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親子間の事業承継で注意すべき法的ポイントとは?成功の秘訣も紹介

親子間での事業承継を考え始めたとき、多くの方が直面するのが「何から手を付けてよいか分からない」という不安です。

経営権の引継ぎは感情の問題も含むため、スムーズに進めるには法律や補助金制度への理解が欠かせません。

本記事では、親子間の事業承継で活用できる「事業承継・引継ぎ補助金」の活用条件や申請ステップをはじめ、制度の全体像と注意点、そして補助金以外の支援制度についても詳しく解説します。

「うちでも使えるのだろうか」「いつ何をすればいいのか分からない」と感じている方も、記事を通して手順が明確になり、不安を払拭した上で、事業承継への一歩を踏み出せるようになります。

家族経営だからこそ生まれる悩みに寄り添いながら、現実的な解決策を提示していきますので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

親子間でも対象!事業承継・引継ぎ補助金とは

親子で事業を引き継ぐ際、「補助金が使えるのか不安」という声は多く聞かれます。

実は国の支援制度である「事業承継・引継ぎ補助金」は、親族間の承継でも活用可能です。

とくに中小企業にとって、設備投資や広告などの費用を軽減できるこの補助金は、経営者交代時の負担を大きく和らげてくれる存在です。

ここでは、制度の成り立ちや支援される承継の形、親子間で使える枠の詳細、対象経費や補助金額、最近の制度改正まで、基礎からしっかり解説します。

制度の目的と創設の背景

事業承継・引継ぎ補助金は、中小企業庁が所管する補助制度で、後継者不足に悩む中小企業の円滑な事業承継を支援する目的で創設されました。

日本では経営者の高齢化が進み、約7割の中小企業が後継者不在という調査結果もあります。

こうした状況を背景に、「後継者が継ぐ際の負担を減らすことで承継を促進する」ために導入されたのがこの補助金です。

補助の対象は、ただ経営権を引き継ぐだけでなく、その後の経営革新や業態転換に向けた取り組みを行う事業者です。

つまり、単なる代替わりではなく、事業の発展性や将来性が問われる制度でもあります。

支援される事業承継の形(親族内・M&A・第三者)

この補助金が対象とする承継のパターンは、大きく3つに分類されます。

1.親族内承継(親から子など)
2.第三者承継(役員・従業員など身近な関係者への承継)
3.M&Aによる承継(外部の企業や投資家への売却)

親族内承継はもちろん対象となっており、経営者交代が行われ、かつ承継後に何らかの成長投資や経営改善がある場合に補助対象となるケースが多いです。

一方で、名義変更のみで実質的な経営権の移行がなされていない場合は、対象外となる可能性があります。

親子間で対象となる具体的な枠(経営革新枠など)

親子間の事業承継で最も活用されているのが「経営革新枠」です。

これは、経営者が交代したうえで、設備投資や販路開拓など新しい取り組みを実施する際に補助される制度です。

この枠組みにはさらに細かな分類があり、たとえば以下のような区分に分かれています。

・経営者交代型 – 代表者が交代し、新たな体制で事業を継続・発展させる場合
・M&A型 – 買い手側・売り手側の支援枠がそれぞれ設定
・専門家活用枠 – 承継に必要なアドバイスや支援を専門家に依頼する費用を補助

親子間の承継では、経営者交代型の経営革新枠が該当するケースが多く、後継者が主導して新たな経営戦略を立てる場面で重宝されます。

対象経費と補助率・補助上限額

経営革新枠を利用した場合、補助対象となる経費は次のようなものが含まれます。

設備投資(機械購入・内装工事など)
広告宣伝費(チラシ・Web制作・SNS広告など)
外注費(コンサルティング、プロモーション支援など)
システム導入費(POSレジ・業務アプリなど)

補助率は最大2/3(小規模事業者は3/4)となっており、上限は600万円程度が一般的です(枠や類型によって変動あり)。

例えば、900万円の設備投資を行った場合、そのうち600万円までが補助対象となる可能性があります。

最近の制度改正と変更点

事業承継・引継ぎ補助金は毎年度見直しが行われており、令和6年度(2024年度)以降も一部制度の変更や予算拡大が見込まれています。

特に注目すべき点は以下の通りです。

・M&A支援枠の強化 – 親族外承継にも力を入れた構成に
・補助対象経費の拡充 – IT関連費用や海外販路開拓支援なども一部対象に
・jGrantsでの申請の一本化 – 電子申請が原則化し、手続きの簡素化が進行

親子間承継においても、「未来の承継」=計画段階でも補助対象になる可能性があるため、早めの準備がより重要になっています。

親子承継でも補助金が使える時代。制度を知って損はない

事業承継・引継ぎ補助金は、親子間の承継にも対応しており、「経営を引き継いで終わり」ではなく、「新たな経営フェーズへの移行」を支援する制度です。
補助対象になるには一定の条件がありますが、制度の理解を深めれば、資金面で大きな助けになります。

今後の承継をより円滑に、かつ成長戦略を持って進めたいと考えている方は、まずは自社がどの枠に該当するのか、どの経費が補助対象になるのかをしっかり確認することから始めてみましょう。

親子間で事業承継・引継ぎ補助金を利用する条件

補助金制度の存在を知っても、「うちは本当に対象になるのか?」という疑問を抱える方は多いはずです。

とくに親子間での事業承継となると、血縁関係ゆえに形式が曖昧になりやすく、申請時に見落としがちな要件が存在します。

このセクションでは、親が法人または個人事業主である場合、子が法人化して承継する場合など、それぞれのケースにおいて補助金が適用されるための具体的な条件を詳しく解説していきます。

親が法人代表者の場合(経営者交代型)

親が株式会社などの法人を経営しており、その代表者の地位を子に譲る場合は、「経営者交代型」に該当します。

このとき補助金の対象になるには、以下のような要件が求められます。

・代表者の変更が登記上で明確になっていること
・実質的な経営権(意思決定や業務執行)を子が担っていること
・事業承継後に新たな投資や取り組みが予定されていること

登記のみ変更しても、実態として経営を親が続けているケースでは補助対象とみなされない可能性があります。

形式と実質の両方での承継が必要とされている点に注意が必要です。

親が個人事業主の場合(青色申告・届出の要否)

親が個人事業主である場合は、より厳密な条件の確認が必要です。

特に以下の要件が重要になります。

・親子ともに青色申告者であること
・子への引継ぎ時に廃業届・開業届を税務署へ提出していること
・補助対象となる期間内(例:2019年11月23日~2024年11月22日)での承継であること

また、引継ぎの形式によっては贈与税や所得税の課税対象になることもあり、税務的な観点も含めた整理と準備が欠かせません。

個人事業の承継は法人よりも複雑で、事前相談が成功のカギとなります。

子が法人化して引き継ぐケース

親が個人事業主で、子が法人を設立して引き継ぐ場合でも、補助金は活用可能です。

ただし次の点に注意が必要です。

・法人設立のタイミングと承継の関係性が明確であること
・実務要件(過去に同様の事業を経験していたか等)を満たしていること
・承継の流れを説明できる書類(事業計画書や関係図など)の準備があること

このケースは「新設法人による引継ぎ」として評価され、未来の承継予定でも計画性と合理性が認められれば補助対象となることがあります

承継のタイミングと実務経験の要件

補助金を申請するには、「事業承継をいつ行うか」も大きなポイントです。

一般的には、補助金の公募要領で指定された承継対象期間内に代表者変更や事業譲渡が完了していることが条件です。

加えて、子が承継後すぐに経営を担うことを前提としているため、次のような実務経験に関する要件が設けられています。

・事業内容に関する業務経験が一定年数ある
・役員や幹部社員としての在籍歴がある
・経営計画の作成に関与していた履歴がある

これらは審査時の「信頼性」や「実現可能性」の判断材料となるため、履歴書や職務経歴書、社内での役割などを整理しておくことが重要です。

不動産譲渡や単なる名義変更は対象外

親から子へ事業の不動産(店舗や工場)を譲ったり、会社の株式名義を変更しただけでは、事業承継・引継ぎ補助金の対象にはなりません

あくまで「事業を継続・発展させる意志のある経営者交代」が前提です。

以下のようなケースでは対象外となる可能性が高いため注意が必要です。

不動産のみを相続・譲渡し、事業運営の実態が伴っていない
株式の名義を子に変更しただけで、代表者や実務者は親のまま
会社の形式は変更せず、実態として経営が停滞している

この補助金は「単なる財産移転の支援」ではなく、事業継続とイノベーションの促進を目的としている点を押さえましょう。

親子間でも制度を正しく理解すればチャンスに変わる

親子間の事業承継は、信頼関係がある一方で、曖昧な手続きや感情面の影響で補助金の対象外になってしまうリスクもはらんでいます。
しかし、各ケースに応じた要件をしっかり押さえ、実態としての経営引継ぎを明確に準備すれば、制度は十分活用可能です

「自分たちの場合はどうなのか?」と感じたら、早めに公募要領を確認し、支援機関や専門家と連携して計画を練ることをおすすめします。
補助金はあくまで“使える側”が制度を理解し、行動に移した先に活かされるものです。

親子間事業承継で補助される費用と補助率

補助金を検討するうえで最も気になるのが、「どこまで経費として認められるのか」「実際にいくら補助されるのか」という点ではないでしょうか。

親子間の事業承継でも、一定の条件を満たせば設備投資や販路開拓費などが補助対象になりますが、すべての支出が認められるわけではありません。

このセクションでは、補助対象となる経費・対象外の支出、補助率や自己負担額の目安、複数年の計画を組む際の注意点について整理します。

補助対象となる経費一覧(設備投資・広告費など)

事業承継・引継ぎ補助金では、「経営革新」や「生産性向上」を目的とした支出が補助対象になります。以下は主な例です。

・設備投資費 – 機械装置、内装工事、ITシステム導入など
・販路開拓費 – Webサイト制作費、広告宣伝費、展示会出展料など
・外注費 – 専門家による経営・IT・財務の支援コンサルティング費用
・研修費 – 従業員教育に関する外部講座や研修参加費
・資料購入・翻訳費 – 海外展開や新規事業に伴う翻訳・印刷物制作費

これらの経費は、事業計画に明記され、かつ実行が証明できる支出であることが条件です。

証拠書類(見積書・契約書・領収書)の準備も忘れずに。

対象外となる費用例(不動産取得・借入金返済など)

一方で、以下のような支出は補助対象外とされています。

・土地・建物の購入費
・借入金の返済やリース料
・車両の購入(営業用除く)
・人件費や役員報酬
・日常的な経費(光熱費・通信費など)

また、承継前にすでに支出済みの経費も原則対象外です。

補助金はあくまで「承継を契機にした新たな取り組み」に対する支援であり、過去の出費をカバーするものではありません。

補助率の違いと自己負担額の目安

補助金の補助率は最大で2/3(中小企業等)補助上限額は最大600万円が目安です(令和6年度経営革新枠の場合)。

実際には事業内容や支出の性質によって補助率が1/2となるケースもあり、事前の計画設計が不可欠です。

例:総経費900万円の場合(補助率2/3)

補助額 – 600万円
自己負担額 – 300万円

ただし、交付決定前に契約・発注した経費は補助対象外となるため、計画の前倒しや先行投資は避けるべきです。


複数年にわたる事業計画のポイント

事業承継後、すぐに成果が出るとは限りません。

補助金では、複数年にまたがる事業計画も認められており、特に中長期的な成長ビジョンを持つ企業に適しています。

計画書には次のような要素を盛り込むと審査でも好印象です。

初年度 – 設備導入や販路開拓
2年目以降 – 売上増加や人材育成、収益化の見込み
数値目標(KPI)の明記 – 売上高・利益・雇用数など

審査側は「将来的に持続可能な事業か」を重視するため、補助金だけに頼らない姿勢と現実的な計画設計が成功のカギになります。

対象経費の理解が補助金活用の成否を分ける

補助金は「もらえるかどうか」だけでなく、「何に使えるか」を正確に理解することで、真に有効な経営資源となります。
親子間の事業承継においても、対象経費と補助率を押さえたうえで戦略的に活用すれば、次世代の経営基盤を強固に築くことができます

無駄な申請を避け、確実に採択を目指すためにも、必要な書類や支出計画を早めに整理し、専門家の助言を得ながら進めることをおすすめします。

親子間の補助金申請ステップ

事業承継・引継ぎ補助金は、計画を立てただけでは受け取れません。

制度の申請には段階的なステップがあり、申請タイミングや書類の精度によって採択の可否が分かれます。

特に親子間の承継は「形式的な引継ぎ」と見なされやすいため、各ステップでの誠実な準備が求められます。

ここでは、GビズIDの取得から補助金の入金までの全体的な流れを、実務に即して解説します。

GビズID取得とjGrantsの利用準備

補助金申請には、政府のオンライン申請ポータル「jGrants(ジェイグランツ)」の利用が必要です。

これにあたり、事前に「GビズIDプライムアカウント」の取得が必須となります。

GビズID申請には印鑑証明書や代表者の本人確認書類が必要
審査には約2週間〜1カ月かかるため、早めの取得が重要
ID取得後はjGrantsにログインし、各種補助金の申請フォームにアクセス可能

このIDがなければ申請自体ができないため、申請準備の第一歩として必ず着手しましょう

申請書類の作成・提出の流れ

申請には、以下のような書類を揃えた上で、オンラインで提出する流れとなります。

・事業計画書
・経費明細書および見積書
・親子間の承継関係が確認できる書類
・法人登記簿謄本や確定申告書(個人事業主の場合)
・認定経営革新等支援機関の確認書類(必要な場合)

ポイントは、「承継後に経営革新や成長が見込まれること」を数値やスケジュールで示すことです。

補助金目的だけでなく、経営改善の意志が明確に伝わるような表現が求められます。

審査と採択決定のスケジュール

申請後は、書類審査と必要に応じたヒアリングを経て、採択の可否が通知されます

このプロセスは公募期間終了後、概ね1〜2カ月程度かかるのが一般的です。

審査のポイントは以下のとおりです。

承継の正当性(実際に経営が交代するか)
計画の実現可能性と事業の継続性
経費の妥当性と補助金の適正利用
地域経済や雇用への波及効果

親子間承継では、「見せかけの承継で補助金を受け取る」ことを防ぐため、特に実務経験や事業の継続性が重視されます。

採択後に行う事業実施と実績報告

採択が決まったら、いよいよ実際の事業に着手します。

補助対象期間内(約5〜12カ月)に事業を実施
実施後、実績報告書・証憑書類(領収書や報告書など)を提出
書類不備や内容の齟齬があると、交付金が減額または不支給となる場合も

補助金は「事後精算型」のため、事業終了後に正確な実績報告ができて初めて交付されます。

補助金交付のタイミングと入金手続き

実績報告が審査を通過すれば、最終的に補助金が交付されます。

報告から入金まではおよそ2〜3カ月
交付は企業の指定口座へ銀行振込で行われる
会計処理上、「雑収入」として課税対象になる点に注意

また、補助金入金後にも中小企業庁や支援機関によるフォローアップ調査が行われる場合があるため、継続的な記録管理が必要です。

機関によるフォローアップ調査が行われる場合があるため、継続的な記録管理が必要です。

申請フローを理解し、スムーズな承継と補助金獲得へ

親子間の事業承継で補助金を有効に活用するには、制度理解と準備の早さがカギとなります。
GビズIDの取得からjGrants申請、そして事後報告まで、各段階に注意すべきポイントが存在します。

とくに親子間の承継は形式的に見られやすいため、計画性・正当性・実行力の3点を意識した申請書類の作成が求められます。

不安な場合は、認定支援機関や補助金に詳しい専門家の協力を得ながら進めるのも有効です。
適切なステップを踏み、スムーズな事業承継と資金支援を同時に実現しましょう。

補助金以外にも使える!親子間事業承継の支援制度

事業承継・引継ぎ補助金は確かに心強い制度ですが、それだけが支援策ではありません。

親子間の事業承継には、税制優遇・資金支援・自治体による後押しなど、さまざまな制度が組み合わされています

ここでは、補助金以外で活用できる主な4つの支援策をピックアップして解説します。

費用や税金の負担を軽減したい方や、補助金の採択に不安がある方にも役立つ情報です。

相続時精算課税制度とは?

相続時精算課税制度は、親から子へ贈与する際に贈与税の課税を一時的に猶予し、相続時に精算する制度です。

一人あたり2,500万円まで非課税で贈与可能
それを超える分には一律20%の税率
相続時にすべて合算して課税されるが、生前の資金移転をスムーズに行える

たとえば、事業用資産や株式の贈与を検討している親にとって、有効な選択肢になります。

法人化や設備投資の資金を前倒しで渡したいときにも活用されます。

法人・個人版の事業承継税制の概要

事業承継税制は、一定の条件を満たす中小企業が、後継者に株式や事業資産を引き継ぐ際、贈与税や相続税の納税が猶予・免除される制度です。

【法人版】

自社株式の承継に対して、100%の相続税・贈与税が猶予・免除
後継者が5年間継続して代表者であること、雇用の維持などの要件あり

【個人版】

個人事業主が設備や土地建物などの事業用資産を子に承継する場合に対象
相続税・贈与税の納税猶予が可能

この制度を活用すれば、多額の税負担による経営の圧迫を回避できます。ただし申請や継続要件が細かいため、税理士等と連携して手続きを進めることが重要です。


地方自治体が提供する独自支援策

各自治体でも、地域の中小企業を守るために独自の支援制度を整備しています。

例:事業承継に関する専門家派遣・コンサルティングの無料提供
例:設備導入費用や販路開拓費への補助金(補助率1/2〜2/3など)
例:市区町村単位での「後継者バンク」登録支援

特に地方では後継者不足が深刻な課題となっているため、地域密着型の支援に力を入れている自治体が増えています。

地元商工会議所や事業承継支援センタへの相談が出発点です。

金融機関による事業承継支援ローン

金融機関では、事業承継に関連する資金需要に対応するための専用ローン商品を用意している場合があります。

設備投資・株式買い取り・運転資金などに活用可能
一定期間は据置期間(返済猶予)付きの商品も
日本政策金融公庫や商工中金でも特別融資を展開中

補助金のような「もらえる支援」ではないものの、スピーディーな承継を実現したい場合の資金調達手段として有効です。

補助金に加えた支援策で承継を多角的に進めよう

親子間の事業承継は、感情だけでなく資金・税金・手続きなど多くの要素が絡みます。
補助金を使えればベストですが、それがすべてではありません。

税制優遇・自治体支援・融資制度を組み合わせることで、経済的な負担や手続きの不安を軽減しながら承継を進めることが可能です。

特に相続税・贈与税が気になる場合は「事業承継税制」、地元での支援がほしいなら「自治体支援」、資金の融通が必要なら「承継ローン」など、目的に応じて使い分けましょう。

計画的な準備と情報収集こそが、成功する親子間承継の第一歩です。

親子間の事業承継に関するよくある質問(Q&A)

親子間での事業承継を検討する際、制度の細かな条件や例外的なケースについて疑問を持つ方は少なくありません。

特に補助金制度は要件が細かく定められているため、「このケースでも対象になるのか?」という不安がつきまといます。

このセクションでは、実際によく寄せられる質問を取り上げ、わかりやすく回答していきます。事前に確認しておくことで、申請ミスや見落としによる不採択を防げます。

子ども以外の親族でも対象になる?

はい、子ども以外の親族(兄弟姉妹、甥・姪など)でも一定の条件を満たせば補助金の対象となります

ただし、「親族内承継」として適用されるためには、事業に関与していた実績や、後継者としての実務要件をクリアしていることが求められます。

単なる形式的な承継や名義変更だけでは対象にならない点には注意が必要です。

承継前に投資していた場合も対象?

原則として、補助対象となるのは事業承継後の新規投資です。

承継前の設備購入や広告費は補助対象には含まれません。

ただし、承継計画に基づいて事前に投資を始めたことを証明できる資料(事業計画書や契約書など)がある場合、例外的に認められることもあります

この点は事前に認定支援機関や公募要領で確認しましょう。

青色申告の必要条件は?

個人事業主が補助金を申請するには、青色申告者であることが必須条件です。

これにより、適切な帳簿管理と事業継続の信頼性が確保されていると判断されます

また、青色申告であることを証明するために、所得税青色申告決算書や確定申告書Bの写しの提出が必要になります。

個人事業主から法人への引継ぎは補助対象?

はい、一定条件を満たせば対象になります。

たとえば、親が個人事業主、子が法人を設立して事業を引き継ぐケースでも、「経営者交代型」の枠で補助対象になり得ます。

その際は、

・開業届と廃業届を正確に提出
・事業の一貫性が認められること
・引継ぎ後の法人が継続的に同一事業を営んでいること

といった要件をクリアする必要があります。

補助金がもらえない事例はどんなとき?

以下のようなケースでは、補助金の交付対象外となるか、申請が通らないリスクが高まります

・承継実態がない(親が名義変更のみで実質経営を続けている)
・補助金対象外の経費を含めて申請している
・提出書類に不備がある、または虚偽の記載がある
・過去に補助金等で不正があった企業

また、「未来の承継(承継予定)」で申請する場合は、要件を満たす計画や体制が整っていないと却下される可能性があります。

不明点は事前確認で解決し、確実な申請を

事業承継・引継ぎ補助金を親子間で活用するには、制度の詳細や例外的なルールまで把握することが大切です。
些細な条件違反や書類のミスが、採択に大きく影響する可能性もあります。

少しでも不明な点がある場合は、認定支援機関や商工会議所、税理士などに早めに相談しておくと安心です。
疑問をクリアにしたうえで、万全の準備を整えて申請に臨みましょう。

「親だからこそ難しい」親子間事業承継のリアルと補助金活用のヒント

親子間の事業承継は、法的な手続きや補助金の条件を満たすだけではスムーズに進むとは限りません。

家族ならではの感情のしがらみや価値観の違いが、ビジネスに大きな影響を与えることも多く、単なる制度活用の枠を超えた視点が求められます。

このセクションでは、現場で起こりがちな親子間の葛藤やトラブルに焦点を当てつつ、補助金をうまく活かして外部の専門家と連携することの重要性についても解説します。

感情とビジネスが交錯する場面の対処法

親子の関係においては、「これまで育ててもらった恩」や「家族だから理解してくれるはず」という期待が、ビジネス判断を曇らせる原因になりがちです。

たとえば、親が「自分のやり方を守ってほしい」と強く望む一方で、子が「時代に合った変革を進めたい」と考えるケースはよくあります。

こうした摩擦を減らすためには、

・話し合いの場を定期的に持つこと
・感情と経営判断を切り分ける習慣を持つこと
・外部のファシリテーター(税理士・コンサルタント)を挟むこと

などが有効です。

家族間では伝えにくい本音も、第三者を通じてならスムーズに伝わる場合があります

承継時にありがちな親子間トラブル事例

親子間の事業承継でよくあるトラブルには、以下のようなものがあります。

・経営権の移譲時期でもめる – 「まだ早い」「もう任せるべき」などの認識のズレ
・報酬や待遇への不満 – 子が経営者になっても十分な報酬が得られない
・株式や資産の承継配分に不満が出る – 兄弟姉妹との不公平感
・親の現役意識が強く、口を出し続ける – 実質的に経営が変わらない状態

これらは感情的な衝突だけでなく、経営の停滞や補助金の不採択にもつながりかねないため、早めの可視化と対話が不可欠です。

補助金をきっかけに第三者支援を入れるメリット

実は、事業承継・引継ぎ補助金の申請要件には、認定支援機関との連携が含まれていることが多く、この制度を活用することで自然と第三者の専門家が関与する流れができやすくなります

たとえば、

税理士や中小企業診断士に事業計画の策定を依頼
商工会議所を通じて経営者交代の支援を受ける
地方自治体の「承継支援窓口」で個別相談を実施

といった形で、感情面の衝突が経営の妨げとならないように専門家の知見を活用するのが賢明です。

補助金をうまく利用することで、単なる資金面だけでなく「承継の質」そのものを高める機会にもなります

家族経営の成功は「関係性の再構築」から

親子間の事業承継は、法律や制度だけでなく人間関係のマネジメントが成功の鍵です。
「親だからこそわかってくれるはず」「子どもだから任せたい」という気持ちが裏目に出ることもあります。

補助金は、その“きっかけ”をつくる力を持っています。
感情を整理し、専門家の力を借りて冷静に計画を進めることで、親子双方が納得し合える承継が実現できるでしょう。

親子間の事業承継を成功に導くために必要な視点とは?

親子間での事業承継は、単なる名義変更ではなく、経営のバトンを次世代に確実に渡すための戦略的なプロセスです。

制度的には「事業承継・引継ぎ補助金」などの支援策が整備されていますが、それを活用するには正しい知識・的確な手続き・そして当事者同士の信頼と対話が欠かせません。

この記事では、補助金の対象や要件、申請手順、関連制度、そして親子間特有の課題まで多角的に解説しました。

これらを踏まえ、次の一歩としては、

・スケジュールに余裕を持った承継計画の策定
・GビズIDやjGrantsなど事前準備の着手
・専門家(税理士・行政書士・支援機関)への早期相談
・感情的対立を防ぐための対話の場づくり

が重要です。

親子間という最も近しい関係だからこそ、感情に流されず「経営の未来」を見据えた判断が必要です。

制度を正しく理解し、補助金をきっかけに専門家の力も借りながら、後悔のない事業承継を進めていきましょう。

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