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中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)とは? 支給額・要件・申請手順を徹底解説

中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)は、人材確保に積極的な企業を支援する制度です。

特に、即戦力を求めて中途採用を強化したい中小企業にとって、採用コストや教育コストの負担を軽減できる大きなチャンスとなります。

この制度では、中途採用率を一定以上高めた場合や、45歳以上の人材を初めて採用した場合に助成金が支給されます。

さらに、生産性向上を達成した事業主には追加支給もあり、採用と経営改善の両面で効果を期待できる仕組みです。

本記事では、

助成金の概要と対象範囲
申請に必要な条件・要件
支給額や加算パターンの具体例
申請の流れや注意点を整理して解説します。

読み終えるころには、「自社も中途採用等支援助成金を活用できるかもしれない」と感じ、次の行動につなげられるはずです。

目次

中途採用等支援助成金とは?

中途採用等支援助成金は、中途人材の雇用を積極的に進める企業を支援する国の制度です。

新卒一括採用に依存しがちな日本の雇用慣行において、中途採用を拡大することで労働市場を活性化させる狙いがあります。

ここでは、この助成金の背景・コースの種類・対象となる事業主や労働者について解説します。

▼制度設立の背景と導入目的

日本の雇用市場は長らく新卒採用中心でしたが、労働人口減少や即戦力人材の需要増により、中途採用を増やす必要性が高まっています

その一方で、中小企業では採用コストや定着リスクから中途採用が進まない課題がありました。

こうした背景から、厚生労働省は 「中途採用の拡大」と「多様な人材活躍の促進」 を目的として本助成金を設立。

企業が安心して中途人材を採用・活用できるよう、金銭的支援を行っています。

▼助成対象の「コース分類」(中途採用拡大、生産性向上など)

中途採用等支援助成金は、複数のコースに分かれており、企業の取り組みに応じて支給内容が異なります。

代表的なものは以下のとおりです。

・中途採用拡大コース
 中途採用率を一定以上引き上げた企業に対して支給。
・45歳以上初採用加算
 企業が初めて45歳以上の中途採用を行った場合に加算あり。
・生産性要件達成による追加助成
 採用後に労働生産性の向上を達成した企業に追加支給。

このように、採用人数・年齢層・生産性改善の実績によって柔軟に助成が設計されている点が特徴です。

▼助成対象事業主・対象労働者の範囲

助成の対象は、中途採用を実施する企業全般ですが、いくつかの条件があります。

事業主の範囲

雇用保険適用事業所であること
過去に不正受給などの行政処分を受けていないこと
労働関係法令を遵守していること

対象労働者の範囲

新卒者ではなく、中途採用として雇用される労働者
過去に同じ企業で勤務していた人ではないこと
原則として正規雇用(無期雇用)として採用される人材

つまり、「適正な雇用管理を行う企業が、新たに中途人材を正しく採用する場合」に対象となる制度です。

制度の狙いを理解し活用を検討する

中途採用等支援助成金は、新卒偏重からの脱却と、多様な人材活用を促す政策の一環として設けられています。
複数のコースがあり、事業主・労働者ともに一定の要件を満たすことで支給対象となります。
まずは制度の目的を理解し、自社の採用方針と照らし合わせて、どのコースが適用できるかを検討することが重要です。

条件・要件(申請を通すための必須事項)

中途採用等支援助成金は、誰でも申請できるわけではなく、事業主と採用される労働者の双方が一定の条件を満たすことが必要です。

特に、中途採用率の拡大や雇用の定着といった具体的な成果を求められるため、事前に要件を確認しておかないと不支給のリスクがあります。

ここでは申請に必須となる条件を整理します。

基本的要件(雇用保険加入・無関係な事業者でないことなど)

助成金を受ける企業は、最低限以下の要件を満たす必要があります。

雇用保険の適用事業所であること
労働基準法や最低賃金法などの労働関係法令を遵守していること
税金や社会保険料を滞納していないこと
過去に助成金の不正受給などの行政処分を受けていないこと

つまり、「適正な労務管理を行っている健全な事業所」であることが前提条件です。

中途採用率拡大要件・45歳以上初採用要件

中途採用等支援助成金の中核となる要件は「中途採用の拡大」です。

・中途採用拡大要件
 基準期間と比較して、中途採用率を一定以上引き上げた企業が対象。
・45歳以上初採用要件
 企業が初めて45歳以上の中途人材を採用した場合に加算が受けられる。

これにより、年齢層や採用数に応じた柔軟な支援が設計されているのが特徴です。

支給対象者の要件(非新卒・雇用形態・過去の勤務関係など)

採用される労働者にも条件があります。

新卒者ではなく、中途採用者であること
原則として 正規雇用(無期雇用フルタイム) として採用されること
採用前に同じ企業に在籍していなかったこと
親会社・子会社・関連会社からの形式的な転籍ではないこと

要するに、実質的に新規の中途雇用を増やす場合に限定されるということです。

雇用管理制度の整備・計画届出の要件

申請前に、雇用管理制度の整備や届出を行うことも必須です。

労働局へ「中途採用計画」の届出を行うこと
採用に伴い、就業規則や人事制度を適切に整備していること
公正な採用選考や労働条件の提示を行っていること

こうした整備が行われていない場合、形式的に採用を行っても助成金は認められません

離職率・定着要件・支給申請時点での継続雇用要件

助成金は「採用して終わり」ではなく、一定の定着が条件となります。

支給申請時点で対象者が継続雇用されていること
高い離職率がある場合は対象外となることもある
採用から数か月〜1年程度の雇用継続確認が必要

つまり、採用後にしっかり定着させる体制があるかどうかが審査のポイントです。

事業主・労働者双方の要件を満たして初めて対象に

中途採用等支援助成金は、

・事業主側の基本的要件(雇用保険、法令遵守、適正な雇用管理)
・採用側の条件(中途採用者であること、正規雇用、定着)を両方満たした場合に初めて活用できます。

不支給や返還を避けるためには、採用計画の段階から条件を確認し、「採用数を増やすだけでなく、定着まで見据える」姿勢が必要です。

支給額・助成内容(支給パターンと額)

中途採用等支援助成金の最大の関心事は、実際にいくら支給されるのかという点です。

助成金額は採用人数や年齢層、生産性向上の有無などによって変動します。

ここでは、代表的な支給額のパターンと加算事例を解説します。

中途採用拡大助成の標準支給額(例:50万円)

最も基本的な支給は「中途採用拡大」を行った場合です。

中途採用率を基準より一定以上拡大させた場合
・1企業あたり50万円が支給されるのが標準的な額
複数回採用を行った場合でも、年度内の上限額が設定されている

つまり、「新たに中途採用を増やす」だけで基本的な助成が受けられる仕組みです。

45歳以上の初採用特例支給額(例:60〜100万円)

特例として、45歳以上の人材を初めて採用した場合、加算があります。

初採用の45歳以上を無期雇用として雇い入れた場合
・60万円〜100万円程度の特例支給
高齢層の雇用機会創出を目的とした制度設計

この加算は、人材確保の難しい年齢層を支援する強いインセンティブになっています。

生産性向上助成(拡大後の追加支給)額例

採用後に「生産性向上要件」を満たした場合、追加の支給があります。

採用から一定期間後に労働生産性が改善した場合
・15〜20万円程度の上乗せ支給が認められることがある
設備投資や業務改善と併せて取り組むことで活用可能

つまり、「採用+生産性改善」でさらに助成額を増やせる」仕組みです。

追加支給・加算事例(初採用事業所、情報公表、定着加算など)

基本助成や特例に加え、さらに加算が認められるケースがあります。

・初めて中途採用を行った事業所:追加加算あり
・採用情報を積極的に公表した企業:加算対象
・採用した労働者が一定期間定着した場合:定着加算として数十万円の支給

これらは、「中途採用を増やし、定着させる」取り組みを促す仕掛けになっています。

採用パターンに応じて柔軟に支給される制度

中途採用等支援助成金は、

・標準支給額(50万円前後)
・45歳以上特例(60〜100万円)
・生産性向上要件による追加(15〜20万円程度)
・定着や情報公表などの加算

といった複数のパターンが組み合わさり、最終的な受給額が決まります。
採用の仕方や人材の定着施策を工夫することで、実質的な助成額を大きくできるのが特徴です。

申請・支給の流れとスケジュール

中途採用等支援助成金を受けるためには、計画の届出から採用・申請・審査までの一連の流れを踏む必要があります。

申請は事後的に行うだけでは認められず、事前準備が不可欠です。

ここでは、実際の手続きの流れを4つのステップで解説します。

▼中途採用計画の作成・労働局への届出

まずは「中途採用計画書」を作成し、所轄の労働局へ届け出ます。
この計画には 採用予定人数・年齢層・採用方法・実施時期 などを明記。
計画を出さずに採用を始めてしまうと、助成金の対象外になるので注意が必要です。

▼中途採用の実施と要件遵守

計画に沿って中途採用を実施します。
採用時には 正規雇用契約の締結・法令遵守・対象者条件(非新卒など) を満たしているか確認。
採用人数や年齢層が要件に達していないと支給対象外になります。

▼支給申請と必要書類提出

採用後、一定期間が経過したら労働局へ支給申請を行います。
提出書類の例:採用計画書、雇用契約書、給与台帳、出勤簿など。
書類の不備や不足があると審査が遅れたり、申請が認められない場合があります。

▼審査・支給/拒否の決定

労働局が内容を確認し、要件を満たしていると判断されれば支給決定。
支給金額は助成対象の内容に応じて算定され、企業口座に振り込まれます。
反対に、条件を満たさなかった場合や報告義務を怠った場合は、不支給や返還を求められることもあります。

計画的な進行管理が受給のカギ

中途採用等支援助成金は、

1.採用計画の届出
2.中途採用の実施
3.支給申請と書類提出
4.審査・支給決定

という流れで進みます。
特に重要なのは「事前に計画を届け出ること」と「採用後の書類整備」です。
スケジュールを把握し、計画的に準備を進めることで、スムーズに助成金を受け取ることができます。

注意点・よくある失敗例・確認ポイント

中途採用等支援助成金は魅力的な制度ですが、要件を満たせない・手続きを誤ると支給されないリスクがあります。

さらに、採択後であっても不備や条件未達によって返還を求められるケースもあるため注意が必要です。

ここでは、特に失敗しやすいポイントを整理します。

▼計画未達・要件不成立による不支給や返還リスク

採用計画を提出したものの、実際の採用数が計画未達の場合は対象外。
賃金要件や雇用保険加入要件を満たしていないと不支給に。
要件を満たさないまま申請した場合、受給後でも返還命令が出る可能性があります。

▼支給対象とならない労働者・経費の誤認

・新卒採用者や過去に在籍していた人は対象外。
派遣社員や短期アルバイトを「中途採用」と誤って申請するケースも不支給対象。
経費面では、通常業務で発生する採用広報費などは対象外となる場合が多い。

「誰を雇ったら対象になるか」を明確に理解しておくことが不可欠です。

▼過去の中途採用率が高すぎて申請不可となるケース

もともと中途採用率が非常に高い企業は、「中途採用拡大」の余地がないと判断される場合があります。
採用率の伸びしろが条件に満たないため、不支給となることも少なくありません。
・「制度の趣旨は中途採用を増やすこと」であるため、すでに十分な採用を行っている企業は利用できないケースがあります。

申請期限・申請漏れ・計画届出忘れ

計画届を事前に提出していなかったため、後から申請できないケースが多数あります。
採用後に慌てて申請しようとしても、届出がなければ対象外
さらに、申請書類の提出期限を過ぎると不支給。
助成金は 「期限厳守」「事前申請」 が鉄則です。

制度を正しく理解し、失敗を未然に防ぐ

中途採用等支援助成金は、計画の未達や要件不成立、対象労働者の誤認、申請期限切れなどで不支給になるリスクがあります。
受給を確実にするには、「誰を雇うのか」「いつ申請するのか」「必要書類を揃えているか」を常に確認し、事前準備を徹底することが重要です。

モデルケース・支給額の具体例

中途採用等支援助成金は、採用人数や採用層によって支給額が変動します。

ここでは、典型的な中小企業のケースをモデル化し、実際にどの程度の助成が受けられるのかをシミュレーションします。

自社に当てはめて考える際の参考にしてください。

▼中小企業Aで中途採用率を20ポイント上昇させた場合の支給例

これまで中途採用率が30%だった企業が、ある年度に50%へ引き上げたケース。
要件を満たしたことで、標準的な助成額50万円が支給されます。
複数名を採用しても、年度内での支給額は上限が定められているため、計画的な活用が重要です。

👉 単純に「中途採用を増やした」だけでも、助成金を得られる代表例です。

▼同じく45歳以上層を採用したケースの支給例

中小企業Bが、初めて45歳以上の人材を正規雇用として採用した場合。
この場合、特例加算として60〜100万円の支給が可能です。
特に人材確保が難しい年齢層を雇い入れる企業にとって、大きなインセンティブになります。

👉 高齢層の採用は採用活動が難しい反面、助成額が増えるメリットがあります。

▼生産性向上要件を満たして追加支給されたケース例

中小企業Cが中途採用を実施し、採用後に業務改善や設備投資で労働生産性を一定以上向上させたケース。
基本の助成額に加えて、15〜20万円程度の追加支給が認められます。
採用と並行して生産性改善を行うことで、助成金額を増やせるのが特徴です。

👉 「採用+経営改善」の取り組みを同時に進めれば、受給額をさらに拡大できます。

自社の採用パターンに当てはめてシミュレーションを

中途採用等支援助成金は、

中途採用率を増やせば 50万円
45歳以上層を初めて採用すれば 60〜100万円
生産性向上を達成すれば 追加15〜20万円

といった形で、条件に応じて柔軟に支給されます。
事例を参考に、「自社の採用パターンならどの助成が得られるか」を試算することで、制度をより効果的に活用できます。

活用戦略と中長期的な効果

中途採用等支援助成金は、採用コストの軽減だけでなく、中長期的な経営戦略の一環として活用できる制度です。

助成金をきっかけに、人材確保や定着、人事制度の整備を進めることで、企業に持続的な効果をもたらします。

ここでは、活用戦略と長期的なメリットを整理します。

▼採用コスト軽減と定着率向上という好循環

採用活動にかかる費用を助成金で一部補填できるため、コスト負担が軽減されます。
コスト面の余裕は、教育研修や職場環境改善に再投資でき、社員の定着率向上につながります。
採用と定着の好循環が生まれることで、長期的な人材確保が可能になります。

単なるコスト削減ではなく、人材戦略全体を前進させる効果が期待できます。

▼他の助成金(雇用助成金・育成助成金など)との連携戦略

中途採用等支援助成金は、他の助成金と併用できない場合も多いため、使い分けが重要です。
例:人材開発支援助成金(教育訓練)、キャリアアップ助成金(非正規社員の正社員化)などと組み合わせれば、人材確保から育成まで一貫した支援が可能。
「どの助成金をどの人材に活用するか」を戦略的に設計することで、助成金の効果を最大化できます。

助成金を「点」で捉えるのではなく、複数制度を「線」としてつなげる戦略が効果的です。

助成金活用後の自社制度整備・持続可能な人事制度への発展

助成金はあくまで一時的な支援ですが、これを契機に自社の人事制度を整備することが重要です。
例:中途採用の評価制度やキャリアパスの明確化、教育研修体系の整備。
制度を整えることで、助成金終了後も自社の魅力を高め、持続可能な採用・定着の仕組みを構築できます。

助成金を「制度改革の後押し」と捉えると、中長期的な企業成長につながります。

一時的支援から長期戦略への橋渡しに

中途採用等支援助成金は、

・採用コスト削減と定着率向上の好循環
・他の助成金との連携による総合戦略
・助成金後も続く制度整備と企業の魅力強化

といった形で、企業の人事戦略を長期的に支える制度です。
助成金を単なる資金援助と捉えるのではなく、未来の人材戦略を構築するきっかけとして活用することが、最も大きな効果をもたらします。

中途採用等支援助成金で人材確保と経営改善を実現する

中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)は、中途採用を積極的に進める企業を金銭的にサポートする制度です。

記事で解説したように、

制度の背景やコース分類を理解し、自社が対象になるか確認すること
申請条件(雇用保険、採用率拡大、45歳以上の初採用など)を満たすこと
支給額(50万円〜100万円+加算)や追加助成を踏まえた資金計画を立てること
申請フローを把握し、届出・書類提出・期限管理を徹底すること
失敗事例を避け、長期的な採用・定着戦略につなげること

これらを押さえることで、採用リスクを抑えつつ人材確保を進められます。

助成金は一時的な補助ではありますが、採用コスト削減→人材定着→制度整備→経営改善という好循環を生み出すきっかけになります。

ぜひ本記事を参考に、「自社も活用できるかもしれない」と確信を持って、次の行動=制度活用の準備へ踏み出していただきたいと思います。

この記事を書いた人

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