コロナ禍や社会環境の変化を背景に、事業の立て直しや新分野への進出を検討している中小企業にとって、事業再構築補助金は大きな後押しとなる制度です。
しかし、
「申請してみたいけど、そもそもどんな制度?」
「何から始めればいいの?」
「どんな書類が必要?」
と不安や疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、初めての方でも安心して申請準備を始められるよう、事業再構築補助金の概要、申請の流れ、必要書類、書類作成のコツ、そして申請後の注意点までをステップごとにわかりやすく解説します。
この記事を読めば、制度の全体像がつかめ、安心して最初の一歩を踏み出せるようになります。
事業再構築補助金とは

「売上が減ってきた」「業態転換を考えている」「新しい事業を立ち上げたい」そんな中小企業や個人事業主にとって、事業再構築補助金は、国からの大きな後押しとなる制度です。
経済産業省が主導し、ポストコロナ・ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応した取り組みを支援するこの補助金は、単なる経費補助ではなく、企業の“未来の再設計”を促す政策として位置づけられています。
この章では、事業再構築補助金の「目的」「対象条件」「補助金額」「申請期間」、そして「成功事例」までを網羅的に解説します。
補助金の目的と意義
事業再構築補助金は、新型コロナウイルスや経済構造の変化により売上が落ち込んだ中小企業が、事業モデルの再構築・転換を行うための支援策です。
この補助金の目的は以下の通りです。
- 新市場への参入や新サービスの開発を後押しすること
- 従来の事業に依存しない経営構造へ移行させること
- 地域経済の再生・活性化を促進すること
単なる延命措置ではなく、「変化に挑む企業への成長支援」としての意味合いが強い点が特徴です。
対象となる事業者の条件
補助金の対象となるのは、以下のような要件を満たす中小企業・個人事業主・中堅企業です。
・直近6か月のうち任意の3か月の売上が、コロナ前と比較して10%以上減少していること
・事業再構築の定義に合致する計画(業態転換・新分野展開など)を策定していること
・認定経営革新等支援機関と連携して事業計画を策定していること
また、事業再構築の内容が不明確な場合や、実態のない転換とみなされる場合は採択されません。明確な変化と実現可能な計画が重要です。
補助金の種類と金額
事業再構築補助金にはいくつかの類型があり、それぞれ補助上限や補助率が異なります。
以下に代表的な類型をまとめます。
類型名 | 対象企業規模 | 補助上限 | 補助率 |
通常枠 | 中小・中堅企業 | 最大8,000万円 | 中小:2/3、中堅:1/2 |
成長枠 | 中小企業 | 最大1.5億円 | 1/2(一定条件で2/3) |
最低賃金枠 | 賃金改善企業 | 最大1,500万円 | 3/4 |
グリーン成長枠 | 環境対応型投資 | 最大1億円以上 | 1/2〜2/3 |
※時期や予算により変更されることがあります。必ず最新の公募要領を確認しましょう。
申請期間とスケジュール
事業再構築補助金の申請は、公募方式で実施されており、年に複数回のタイミングで募集が行われることが一般的です。
ただし、実施年度や予算状況により、申請スケジュールや公募回数は変動します。
特に最新の公募では、「今回が最終公募になる可能性がある」といった発表もなされており、情報の鮮度が非常に重要です。
申請を検討されている方は、以下の公式サイト(公的機関が運営)を定期的に確認し、最新のスケジュールや申請要領を早めに把握することをおすすめします。
また、申請受付にはGビズIDプライムアカウントの取得が必要となります。
発行までに数日〜2週間かかる場合があるため、早めの準備が安心です。
受付期間が短期間になることもあるため、スケジュールの確認と前倒しの準備が申請成功のカギになります。
成功事例の紹介
実際に事業再構築補助金を活用し、事業変革に成功した事例は多くあります。
・飲食業から冷凍食品の製造・通販事業へ転換し、EC売上が倍増した事例
・宿泊業が空きスペースを活用したコワーキング施設に事業展開し、地元企業との新た・な連携を生んだケース
・アパレルメーカーが自社製品のD2Cモデルを確立し、顧客層の拡大に成功
これらの事例に共通しているのは、「既存の枠にとらわれない事業再構築」と、「現実的かつ市場性のある計画」です。
事業再構築補助金は、単なる補助金ではなく、「中小企業の未来に投資する支援制度」です。
コロナ禍を契機に経営の見直しを迫られている企業にとって、思い切った挑戦を現実に変える大きなチャンスになります。
補助金の趣旨を正しく理解し、自社が対象となるかどうかを確認した上で、次は申請の流れを具体的に把握していきましょう。
次章では、申請のステップや進め方を順を追って解説します。
申請の流れ

事業再構築補助金に興味はあるものの、「何から始めればいいのか分からない」「どんな順番で進めるのか不安」という声は少なくありません。
特に、補助金の申請が初めての方にとっては、専門用語や提出書類の多さに圧倒されがちです。
この章では、申請の全体像を整理し、誰でも迷わず進められるステップガイドと、注意点・コンサルの活用方法までわかりやすく解説します。
申請プロセスの概要
事業再構築補助金の申請は、主に以下の5ステップで構成されます。
1.GビズIDプライムの取得(必須)
2.認定経営革新等支援機関との連携・事業計画書の作成
3.必要書類の準備(財務諸表・見積書・法人情報など)
4.jGrants上で電子申請
5.採択結果の確認と、採択後の手続きへ進行
この流れを理解しておくことで、準備すべき項目とスケジュール感が見えてきます。
初めての方でも安心のステップガイド
申請が初めての方は、以下の順番で進めると安心です。
STEP1:GビズIDを早めに取得
発行まで数日〜2週間かかるため、申請を検討した時点で申請しましょう。
STEP2:支援機関を探す(商工会・金融機関・士業など)
事業計画書の作成には、認定支援機関の協力が必須です。
STEP3:事業内容を明確化し、計画書を作成
「どのように再構築するか」「何が変わるか」「効果は何か」を数値とともに整理します。
STEP4:書類を揃えて申請に向けて準備
提出形式やファイル名ルールなど細かい点にも注意が必要です。
STEP5:jGrantsで申請し、控えを保管
完了後はマイページから進捗確認が可能です。
📎 ▶ 初めての補助金申請でも心配無用!徹底解説でサポート
補助金申請が初めてで不安な方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
申請する上での注意点
補助金申請には、よくあるミスやつまずきポイントがあります。特に以下に注意しましょう。
・GビズIDの申請遅れ
IDがなければオンライン申請ができません。早めの取得が重要です。
・事業再構築に該当しない計画
ただのリニューアルや業務改善では対象外となる可能性があります。
・計画の整合性が不十分
売上予測や投資内容に説得力がなければ、審査で減点対象になります。
・申請書類の不備
添付ファイルの不足・形式不一致などで失格になるケースもあります。
コンサルタントを活用した場合の流れ
時間がない、事業計画書の作成が不安、といった場合は、補助金申請サポートの専門家(中小企業診断士・税理士・行政書士など)を活用するのも有効です。
コンサル活用時の流れは以下の通りです。
1.相談・ヒアリング
事業の現状や目指す方向性を伝えます。
2.事業計画書の作成サポート
要点の整理や言い回しの工夫、採択されやすい構成を提案してもらえます。
3.書類チェックと申請代行(または指導)
不備がないかを事前にチェックしてもらえるため安心です。
4.採択後の手続き支援(オプション)
補助金の受給や報告義務までフォローしてくれる場合もあります。
費用はかかるものの、採択率を上げたい、スケジュールがタイトな場合には有効な選択肢です。
事業再構築補助金の申請は、正しいステップと十分な準備があれば、初めてでもしっかり対応可能です。
GビズIDの取得から事業計画の作成、jGrantsでの申請まで、段階ごとの流れを理解しておけば、戸惑うことはありません。
また、支援機関や専門家をうまく活用することで、採択される可能性を高め、確実に申請を進めることができます。
次章では、実際に必要な書類について、チェックリスト形式で整理していきます。
必要書類のチェックリスト

事業再構築補助金を申請するうえで最も重要なポイントのひとつが、必要書類を漏れなく・正しく準備することです。
書類の不備や不足は、申請そのものが無効になる可能性もある重大なリスク。
また、提出書類によって事業の信頼性や補助対象としての妥当性も判断されるため、内容の充実度も問われます。
この章では、補助金申請における基本的な提出書類、事業計画書や財務書類の準備、そして追加で求められる可能性のある書類まで、網羅的にチェックリスト形式でご紹介します。
基本的な提出書類一覧
申請に必須となる代表的な提出書類は以下の通りです:
書類名 | 説明 |
事業計画書 | 補助対象事業の概要・目的・効果などを記載 |
直近2期分の決算書 | 損益計算書・貸借対照表など |
認定経営革新等支援機関の確認書 | 支援機関による内容確認の証明書 |
売上減少を証明する資料 | 月別売上台帳や会計ソフトの出力など |
GビズID取得情報 | 電子申請用アカウント情報 |
※公募要領により求められる書類は変更される可能性があるため、最新の要領を必ず確認してください。
事業計画書の作成ポイント
事業計画書は、補助金の審査で最も重要な書類のひとつです。
以下のポイントを意識して作成しましょう。
・再構築の内容が明確に書かれているか(どのように事業が変化するのか)
・課題と目的が具体的で論理的か
・定量的な成果目標が設定されているか(売上・利益・コスト削減など)
・資金の使い道が明確かつ妥当か
文章だけでなく、図や表を用いるとより説得力のある構成になります。
財務状況を示す書類の準備
事業の健全性や投資の妥当性を判断するため、財務書類の提出が求められます。
・直近2期分の決算書類(中小企業は税務申告書でも可)
・損益計算書(PL)
・貸借対照表(BS)
・月次試算表(必要に応じて)
赤字企業であっても申請は可能ですが、再建可能性や計画の実現性を証明する工夫が必要です。
事業者情報に関する書類
法人・個人の事業者情報を証明する以下の書類も基本として必要です。
・履歴事項全部証明書(法人の場合)
・開業届の写し(個人事業主の場合)
・納税証明書(法人税または所得税)
・所在地確認書類(公共料金の請求書等が代用されることも)
正確な企業情報は、信頼性の評価にもつながります。
追加で求められる可能性のある書類
申請内容や類型によっては、追加で以下のような書類が求められる場合があります。
・補助対象経費の見積書(複数業者から取得が推奨される)
・環境対応設備導入の場合の証明書類
・特定業種向けの許可証や届出書
・専門家のアドバイス記録(任意だが加点対象になる場合あり)
公募ごとに必要書類の指定が異なるため、公募要領の「提出書類一覧」を必ず参照しましょう。
申請書類は、「量が多くて大変そう」と感じるかもしれませんが、ひとつひとつを丁寧に準備すれば、確実に前に進めます。
特に「事業計画書」と「財務書類」は採択に大きく影響するため、正確性・具体性・説得力の3点を意識して作成しましょう。
このチェックリストを活用して、書類準備に漏れがないかを確認し、次章では「書類作成時のコツ」や、成功率を上げるためのポイントをご紹介します。
書類作成時のポイント

事業再構築補助金の申請において、「書類の中身」は採択を左右する最重要ポイントです。
とくに、事業計画書や財務情報、各種証明資料の完成度は、審査担当者に与える印象や評価に大きく影響します。
この章では、精度の高い書類を作成するための実践的なコツや注意点を紹介します。
事業の想いを正しく、効果的に伝えるために押さえておきたい項目を一つずつ見ていきましょう。
精度の高い事業計画書の書き方
事業計画書は、「何を・なぜ・どうやって・どんな成果を出すのか」を伝える最も重要な資料です。
以下の4点を意識して構成すると、説得力が増します。
1.課題の明確化 – 現在の問題点や経営課題を具体的に記載
2.再構築の内容 – どのように事業転換・新分野展開するかを詳細に
3.実施体制とスケジュール – 誰がいつ何をするかを明確にする
4.効果の数値化 – 売上・利益・雇用創出などの目標を数値で示す
文章に加え、図・表・グラフを活用すると、視覚的に理解しやすくなります。
意識すべきプレゼンテーション要素
審査員は限られた時間の中で多数の申請をチェックしています。
以下のようなプレゼンテーション要素を意識すると、読みやすく、印象に残る書類になります。
・見出しや段落を使って構成を明確に
・結論を先に書く(PREP法など)
・図解・写真・レイアウトで視覚的にサポート
・専門用語の使用は必要最低限にし、簡潔な表現を心がける
「伝わる」ことが最終目的であり、読ませるより“伝える”書類を目指しましょう。
過去の事例から学ぶ書類作成のコツ
過去の採択事例に共通して見られるポイントは以下の通りです。
・具体的なデータと数値を活用していた
・現実的かつ実現可能な計画だった(夢物語ではない)
・新市場・新顧客の明確な定義があった
・補助金の使い道と投資効果がリンクしていた
事例を参考に、自社に落とし込む際は、なぜそれが自社に必要かをロジックで補強すると説得力が高まります。
スケジュール管理の重要性
提出期限ギリギリになってから準備を始めると、内容の精度が下がったり、書類不備で申請できない可能性もあります。
書類作成には想像以上に時間がかかるため、スケジュールを以下のように逆算して進めましょう。
・公募開始時点でGビズIDの取得済み
・申請締切の2週間前には草案完成
・支援機関や専門家によるチェック期間を確保
・書類提出の前日に最終チェック&送信
時間に余裕があることで、内容のブラッシュアップやトラブルへの対応も可能になります。
専門家に頼るべきケース
書類作成に不安がある場合は、補助金申請に強い中小企業診断士や税理士、行政書士などの専門家に相談することも有効です。
以下のような状況では、専門家の活用を積極的に検討しましょう。
・補助金申請が初めてで、流れやルールに不安がある
・事業計画のストーリー構成がうまく組み立てられない
・加点要素(地域貢献、雇用創出など)を効果的に盛り込みたい
・採択率を上げたいが、どうすればよいかわからない
専門家は、客観的な視点でのアドバイスや表現の最適化にも長けており、成功率の向上に直結する支援が期待できます。
事業再構築補助金の書類作成は、単なる“提出物”ではなく、自社の将来を描く設計図です。
「何を実現したいのか」「どのように社会に価値を提供するのか」を、正確に・分かりやすく・説得力をもって伝えることが、採択への第一歩となります。
精度の高い事業計画と明快な資料構成で、審査員の心を動かす申請を目指しましょう。
次章では、申請後の流れや注意点について、スムーズな進行のために知っておくべきことを解説します。
申請後の流れと注意点

事業再構築補助金の申請を終えてホッとしたのも束の間、「結果はいつわかる?」「採択されたら何をするの?」「もし不採択だったら…?」といった疑問や不安を感じる方も多いでしょう。
補助金は申請して終わりではなく、採択後の手続きや運用の継続も重要なフェーズです。
この章では、申請後に待っている流れや、採否に応じた対策、補助金を受け取るための条件、事業の進め方について整理して解説します。
申請結果の通知時期
申請結果は、公募締切から1.5〜2か月後を目安に発表されることが一般的です。
発表は「事業再構築補助金公式サイト」および申請システム(jGrants)のマイページで確認できます。
通知内容は以下の2つに分かれます。
・採択通知 – 事業内容が審査を通過したことを知らせる案内
・不採択通知(場合によっては理由あり) – 再申請を検討する際の参考になります
採択された場合でも、次の手続き(交付申請)に進まなければ補助金は受給できません。
不採択の場合の対策
不採択であっても、落ち込む必要はありません。以下のような対応が可能です。
・再申請のチャンスがある(次回公募への再チャレンジ)
・フィードバック内容をもとに事業計画をブラッシュアップする
・認定支援機関や専門家と再構成を行う
実際に1度目は不採択でも、修正して2回目で採択されるケースは多数存在します。
あくまで「事業そのものを否定されたわけではない」ことを念頭に、改善に取り組みましょう。
採択後の手続きの流れ
採択後には、以下のような手続きが必要です。
1.交付申請(補助金を実際に使うための申請)
2.事業開始(契約・購入・実施など)
3.中間報告・進捗報告
4.完了報告書の提出(証拠書類・支払い実績など)
5.補助金の精算・受給
注意点として、交付決定前に契約・購入した経費は補助対象外となるため、事前着手を避けるようにしましょう。
補助金の受給条件
補助金の受給にあたっては、以下のような条件を満たす必要があります。
・事業計画に沿って、対象経費を正しく使用していること
・必要書類(見積書・領収書・契約書など)を保管・提出できること
・原則、事業実施期間内に完了報告がなされること
・補助事業が社会的意義を持ち、実効性があると判断されること
条件を満たしていないと、補助金の一部または全額が不支給になるケースもあります。
継続的な事業改善の指南
補助金はあくまで「きっかけ」に過ぎません。
補助金を活用して終わりではなく、そこからの継続的な改善と事業の成長が求められます。
たとえば以下のような取り組みが重要です。
・実績を基に、事業のPDCAサイクルを継続的に回す
・社内体制を整え、投資効果の最大化を図る
・新たな市場や販路の拡大に取り組む
・他の補助金・助成金制度との併用も検討する
こうした取り組みは、次回以降の補助金申請や金融機関からの信用向上にもつながる可能性があります。
事業再構築補助金は、申請すれば終わりではなく、採択後の対応や事業運営も含めた一連のプロセスです。
申請後に起こること、求められることを事前に理解しておけば、採択された場合もスムーズに行動できます。
また、不採択だった場合もあきらめず、改善と再挑戦が可能です。
事業成長のための第一歩として、補助金をうまく活用していきましょう。
まとめ:不安ゼロで始める事業再構築補助金申請の第一歩

事業再構築補助金は、単なる資金援助ではなく、経営の再構築や新たな挑戦を支える国の後押しです。
制度の概要から申請のステップ、必要書類、書類作成のコツ、そして採択後の流れまでを理解しておくことで、申請へのハードルは一気に下がります。
本記事では、初めての方でも迷わず準備を進められるよう、以下のポイントを解説しました。
・事業再構築補助金の目的・対象・金額などの制度全体像
・ステップごとの申請の流れと注意点
・書類準備のための具体的なチェックリスト
・事業計画書作成時に押さえるべきポイント
・採択後の手続きや受給条件、継続的な事業改善の重要性
事前準備を丁寧に進めることで、採択率アップにもつながり、不安なく申請を完了できます。
このガイドをきっかけに、あなたの事業が次のステージに進む第一歩となることを願っています。