子どもが生まれた際、男性従業員の育児休業取得を後押しする制度として注目されているのが「出生時両立支援コース」です。
これは厚生労働省が実施する両立支援等助成金制度の一環であり、育児休業を取得させた企業に対して最大72万円(※生産性要件を満たす場合)が助成される、非常に手厚い制度です。
中でも「男性育休促進」に特化している点が大きな特徴で、少子化対策や働き方改革が進むなかで、多くの企業が導入を検討しています。
「うちの会社でも使える?」「手続きは大変?」といった疑問をお持ちの方に向けて、この記事では以下のような内容をわかりやすく解説します。
・制度の目的と仕組み
・支給額や要件の具体的な内容
・申請の流れと注意点
・実際に導入した企業の事例
読み終えたときに「思ったよりも簡単に使えそう」「これならうちの会社でも導入できるかもしれない」と思ってもらえるよう、実務目線で丁寧に整理しています。
特に中小企業の担当者や、初めて助成金を扱う総務・人事の方にとって、有益な情報をまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
出生時両立支援コースとは?

出生時両立支援コースは、厚生労働省が実施する「両立支援等助成金」の一つで、男性従業員が育児休業を取得しやすい職場環境を整える企業に対して助成金が支給される制度です。
少子化や共働き世帯の増加といった社会的背景を受けて、男性の育児参加を促進するために設けられました。
企業が積極的に男性の育休取得を後押しし、育児に関する社会的責任を企業全体で共有する体制づくりを進めることで、男女問わず働きやすい職場づくりの実現が期待されています。
具体的には、企業が育休取得を働きかけたうえで、男性従業員が実際に育児休業を取得した場合に、一定額の助成金が支給されます。
育休を取得させるだけでなく、制度導入や職場環境整備も評価対象となる点が特徴です。
「第1種」と「第2種」の違い(取得促進 vs 取得率向上)
出生時両立支援コースには、企業の取り組み段階に応じた2つの申請類型(第1種・第2種)が用意されています。
それぞれの違いは以下の通りです。
●第1種(育休取得促進)
・企業が初めて育児休業を取得する男性従業員を対象に支援するもの。
・制度を導入したばかり、またはこれまで取得者がいなかった企業に向いています。
・1人目の取得に対して最大57万円(生産性要件を満たす場合)が支給されます。
●第2種(育休取得率向上)
・複数名の男性従業員が育児休業を取得する体制を評価するコース。
・一定割合(例:男性育休取得率30%以上など)の取得実績がある企業が対象。
・企業全体として男性育休を積極的に浸透させている場合に有利です。
このように、第1種は「初めの一歩」を支援する仕組み、第2種は「制度の定着」を後押しする内容になっており、企業の育児休業制度の成熟度に合わせて柔軟に選べる設計となっています。
制度の活用が企業価値の向上にもつながる
出生時両立支援コースは、男性の育児休業取得を具体的に後押しする数少ない助成制度であり、支給額も比較的高額です。
ただし申請には要件の理解と正確な事務手続きが求められるため、早い段階で準備を始めることが成功の鍵となります。
制度導入により、育児に理解ある企業という評価が高まり、採用力・定着率の向上にも寄与することが期待できます。
今後の人材確保や組織文化の改善にもつながるこの制度、ぜひ積極的に活用してみてはいかがでしょうか。
助成金額と給付対象内容

出生時両立支援コースでは、男性従業員の育児休業取得促進や育休取得率の向上を目的として、企業に対して段階的な助成金が支給されます。
中小企業においては最大で57万円、さらには生産性要件を満たせば最大72万円が支給される可能性もあり、想像以上に手厚い内容となっています。
また、第2種や2人目以降の支援も用意されており、継続的な制度活用にも対応しています。
第1種(1人目)は中小企業で57万円、生産性向上で72万円
「第1種」とは、男性労働者が初めて育児休業を取得する際に、企業へ支給される助成金です。
対象は「育児休業取得のための環境整備」および「実際の取得促進」に関するもので、以下の条件を満たすことで給付対象となります。
・男性従業員が出生後8週間以内に育休を連続5日以上取得
・所定労働日が4日以上含まれること
・企業が育休取得に向けた雇用環境整備(研修や制度整備など)を行っている
これらをクリアした中小企業には57万円の助成金が支給され、生産性要件(売上や労働生産性の向上など)を満たすと最大72万円に引き上げられます。
このように、一人目の育休取得でも企業が積極的に取り組めば高額の助成を受けられるのがポイントです。
第2種(取得率向上型):最大60万円、上昇要件あり
「第2種」は、育児休業の取得率が上昇した企業に支給される助成金であり、以下のような企業努力が求められます。
・過去3年間の育児休業取得率と比較し、男性の取得率が一定割合以上向上している
・複数名(最大3名まで)の男性従業員が育児休業を取得している
このような取得率の実績に基づき、最大60万円(1人あたり20万円×3人まで)が支給されます。
「第1種を取得していない場合でも第2種の申請は可能」という制度拡充がなされており、企業にとっては柔軟に活用しやすくなっています。
ただし、1年度での同時取得制限(後述)や取得率向上の要件を満たす必要があるため、事前に過去の実績データを整理しておくことが重要です。
2人目以降や育児目的休暇の助成額(例:連続日数に応じた金額)
「出生時両立支援コース」では、2人目以降の育児休業取得や育児目的休暇制度の利用に対しても助成金が支給されます。
・2人目以降の取得:第1種ではなく「育児目的休暇制度」に関する助成対象として扱われます
・例えば、育児目的休暇制度において
・連続3日以上の取得で1人あたり最大10万円
・連続5日以上の取得で最大15万円
が支給されるケースもあります。
この制度は「育児休業」という枠に限らず、より柔軟な社内制度の整備も助成対象に含まれるため、就業規則や勤務体制の見直しを行う中小企業にとって非常に有益な制度設計となっています。
助成額の仕組みを理解して、制度を最大限に活用しよう
出生時両立支援コースでは、最大72万円の助成金を受け取れる第1種に加え、育休取得率の向上によって最大60万円の第2種、さらに2人目以降への加算制度も存在します。
これらを活用することで、育休取得の推進だけでなく、企業全体の働き方改革にもつながります。
「こんなに手厚いなら、自社でも導入できそう」と感じられる制度内容となっており、これを機に積極的な社内整備を進める絶好のタイミングです。
助成金の申請前には、各助成額の条件と適用範囲を正確に把握し、計画的に進めることが成功の鍵です。
支給対象になる条件と取得期間要件

出生時両立支援コースの助成金を受けるには、単に男性社員が育児休業を取得すればよいというわけではありません。
企業が制度的・実務的にしっかりと対応しておく必要があり、特に取得のタイミングや期間は厳密に設定されています。
このセクションでは、助成対象となるための取得条件や育休の開始時期、日数要件について詳しく解説します。
育児休業取得のタイミングと日数要件(1人目は連続5日以上・所定労働日4日以上)
まず、「出生時両立支援コース」の**第1種(第1子向け)**において助成の対象となるには、以下の条件を満たす必要があります。
・育児休業を開始するタイミングが重要で、子の出生後8週間以内であることが原則です。
・育休の取得日数は、連続5日以上であることが求められます(休日を含んでもOK)。
・そのうち4日以上が所定労働日である必要があります。
この「所定労働日4日以上」という要件は、単なる有給取得や振替休日では認められないことがあるため注意が必要です。
たとえば、水曜・木曜・金曜・月曜・火曜と連続で取得するなど、実質的に1週間程度の休業を計画することが推奨されます。
また、取得方法は以下いずれでも可能です。
・一括取得(5日間連続で取得)
・分割取得(複数回に分けてもOK。ただし合計で5日間必要)
企業としては、これらの条件を事前に社内で共有し、労務管理体制を整備しておくことが求められます。
取得期間(出生後8週間以内の開始など)
出生時両立支援コースの育児休業取得には期間的な制限があります。
具体的には以下のとおりです。
・育児休業の開始時期は、出生後8週間以内
・企業は、この8週間という期間内に従業員が休業を取得するよう支援し、就業環境を整える必要があります
この「出生後8週間以内の取得」という要件は、助成金の支給可否を分ける非常に重要なポイントです。
たとえば、出産から10週目で育休を取得した場合は、日数条件を満たしていても助成対象外となります。
また、第2種(取得率向上型)では「対象期間内に複数の男性社員が取得する」ことが求められるため、全体のスケジュール管理も必要です。
さらに、企業が「育児目的休暇制度(任意制度)」を導入している場合、休暇の取得に対して追加の助成金も受けられる可能性があります。
この場合も、開始日・日数・対象者の条件が詳細に定められているため、事前に制度設計と就業規則への明記が不可欠です。
育休取得の“タイミング”が助成金のカギを握る
出生時両立支援コースの助成金を確実に活用するには、取得のタイミングと日数の条件を正しく理解することが最重要です。
特に「出生後8週間以内の育休開始」や「所定労働日4日以上を含む連続5日取得」などは、助成金申請の根幹となる要件です。
制度活用を考える企業は、従業員の出産予定日が分かった時点で早めに社内体制を整え、個別の育休取得プランを策定しておくと、支給漏れや制度不適合を避けられます。
正確な運用が、助成金獲得の第一歩。育児と仕事の両立支援を社内文化として根付かせるためにも、制度設計と情報共有の徹底が欠かせません。
申請要件と手続きの流れ

出生時両立支援コースを活用するには、企業側が所定の要件を満たし、適切な手続きを行うことが求められます。
単に従業員が育休を取得するだけでなく、職場全体の育休取得促進のための体制整備も重要です。
このセクションでは、企業に求められる雇用環境整備と、助成金の申請期限・フローについて詳しく解説します。
企業側に求められる雇用環境整備(研修制度・相談体制など)
出生時両立支援コースの助成金を受給するには、育児休業を取得しやすい環境づくりが前提となります。
企業側には以下のような雇用環境の整備が義務付けられています。
・育児休業に関する研修の実施
育児制度の内容やメリット、取得方法などについて、管理職・一般社員向けに研修を行う必要があります。
形式は集合研修、eラーニング、資料配布など問われません。
・相談体制の構築
従業員が育休取得に関する不安や疑問を相談できる担当者を設けることが求められます。
人事・労務部門が対応するケースが多く、外部窓口の設置でも構いません。
・育児休業取得の事例紹介
社内外の育児休業取得実績を紹介し、取得しやすい雰囲気を醸成します。
ポスター掲示や社内メール、イントラネットなどを通じて共有されることが一般的です。
・制度の社内周知
男性従業員やその上司に対して、制度内容や支援方針を明示する社内文書を配布します。
これにより、育休取得が制度として保障されていることを従業員に理解してもらえます。
これらの取り組みは「雇用環境整備実施計画書」に記載し、事前に提出する必要があります。
申請期限(第1種:育休終了翌日から2ヶ月以内)
助成金の申請には厳格な期限が設けられており、申請時期を逃すと受給できません。
第1種・第2種によって異なるので注意が必要です。
・第1種(育休取得時)
男性従業員の育児休業が終了した翌日から起算して2ヶ月以内に申請書を提出する必要があります。
・第2種(取得率向上型)
対象期間内に一定数の育児休業取得者が出た場合、その最後の取得者の育休終了日から2ヶ月以内が申請期限です。
申請時には以下の書類が必要です。
・支給申請書
・育児休業取得証明書(雇用保険被保険者証や給与台帳など)
・雇用環境整備を実施したことを示す証拠資料
・雇用環境整備実施計画書
・育児休業の社内周知資料 など
申請期限は厳守されるため、育休取得後すぐに準備を進めることが重要です。提出はハローワークや労働局の指定窓口で行います。
助成金を確実に受給するには“事前準備”がカギ
出生時両立支援コースを活用するには、単に育児休業を取得させるだけでなく、職場全体で取得を後押しする体制づくりが必要不可欠です。
研修や相談窓口の設置など、雇用環境整備を事前に整えておくことが支給要件の土台となります。
また、申請のタイミングも重要です。育休終了後2ヶ月以内という短期間での対応が求められるため、スケジュール管理と書類準備は計画的に行いましょう。
助成金のチャンスを確実に活かすためには、制度理解と社内の意識づくりが成功の鍵となります。
制度の活用パターンと注意点

出生時両立支援コースをうまく活用するためには、助成金制度の拡充内容や併用制限のルール、支給対象の上限人数や加算条件を正しく理解しておく必要があります。
せっかく制度を導入しても、条件を誤って活用機会を逃してしまうケースもあるため、事前に具体的な運用イメージを持つことが重要です。
第1種未取得でも第2種申請可能になった拡充内容
従来は第1種(出生時育児休業取得時の支援)を取得していなければ第2種(育休取得率向上の取り組み支援)を申請できない仕組みでした。
しかし制度改正により、第1種を利用していなくても第2種だけの申請が可能となりました。
これにより、過去に第1種を利用できなかった中小企業も、一定期間内に複数の男性労働者が育休を取得していれば、第2種の助成金だけを申請して活用することが可能になっています。
企業の多様な事情に応じた柔軟な制度運用ができるようになった点は、現場にとって非常にありがたい変更と言えるでしょう。
第1種と第2種の同一年度での併用制限・第1種後の第2種のみ申請可能な点
一方で、併用に関する注意点も明確に整理されてきています。
まず同一年度内に第1種と第2種を併用することはできません。
このため、同じ年度内で複数の従業員が育休を取得したとしても、どちらか一方の申請に絞る必要があります。
さらに、第2種の助成金を申請するためには、原則として過去に第1種の申請を行っていたことが条件となります。
つまり、同一年度での併用はできませんが、前年などに第1種を活用していれば、翌年度以降に第2種を申請可能です。
この「段階的活用」が基本的な流れになりますので、企業の年間計画に組み込みやすくなっています。
支給対象者数の上限変更(最大3人まで)や加算条件(プラチナくるみん認定)
支給対象となる労働者数にも上限が設けられており、1年度につき最大3人までが支給対象となります。
つまり、企業として複数人の取得を促した場合でも、助成対象は上限3人に制限されている点は認識しておくべきでしょう。
また、一定の基準を満たし、「プラチナくるみん認定」を受けた企業は、助成金額が加算される仕組みになっています。
たとえば第1種では、通常57万円のところ72万円の加算支給を受けられる場合もあります。
認定取得によって企業のイメージ向上にもつながるため、積極的な申請検討が望まれます。
制度活用の最適化に向けて
出生時両立支援コースを戦略的に活用するためには、拡充された内容や制限ルールを正確に理解することが不可欠です。
第1種と第2種の関係や申請タイミング、助成金対象人数の上限など、見落としがちなポイントにも注意が必要です。
企業の実情に合わせてどちらのコースを活用すべきかを検討し、計画的に制度を導入することで、従業員の育児と仕事の両立を支援すると同時に、企業としての評価向上にもつながる効果が期待できます。
柔軟に制度を取り入れ、長期的な人材定着の一助とする姿勢が求められます。
中小企業こそ活用すべき育児支援の切り札

出生時両立支援コースは、男性の育児休業取得を推進するための強力な支援策です。
特に中小企業にとっては、最大72万円(第1種+生産性要件加算)という非常に手厚い助成額が用意されており、「思ったより使える」と感じられる制度設計となっています。
本記事でご紹介したように、以下の点を意識すれば、制度を十分に活用できます。
・第1種・第2種の制度理解と違いの把握
・育休の取得要件と対象期間の確認
・事前準備としての雇用環境整備(研修制度や相談体制など)
・申請期限を逃さない体制づくり
・第1種未取得でも第2種申請が可能な制度拡充を活かす工夫
・成功事例に学び、失敗例からリスクを想定する
制度を導入することで、社内の育児取得の風土醸成だけでなく、企業イメージの向上や離職率の低下にもつながる好循環が期待できます。
「自社にはまだ早い」と感じる前に、まずは社内のチェック体制を整え、初めの一歩を踏み出してみてください。この助成金は、企業と社員の未来を支える“追い風”になるはずです。