転職したものの、「前職より給料が下がって生活が苦しくなった」「収入減を補ってくれる制度はないのか」と悩む方もいるでしょう。
転職後の賃金が前職より下がった場合、一定の条件を満たせば「就業促進定着手当」を受け取れることがあります。
ただし、給料が下がった人全員が対象になる制度ではありません。再就職手当を受給していることや、同じ再就職先で6か月以上働いていることなどの条件があります。
支給対象になる給料の考え方や金額の計算方法、申請期限まで確認しておきましょう。
転職後に給料が下がったら「就業促進定着手当」を受け取れることがある

転職後の賃金が離職前より低くなった場合は、「就業促進定着手当」の対象になることがあります。
ただし、単純に転職前より月給や手取りが下がっただけでは受給できません。再就職手当の受給歴や6か月間の雇用状況などを確認する必要があります。
給料が下がっただけでは自動的に支給されない
就業促進定着手当は、転職後に給料が下がったすべての人へ支給される制度ではありません。
大きな前提となるのが、雇用保険の基本手当を受ける資格があり、早期に再就職して「再就職手当」を受給していることです。
さらに、再就職後も同じ事業主のもとで6か月以上継続して働き、制度上の計算で賃金日額が離職前より低くなっている必要があります。
たとえば、
前職の月給30万円
転職先の月給28万円
というだけでは、受給できるか判断できません。
実際の判定では、再就職後6か月間に支払われた賃金から算出する「賃金日額」と、離職前の賃金日額を比較します。
再就職手当を受給していることが前提
就業促進定着手当を受けるには、再就職手当の支給を受けていることが前提です。
再就職手当は、雇用保険の基本手当を受給できる人が、一定の支給残日数を残して安定した職業へ早期に再就職した場合などに支給されます。
就業促進定着手当は、その再就職手当を受けた人が、
再就職できたものの、以前より賃金が下がった
というときに追加で支給される制度です。
そのため、在職中に次の勤務先を決めて失業給付を受けずに転職した人などは、通常この手当の対象になりません。
「転職したかどうか」ではなく、「再就職手当を受けているか」が最初の確認項目です。
転職後6か月の賃金日額が離職前より低い場合に対象になる
就業促進定着手当では、再就職後6か月間の賃金から計算した1日あたりの額が、離職前の賃金日額より低いことが必要です。
判定するのは手取り額ではありません。
税金や社会保険料などを差し引く前の賃金をもとに計算します。
対象になるかを簡単に整理すると、次のとおりです。
| 状況 | 対象の考え方 |
| 転職後の月給が下がった | それだけでは判断できない |
| 再就職手当を受給した | 必須条件の一つ |
| 同じ再就職先で6か月以上勤務 | 必須条件の一つ |
| 雇用保険に加入して勤務 | 必要 |
| 再就職後の賃金日額が低下 | 必要 |
| 再就職手当を受給していない | 原則対象外 |
まずは再就職手当の受給状況と、再就職から6か月経過しているかを確認すると判断しやすくなります。
就業促進定着手当をもらえる3つの条件

就業促進定着手当を受給するための中心的な条件は、「再就職手当を受給している」「同じ再就職先で6か月以上働いている」「再就職後の賃金日額が離職前より低い」の3つです。
どれか一つを満たせばよいのではなく、すべて確認する必要があります。
再就職手当の支給を受けている
第一の条件は、再就職手当を受給していることです。
就業促進定着手当は独立した給付ではなく、再就職手当を受給した人に対する追加的な給付として設けられています。
したがって、
- 自己都合で転職した
- 給料が大幅に下がった
- 転職後も雇用保険に加入している
といった条件だけでは対象になりません。
再就職手当を受け取ったか分からない場合は、雇用保険関係の書類やハローワークからの通知を確認しましょう。
同じ再就職先で6か月以上雇用保険に加入して働いている
第二の条件は、再就職手当の対象となった事業主に6か月以上継続して雇用されていることです。
さらに、その期間について雇用保険の被保険者として働いている必要があります。
たとえば、再就職から4か月で退職した場合は、賃金が前職より下がっていても就業促進定着手当の対象にはなりません。
転職直後の収入減をすぐ補う給付ではなく、6か月間働いた実績を確認した後に申請する制度です。
試用期間がある場合でも、雇用関係や雇用保険の加入状況を含めて6か月間の条件を確認します。
再就職後6か月間の賃金日額が離職前を下回っている
第三の条件は、再就職後6か月間の賃金日額が離職前の賃金日額より低いことです。
ここでいう「賃金日額」は、単純に月給を見比べた数字ではありません。
再就職後6か月間に支払われた賃金などをもとに、制度で定められた方法で計算します。
そのため、月給が少し下がっていても、残業手当などを含めた賃金を計算すると離職前以上になることがあります。
反対に、基本給自体は大きく変わっていなくても、各種手当の減少などによって賃金日額が下がれば対象になる余地があります。
転職後の給料がいくら下がれば対象になる?

就業促進定着手当には、「月給が○万円下がれば対象」という固定の基準はありません。
離職前と再就職後の「賃金日額」を比較して、再就職後の方が低ければ支給対象を判定する一つの条件を満たします。
月給や手取りではなく賃金日額で比較する
対象になるかを判断するときは、月給や手取り額ではなく賃金日額を比較します。
そのため、
前職30万円、転職後29万円だから必ず対象
とは限りません。
反対に、
手取りはそれほど変わっていないから対象外
とも限りません。
税金や社会保険料、住民税などは個人ごとに異なります。制度では、これらを差し引いた手取りではなく、支給された賃金をもとに比較します。
| 比較する金額 | 対象判定 |
| 手取り額 | 使用しない |
| 月給だけの単純比較 | 使用しない |
| 年収だけの単純比較 | 使用しない |
| 制度上算出した賃金日額 | 使用する |
転職による収入減を感じていても、制度上の計算結果がどうなるかを確認する必要があります。
月給制は再就職後6か月間の賃金を180で割って計算する
月給制の場合、再就職後6か月間に支払われた賃金の合計額を180で割って、1日あたりの賃金額を算出する方法が基本となります。
たとえば、再就職後6か月間の賃金合計が150万円なら、
150万円÷180日
として賃金日額を計算します。
ただし、賃金として何を含むかにも決まりがあります。
給与明細の振込額だけを合計するのではなく、税金や社会保険料を差し引く前の賃金額を使用します。
また、雇用形態や賃金の支払い方法によって計算方法が異なるため、最終的な判定は申請書類やハローワークで確認してください。
日給・時給制は2つの計算方法の高い方を使う
日給制や時給制などの場合は、月給制と同じ計算だけではなく、実際の賃金支払基礎日数を用いた計算も行います。
再就職後6か月間の賃金を180で割る方法と、賃金総額を賃金支払基礎日数で割って一定割合を掛ける方法を比較し、高い方を再就職後の賃金日額として扱います。
パートや時給制の従業員では、出勤日数によって毎月の給与が変わりやすいためです。
月によって勤務日数が大きく違う場合は、「月収がいくら減ったか」だけでは対象可否を判断しにくくなります。
賃金台帳や給与明細を6か月分そろえ、制度上の計算で確認しましょう。
残業代や通勤手当は含み賞与は原則含めない
賃金日額を計算するときは、基本給だけを使用するわけではありません。
原則として、
- 基本給
- 残業手当
- 通勤手当
- その他毎月支払われる手当
などは賃金に含めて計算します。
一方、3か月を超える期間ごとに支払われる賞与などは、原則として計算に含みません。
したがって、
基本給は前職より下がったが残業代が増えた
という場合には、思っていたより賃金日額の差が小さくなることがあります。
逆に、前職で毎月支給されていた手当がなくなった場合は、その差も賃金日額に影響します。
就業促進定着手当はいくらもらえる?

就業促進定着手当は、離職前と再就職後の賃金日額の差をもとに計算します。
ただし、計算された賃金差の全額が支給されるわけではありません。2025年4月1日以降に再就職した場合は、再就職手当の支給残日数をもとにした20%の上限があります。
支給額は離職前と再就職後の賃金日額の差から計算する
基本的な支給額は、
(離職前の賃金日額-再就職後6か月間の賃金日額)×再就職後6か月間の賃金支払基礎日数
で計算します。
たとえば、
- 離職前の賃金日額:10,000円
- 再就職後の賃金日額:8,500円
- 6か月間の賃金支払基礎日数:180日
なら、
1,500円×180日=270,000円
が賃金差から算出される金額です。
ただし、この27万円がそのまま支給されるとは限りません。
別途設定された上限額と比較し、支給額が決まります。
2025年4月以降の上限は支給残日数の20%
2025年4月1日以降に再就職した人については、就業促進定着手当の支給上限が20%に変更されています。
上限額は、
基本手当日額×再就職手当の算定に使用した支給残日数×20%
です。
たとえば、
- 基本手当日額:6,000円
- 再就職手当の算定に使用した支給残日数:100日
なら、
6,000円×100日×20%=120,000円
が上限です。
賃金差から計算した金額が20万円でも、上限が12万円なら、支給されるのは上限額までとなります。
2025年3月31日以前に再就職した人については、適用される上限割合が異なるため、再就職日を基準に確認してください。
給料の減少額が大きくても上限を超えて受け取れない
転職によって収入が大幅に下がっていても、減った分がすべて補填される制度ではありません。
たとえば毎月5万円ずつ賃金が下がれば、6か月間で単純計算30万円の差が生じます。
しかし、就業促進定着手当には上限があります。
そのため、
6か月で30万円給料が減ったから30万円支給される
とは限りません。
支給額は、
- 賃金日額の差から算出した額
- 基本手当日額・支給残日数から算出した上限額
を確認して決まります。
転職後の収入減を完全に補う制度ではなく、早期再就職後の賃金低下を一定範囲で支援する制度として考えましょう。
月給30万円から25万円に下がった場合の計算例
月給が30万円から25万円に下がった場合でも、正確な支給額は再就職手当の支給残日数などによって変わります。
単純化した例として、
- 離職前の賃金日額:10,000円
- 再就職後の賃金日額:約8,333円
- 賃金支払基礎日数:180日
とすると、賃金日額の差は約1,667円です。
約1,667円×180日=約300,000円
となります。
しかし、仮に基本手当日額6,000円、再就職手当の算定に使った支給残日数100日なら、2025年4月以降の上限額は、
6,000円×100日×20%=120,000円
です。
この例では賃金差による計算額が約30万円でも、上限額が12万円なので、実際の支給は上限までとなります。
実際には賃金に含まれる手当や賃金支払基礎日数などによって変わるため、この金額はあくまで仕組みを理解するための例です。
就業促進定着手当をもらえないケース

転職後の給料が下がっていても、再就職手当を受給していない場合や6か月以内に退職した場合などは対象になりません。
「給料が下がった」という事実だけで判断せず、制度上の要件を確認しましょう。
再就職手当を受け取っていない場合は対象外
就業促進定着手当は、再就職手当を受給した人が対象です。
そのため、失業せずにそのまま別の会社へ転職した人や、基本手当の受給資格がなかった人などは、通常この制度を利用できません。
たとえば、
3月31日に前職を退職
4月1日から転職先で勤務
というような転職では、再就職手当を受給していないケースも多くなります。
転職後の給料が下がった場合でも、まず再就職手当を受け取っているかを確認してください。
再就職先を6か月以内に退職した場合は対象外
就業促進定着手当では、再就職手当の支給対象となった会社で6か月以上継続して雇用されていることが必要です。
再就職後5か月で退職した場合などは、賃金が前職より低くても対象になりません。
転職後すぐの収入減に対応する給付ではない点に注意してください。
また、6か月の途中で別の会社へ転職した場合も、原則として同じ再就職先で6か月という条件を満たせません。
賃金日額が離職前以上なら給料が下がった感覚があっても対象外
本人の感覚では収入が減っていても、制度上の賃金日額が離職前以上なら就業促進定着手当は支給されません。
たとえば、
- 基本給は下がった
- 住宅手当がなくなった
- 手取りが下がった
としても、残業手当や通勤手当などを含めて計算した結果、再就職後の賃金日額が離職前以上になることがあります。
逆に、税金や社会保険料が増えて手取りだけ減っている場合も、制度上は「賃金が下がった」と判定されないことがあります。
手取り額ではなく、所定の方法で賃金日額を比較してください。
自営業として再就職手当を受給した場合は対象外
自営業を開始したことで再就職手当を受給した場合、就業促進定着手当の対象にはなりません。
就業促進定着手当は、再就職後に雇用保険の被保険者として6か月以上雇用されていることが条件だからです。
会社員として再就職したケースと、自営業・事業開始によって再就職手当を受けたケースでは扱いが異なります。
フリーランスや個人事業を始めた人は、「再就職手当を受けているから就業促進定着手当も受けられる」と判断しないようにしてください。
就業促進定着手当の申請方法

就業促進定着手当は、再就職先で6か月間勤務した後に申請します。
通常の申請期間は6か月経過日の翌日から2か月以内なので、対象になりそうな人は事前に必要書類を準備しておきましょう。
申請期間は再就職から6か月経過後の翌日から2か月以内
就業促進定着手当の申請は、再就職した日から6か月を経過した日の翌日から行います。
原則の申請期間は、その翌日から2か月以内です。
たとえば4月1日に再就職し、所定の6か月間を継続して勤務した場合は、6か月経過後に申請期間が始まります。
申請を忘れないよう、
- 再就職日
- 6か月経過日
- 申請開始日
- 申請期限
をあらかじめ確認しておくと安心です。
再就職後すぐに申請する制度ではないため、再就職手当を受け取った書類も保管しておきましょう。
就業促進定着手当支給申請書などを用意する
申請には、就業促進定着手当支給申請書などの必要書類を用意します。
申請書には、本人が記入する部分だけでなく、再就職先の事業主に記載・証明してもらう部分があります。
そのため、申請期限の直前に会社へ依頼するのではなく、6か月経過が近づいた段階で担当部署へ相談しておくとスムーズです。
再就職手当を受給した後に、申請に必要な書類が送付されることもあるため、紛失しないよう保管してください。
出勤簿・賃金台帳など再就職先の証明書類が必要
申請では、再就職後6か月間の勤務状況や賃金を確認できる書類が必要です。
代表的な資料として、
- 出勤簿
- タイムカード
- 賃金台帳
- 給与明細など
があります。
これらをもとに、
- 6か月継続して雇用されているか
- 賃金支払基礎日数
- 再就職後6か月間の賃金
などを確認します。
会社側の証明が必要になるため、本人の給与明細だけですべての手続きを完結できるとは限りません。
ハローワーク窓口・電子申請などで手続きする
就業促進定着手当は、ハローワークで申請するほか、対応する電子申請を利用できる場合があります。
申請方法を選ぶ前に、
- 必要書類がそろっているか
- 事業主の証明が済んでいるか
- 申請期限内か
を確認しましょう。
勤務先や住所変更などにより、どのハローワークへ申請すればよいか分からない場合は、事前に確認すると確実です。
オンラインで手続きできるからといって、会社側の証明書類が不要になるわけではありません。
60歳以上で転職後の給料が下がった場合は高年齢雇用継続給付も確認する

60歳以上65歳未満で賃金が大きく下がった場合は、就業促進定着手当とは別に、高年齢雇用継続給付の対象になるか確認できます。
ただし、年齢や雇用保険の加入期間、60歳時点からの賃金低下率などに条件があり、就業促進定着手当と同じ制度ではありません。
60歳以上65歳未満で賃金が75%未満に低下した人が対象候補
高年齢雇用継続給付は、原則として60歳以上65歳未満で、60歳時点と比べて賃金が75%未満に低下した人が対象候補です。
さらに、雇用保険の被保険者期間などの条件があります。
たとえば、定年後に別の会社へ転職したことで、
60歳時点の月給より大幅に給料が下がった
という場合に確認する制度です。
就業促進定着手当は「離職前と再就職後」の賃金を比較しますが、高年齢雇用継続給付は60歳時点の賃金との関係を確認するため、判定方法が異なります。
また、高年齢雇用継続給付も制度改正が行われているため、実際に60歳へ到達した時期などに応じて最新の支給率を確認してください。
高年齢再就職給付金は再就職手当との併給条件に注意する
60歳以上65歳未満で基本手当を受給した後に再就職した場合は、高年齢再就職給付金の対象になることがあります。
ただし、同じ再就職について再就職手当を受給している場合、高年齢再就職給付金は受給できません。
そのため、
再就職手当
就業促進定着手当
高年齢再就職給付金
をすべて同時に受け取れると考えないようにしてください。
60歳以上で再就職した人は、再就職手当を受けているか、基本手当の支給残日数がどれくらいあるかなどを確認したうえで、自分に該当する制度を判断する必要があります。
転職後に給料が下がったら再就職手当の受給歴と6か月間の賃金を確認しよう

転職後に給料が下がった場合、一定の条件を満たせば「就業促進定着手当」を受け取れることがあります。
最初に確認したいのは、前職との給料差そのものではありません。
まず、
- 再就職手当を受給しているか
- 同じ再就職先で6か月以上働いているか
- 雇用保険へ加入しているか
- 再就職後6か月間の賃金日額が離職前より下がっているか
を確認しましょう。
また、2025年4月1日以降に再就職した場合、支給額には基本手当日額と再就職手当の算定に使った支給残日数をもとにした20%の上限があります。
「給料が月5万円下がったから、その差額が6か月分支給される」という制度ではありません。
対象になる場合は、再就職から6か月経過後の翌日から原則2か月以内に申請します。必要書類には再就職先の証明が必要なものもあるため、申請時期が近づいたら勤務先にも確認しておくとスムーズです。
60歳以上65歳未満で賃金が低下した人は、高年齢雇用継続給付の対象になるかもあわせて確認してください。
