昇し、50%達成などの要件を満たした特定事業主には60万円が支給されます。
1人の取得だけでなく、組織全体として男性育休が定着した企業を支援する仕組みです。
ただし、対象となる企業範囲には条件があります。
取得率だけを見て判断せず、2026年度の支給申請手引きで「特定事業主」の範囲を確認しましょう。
育児休業等支援コースは取得時・復帰時に各30万円
育児休業等支援コースでは、育休取得時に30万円、職場復帰時に30万円が支給されます。
取得時だけでなく、復帰後も継続して働ける環境づくりまで支援する点が特徴です。
職場復帰時の助成を受けるには、同じ労働者・同じ育児休業について、育休取得時の助成金を受給していることなどの条件があります。
育休・時短勤務中の業務代替にも助成される

育休取得を進めるときに問題になりやすいのが、休業者の仕事を誰が担当するかです。
2026年度の育休中等業務代替支援コースでは、周囲の従業員へ手当を支払う場合と、代替要員を新規雇用する場合の両方が用意されています。
周囲の従業員へ手当を支払った場合は手当額の3/4を助成
育児休業取得者の業務を代替する従業員へ手当を支給した場合、
- 業務体制整備費:最大20万円
- 業務代替手当:手当支給額の3/4、最大240万円
が支援されます。
短時間勤務者の業務を代替する場合も対象です。
この場合は、
- 業務体制整備費:最大20万円
- 業務代替手当:手当支給額の3/4、最大108万円
となっています。
代替要員を新規雇用した場合は期間に応じて助成される
育休取得者の代わりとなる人材を新たに雇用したり、派遣労働者を受け入れたりするケースもあります。
2026年度では、対象期間に応じて9万円から81万円が支給されます。
7日以上の代替から対象となり、1年以上の場合は最大81万円です。
既存社員へ負担を集中させるのではなく、新しい人員を確保して育休取得を支える企業も利用を検討できます。
育休本人向けのコースと業務代替支援を分けて考える
育児休業等支援コースは、育休を取得する本人の取得・復帰を支える制度です。
一方、育休中等業務代替支援コースは、休業によって生じる職場側の負担を軽減する制度です。
同じ育休でも、助成対象となる取り組みが異なります。
申請前に、「本人の育休支援なのか」「業務を代替する側の支援なのか」を整理しましょう。
介護と仕事を両立する取り組みへの支援

高齢化に伴い、家族の介護を理由として従業員が退職する「介護離職」への対応も重要になっています。
介護離職防止支援コースでは、介護休業だけでなく、休業せず働き続けるための制度も支援しています。
介護休業取得・職場復帰で40万円
対象労働者が介護休業を取得し、職場復帰した場合、2026年度は40万円が支給されます。
制度を利用できる状態にしておくだけではなく、対象者が実際に介護休業を取得し、復帰することが重要です。
介護両立支援制度の導入・利用で20万円または25万円
介護のための柔軟な働き方を整えた場合にも助成があります。
2026年度は、
- 制度を1つ導入し利用:20万円
- 制度を2つ以上導入し、1つ以上利用:25万円
です。
介護両立支援制度には、時差出勤、短時間勤務、在宅勤務、フレックスタイム、法を上回る介護休暇などがあります。
従業員が必ず長期休業を取らなければ利用できない制度ではありません。
介護休暇を有給化して利用させると30万円
法を上回る有給の介護休暇制度を導入し、対象労働者が実際に利用した場合は30万円が支給されます。
また、介護休業者の代替要員を新規雇用した場合は20万円、業務代替者へ手当を支給した場合は5万円、短時間勤務者の代替者へ手当を支払った場合は3万円の支援もあります。
柔軟な働き方や女性の健康課題にも利用できる

両立支援等助成金は、休業制度だけを対象とする助成金ではありません。
育児中の働き方を柔軟にしたり、不妊治療や女性の健康課題と仕事を両立できる環境を整えたりする場合にも利用できます。
柔軟な働き方制度を3つ導入すると20万円・4つ以上で25万円
2026年度の柔軟な働き方選択制度等支援コースでは、
- 制度を3つ以上導入し、対象者が利用:20万円
- 制度を4つ以上導入し、対象者が利用:25万円
です。
育児・介護休業法の改正によって、事業主には一定の柔軟な働き方に関する措置が求められているため、法定義務を超える制度を整備することが助成のポイントになります。
子の看護等休暇を有給化して利用させると30万円
子の看護等休暇を有給化し、対象労働者が制度を利用した場合は30万円が支給されます。
就業規則へ制度を記載するだけではなく、実際の利用実績まで必要です。
制度設計時には、利用日数や給与の扱いを確認できるよう、勤怠管理の方法も整えておきましょう。
不妊治療・月経・更年期の両立支援はそれぞれ30万円
不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コースでは、次の3つがそれぞれ支援対象です。
- 不妊治療のための両立支援制度を5日・5回利用:30万円
- 月経に起因する症状への支援制度を5日・5回利用:30万円
- 更年期に起因する症状への支援制度を5日・5回利用:30万円
制度名に「女性の健康課題」とありますが、不妊治療など対象となる制度については、要件を満たせば性別を問わず対象労働者となる場合があります。
両立支援等助成金を申請する前に整えておくこと

両立支援等助成金は、対象となる休業や制度利用が発生してから初めて準備すればよいものではありません。
コースによっては、利用前の面談や支援プランの作成、就業規則の整備などが必要です。
育児・介護休業規程や就業規則を最新法令に合わせる
両立支援等助成金を申請する場合、育児・介護休業法に基づく制度を適切に整備していることが求められます。
厚生労働省も、育児・介護休業規程の整備や一般事業主行動計画の策定などが必要になる場合があると案内しています。
古い就業規則のままでは、現在の法改正に対応できていない可能性があります。
申請前に、
- 育児休業
- 介護休業
- 子の看護等休暇
- 介護休暇
- 短時間勤務
- 柔軟な働き方
などの規程を確認しましょう。
対象コースに応じて両立支援プランや面談記録を作成する
育児休業等支援コースでは「育休復帰支援プラン」の作成が必要です。
柔軟な働き方選択制度等支援コースでも、「育児に係る柔軟な働き方支援プラン」や面談シートが用意されています。
制度利用後に形式だけ整えるのではなく、事前面談を行い、対象社員の希望や業務状況を確認したうえで支援内容を決めることが重要です。
一般事業主行動計画が必要な場合は事前に策定・届出する
コースによっては、次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画の策定・届出が要件に関係します。
一般事業主行動計画は、従業員が仕事と子育てを両立できるようにするための企業の行動計画です。
助成金申請の直前に必要性へ気付くと間に合わない可能性があります。
対象コースを決めた段階で、必要な届出まで確認しておきましょう。
出勤簿・賃金台帳・制度利用記録を保存する
助成金申請では、制度を実際に利用したことを証明する資料が重要です。
たとえば、
- 出勤簿
- タイムカード
- 賃金台帳
- 育児休業申出書
- 介護休業申出書
- 面談記録
- 手当の支払記録
- 就業規則
などです。
特に業務代替手当を申請する場合は、誰がどの業務を代替し、いくら手当を支払ったのかを明確に残しておく必要があります。
両立支援等助成金の申請方法と期限

両立支援等助成金は、各コースの支給要件を満たした後に申請します。
一律の申請期限ではないため、「年度末までに申請すればよい」と考えないようにしましょう。
支給要件を満たした後に管轄労働局へ申請する
申請先は、原則として事業所を管轄する都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)です。
支給申請書とともに、就業規則や勤怠記録、賃金台帳、各種プランなど、コースごとに必要な書類を提出します。
必要書類はコースによって異なるため、2026年度版の支給申請手引きと支給要領を確認しましょう。
雇用関係助成金ポータルから電子申請もできる
両立支援等助成金は、雇用関係助成金ポータルから電子申請できます。
電子申請にはGビズIDが必要です。
紙申請と電子申請では一部の申請様式が異なる場合があります。
オンラインで提出する場合も、添付資料の準備が不要になるわけではありません。
申請期限はコースごとに異なるため利用開始日から逆算する
申請期限はコースごとに異なります。
たとえば、出生時両立支援コースの男性育休取得分は、対象労働者の育児休業終了日の翌日から2か月以内です。
育児休業等支援コースでは、
- 育休取得時:育児休業開始から3か月経過後、その翌日から2か月以内
- 職場復帰時:育児休業終了後6か月経過後、その翌日から2か月以内
に申請します。
柔軟な働き方選択制度等支援コースは、制度利用開始から6か月が経過した日の翌日から2か月以内です。
利用開始日や復帰日を基準に期限が決まるため、対象社員ごとにスケジュールを管理しましょう。
両立支援等助成金は従業員の状況に合ったコースを選ぼう

2026年度の両立支援等助成金は、育児・介護・不妊治療・女性の健康課題などと仕事を両立できる環境づくりを支援する制度です。
現在は次の6コースがあります。
- 出生時両立支援コース
- 介護離職防止支援コース
- 育児休業等支援コース
- 育休中等業務代替支援コース
- 柔軟な働き方選択制度等支援コース
- 不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース
制度選びでは、名称よりも「誰を支援したいのか」で判断すると分かりやすくなります。
男性社員が育休を取得するなら出生時両立支援コース、育休取得から復帰まで支援するなら育児休業等支援コース、休業者の仕事を周囲の社員が代替するなら育休中等業務代替支援コースが主な選択肢です。
介護の場合は介護離職防止支援コース、時差出勤やテレワークなどを整備する場合は柔軟な働き方選択制度等支援コースを確認します。
不妊治療だけでなく、月経・PMSや更年期に対応する制度も2026年度の助成対象です。
ただし、両立支援等助成金は制度を作るだけでもらえる助成金ではありません。
就業規則などを整備する
↓
必要な面談・支援プランを作成する
↓
対象労働者が実際に制度を利用する
↓
勤怠・賃金・利用記録を残す
↓
期限内に支給申請する
という流れが基本です。
コースによって支給要件や申請期限は大きく異なります。
実際に育休や介護休業などの利用予定が出た段階で、2026年度版の支給申請手引きを確認し、必要な社内整備を早めに進めましょう。
