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働き方改革推進支援助成金とは?対象事業主の条件と5つのコースを解説

長時間労働の削減や有給休暇の取得促進を進めたいものの、設備やシステムの導入費用が負担となり、取り組みを進められない中小企業は少なくありません。

勤怠管理を効率化するシステムや作業時間を短縮する設備を導入すれば、従業員の負担軽減につながります。しかし、導入時にはまとまった費用が必要です。

このような中小企業の取り組みを支援する制度が、働き方改革推進支援助成金です。

働き方改革推進支援助成金では、労働時間の短縮や休暇取得の促進、勤務間インターバル制度の導入などに必要な費用の一部が助成されます。

ただし、設備やシステムを購入するだけでは受給できません。

中小企業事業主であることや労災保険の適用事業主であることなど、所定の条件を満たす必要があります。さらに、選択したコースで定められた成果目標を達成しなければなりません。

2026年度の働き方改革推進支援助成金には、次の5コースがあります。

  • 業種別課題対応コース
  • 労働時間短縮・年休促進支援コース
  • 勤務間インターバル導入コース
  • 取引環境改善コース
  • 団体推進コース

コースごとに対象者や取り組み、成果目標が異なります。自社が解決したい労働時間の課題を明確にしたうえで、適切なコースを選ぶことが重要です。

本記事では、働き方改革推進支援助成金の目的、各コースの特徴、対象事業主の条件について解説します。自社が利用できるか判断する際にお役立てください。

目次

働き方改革推進支援助成金とは

働き方改革推進支援助成金は、中小企業などが生産性を向上させながら、労働時間の短縮や休暇取得の促進に取り組む際に利用できる制度です。

対象となるのは、単なる福利厚生の充実ではありません。

労働時間や休暇制度に関する具体的な課題を改善し、従業員が働きやすい環境を整える取り組みが支援されます。

中小企業の労働時間改善を支援する制度

働き方改革推進支援助成金の主な目的は、中小企業における労働時間等の設定を改善することです。

労働時間等の設定とは、始業・終業時刻、休日数、年次有給休暇、勤務終了後の休息時間など、従業員の働く時間に関する制度や運用を指します。

企業が抱える代表的な課題には、次のようなものがあります。

  • 残業時間が長い
  • 特定の従業員に業務が集中している
  • 年次有給休暇を取得しにくい
  • 繁忙期に休日を確保できない
  • 前日の終業から翌日の始業までの時間が短い
  • 勤怠集計やシフト作成に時間がかかる
  • 手作業が多く、業務効率が上がらない
  • 人手不足によって一人当たりの負担が増えている

こうした課題を解決するため、システムや設備の導入、専門家によるコンサルティング、就業規則の整備などにかかる費用が助成対象となる場合があります。

ただし、経費の支出が最終目的ではありません。

設備や制度を活用し、労働時間を短縮することや、休暇を取得しやすくすることが求められます。

生産性向上と働きやすい環境の両立を目指す

労働時間の短縮というと、単純に従業員の勤務時間を減らす取り組みを想像するかもしれません。

しかし、必要な業務量が変わらないまま勤務時間だけを減らすと、従業員の負担が増えたり、持ち帰り残業が発生したりする可能性があります。

そのため、働き方改革では生産性向上と労働時間改善を同時に進めることが重要です。

例えば、次のような改善方法があります。

  • 紙の勤怠管理をシステム化する
  • 手作業の集計を自動化する
  • 作業工程を見直す
  • 省力化設備を導入する
  • シフト作成を効率化する
  • 業務を標準化する
  • 会議や報告の方法を見直す
  • 一部の業務を複数人で担当できる体制にする

作業時間を減らせれば、残業時間の削減だけでなく、休暇を取得するための余裕も生まれます。

従業員の健康維持や離職防止にもつながるでしょう。

成果目標の設定と達成が必要

働き方改革推進支援助成金を利用するには、コースごとに定められた成果目標を設定します。

主な成果目標は次のとおりです。

  • 時間外・休日労働時間数を削減する
  • 所定外労働時間数を削減する
  • 年次有給休暇の計画的付与制度を導入する
  • 時間単位の年次有給休暇制度を導入する
  • 特別休暇制度を導入する
  • 勤務間インターバル制度を導入する
  • 週休2日制を推進する
  • 医師の労務管理体制を整える
  • 荷待ち・荷役時間を短縮する

設定できる成果目標は、コースや業種によって異なります。

例えば、業種別課題対応コースでは、建設業、運送業、病院等、情報通信業、宿泊業など、対象業種ごとに選択できる目標が決められています。

自社が達成しやすい目標を選ぶだけではいけません。

現在の労働時間に関する課題と、実施する取り組みがつながっていることが重要です。

対象となる取り組みを1つ以上実施する

助成金を受給するには、成果目標の達成に向けた改善事業を実施する必要があります。

2026年度の業種別課題対応コースでは、次のような取り組みが案内されています。

  • 労務管理担当者への研修
  • 従業員への研修や周知・啓発
  • 外部専門家によるコンサルティング
  • 就業規則や労使協定の作成・変更
  • 人材確保に向けた取り組み
  • 労務管理用ソフトウェアの導入・更新
  • 労務管理用機器の導入・更新
  • デジタル式運行記録計の導入・更新
  • 労働能率を高める設備・機器の導入・更新

一般的なパソコン、タブレット、スマートフォン、乗用自動車などは、原則として対象になりません。

業務に使用するという理由だけで、すべての設備が助成対象になるわけではない点に注意しましょう。

助成金は取り組みの実施後に支給される

働き方改革推進支援助成金は、原則として対象となる取り組みを実施し、費用を支払った後に支給申請を行います。

一般的な手続きの流れは次のとおりです。

  1. 自社の労働時間に関する課題を確認する
  2. 利用するコースと成果目標を選ぶ
  3. 導入する設備や取り組みを決める
  4. 交付申請書を提出する
  5. 交付決定を受ける
  6. 計画に沿って取り組みを実施する
  7. 設備代や委託費などを支払う
  8. 成果目標の達成状況を確認する
  9. 支給申請書と実施結果報告書を提出する
  10. 審査後に助成金を受け取る

交付決定前に設備の発注や契約を行うと、助成対象外になる可能性があります。

また、助成金が入金されるまでは、設備費や委託費を自社で負担しなければなりません。

資金繰りも含めて計画を立てましょう。

働き方改革推進支援助成金の5つのコース

2026年度の働き方改革推進支援助成金には、5つのコースがあります。

企業が単独で申請するコースだけでなく、事業主団体や荷主集団などを対象としたコースもあります。

各コースの目的を理解し、自社の立場と課題に合うものを選びましょう。

業種別課題対応コース

業種別課題対応コースは、長時間労働などの課題を抱えやすい特定業種を支援するコースです。

2026年度は、次の業種などが対象となっています。

  • 建設業
  • 運送業等
  • 病院、診療所、介護老人保健施設、介護医療院
  • 鹿児島県・沖縄県の砂糖製造業
  • 情報通信業
  • 宿泊業

業種ごとに働き方の課題が異なるため、選択できる成果目標も一部異なります。

例えば、建設業では週休2日制の推進、病院等では医師の働き方改革に向けた労務管理体制の整備が成果目標として設けられています。

業種別課題対応コースの主な成果目標

対象業種によって、次のような成果目標を選択します。

  • 36協定で定める時間外・休日労働時間数の短縮
  • 労働者一人当たりの所定外労働時間を月5時間以上削減
  • 年次有給休暇の計画的付与制度の導入
  • 時間単位年休と特別休暇制度の導入
  • 勤務間インターバル制度の導入
  • 建設現場における週休2日制の推進
  • 医師の労務管理体制の構築

勤務間インターバルについては、運送業等と指定病院等では10時間以上、それ以外の対象業種では9時間以上の休息時間を設けることが求められています。

業種別課題対応コースが適する企業

次のような企業は、業種別課題対応コースを検討できます。

  • 建設現場の休日を増やしたい
  • ドライバーの拘束時間を減らしたい
  • 病院勤務医の労務管理を改善したい
  • システム開発の長時間労働を削減したい
  • 宿泊施設の勤務シフトを改善したい
  • 繁忙期の残業を減らす設備を導入したい

自社の主な事業が対象業種に該当するかを、申請前に確認してください。

労働時間短縮・年休促進支援コース

労働時間短縮・年休促進支援コースは、時間外労働の削減や休暇取得の促進を目指す中小企業を支援します。

特定業種だけを対象とする制度ではありません。

一般的な中小企業が、残業時間や休暇制度の改善に取り組む場合に利用を検討できます。

厚生労働省は、このコースについて、生産性を高めながら時間外労働を削減し、年次有給休暇や特別休暇を取得しやすい環境を整える中小企業事業主を支援するものと説明しています。

主な成果目標

労働時間短縮・年休促進支援コースでは、主に次の目標から選択します。

  • 時間外・休日労働時間数を削減する
  • 年次有給休暇の計画的付与制度を新たに導入する
  • 時間単位年休制度を新たに導入する
  • 特別休暇制度を新たに導入する

年次有給休暇の計画的付与とは、労使協定を結び、年次有給休暇の取得日を計画的に割り振る制度です。

時間単位年休は、年次有給休暇を1日または半日ではなく、時間単位で取得できる仕組みを指します。

子どもの学校行事や通院など、短時間だけ仕事を離れたい場面で利用しやすくなります。

導入が考えられる設備・サービス

残業時間や休暇取得の課題を改善するため、次のような取り組みが考えられます。

  • 勤怠管理システム
  • シフト作成システム
  • 有給休暇管理システム
  • POSレジ
  • 自動精算機
  • 自動包装機
  • 食器洗浄機
  • 業務用調理機器
  • 生産管理システム
  • 専門家による業務改善支援
  • 就業規則の作成・変更

重要なのは、導入する設備と労働時間の削減効果を具体的につなげることです。

例えば、勤怠管理システムを導入する場合は、単に集計が便利になると説明するだけでは足りません。

毎月何時間かかっている集計作業を、導入後に何時間まで短縮できるのかを示しましょう。

勤務間インターバル導入コース

勤務間インターバル導入コースは、勤務終了後から翌日の始業までに、一定時間以上の休息時間を確保する制度の導入を支援します。

勤務間インターバル制度は、従業員の睡眠時間や生活時間を確保し、過重労働を防ぐことを目的としています。

制度の導入は、2019年4月から事業主の努力義務となっています。

勤務間インターバルの具体例

11時間の勤務間インターバルを設定している企業で、従業員が午後11時に退勤した場合を考えてみましょう。

翌日の始業時刻は、午前10時以降にする必要があります。

通常の始業時刻が午前9時であれば、次のような対応方法があります。

  • 翌日の始業を午前10時に遅らせる
  • 午前9時から10時までを勤務したものとみなす
  • 一定時刻以降の残業を禁止する
  • 翌日の勤務シフトを変更する

制度を就業規則へ記載するだけでなく、実際に休息時間を確保できる運用が必要です。

対象となる事業主の区分

勤務間インターバル導入コースでは、主に次のような事業主が対象となります。

  • 勤務間インターバル制度を導入していない
  • すでに導入しているが、対象労働者が少ない
  • すでに導入しているが、休息時間が短い

新規導入だけでなく、適用範囲の拡大や休息時間の延長も対象になる場合があります。

現在の就業規則や勤務実態を確認したうえで、該当する区分を選びましょう。

勤務間インターバルを運用するための改善

制度を導入しても、業務量が変わらなければ休息時間を確保できません。

次のような取り組みを組み合わせる必要があります。

  • 終業時刻を正確に把握する
  • 深夜残業の承認ルールを作る
  • 翌日の始業時刻を調整する
  • シフト作成を効率化する
  • 引き継ぎ方法を見直す
  • 一人に集中している業務を分担する
  • 夜間作業を自動化する
  • 取引先との受発注時間を調整する

特に、交代勤務や夜間対応がある企業では、制度導入後のシフトを事前に試算しましょう。

取引環境改善コース

取引環境改善コースは、2026年度に設けられているコースです。

荷主集団などが、トラックドライバーの時間外労働削減に向けて、荷待ち時間や荷役時間を短縮する取り組みを実施する場合に利用できます。

このコースは、運送会社が単独で自社の設備を導入するためのものではありません。

荷主となる企業などが集団で取引環境を改善し、ドライバーが長時間待機する状況を減らすことが目的です。

荷待ち時間とは

荷待ち時間とは、荷物の積み込みや荷下ろしを行うまで、ドライバーが待機している時間です。

例えば、次のような状況で発生します。

  • 到着しても荷物の準備ができていない
  • 複数のトラックが同じ時間帯に集中する
  • 受付や入場手続きに時間がかかる
  • 倉庫内の作業が遅れている
  • 荷役場所が空いていない
  • 納品時間が細かく指定されていない

荷待ち時間が長くなると、ドライバーの拘束時間や残業時間が増えます。

荷主側を含めた改善が必要です。

取引環境を改善する取り組み

次のような取り組みが考えられます。

  • トラック予約受付システムの導入
  • 入出荷時間の分散
  • 荷役作業の効率化
  • パレットやフォークリフトの活用
  • 荷主間の情報共有
  • 発注方法や納品条件の見直し
  • 共同配送に向けた調査
  • 専門家による改善指導

荷主集団の構成や対象事業などに個別条件があるため、申請前に専用の公募資料を確認しましょう。

団体推進コース

団体推進コースは、事業主団体や共同事業主が、構成員となる中小企業の働き方改革を共同で進める場合に利用できるコースです。

商工会、商工会議所、事業協同組合、業界団体などが申請主体となることが想定されています。

一社だけの設備導入や就業規則変更に使うものではありません。

団体推進コースの主な取り組み

対象になり得る取り組みには、次のようなものがあります。

  • 構成事業主の労働時間に関する調査
  • 働き方改革に関するセミナー
  • 専門家による巡回指導
  • 好事例の収集・共有
  • 人材確保に向けた共同事業
  • 業務効率化に関する実証
  • 共同利用するシステムの構築
  • 長時間労働削減に向けた啓発活動

同じ業界に共通する課題を、複数の事業者が協力して解決する際に適しています。

例えば、小規模事業者が単独では導入しにくいシステムを共同利用したり、専門家の指導をまとめて受けたりする方法が考えられます。

働き方改革推進支援助成金の対象事業主・申請要件

働き方改革推進支援助成金を利用するには、コースごとの成果目標だけでなく、事業主としての基本条件も満たす必要があります。

申請前に、企業規模や労働保険、就業規則の状況を確認しましょう。

中小企業事業主に該当する

企業が単独で申請するコースでは、中小企業事業主であることが基本条件です。

中小企業に該当するかどうかは、主な業種ごとに資本金・出資額または常時使用する労働者数で判断されます。

主な業種資本金または出資額常時使用する労働者数
小売業・飲食店5,000万円以下50人以下
サービス業5,000万円以下100人以下
卸売業1億円以下100人以下
その他の業種3億円以下300人以下

原則として、資本金・出資額または労働者数のどちらか一方を満たせば、中小企業事業主に該当します。

病院、診療所、介護老人保健施設、介護医療院については、常時使用する労働者数300人以下という基準が設けられています。

自社が複数の事業を行っている場合は、主たる事業がどの区分に該当するかを確認してください。

労災保険の適用事業主である

企業向けの各コースでは、労災保険の適用事業主であることが求められます。

労働者を一人でも雇用する事業は、原則として労災保険の適用事業となります。

申請前に確認したい項目は次のとおりです。

  • 労働保険の成立手続きを行っている
  • 労働保険番号を確認できる
  • 労働保険料を申告している
  • 労働保険料を納付している
  • 従業員の雇用状況を正しく届け出ている

労働保険料の滞納や必要な届出の漏れがある場合は、申請に影響する可能性があります。

担当部署や社会保険労務士などへ確認しましょう。

年5日の年次有給休暇に関する規程を整備している

年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者については、使用者が毎年5日を確実に取得させる必要があります。

働き方改革推進支援助成金では、この年5日の取得に向けた就業規則などを整備していることが基本条件となります。

確認したい内容は次のとおりです。

  • 年次有給休暇の付与条件
  • 付与日数
  • 基準日
  • 取得手続き
  • 年5日の時季指定に関するルール
  • 労働者が自ら取得した日数の把握方法
  • 計画的付与を行う場合の手続き
  • 時間単位年休を導入する場合の労使協定

常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署へ届け出る必要があります。

10人未満の場合でも、申請時に規程の内容を確認できる書類が必要になることがあります。

労働時間を適切に記録している

成果目標を設定するには、現在の残業時間や休日労働、有給休暇取得状況を把握しなければなりません。

そのため、日頃から次の書類を整備しておく必要があります。

  • 出勤簿
  • タイムカード
  • 勤怠管理システムの記録
  • 賃金台帳
  • 年次有給休暇管理簿
  • 雇用契約書
  • 労働条件通知書
  • 就業規則
  • 36協定

出勤簿と賃金台帳の内容が一致していることも重要です。

出勤簿には残業の記録があるのに、賃金台帳に時間外手当がない場合は、適切な労務管理が行われていない可能性があります。

助成金の申請だけを目的に記録を作るのではなく、実際の勤務状況を正確に残しましょう。

36協定を適切に締結・届出している

法定労働時間を超えて従業員に時間外労働をさせる場合は、労使間で36協定を締結し、労働基準監督署へ届け出る必要があります。

36協定では、次の内容を定めます。

  • 時間外労働を行わせる具体的な理由
  • 対象となる業務
  • 対象労働者数
  • 1日、1か月、1年の延長時間
  • 休日労働を行わせる日数
  • 協定の有効期間
  • 特別条項の有無

業種別課題対応コースや労働時間短縮・年休促進支援コースで時間外労働の削減を成果目標とする場合、現在の36協定と変更後の内容が重要になります。

有効期限が切れていないかも確認してください。

コースごとの個別条件を満たす

共通条件を満たしていても、利用するコースの個別条件に合わなければ申請できません。

例えば、勤務間インターバル導入コースでは、現在の制度導入状況が確認されます。

業種別課題対応コースでは、対象となる業種を主たる事業として営んでいることが必要です。

確認する主な項目は次のとおりです。

  • 自社の業種
  • 現在の労働時間
  • 36協定の内容
  • 有給休暇制度
  • 勤務間インターバルの導入状況
  • 対象事業場
  • 対象労働者数
  • 過去の助成金受給状況
  • 実施予定の取り組み
  • 設定する成果目標

過去に同じ助成金を受給している場合は、選択できる成果目標や申請条件が変わる可能性があります。

交付決定前に取り組みを始めない

助成対象となる設備の導入や専門家への依頼は、原則として交付決定後に実施します。

交付決定前に次の行為をすると、対象経費として認められない可能性があります。

  • 設備の発注
  • 売買契約
  • 委託契約
  • 手付金の支払い
  • 機器の納品
  • システムの利用開始
  • コンサルティングの開始
  • 就業規則変更の依頼

見積書を取得することと、正式に発注することは異なります。

申請準備では見積書を取得し、契約や発注は交付決定後に行いましょう。

事業実施期間内に取り組みを完了する

助成対象事業は、定められた期間内に完了しなければなりません。

2026年度の業種別課題対応コースでは、原則として交付決定日から2027年1月31日までに取り組みを実施する必要があります。砂糖製造業については、2027年3月14日までとされています。

期間内に必要となる主な手続きは次のとおりです。

  • 設備の発注
  • 設備の納品
  • 設置・設定
  • 代金の支払い
  • 研修の実施
  • 就業規則の変更
  • 従業員への周知
  • 成果目標の達成
  • 証拠書類の保存

受注生産の機械やシステム開発など、納期が長いものを導入する場合は注意が必要です。

申請前に販売事業者へ納期を確認しましょう。

助成金の申請期限を確認する

2026年度は、各コースについて4月13日から申請受付が始まっています。

業種別課題対応コースの交付申請期限は、2026年11月30日午後5時です。ただし、国の予算額に制約があるため、期限前に受付が終了する場合があります。

ほかのコースについても、それぞれの案内で申請期限を確認してください。

締切直前では、次の書類が間に合わない可能性があります。

  • 相見積書
  • 事業実施計画
  • 就業規則
  • 36協定
  • 労働時間の集計資料
  • 年次有給休暇管理簿
  • 労働保険関係書類

利用する設備や成果目標が決まった段階で、早めに申請準備を始めましょう。

自社に合うコースを労働時間の課題から判断する

働き方改革推進支援助成金は、受給できる金額だけで選ぶ制度ではありません。

現在の労働時間や休暇取得の課題を確認し、その課題を解決できるコースを選ぶ必要があります。

残業時間を減らしたい場合

業種を問わず残業時間を減らしたい場合は、労働時間短縮・年休促進支援コースが候補です。

建設業、運送業、病院等、情報通信業、宿泊業などに該当する場合は、業種別課題対応コースも確認します。

最初に、次の数値を集計しましょう。

  • 従業員一人当たりの月間残業時間
  • 部署ごとの残業時間
  • 繁忙月の残業時間
  • 休日労働の日数
  • 36協定の上限時間
  • 残業が発生する業務
  • 各業務の所要時間

例えば、毎日2時間かかっている集計業務をシステムによって30分に短縮できる場合、1日当たり1時間30分を削減できます。

年間240日稼働する企業なら、年間の削減時間は360時間です。

1.5時間×240日=360時間

「業務を効率化できる」という説明だけでなく、削減できる時間を数値で示しましょう。

有給休暇の取得を促進したい場合

有給休暇を取得しやすい職場にしたい場合は、労働時間短縮・年休促進支援コースを検討します。

まずは、従業員ごとの取得状況を確認してください。

  • 年次有給休暇の付与日数
  • 取得日数
  • 取得率
  • 年5日を取得できているか
  • 取得が少ない部署
  • 取得しにくい時期
  • 申請から承認までの手順
  • 休暇中の業務代替体制

休暇を取得できない原因が、申請方法の煩雑さにある場合は、休暇管理システムが有効です。

人手不足や属人化が原因の場合は、業務の標準化や複数担当制なども必要になります。

制度だけを導入しても、実際に取得できなければ働き方改革にはつながりません。

勤務終了後の休息時間を確保したい場合

深夜残業や不規則な勤務が多く、翌日の始業まで十分な休息を確保できていない場合は、勤務間インターバル導入コースが候補です。

確認したい項目は次のとおりです。

  • 最も遅い終業時刻
  • 翌日の始業時刻
  • 終業から始業までの時間
  • 深夜残業が発生する頻度
  • 交代勤務のシフト
  • 緊急対応の回数
  • インターバル不足が発生する部署
  • 始業を遅らせた場合の業務への影響

制度を導入する際は、休息時間を確保できなかった場合の対応も決めます。

翌日の始業時刻を遅らせるのか、一定時刻以降の残業を禁止するのかなど、実際に運用できるルールが必要です。

特定業種の課題を改善したい場合

対象となる特定業種では、業種別課題対応コースを優先的に確認します。

業種ごとの代表的な課題は次のとおりです。

業種主な労働時間の課題
建設業現場の休日不足、工期への対応
運送業長時間運転、荷待ち・荷役時間
病院等医師の長時間労働、夜間対応
情報通信業納期前の残業、業務の属人化
宿泊業不規則なシフト、深夜・早朝勤務
砂糖製造業季節的な繁忙期への対応

例えば、建設業であれば、週休2日制の推進と業務効率化設備の導入を組み合わせる方法があります。

運送業では、運行管理システムやデジタコの導入に加え、荷待ち時間を減らす取り組みも重要です。

荷待ち・荷役時間を減らしたい場合

荷主となる複数の事業者が、トラックドライバーの待機時間や荷役時間を削減したい場合は、取引環境改善コースを確認します。

現在の状況として、次の項目を記録しましょう。

  • トラックの到着時刻
  • 受付時刻
  • 荷役開始時刻
  • 荷役終了時刻
  • 出発時刻
  • 1台当たりの待機時間
  • 混雑する時間帯
  • 手作業の内容
  • 予約制度の有無

荷待ちの原因を特定したうえで、予約システムや荷役設備の導入、納品時間の分散などを検討します。

運送会社だけに改善を求めるのではなく、荷主側の業務を見直すことがポイントです。

複数企業で共同して取り組む場合

同じ業界や地域の中小企業が、共通の課題をまとめて改善したい場合は団体推進コースが候補です。

例えば、次のようなケースです。

  • 業界全体で人手不足が進んでいる
  • 各社が同じ労務管理の課題を抱えている
  • 小規模事業者が単独では専門家へ依頼しにくい
  • 共同でシステムやサービスを利用したい
  • 業界共通の勤務ルールを検討したい
  • 働き方改革の事例を横展開したい

団体推進コースでは、一社だけの成果ではなく、構成事業主全体へ効果が広がる計画が必要です。

参加企業数や課題、実施後に期待される効果を整理しましょう。

コース選択前の確認表

確認する課題主な候補
一般的な残業時間の削減労働時間短縮・年休促進支援コース
有給休暇・特別休暇の導入労働時間短縮・年休促進支援コース
終業から翌日の始業までの休息確保勤務間インターバル導入コース
建設・運送・病院等の業種課題業種別課題対応コース
荷主側から荷待ち時間を改善取引環境改善コース
複数企業の共同事業団体推進コース

候補を絞ったら、最新のリーフレットと支給要領を確認します。

同じ設備を導入する場合でも、設定する成果目標や現在の労務管理状況によって、利用できるコースは変わります。

まとめ|自社の課題に合うコースと成果目標を選ぼう

働き方改革推進支援助成金は、中小企業などが労働時間を短縮し、休暇を取得しやすい職場を整えるための制度です。

研修やコンサルティング、就業規則の整備、勤怠管理システム、省力化設備などの費用が助成対象になる可能性があります。

ただし、設備やシステムを導入するだけでは受給できません。

コースごとに設定された成果目標を選び、計画した取り組みを実施して、目標を達成する必要があります。

2026年度は、次の5コースが実施されています。

  1. 業種別課題対応コース
  2. 労働時間短縮・年休促進支援コース
  3. 勤務間インターバル導入コース
  4. 取引環境改善コース
  5. 団体推進コース

残業時間や有給休暇の取得状況を改善したい一般的な中小企業は、労働時間短縮・年休促進支援コースを確認しましょう。

終業から翌日の始業までに十分な休息時間を確保したい場合は、勤務間インターバル導入コースが候補です。

建設業、運送業、病院等、情報通信業、宿泊業などでは、業種別課題対応コースを利用できる可能性があります。

また、2026年度には、荷主集団などによる荷待ち・荷役時間の短縮を支援する取引環境改善コースも設けられています。複数の中小企業が団体で取り組む場合は、団体推進コースを確認してください。

企業が単独で申請するコースでは、主に次の条件を確認します。

  • 中小企業事業主に該当する
  • 労災保険の適用事業主である
  • 年5日の年次有給休暇取得に関する規程を整備している
  • 労働時間を適切に記録している
  • 必要に応じて36協定を締結・届出している
  • コース固有の条件を満たしている
  • 支給対象となる取り組みを1つ以上実施する
  • 成果目標を達成できる
  • 交付決定後に契約や発注を行う
  • 事業実施期間内に取り組みと支払いを完了できる

申請を検討する場合は、最初に自社の労働時間を数値で確認しましょう。

残業時間、有給休暇の取得率、終業から翌日の始業までの時間などを集計すると、改善すべき課題が見えてきます。

そのうえで、どの業務に時間がかかっているのかを特定します。

勤怠集計に時間がかかっているなら、勤怠管理システムが候補です。手作業の包装や洗浄が残業の原因であれば、自動化設備を検討できます。

設備の名称からコースを選ぶのではありません。

現在の課題、導入する取り組み、削減できる労働時間、達成する成果目標を一つの流れとして整理することが大切です。

2026年度の申請受付は4月13日に開始されています。コースごとに申請期限が定められており、予算の状況によっては期限前に受付が終了する可能性もあります。

利用を検討している場合は、現在の労務管理を確認し、見積書や就業規則などの準備を早めに進めましょう。

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