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中小企業も対象!事業所内保育施設設置・運営等支援助成金で福利厚生を強化する方法

近年、子育て世代の従業員が安心して働ける環境づくりが企業経営の重要なテーマとなっています。

その中でも注目されているのが、企業が自社や共同スペースに保育施設を設ける際に活用できる「事業所内保育施設設置・運営等支援助成金」です。

この制度は、企業や事業主が従業員のために保育施設を新設・改修・運営する場合に、設置費用や運営費の一部を国や自治体が補助する仕組みです。

特に中小企業にとっては、限られた資金で働きやすい職場環境を実現できる有効な支援策といえるでしょう。

しかし、助成を受けるには対象となる事業主・施設の要件や運営体制、申請のタイミングなど、複数の条件を満たす必要があります。
この記事では、

助成金の対象事業者や施設の基準
・申請から交付までの流れ
・助成対象となる費用・上限額・注意点
そして、制度を経営戦略として活かすポイント

をわかりやすく解説します。

この記事を読むことで、「自社(または自園)でも条件を満たせば助成を受けられる」という具体的な判断ができ、実際の申請に向けた一歩を踏み出せるはずです。

目次

助成金の対象となる事業主・施設要件

事業所内保育施設設置・運営等支援助成金を申請する際に、まず確認すべきなのが「自社がそもそも助成対象に該当するか」という点です。

助成金はすべての企業が無条件で受けられるわけではなく、事業主の属性や設置する保育施設の種類・目的に応じて明確な要件が定められています。

ここでは、制度の根幹となる対象事業主・施設区分・運営開始時期・不支給条件を詳しく見ていきましょう。

対象となる事業主の定義(雇用保険適用・中小企業等)

助成の対象となるのは、従業員が安心して子育てと仕事を両立できる環境を整備する事業主です。

具体的には以下のような条件を満たす必要があります。

雇用保険の適用事業所であること
常時雇用する従業員の一定割合が子育て世代であること
保育施設を自社の従業員の利用を主目的として設置・運営すること
国や自治体が定める「中小企業者」の範囲に該当すること

特に中小企業の場合は、費用負担を軽減するための優遇措置(助成率の引き上げなど)もあります。

また、共同で保育施設を設ける場合は、参加企業全体が雇用保険適用事業主であることが前提です。

対象となる施設の種類(事業所内保育施設・共同事業主型など)

助成対象となる施設は、従業員の子どもを保育することを主目的とした「事業所内保育施設」です。

形態には以下のようなタイプがあります。

施設形態概要
単独型1つの企業が自社内に保育施設を設置・運営
共同設置型複数の企業が共同で1つの保育施設を運営(事業主団体型)
委託運営型保育運営を専門業者(社会福祉法人や企業)に委託する形式

いずれの形態も、従業員の子どもが優先的に利用できる仕組みを持つことが条件です。

また、地域のニーズに応じて一般児童も受け入れる「地域開放型」として運営する場合も対象になります。

施設設置・運営開始までの時間的要件(計画認定・運営開始期限)

助成金を受けるためには、施設の設置計画を事前に提出・認定を受けることが必須です。

基本的な流れは以下の通りです。

1.保育施設設置計画書を提出(着工の概ね2か月前まで)
2.国または自治体の認定を受ける
3.工事・設備設置を実施
4.運営開始(原則、助成対象年度内に完了)

運営開始が予定より遅れた場合や、事前認定を受けずに着工した場合は助成対象外となる可能性が高いため注意が必要です。

スケジュールを逆算し、年度内完了を見据えた計画的な着手が求められます。


不支給となるケース(過去支給済・既設施設の扱いなど)

助成金が不支給となる代表的なケースは次の通りです。

既に他の補助金を利用して設置された保育施設を対象としている場合
既存施設の単なる修繕・維持管理を目的とする場合
計画認定を受けずに工事を開始した場合
提出書類に不備・虚偽がある場合
施設の運営目的が従業員向けでない(営利・一般利用中心)場合

「新設または大規模な改修・機能追加」が対象であり、維持費や日常的な修繕は対象外となる点を押さえておきましょう。

助成対象の“基本条件”を満たすことが第一歩

助成金を申請するうえで最も重要なのは、事業主・施設の要件を正確に理解し、制度の趣旨に合った運営計画を立てることです。
要件を満たしていない段階で申請を進めても、後で不支給となるリスクがあります。
まずは自社が「雇用保険適用事業主であるか」「従業員の子どもを対象とした施設設置を目的としているか」を確認し、要件をクリアした上で次のステップに進みましょう。

要件となる施設構造・運営体制

助成金を受けるには、単に施設を建てるだけでなく、安全・衛生・保育体制が法令や自治体基準を満たしていることが求められます。

ここでは、建物構造から運営体制、地域や業種ごとの条件まで、申請時に必ず押さえるべきポイントを整理します。

対象地域と業種に関する要件

本助成金は全国的に利用可能ですが、自治体によって細かい運用ルールや対象範囲が異なります。

特に、地域の保育需要や人口規模に応じて、助成対象が制限される場合があります。

また、対象業種に明確な制限はないものの、製造業・医療・運輸・介護など、夜間・交代制勤務の多い業種は優先対象となる傾向があります。

地域の労働局や市区町村の福祉課に事前相談を行うと確実です。

運営体制の要件(保育士配置・営業時間・利用対象)

施設の運営には、保育の専門性と安定性が求められます。主な要件は次の通りです。

・保育士の配置基準 – 児童6人につき1名以上(0歳児は3人につき1名)
・開所時間 – 原則8時間以上(短縮の場合は理由書を添付)
・利用対象 – 従業員の子どもを優先しつつ、地域児童も一定割合受け入れ可

また、災害時対応マニュアルや衛生管理体制の整備も求められます。

職場環境と同様に、保育環境の安全確保が制度の前提です。

共同設置または事業主団体型の体制に関する要件

複数企業が共同で保育施設を設置する場合は、運営責任者・代表事業主を明確にすることが条件となります。

また、費用負担や利用枠を定めた「協定書」の提出が必要です。

共同設置型は特に中小企業にとって負担が軽く、複数事業所のニーズをまとめることで地域貢献にもつながる仕組みとして推奨されています。

安全・衛生・立地などの運営継続性に関する基準

助成対象施設は、次のような基準を満たす必要があります。

建物構造が安全で、耐震基準を満たしていること
衛生設備(調理室・トイレ・洗面所など)が独立して設けられていること
周辺環境が静かで、保育に適した立地であること
運営期間中(原則5年以上)継続運営が可能な体制を有すること

このように、「建てるだけで終わらない運営継続性」が重視されます。

構造・体制の基準は「安全・継続・実効性」

施設要件の本質は、子どもが安全に過ごせ、保育の質を維持できる環境であることです。
設計段階から保育基準に適合させることで、後の審査や報告でのトラブルを防げます。
助成金の申請を見据えて、設計・人員計画・運営マニュアルを早期に整えることが成功のカギです。

助成対象となる費用と助成額・助成率

助成金の最大の関心ポイントは「どの費用が対象になり、どれくらい助成されるのか」。

制度を正しく理解すれば、資金計画を無理なく立てることができます。

ここでは、対象経費・助成率・対象外費用・報告義務について整理します。

対象となる主な費用(設置費・増築・運営費等)

対象経費は、主に以下のような項目が該当します。

区分主な内容
設置費建設・改修・内装工事・給排水・空調設備費
設備費保育家具・玩具・調理機器・冷暖房機・洗濯機等
運営費保育士人件費・給食材料費・保険料・光熱費等
研修費保育士研修・安全管理講習など

設置費・設備費は一時的経費、運営費は継続支援の対象となります。

助成率・上限額の概要(中小企業/大企業等)

助成金額は、企業規模や事業内容によって異なります。

企業区分助成率上限額(例)
中小企業2/3以内設置費最大2,000万円、運営費年500万円
大企業1/2以内設置費最大1,500万円、運営費年400万円

※地域や年度によって変動あり。詳細は所轄自治体の要綱を確認。

中小企業の方が高い助成率で支援を受けられる点が大きな特徴です。

費用の対象外項目および制限(建物賃借・土地取得等)

助成対象外となる費用の代表例は以下の通りです。

土地の取得・借地料
通常の修繕・メンテナンス費用
職員福利厚生を目的とした費用
広告宣伝や営業目的での支出

また、他の補助金と同一経費での併用申請は禁止されています。

経費の線引きを明確にし、支出根拠を証明できる書類を整備しておきましょう。

継続運営・報告義務・返還条件に関する注意点

助成金は交付後も運営報告や収支報告の提出が義務付けられています。

主な報告内容は以下の通りです。

年次運営報告書の提出
保育利用者数・職員数の報告
会計帳簿・領収書の保管(5年間以上)

もし助成目的外の運営を行った場合や虚偽報告が発覚した場合は、助成金の返還命令が出されることもあります。

費用と助成率を理解して現実的な資金計画を

助成対象経費を正確に把握すれば、自己資金とのバランスを考えた計画が立てられます。
中小企業は高い助成率を活かし、設置費用の負担を大幅に軽減できるチャンスがあります。
ただし、報告義務を怠ると返還リスクがあるため、運営後の管理体制まで含めて制度を設計することが成功のカギです。

申請から交付・運営までの流れとスケジュール

事業所内保育施設設置・運営等支援助成金を活用するには、申請から交付・運営・報告までの手順を正確に理解しておくことが大切です。

特に、この助成金は「計画的に進める企業」を前提としており、着工前から完了後まで複数の段階を経て審査・確認が行われます。

ここでは、申請スケジュールの全体像と各フェーズでのポイントを解説します。

計画提出・認定申請のタイミング(着工前2か月など)

助成金を申請する際は、事前の計画提出と認定取得が必須条件です。

一般的なスケジュールは以下の通りです。

ステップ内容タイミングの目安
計画提出保育施設の設置計画・設計概要を提出着工予定日の約2か月前
認定審査国または自治体が内容を審査・承認提出後1〜2か月程度
工事開始認定取得後に着工(認定前の着工は対象外)認定決定通知後
運営準備保育士採用・設備調達など完成前〜運営開始直前

認定を受ける前に工事を開始すると助成対象外になるため、スケジュール管理は最重要です。

また、自治体によっては年度末(3月)を超える事業は次年度扱いになるため、年度内完了を見据えた逆算スケジュールを立てましょう。

運営開始までの期限・報告提出のタイミング

助成対象の保育施設は、原則として申請年度内に運営を開始する必要があります。

遅延が生じた場合には、正当な理由を記した「実施延長届」の提出が求められます。

運営開始後は、以下のような報告義務があります。

開始報告書の提出(運営開始から30日以内)
利用児童数・職員配置の報告
年次報告書(毎年度末提出)

これらを怠ると、次年度の助成や継続支援に影響する可能性があります。

「設置完了=終了」ではなく、“運営を継続して報告する”義務があることを念頭に置きましょう。

交付決定・助成金支給の流れ

助成金の交付は、次の3段階で進行します。

1.交付申請 – 設置・運営計画書、見積書、図面などを提出
2.交付決定通知 – 審査後に交付決定書が発行
3.実績報告・支給 – 事業完了後、支出証明を提出して助成金支給

支給は事業完了後に行われるため、先行して自己資金や融資を準備しておくことが現実的です。

また、領収書や契約書などのエビデンスはすべて5年間保管が義務付けられています。

運営中の報告・モニタリング・返還義務の流れ

運営が始まった後も、自治体や労働局によるモニタリング(実地確認)が実施されます。

確認項目は以下のような内容です。

保育士配置が基準を満たしているか
助成対象設備が適切に使用されているか
会計報告・収支計算書が正確か

もし不正利用や運営不備が判明した場合は、助成金の返還命令翌年度以降の不交付となることもあります。

制度を継続的に利用するためには、運営後の管理体制を整えることが不可欠です。

助成金は「長期的な運営責任」を伴う制度

助成金は「設置費を補助して終わり」ではなく、申請から運営・報告までを一体として審査される制度です。
スケジュールを守り、正確な報告を続けることが信頼につながります。
申請前に、「いつ・誰が・どの書類を提出するのか」を明確にし、チーム全体で管理体制を整えましょう。

制度活用時の実務上のポイント・注意点

制度を正しく理解していても、申請書類の不備や併用制限の誤解で不支給になるケースが少なくありません。

ここでは、実際の申請現場で特に注意すべきポイントをまとめます。

助成金の重複受給の禁止・併用制限

事業所内保育施設助成金は、同一の経費を他の補助金・助成金と重複して申請することはできません。
例として、

IT導入補助金で申請した設備費
地方自治体の保育施設補助と同一目的の支出

これらを重ねて請求すると返還命令の対象になります。
ただし、経費区分が異なる場合(例:国の助成+県の人件費補助)は併用可能です。
経費の線引きを明確にし、併願前に必ず自治体へ確認しましょう。

運営継続要件(事業主義務・子ども受入基準)

助成金を受けた事業所は、一定期間(原則5年以上)継続して運営を行う義務があります。

また、対象児童の基準も次のように定められています。

主に従業員の子どもを受け入れる(地域児童は補完的)
原則として未就学児(0〜5歳児)
利用希望者が減少しても、一定の受入枠を維持

一時的な運営停止や縮小は、事前に届出・承認が必要です。

「継続性」と「公平性」が制度の信頼を支えています。

申請書類・証拠保存のポイント(設計図・契約書・領収書等)

提出書類の正確さが、採択結果を左右します。

特に以下の書類は不備が多く指摘される部分です。

設計図・平面図(面積・用途が明確であること)
工事契約書・見積書・領収書(支出証明)
雇用保険適用事業所証明書
職員名簿・資格証明書類

これらは助成金交付後も最低5年間の保存義務があります。

書類管理を専門担当者に任せる、もしくは電子化して管理すると効率的です。

終了後の維持義務・将来的な計画との関係

助成を受けた施設を廃止・転用する場合は、助成金の一部返還を求められることがあります。

また、次のような場合も返還対象となります。

施設運営期間中に目的外使用があった
設備を他の事業に転用した
運営委託先が変更されたが届出を怠った

したがって、将来的な人員計画・運営方針を見据えた長期設計が重要です。
短期的な助成金目的での設置はリスクが高いといえます。

書類・継続・整合性が採択のカギ

制度を確実に活用するためには、

・書類の整合性
・運営継続の見通し
・経費区分の明確化

この3点を徹底することが欠かせません。
助成金は「準備段階の正確さ」が成果を左右します。
慎重な計画と管理体制を整えた上で申請を進めましょう。

助成金を“企業価値向上”の視点で活かす

事業所内保育施設設置助成金は、単なる子育て支援ではなく、企業のブランド力や採用力を高める経営戦略ツールとしても活用できます。

ここでは、助成金を「人材戦略」「企業価値向上」の観点で捉え直します。

事業所内保育がもたらすブランド価値と採用効果

社内に保育施設があることは、「子育て世代に優しい企業」という強力なブランドメッセージになります。

特に以下の効果が見込めます。

求職者からの企業イメージ向上
育児離職の防止
女性管理職比率の上昇

実際に導入企業の多くは「採用応募数が増えた」「社員の復職率が上がった」と報告しています。

人材確保が難しい時代にこそ、保育支援は企業の競争力を左右する要素となります。

ワークライフバランス推進による従業員定着率の向上

保育施設の設置は、従業員の働きやすさを可視化できる施策でもあります。

残業時間の抑制・育児休業の取得促進など、ワークライフバランスの改善につながることで、
結果的に離職率の低下やチームの安定化を実現します。

「働き方改革=生産性向上」だけでなく、「働きやすさ改革=人材定着」の視点が重要です。

助成金を活かした「子育て支援×人材戦略」の成功事例

一例として、医療法人D社では助成金を活用して事業所内保育所を設置。

夜勤を含む勤務体制の中でも安心して働ける環境を整備し、結果として看護師の離職率が前年比25%減少しました。

また、製造業E社では共同設置型を採用し、地域企業との連携を強化。

地域ぐるみの人材確保ネットワークとして機能し、CSR評価の向上にもつながりました。

助成金を“未来の人材戦略”へと転換する

事業所内保育施設設置・運営等支援助成金は、「コスト削減の制度」ではなく、「人を育てる仕組みづくり」に直結する投資です。
人材確保・定着・企業ブランド向上のすべてを同時に実現できる貴重なチャンス。
助成金を賢く活かし、“働きやすさ”を企業の強みに変える未来志向の戦略を描きましょう。

事業所内保育施設助成金を活用して“働きやすい企業づくり”を実現しよう

事業所内保育施設設置・運営等支援助成金は、従業員の子育てと仕事の両立を支援しながら、企業の生産性や定着率を高めることができる実践的な制度です。

特に中小企業にとっては、限られた予算の中でも福利厚生を充実させる現実的な方法として大きなメリットがあります。

この制度を上手く活用するためのポイントは、次の4つです。

・対象要件の確認 – 雇用保険適用事業主であり、従業員の子どもを主に受け入れる施設を設置すること。
・施設・運営基準の遵守 – 安全・衛生・保育士配置など、法令に基づいた体制づくりを徹底すること。
・助成率・対象経費の理解 – 設置・運営・改修など、どの費用が助成対象かを明確に把握すること。
・報告・継続管理の徹底 – 年度ごとの報告義務や運営継続条件を守り、長期的に信頼を維持すること。

これらを確実に押さえれば、助成金を通じて企業の魅力を高め、優秀な人材が長く働ける職場環境をつくることが可能です。

また、近年では保育支援を「企業ブランディング」「採用戦略」「健康経営」と結びつける動きも広がっています。
“助成金=一時的な補助”ではなく、“未来への投資”として活用する姿勢が、持続的な成長を支えるカギとなるでしょう。

今こそ、事業所内保育施設の整備を通じて、「従業員にも選ばれる会社」への第一歩を踏み出してみてください。

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