ものづくり補助金は、新製品や新サービスの開発、事業の高付加価値化などに必要な設備投資を支援してきた制度です。
設備の導入費用を抑えられる可能性があるため、申請を検討している中小企業や小規模事業者も多いでしょう。
ただし、従来のものづくり補助金は、2026年5月をもって新規公募を終了しました。今後は、新事業進出補助金と統合された「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」として実施されます。
新制度では、単に古い設備を入れ替えたり、生産量を増やしたりするだけでは申請条件を満たしません。
技術的な革新性を備えた新製品・新サービスの開発、既存事業とは異なる新市場への進出、海外市場開拓に向けた国内体制の強化など、明確な事業計画が必要です。
さらに、申請時点で対象者の要件を満たしているだけでなく、補助事業終了後の付加価値向上や賃上げに関する目標も設定します。目標を達成できなかった場合には、補助金の一部または全部の返還を求められることがあるため注意が必要です。
本記事では、ものづくり補助金の後継制度について、申請できる企業の条件、対象となる事業、事業計画に求められる内容を詳しく解説します。
自社の取り組みが対象になるかを確認し、申請準備を進める際にお役立てください。
ものづくり補助金は新制度へ統合された

ものづくり補助金の申請条件を確認する前に、制度変更を理解しておく必要があります。
これまで実施されていた「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」は、2026年5月に公募を終了しました。
また、新市場への進出などを支援していた新事業進出補助金も、2026年6月をもって公募を終了しています。
両制度の機能を引き継ぐ形で、2026年6月29日から「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」の第1回公募が開始されました。
そのため、これから新規申請する場合は、旧制度の申請条件ではなく、新制度の公募要領を確認する必要があります。
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金とは
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、中小企業などの新たな事業展開を支援する制度です。
主な目的は、次の取り組みを通じて企業規模や付加価値を拡大し、生産性向上と賃上げにつなげることです。
- 技術的な革新性を備えた製品・サービスの開発
- 既存事業とは異なる新市場への進出
- 高付加価値な事業への転換
- 海外市場開拓に向けた国内の輸出体制強化
- 新たな事業に必要な設備やシステムの導入
設備投資は重要な要素ですが、設備を購入すること自体が制度の目的ではありません。
新しい製品やサービスを生み出し、売上や付加価値を高めるための手段として設備を導入する必要があります。
旧制度の情報をそのまま使わない
過去のものづくり補助金では、申請枠、補助率、補助上限額、賃上げ要件などが公募回ごとに定められていました。
既存の記事や過去の解説資料には、現在は使われていない枠や条件が掲載されている場合があります。
特に、次の情報は現行制度と一致しない可能性があります。
- 補助対象となる事業枠
- 補助上限額
- 補助率
- 付加価値額の要件
- 賃上げ要件
- 対象経費
- 申請期間
- 審査項目
- 加点・減点項目
既存記事にも、旧制度を前提とした補助額や補助率、申請スケジュールなどが含まれています。新制度の記事へ更新する場合は、過去の概算値や日程を残さず、現在の公募要領を基準に修正する必要があります。
ものづくり補助金の後継制度へ申請できる対象者

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金へ申請するには、制度が定める対象者の条件を満たす必要があります。
中小企業であれば、無条件で申請できるわけではありません。
企業規模、法人形態、資本関係、事業内容などを確認しましょう。
中小企業や小規模事業者が主な対象
主な対象は、日本国内に本社と補助事業の実施場所を有する中小企業や小規模事業者などです。
中小企業に該当するかどうかは、業種ごとに定められた資本金または常勤従業員数によって判断されます。
一般的な中小企業の区分は次のとおりです。
| 業種 | 資本金 | 常勤従業員数 |
| 製造業・建設業・運輸業など | 3億円以下 | 300人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
資本金と従業員数の両方を満たす必要はなく、原則としてどちらか一方が基準以下であれば中小企業の範囲に入ります。
ただし、業種によって別の基準が設定される場合があります。
申請時には、日本標準産業分類や公募要領の定義を確認してください。
製造業以外でも申請できる
「ものづくり」という名称から、製造業だけが対象だと思われがちです。
しかし、対象事業の条件を満たせば、サービス業、小売業、宿泊業、飲食サービス業なども申請できる可能性があります。
例えば、次のような取り組みが考えられます。
- 飲食店が独自の冷凍食品を開発する
- 宿泊施設が新しい体験型サービスを開発する
- 美容サロンが独自技術を用いた新サービスを提供する
- 物流会社が新たな配送管理サービスを開発する
- IT企業が業界向けの新システムを開発する
- 小売業者が自社商品の製造事業へ進出する
重要なのは業種ではありません。
自社にとって新しい取り組みであり、顧客に新たな価値を提供できるかどうかがポイントです。
既存記事では、製造業やIT関連業などが優遇されるような記載がありますが、業種だけで採択が決まるわけではありません。
自社の業種が対象かどうかと、事業計画が評価されるかどうかは分けて考えましょう。
個人事業主も対象になり得る
法人だけでなく、一定の条件を満たす個人事業主も申請できる可能性があります。
ただし、事業実態や申告状況を確認できる書類が必要です。
個人事業主の場合は、主に次の資料を準備します。
- 確定申告書
- 青色申告決算書または収支内訳書
- 開業届
- 従業員数を確認できる資料
- 事業所の所在地を確認できる資料
- 事業計画書
- 設備などの見積書
開業直後で決算や確定申告の実績がない場合は、申請できるかを公募要領で確認する必要があります。
事業実績が少ない場合は、売上計画や資金調達の実現性をより具体的に示すことも大切です。
大企業の支配下にある企業は対象外になることがある
形式上は中小企業の資本金や従業員数を満たしていても、大企業に実質的に支配されている企業は対象外となる場合があります。
いわゆる「みなし大企業」に該当するケースです。
例えば、次のような資本関係がある場合は注意しましょう。
- 発行済株式の大部分を大企業が保有している
- 複数の大企業から一定割合以上の出資を受けている
- 役員の多くが大企業の役員や従業員を兼任している
- 大企業の完全子会社になっている
- 親会社を含めた企業グループが制度上の要件に抵触する
対象外となる具体的な基準は、公募要領に定められています。
資本関係が複雑な企業は、株主名簿や組織図を確認してください。
課税所得などによって対象外になる場合がある
一定以上の課税所得がある企業は、補助対象者から除外される場合があります。
中小企業の規模要件を満たしていても、大きな利益を継続して計上している企業は、制度上の対象外となる可能性があります。
確認には、過去数年間の法人税申告書や所得金額が分かる資料を使用します。
申請直前になって対象外だと分からないように、財務担当者や税理士と事前に確認しておきましょう。
同一法人による重複申請に注意する
同じ法人が、同一の公募回で複数の事業計画を申請できない場合があります。
また、過去に採択された補助事業が完了していない場合や、類似する国の補助金を受給している場合は、新たな申請が制限されることがあります。
次の情報を整理してください。
- 過去に採択された補助金
- 現在実施中の補助事業
- 申請中の補助金
- 対象となる設備や経費
- 補助事業の実施期間
- 事業化状況報告の提出状況
同じ設備や同じ経費について、複数の国庫補助金を重ねて受給することは原則としてできません。
別制度との併用を検討する場合は、対象経費を明確に分けましょう。
申請対象となる3つの事業枠

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金には、事業の目的に応じて3つの枠があります。
自社が導入したい設備から枠を選ぶのではなく、どのような事業へ挑戦するのかを基準に選択します。
革新的新製品・サービス枠
革新的新製品・サービス枠は、新しい製品やサービスの開発を支援する枠です。
自社の技術、知識、ノウハウなどを生かし、顧客へ新しい価値を提供する取り組みが対象となります。
対象になり得る例は次のとおりです。
- 新しい素材を用いた製品の開発
- 従来より高精度な加工サービスの開発
- AIを活用した独自の検査サービス
- 新たな製造方法による食品の開発
- 既存技術を組み合わせた新しい介護サービス
- 業界特有の課題を解決する新システム
一方、既存製品の製造工程を改善するだけの事業や、機械を導入して生産量を増やすだけの取り組みは対象外です。
また、同業他社ですでに相当程度普及している製品・サービスも、革新的な開発とは認められない場合があります。
設備投資だけでは申請できない
革新的新製品・サービス枠では、機械装置やシステムを導入するだけでは申請条件を満たしません。
例えば、新しい加工機械を購入する場合でも、次の違いがあります。
対象になりにくい例
- 古い加工機を同じ機能の新型へ買い替える
- 生産量を増やすためだけに機械を追加する
- 人件費を減らすためだけに自動化する
- 他社でも一般的に使用されている設備を導入する
対象になる可能性がある例
- 新設備を用いて従来は作れなかった製品を開発する
- 自社独自の加工技術と組み合わせて新商品を生み出す
- 顧客の未解決課題に対応する新サービスを提供する
- 新しい市場へ販売する製品を開発する
設備は、新製品・新サービスを実現するための手段として位置付けましょう。
新事業進出枠
新事業進出枠は、既存事業とは異なる新市場や高付加価値事業への進出を支援します。
既存の商品を同じ顧客へ販売するだけではなく、製品・サービスや市場に一定の新規性が必要です。
例えば、次のような取り組みが考えられます。
- 金属部品メーカーが医療機器部品の分野へ進出する
- 飲食店が業務用冷凍食品の製造販売を始める
- 建設会社が住宅向け省エネ診断サービスを始める
- 印刷会社がデジタルコンテンツ制作事業へ進出する
- 旅館が法人向け研修施設の運営を始める
- 小売業者が自社ブランド商品の製造を始める
新事業進出枠では、既存事業との違いを明確に説明しなければなりません。
新しい設備を導入しても、提供する製品、サービス、顧客、市場などが従来とほぼ同じであれば、新事業進出とは認められない可能性があります。
新市場・高付加価値事業であることを示す
申請では、次の内容を具体的に説明します。
- 既存事業で提供している製品・サービス
- 新事業で提供する製品・サービス
- 既存の顧客層
- 新たに獲得する顧客層
- 進出する市場の規模
- 市場の成長性
- 競合事業者
- 自社の優位性
- 新事業の価格と付加価値
- 売上計画
単に「新しい事業に挑戦する」と記載するだけでは不十分です。
既存事業との違いを表や図で整理すると、事業の新規性を伝えやすくなります。
グローバル枠
グローバル枠は、海外市場開拓に向けて、国内の輸出体制を強化する事業を支援します。
海外で設備投資を行う制度ではなく、原則として国内で実施する設備投資などを通じて、輸出の拡大を目指す枠です。
対象になり得る取り組みには、次のような例があります。
- 輸出向け商品の生産設備を導入する
- 海外基準に対応した検査設備を整える
- 海外向け商品の開発や改良を行う
- 輸出量の増加に対応する生産ラインを構築する
- 海外市場向けの包装設備を導入する
- 輸出に必要な認証や知的財産権を取得する
海外市場へ販売する意思だけではなく、対象国の市場性や顧客ニーズ、販売体制を具体的に示す必要があります。
海外市場の調査と販売計画が重要
グローバル枠では、国内向け事業以上に市場調査が重要です。
少なくとも次の内容を整理しましょう。
- 進出予定国・地域
- 市場規模
- 市場の成長率
- 現地の顧客層
- 競合製品
- 販売価格
- 販売代理店や取引先
- 輸送方法
- 関税や規制
- 必要な認証
- 為替変動の影響
- 輸出開始までのスケジュール
「海外で売れると思う」という見込みだけでは、事業の実現性を証明できません。
商談状況、問い合わせ実績、テスト販売などがあれば、客観的な根拠として活用できます。
申請時に満たす必要がある基本要件

申請する事業枠が決まったら、制度共通の基本要件を確認します。
新制度では、補助事業によって付加価値を高め、その成果を従業員の給与や最低賃金へ反映することが求められます。
補助金を使って設備を導入するだけでなく、補助事業終了後の会社全体の成長計画が必要です。
付加価値額を増加させる
補助事業終了後3~5年の事業計画期間において、付加価値額を一定以上増加させる必要があります。
第1回公募では、付加価値額の年平均成長率を4.0%以上増加させる目標が示されています。
付加価値額は、一般的に次のような項目を基に計算します。
付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費
売上だけを増やしても、外注費や仕入れなどの費用が大幅に増えれば、付加価値額が伸びない可能性があります。
事業計画では、次の数値を年度ごとに計算しましょう。
- 売上高
- 売上原価
- 販売管理費
- 営業利益
- 人件費
- 減価償却費
- 付加価値額
設備導入後の売上予測と、会社全体の付加価値額の計画を一致させることが大切です。
一人当たり給与支給総額を増加させる
補助事業の成果を従業員へ還元するため、一人当たり給与支給総額の増加も求められます。
第1回公募では、補助事業終了後3~5年の事業計画において、年平均成長率3.5%以上の増加が基本要件です。
一人当たり給与支給総額を計算する際は、給与支給総額と従業員数の両方が影響します。
採用によって従業員数が増える場合も含め、次の内容を確認しましょう。
- 現在の給与支給総額
- 現在の従業員数
- 今後の採用予定
- 定期昇給
- ベースアップ
- 賞与
- 役員報酬の扱い
- 対象となる従業員の範囲
売上計画だけでなく、賃上げ後も利益と資金繰りを維持できるかを計算する必要があります。
補助金を受け取るためだけに、実現困難な給与計画を設定するのは避けましょう。
事業場内最低賃金の要件を満たす
補助事業を実施する事業場では、事業場内最低賃金を地域別最低賃金より一定額以上高い水準にする必要があります。
第1回公募では、地域別最低賃金に30円を加えた金額以上を維持することが基本要件です。
例えば、地域別最低賃金が1,100円の場合、事業場内最低賃金は1,130円以上にする必要があります。
確認するときは、基本給だけではなく、最低賃金へ算入できる賃金を基に時間額を計算します。
次のような賃金は、最低賃金の計算から除外される場合があります。
- 通勤手当
- 家族手当
- 精皆勤手当
- 時間外労働手当
- 休日労働手当
- 深夜労働手当
- 臨時に支払われる賃金
- 賞与
月給制の従業員についても、所定労働時間から時間額へ換算して確認しましょう。
従業員へ賃上げ計画を表明する
賃上げ計画については、従業員へ適切に表明する必要があります。
経営者だけで目標を決めるのではなく、対象となる従業員へ計画の内容を伝え、証拠となる書類を保存します。
表明書には、主に次の内容を記載します。
- 現在の給与水準
- 事業計画期間
- 給与支給総額の目標
- 一人当たり給与支給総額の目標
- 事業場内最低賃金の目標
- 表明日
- 代表者名
- 従業員代表の確認
申請後に表明日をさかのぼって作成してはいけません。
公募要領や指定様式を確認し、期限までに手続きを行いましょう。
未達成の場合は返還が生じることがある
付加価値額、給与支給総額、最低賃金などの目標は、単なる参考値ではありません。
要件を達成できなかった場合には、補助金の一部または全部を返還しなければならない可能性があります。
返還リスクを抑えるためには、過度に楽観的な売上計画を立てないことが重要です。
次の3パターンを作成するとよいでしょう。
| シナリオ | 売上の想定 | 主な用途 |
| 標準ケース | 計画どおりに推移 | 申請計画の基本 |
| 慎重ケース | 売上が計画を下回る | 賃上げを維持できるか確認 |
| 成長ケース | 売上が計画を上回る | 追加投資や採用を検討 |
慎重ケースでも要件を満たせるかを確認しましょう。
補助率と補助上限額

補助対象となるのは、採択された事業を実施するために必要な経費です。
通常の事業運営にかかる費用や、補助事業との関係が不明確な支出は対象になりません。
機械装置・システム構築費
機械装置・システム構築費は、新制度の中心となる経費です。
対象になり得るものには、次のような例があります。
- 製造機械
- 加工設備
- 検査装置
- 包装設備
- 自動化設備
- 業務用システム
- 生産管理システム
- 新サービスに必要な専用機器
- 補助事業専用のソフトウェア
- 設備の設置や改良費
革新的新製品・サービス枠では、機械装置・システム構築費を必ず補助対象経費へ含める必要があります。
ただし、パソコンやスマートフォンなど、事業以外にも使用できる汎用品は対象外になる可能性があります。
建物費
新事業進出枠とグローバル枠では、建物費が対象になる場合があります。
例えば、次のような支出です。
- 新事業用の建物の建設
- 既存建物の改修
- 新しい生産ラインに必要な工事
- 補助事業に必要な施設の整備
- 建物の撤去に伴う費用
建物費であれば、すべて対象になるわけではありません。
土地の購入費、賃貸物件の敷金・礼金、通常の修繕費などは、対象外になる可能性があります。
建物を補助事業以外にも使用する場合は、経費の按分が必要になることもあります。
技術導入費・知的財産権等関連経費
新製品やサービスの開発に必要な技術を外部から導入する費用も、対象になる場合があります。
例えば、次のようなものです。
- 特許技術の使用料
- 専門技術の導入費
- 特許権取得に関連する費用
- 商標登録に必要な費用
- 弁理士への手続き費用
補助事業との直接的な関係が必要です。
会社全体で使用する一般的な商標や、補助事業開始前から使用している技術の費用は、対象にならない可能性があります。
外注費・専門家経費
自社だけでは実施できない加工、設計、検査などを外部へ委託する費用も対象になり得ます。
また、補助事業に必要な専門知識を得るための専門家費用も候補です。
対象になり得る例は次のとおりです。
- 試作品の加工
- 製品設計
- システム設計
- 性能試験
- 市場調査
- 技術指導
- デザイン開発
- 海外規制に関する専門家相談
ただし、申請書の作成代行費や、通常の顧問契約費などは対象外になる場合があります。
補助事業に必要な業務と、申請手続きの支援を分けて考えましょう。
原材料費
試作品や新製品の開発に直接使用する原材料費も、対象となる可能性があります。
購入した材料の数量、使用目的、残量などを管理しなければなりません。
通常販売する製品の仕入れや、大量生産用の材料は対象外になる場合があります。
試作と販売用商品の区別がつくように、在庫管理や使用記録を残しましょう。
広告宣伝・販売促進費
新たに開発した製品やサービスの販路開拓に必要な広告費も、対象になる可能性があります。
例えば、次のような費用です。
- 新製品のパンフレット
- 補助事業専用のWebページ
- 展示会出展
- 新サービスの広告
- 販促用動画
- 海外向けの宣伝資料
会社全体のイメージ広告や、既存商品の広告は対象外になりやすいため注意してください。
補助事業で開発する製品・サービスとの関係を明確にしましょう。
補助対象外になりやすい経費
次のような費用は、対象外になる可能性があります。
- 土地の購入費
- 敷金・礼金
- 通常の家賃
- 日常的な人件費
- 水道光熱費
- 通信費
- 通常の仕入れ
- 自動車などの汎用品
- 補助事業と関係のない設備
- 交付決定前に契約した経費
- 消費税
- 振込手数料
- 各種証明書の取得費
- 申請書作成の代行費用
事業に必要な費用と、補助金の対象経費は同じではありません。
見積もりを取得する前に、経費区分と対象条件を確認しましょう。
ものづくり補助金の事業計画に求められる内容

申請条件を満たしていても、自動的に採択されるわけではありません。
補助金は審査制です。
申請者の中から、制度の目的に合い、実現性や成長性が高いと評価された事業が採択されます。
事業計画では、現在の課題から補助事業後の成果まで、一貫した流れを示しましょう。
現在の事業内容と経営課題
最初に、自社が現在どのような事業を行っているのかを説明します。
記載したい内容は次のとおりです。
- 主な製品・サービス
- 顧客層
- 販売地域
- 売上構成
- 自社の強み
- 技術やノウハウ
- 現在の設備
- 組織体制
- 競合との違い
- 抱えている経営課題
「売上を増やしたい」「生産性を高めたい」といった抽象的な課題だけでは不十分です。
例えば、次のように具体化します。
- 既存設備では加工できる素材が限られている
- 熟練者に作業が集中している
- 新規顧客からの注文に対応できない
- 外注工程が多く納期が長い
- 海外基準に対応した検査設備がない
- 既存市場が縮小している
- 原価が高く価格競争に弱い
数値や実績を用いて説明すると、設備投資の必要性が伝わりやすくなります。
開発する製品・サービスの内容
次に、補助事業で何を生み出すのかを明確にします。
説明する内容は次のとおりです。
- 製品・サービスの名称
- 主な機能
- 想定する顧客
- 顧客が抱える課題
- 提供する価値
- 既存製品との違い
- 競合製品との違い
- 開発方法
- 使用する技術
- 開発後の販売方法
専門用語だけで説明すると、審査担当者へ内容が伝わりません。
図や写真、工程図なども使い、業界外の人でも理解できるようにまとめましょう。
革新性を示す
革新的新製品・サービス枠では、事業の革新性が重要です。
革新性とは、世界初や特許取得済みであることだけを意味しません。
同業の中小企業などで相当程度普及しておらず、顧客へ新しい価値を提供できることが求められます。
次の観点から説明するとよいでしょう。
- 従来品より性能が高い
- 製造時間を大幅に短縮できる
- 従来対応できなかった素材を扱える
- 複数の機能を一つにまとめている
- 顧客の負担を軽減できる
- 新しい利用方法を提供できる
- 自社独自の技術を活用している
- 地域内では提供されていない
競合比較表を作成すると、違いを整理しやすくなります。
| 比較項目 | 自社の新製品 | 既存製品A | 既存製品B |
| 価格 | |||
| 性能 | |||
| 納期 | |||
| 対応範囲 | |||
| 顧客のメリット |
「他社にはない」と断定する場合は、調査した範囲や根拠も示しましょう。
市場性と顧客ニーズを示す
優れた製品を開発できても、購入する顧客がいなければ事業として成立しません。
事業計画では、市場規模や顧客ニーズを客観的に説明します。
活用できる情報は次のとおりです。
- 公的統計
- 業界団体の資料
- 市場調査レポート
- 既存顧客へのヒアリング
- 問い合わせ件数
- 商談記録
- アンケート
- テスト販売
- 仮契約や意向表明
- 過去の販売実績
市場規模が大きいという情報だけでは、自社が売上を得られる根拠になりません。
市場全体の中で、どの顧客層を狙い、どのように販売するのかまで説明します。
売上計画の根拠を示す
売上計画は、希望的な数字ではなく、販売数量と単価を基に計算します。
基本的な考え方は次のとおりです。
売上高=販売単価×販売数量
例えば、1個5万円の商品を年間200個販売する場合、年間売上は1,000万円です。
販売数量については、次の根拠を用意します。
- 既存顧客への販売予定
- 商談中の顧客数
- 営業担当者数
- 月間の生産能力
- 市場占有率
- 販売チャネル
- 類似商品の販売実績
- テスト販売の結果
売上計画が設備の生産能力を超えていないかも確認してください。
実施体制を示す
事業計画が優れていても、実施する人材や技術が不足していれば実現できません。
社内外の実施体制を示しましょう。
- 事業責任者
- 製品開発担当者
- 設備担当者
- 営業担当者
- 品質管理担当者
- 経理担当者
- 外部の共同開発先
- 設備メーカー
- 専門家
- 金融機関
各担当者の経験や保有資格も、実現性を示す材料になります。
一人の経営者に業務が集中する場合は、通常業務と補助事業を両立できる根拠も必要です。
資金計画を具体化する
補助金は、設備購入前に入金されるわけではありません。
設備や外注費などを先に支払い、実績報告後に補助金を受け取るのが基本です。
そのため、補助事業を実施できる資金を用意しなければなりません。
資金計画では、次の内容を整理します。
- 設備費
- 建物費
- 外注費
- 原材料費
- 広告費
- 補助対象外経費
- 消費税
- 自己資金
- 金融機関からの借入金
- 補助金の入金予定額
- 入金までの運転資金
金融機関から資金提供を受ける場合は、事業計画について金融機関による確認を受けたことを示す書類が必要になることがあります。
申請前に金融機関へ相談し、融資の可能性を確認しましょう。
申請前に確認したい注意点

ものづくり補助金の後継制度では、採択後の手続きや補助事業の実施にも細かなルールがあります。
申請条件を満たすことだけでなく、採択後に適切な運用ができるかも確認してください。
採択前に設備を発注しない
補助金では、採択通知を受けただけで設備を発注できるとは限りません。
一般的には、採択後に交付申請を行い、交付決定を受けてから契約・発注します。
交付決定前に次の行為をすると、補助対象外になる可能性があります。
- 売買契約を結ぶ
- 発注書を発行する
- 手付金を支払う
- 設備を納品してもらう
- 工事を開始する
- リース契約を締結する
- 外注業務を開始する
設備メーカーから見積もりを取得することと、発注することは異なります。
納期を確認しつつ、契約日は交付決定後に設定しましょう。
補助金は後払いを前提にする
補助金の入金前に、対象経費の全額を支払う必要があります。
例えば、税込2,200万円の設備を導入し、補助金見込額が1,000万円であっても、購入時には2,200万円を用意しなければなりません。
さらに、次の金額は自己負担となる可能性があります。
- 補助率に含まれない部分
- 補助上限額を超える部分
- 消費税
- 補助対象外経費
- 実績報告で認められなかった費用
- 借入金の利息
- 導入後の維持費
補助金を予定どおり受け取れなかった場合でも、借入金を返済できる計画を立てましょう。
補助事業期間内に支払いまで完了する
補助対象となるのは、原則として補助事業期間内に契約、納品、検収、支払いが完了した経費です。
設備が期間内に納品されなければ、補助対象外になる可能性があります。
特に注意したい設備は次のとおりです。
- 受注生産の大型機械
- 海外製の設備
- 建物工事を伴う設備
- システム開発
- 部品不足の影響を受けやすい機械
- 許認可が必要な設備
販売事業者へ納期を確認し、遅延した場合の対応も話し合っておきましょう。
実績報告に必要な証拠を残す
補助事業終了後は、契約や支払いが適切に行われたことを証明する実績報告が必要です。
主な証拠書類は次のとおりです。
- 見積書
- 相見積書
- 契約書
- 発注書
- 納品書
- 検収書
- 請求書
- 振込明細
- 通帳の写し
- 設備の写真
- 製造番号が分かる写真
- 外注成果物
- 作業記録
- 固定資産台帳
現金払いなど、支払いの記録が残りにくい方法は認められない場合があります。
銀行振込を利用し、申請者名義の口座から支払いましょう。
採択後も事業計画の報告が続く
補助金を受け取った後も、一定期間は事業化状況や賃上げ実績などの報告が必要です。
報告する可能性がある内容は次のとおりです。
- 補助事業による売上
- 付加価値額
- 営業利益
- 給与支給総額
- 従業員数
- 事業場内最低賃金
- 新規雇用者数
- 製品やサービスの販売状況
- 海外売上
- 補助対象設備の使用状況
申請時の担当者が退職しても対応できるように、事業計画と関係書類を社内で共有しましょう。
自社が申請条件を満たすか判断する方法

新制度は補助上限額が大きい一方で、事業計画や賃上げの要件も重くなっています。
設備を購入したいという理由だけで申請すると、採択されても事業計画の実行に苦労する可能性があります。
次の順番で、自社との適合性を確認しましょう。
申請前のチェックリスト
申請者の条件
- 中小企業や小規模事業者などの対象者に該当する
- 日本国内に本社と補助事業の実施場所がある
- みなし大企業に該当しない
- 課税所得などの除外要件に該当しない
- 過去の補助金で必要な報告を行っている
- 同一事業について別の補助金を重複申請していない
事業内容の条件
- 新製品・新サービスの開発を伴う
- 既存事業とは異なる新市場へ進出する
- 海外市場開拓に向けた国内投資を行う
- 設備を購入するだけの計画ではない
- 顧客へ提供する新しい価値を説明できる
- 同業他社との違いを示せる
- 市場や顧客ニーズを確認している
数値計画の条件
- 付加価値額の成長目標を達成できる
- 一人当たり給与支給総額を増加できる
- 事業場内最低賃金を基準以上にできる
- 賃上げ後も人件費を負担できる
- 売上計画に客観的な根拠がある
- 補助事業終了後も事業を継続できる
資金面の条件
- 補助金入金前に経費を支払える
- 消費税や対象外経費を負担できる
- 必要に応じて金融機関から融資を受けられる
- 売上が計画を下回っても返済できる
- 設備導入後の維持費を負担できる
実施体制の条件
- 補助事業を管理する責任者がいる
- 技術開発を担当できる人材がいる
- 新製品を販売する体制がある
- 経理書類を管理できる
- 実績報告に対応できる
- 採択後の事業化状況報告を継続できる
すべての項目を満たしていなくても、申請準備の中で改善できるものはあります。
一方、事業の新規性や資金調達の見込みがない場合は、申請を急がずに事業計画から見直しましょう。
まとめ|ものづくり補助金の申請条件は現行制度で確認しよう

従来のものづくり補助金は、2026年5月をもって新規公募を終了しました。
今後は、新事業進出補助金と統合された「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」が、後継制度として実施されます。
新制度へ申請するには、中小企業や小規模事業者などの対象者要件を満たすだけでは不十分です。
次のいずれかに当てはまる事業計画が必要です。
- 技術的な革新性を備えた新製品・新サービスを開発する
- 既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業へ進出する
- 海外市場開拓に向けて国内の輸出体制を強化する
特に注意したいのは、単純な設備投資では対象にならない点です。
古い機械を同等品へ買い替える、生産量を増やすために設備を追加する、一般的なシステムを導入するといった内容だけでは、申請条件を満たさない可能性があります。
設備を活用して、どのような新製品やサービスを生み出すのかを明確にしましょう。
また、補助事業終了後には、付加価値額、一人当たり給与支給総額、事業場内最低賃金などの目標達成が求められます。
第1回公募の基本要件は次のとおりです。
- 付加価値額の年平均成長率を4.0%以上増加させる
- 一人当たり給与支給総額の年平均成長率を3.5%以上増加させる
- 事業場内最低賃金を地域別最低賃金より30円以上高くする
目標を達成できない場合には、補助金の返還が生じることがあります。
申請前には、現在の給与、従業員数、売上、利益、付加価値額を整理してください。
そのうえで、設備導入後の売上増加と賃上げを両立できるかを計算します。
申請条件を確認する際のポイントは次のとおりです。
- 自社が対象事業者に該当するか
- 申請する事業枠と取り組みが合っているか
- 新製品・新サービスや新市場の内容を説明できるか
- 顧客ニーズと市場性を示せるか
- 付加価値向上と賃上げの目標を達成できるか
- 補助金が入金される前に経費を支払えるか
- 補助事業期間内に設備の納品と支払いを完了できるか
- 採択後の実績報告や事業化状況報告へ対応できるか
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の第1回公募は、2026年6月29日に開始されています。
申請受付は2026年9月30日から、応募締切は2026年10月30日18時です。公募スケジュールは2026年7月17日に変更されているため、過去の日程を参考にせず、申請時点の公式情報を確認してください。
申請条件を満たすために事業内容を無理に変更するのではなく、自社が本当に取り組むべき新事業を明確にすることが大切です。
設備投資によって顧客へどのような価値を提供し、会社の付加価値と従業員の給与をどう高めるのかを整理したうえで、申請準備を進めましょう。
