団体経由産業保健活動推進助成金は、事業主団体などが傘下の中小企業に産業保健サービスを提供する際、その費用の一部を支援する制度です。
産業医を選任する義務がない小規模事業場では、健康診断後の医師による意見聴取やストレスチェック、メンタルヘルス対策などを自社だけで実施するのが難しいことがあります。本助成金では、事業主団体などが医師・保健師等の専門職や産業保健サービス提供事業者と契約し、複数の中小企業へまとめて支援を提供できます。
2026年度の助成率は対象経費の90%で、1団体あたりの上限額は原則500万円です。一定の要件を満たす都道府県事業主団体は、上限1,000万円となります。
なお、2026年度は6月10日に申請受付が開始されましたが、予算上限に達したため7月10日で交付申請の受付を終了しています。2026年9月現在、新たな交付申請はできません。次年度の利用を検討する場合は、制度が継続されるか、受付開始時期や要件が変更されていないかを最新情報で確認しましょう。
団体経由産業保健活動推進助成金とは

団体経由産業保健活動推進助成金は、中小企業や労災保険の特別加入者に産業保健サービスを提供する事業主団体等を支援する助成金です。
個々の中小企業がそれぞれ申請するのではなく、対象となる団体が取りまとめて申請する点が大きな特徴です。
事業主団体等を通じて中小企業の産業保健活動を支援する
中小企業では、企業規模や人員体制によって、産業医や保健師などの産業保健スタッフを継続的に確保することが難しいケースがあります。
そこで、商工会・商工会議所、事業協同組合などの事業主団体等が専門職と契約し、構成事業主へ産業保健サービスを提供します。
助成金の対象となるのは、こうしたサービスの提供費用や、一定範囲の事務費用です。
サービスを受けた中小企業が個別に助成金を申請する仕組みではありません。申請主体となる事業主団体等が、構成事業主をまとめて支援します。
助成率は90%・上限は原則500万円
2026年度の助成率は、助成対象経費の10分の9です。
1団体あたりの助成上限額は原則500万円で、一定の要件を満たす都道府県事業主団体については1,000万円まで引き上げられます。
基本的な仕組みは次のとおりです。
| 項目 | 2026年度の内容 |
| 助成率 | 助成対象経費の90% |
| 通常の上限額 | 1団体500万円 |
| 一定の都道府県事業主団体 | 上限1,000万円 |
| 申請回数 | 原則1団体につき年度1回 |
| 対象 | 事業主団体等、労災保険の特別加入団体 |
構成事業主がサービス利用料などを負担する場合は、その負担額によって実際の助成金額が変わります。
また、産業保健サービスごとにも申請できる費用の上限が定められています。単純に総額の90%をすべて受け取れるわけではありません。
2026年度の交付申請は7月10日に受付終了
2026年度は6月10日から申請受付が開始されました。
当初の手引きでは交付申請期限が2026年11月30日とされていましたが、予算上限に達したため、7月10日をもって受付が終了しています。
つまり、2026年9月現在は、
- 新規の交付申請
- 受付終了後の追加申請
はできません。
本助成金は先着順を基本としており、年度の申請期限より早く受付が終了する場合があります。
次年度も制度が実施される場合は、受付開始後できるだけ早く準備を進めることが重要です。
団体経由産業保健活動推進助成金の対象団体

助成金を申請できるのは、すべての企業や任意団体ではありません。
大きく分けると、「事業主団体等」と「労災保険の特別加入団体」が対象です。
商工会・商工会議所・事業協同組合などが対象になり得る
事業主団体等には、一定の要件を満たす次のような団体が含まれます。
- 事業協同組合
- 企業組合
- 協業組合
- 商工組合
- 商店街振興組合
- 商工会議所
- 商工会
- 生活衛生同業組合
- 一般社団法人
- 一般財団法人
- その他一定の法人格を持つ事業主団体
ただし、団体の種類に該当するだけでは足りません。
たとえば事業主団体またはその連合団体では、傘下に労働者を雇用する事業主が3者以上あり、原則として1年以上の活動実績を持つことなどが求められます。
共同事業主は10者以上で組織する必要がある
既存の事業主団体ではなく、複数の事業主が共同して申請する方法もあります。
共同事業主として対象になるには、原則として構成事業主10者以上で組織し、全事業主の合意に基づく協定書を締結する必要があります。
協定書には、
- 代表事業主
- 共同する事業主
- 産業保健サービス費用の負担
- 有効期間
- 協定年月日
などを明記します。
さらに、1年以上の活動実績も必要です。
補助金を利用するためだけに一時的に10社を集めればよいという仕組みではありません。
構成事業主の半数超が中小企業であることが必要
事業主団体等では、構成事業主のうち中小企業事業主が全体の2分の1を超えている必要があります。
中小企業の判定には、業種に応じた資本金・出資額または常時使用する労働者数の基準が使われます。
たとえば常時使用する労働者数の基準は、
- 原則:300人以下
- 卸売業・サービス業:100人以下
- 小売業:50人以下
などです。
団体そのものの規模ではなく、傘下の構成事業主の状況も確認されます。
労災保険の特別加入団体も対象になる
事業主団体等だけでなく、一定の労災保険特別加入団体も対象です。
対象となるには1年以上の活動実績があり、
- 事業活動に問題がない
- 財政が健全である
- 過去に補助金等の不正使用がない
- 事業実施上の問題がない
といった要件を満たす必要があります。
助成対象となる8つの産業保健サービス

2026年度は、8種類の産業保健サービスが助成対象とされています。
単なる健康関連サービスであれば何でも対象になるわけではありません。
ストレスチェック
労働者数50人未満の事業場を対象に、医師や保健師等によるストレスチェックと集団分析が助成対象になります。
ストレスチェックのみを実施する場合も対象です。
ただし、実施者が労働安全衛生法令で定められた医師・保健師等に該当している必要があります。
医師による健康診断結果の意見聴取
健康診断後に、医師または歯科医師から労働者の健康状態に関する意見を聴取する費用が対象です。
一方、健康診断そのものの実施費用は対象になりません。
「健康診断費用まで助成される制度」ではないため、区別が必要です。
保健指導
健康診断結果などを踏まえ、医師や保健師が労働者等へ行う保健指導も対象です。
こちらも健康診断そのものの費用は含まれません。
生活習慣や健康状態への指導など、実際に専門職が保健指導を行った費用が対象になります。
長時間労働者・高ストレス者への医師面接指導
医師による面接指導と、その結果に基づく意見聴取も対象です。
具体的には、
- 長時間労働者への面接指導
- 高ストレス者への面接指導
- 面接結果に基づく医師からの意見聴取
などが該当します。
健康相談
医師や保健師だけでなく、
- 歯科医師
- 看護師
- 精神保健福祉士
- 公認心理師
- 産業カウンセラー
- 臨床心理士
などによる健康相談も対象になり得ます。
メンタルヘルスや化学物質の取扱いに伴う健康相談も含まれます。
ただし、相談窓口を設置しただけでは対象になりません。実際に労働者等から相談を受けた実績が必要です。
治療と仕事の両立支援
病気の治療を続けながら働く労働者に対する両立支援も対象です。
主治医、産業医、保健師、両立支援コーディネーターなどが連携し、
- 就業上の措置
- 治療への配慮
- 主治医意見書等の取得
- 個別の相談・調整
を行う際の費用が対象になり得ます。
将来の両立支援に備えて社内規程だけを整備するといった取組では足りません。
実際に支援を必要とする労働者等へ具体的な支援を行う必要があります。
職場環境改善支援
医師・保健師・看護師などの産業保健スタッフによる職場環境改善支援も対象です。
たとえば、
- ストレスチェックの集団分析結果を使った職場改善
- メンタルヘルス対策
- 健康保持増進対策
- 化学物質のリスクアセスメント
- 職場巡視を踏まえた改善
などです。
専門家から助言を受けただけではなく、実際に職場の改善策を実施することが求められます。
産業保健に関する研修・周知啓発
労働者や管理者を対象とした健康教育研修、産業保健に関する周知啓発も助成対象です。
メンタルヘルス、健康経営、化学物質などをテーマとした研修も含まれます。
オンラインによる研修も可能ですが、録画済み動画を配信するだけのオンデマンド研修は対象外です。
また、法令上実施が義務付けられている特別教育等は対象になりません。
研修については、構成事業主1者につき10万円が申請上限です。
団体経由産業保健活動推進助成金の対象経費

助成対象となるのは、対象サービスに直接必要で、支出内容を証拠書類で確認できる経費です。
産業保健に関連しているという理由だけで、団体の一般的な運営費を計上できるわけではありません。
専門家への報酬は対象になる
医師、保健師などの専門家へ産業保健サービスの提供を依頼した際の報酬は対象経費です。
ストレスチェックの実施費用なども、対象サービスの条件を満たしていれば含まれます。
ただし、支払単価に明確な根拠があり、社会通念上妥当な金額であることが必要です。
旅費・会場費・印刷製本費も対象になり得る
サービス提供に必要な、
- 専門家の旅費
- 研修・セミナー等の会場借料
- 研修資料
- パンフレット・ポスター等の印刷製本費
なども対象になる場合があります。
一方、外国旅費や日当、宿泊費などは対象外です。
団体等や構成事業主が保有する施設で研修を実施した場合、その施設の会場費を助成対象として計上することもできません。
外部機関へ委託する事務費用は上限50万円
産業保健サービスを提供するための連絡調整や書類作成などの事務を、一定の外部機関へ委託する費用も対象になり得ます。
ただし、事務費用には、
- 上限50万円
- 産業保健サービス費用の5分の1以内
という制限があります。
サービス提供会社自身が行う事務など、対象にならないケースもあるため、委託先との関係にも注意が必要です。
団体経由産業保健活動推進助成金の申請方法

申請は、「先にサービスを実施してから費用を請求する」という流れではありません。
交付申請を行い、交付決定を受けてから対象となる産業保健サービスを実施する必要があります。
1.対象団体・構成事業主の要件を確認する
最初に、申請団体が事業主団体等または特別加入団体として要件を満たしているか確認します。
あわせて、
- 構成事業主数
- 中小企業の割合
- 活動実績
- 財政状況
- 労働者の雇用状況
なども確認します。
申請団体だけでなく、実際にサービスを提供する構成事業主の条件も重要です。
2.提供する産業保健サービスと対象事業場を決める
次に、傘下の事業主がどのような産業保健上の課題を抱えているのかを整理します。
そのうえで、
- ストレスチェック
- 医師意見聴取
- 保健指導
- 面接指導
- 健康相談
- 治療と仕事の両立支援
- 職場環境改善
- 研修・周知啓発
の中から、必要なサービスを選びます。
複数のサービスを組み合わせて申請することも可能です。
3.専門職・サービス提供事業者から見積りを取得する
産業保健サービスを提供する医師・保健師等やサービス提供事業者を選び、費用を確認します。
サービス提供者には一定の資格が必要です。
また、支給申請では資格証の写しなども必要になるため、契約段階で資格要件を確認しておきましょう。
4.交付申請書と事業実施計画を提出する
必要なサービス、対象事業場、実施時期、費用などを整理し、交付申請書と事業実施計画を提出します。
2026年度は、
- jGrants
- 郵送
- Googleフォーム
による申請方法が案内されていました。
jGrantsを利用する場合はgBizIDが必要です。
gBizIDの取得には時間がかかるため、次年度に電子申請を予定する場合は早めに準備しておくと安心です。
5.交付決定後に産業保健サービスを実施する
交付決定を受けた後、計画に沿ってサービスを実施します。
2026年度は、交付決定日から2027年1月22日までが助成対象期間とされていました。
交付決定前に提供されたサービスは助成対象外です。
また、交付決定を受けた対象期間を過ぎて提供されたサービスも対象になりません。
6.事業終了後に支給申請する
産業保健サービスを実施したら、支給申請を行います。
支給申請では、
- サービスの実施結果
- 契約内容
- 専門職の資格
- 領収書
- 振込記録
- 研修資料
- 実施報告書
- 効果検証
などを確認できる資料が必要です。
サービスによって提出資料が異なるため、実施段階から証拠書類を保存しておくことが重要です。
申請時に注意したいポイント

団体経由産業保健活動推進助成金は助成率が90%と高い一方、サービスの内容や実施時期、契約関係などについて細かな条件があります。
申請額だけで判断せず、実施方法まで確認しておきましょう。
交付決定前に実施したサービスは対象外
特に注意したいのが実施時期です。
交付申請しただけでは対象期間は始まりません。
交付決定前に、
- ストレスチェックを実施する
- 医師へ面接指導を依頼する
- 健康相談を開始する
- 研修を開催する
といった取組を行った場合、その費用は助成対象外となります。
事業実施のスケジュールは、交付決定時期を考慮して設定してください。
健康診断そのものの費用は対象外
健康診断結果について医師から意見を聴取する費用や、医師・保健師による保健指導は対象になります。
一方、健康診断そのものの実施費用は助成対象ではありません。
「健康診断関連費用だからすべて対象」と考えないようにしましょう。
健康相談は窓口を作るだけでは対象にならない
健康相談サービスでは、実際に労働者等から相談を受けた実績が必要です。
相談体制を整備していても、その月に利用実績がなければ、その月分の費用は対象になりません。
年間契約で健康相談窓口を設置する場合は、実際の利用状況も記録しておく必要があります。
職場環境改善は助言だけでなく改善実施まで必要
職場環境改善支援も、専門家からアドバイスを受ければ終わりではありません。
助言を踏まえて、
- 作業環境を変更する
- メンタルヘルス対策を実施する
- 化学物質管理を改善する
- 健康保持増進策を導入する
など、実際の改善策を行う必要があります。
実施前後の状況が分かる資料や写真を求められることもあります。
研修資料を配布するだけでは対象にならない
産業保健に関するリーフレットや教材を労働者へ配るだけでは、研修・健康教育を実施したことにはなりません。
専門家による研修等を実際に行う必要があります。
また、オンライン開催は認められていますが、録画済み動画を配信するだけのオンデマンド形式は対象外です。
支払いを証明できる書類を残す
助成対象経費は、支出内容と金額を客観的に確認できなければなりません。
2026年度の手引きでは、原則として振込払いとし、振込記録を確認できる書類の提出が求められています。
クレジットカードなどで支払った場合も、支給申請時点までに口座から引き落とされていない費用は対象外です。
契約書、請求書、領収書、振込記録などを一連の証拠として保存しておきましょう。
2026年度は受付終了|次年度に向けて早めの準備が重要

2026年度の団体経由産業保健活動推進助成金は、6月10日に申請受付を開始しました。
手引き上の交付申請期限は11月30日でしたが、予算上限に達したため、実際には7月10日で受付が終了しています。受付開始から約1か月で終了した形です。
このことからも、次年度に利用する場合は、公募開始後にゼロから準備するのではなく、事前に、
- 団体の申請要件
- 対象となる構成事業主
- 必要な産業保健サービス
- サービス提供者
- 見積額
- gBizID
などを整理しておくことが重要です。
特に複数の構成事業主を対象とする制度なので、各企業への意向確認やサービス内容の調整にも時間がかかります。
年度が変われば、助成率・上限額・対象サービス・申請方法などが変更される可能性もあります。
2027年度以降の利用を検討する場合は、前年度の手引きをそのまま使わず、労働者健康安全機構から公表される最新情報を確認してください。
団体経由産業保健活動推進助成金は中小企業の健康管理を団体で支える制度

団体経由産業保健活動推進助成金は、事業主団体等が専門職と連携し、傘下の中小企業等へ産業保健サービスを提供するための制度です。
2026年度は助成対象経費の90%が支援され、上限は原則500万円、一定の都道府県事業主団体では1,000万円でした。
対象となる主な産業保健サービスは、
- ストレスチェック
- 医師による意見聴取
- 保健指導
- 医師面接指導
- 健康相談
- 治療と仕事の両立支援
- 職場環境改善
- 研修・周知啓発
の8種類です。
ただし、単に健康相談窓口を作る、専門家から助言だけ受ける、研修資料だけを配布するといった対応では対象にならないものがあります。
また、交付決定前に実施したサービスも対象外です。
2026年度は予算上限に達したことで7月10日に交付申請受付を終了しており、現在は新規申請できません。次年度以降に制度を利用する場合は、構成事業主のニーズや対象サービスをあらかじめ整理し、受付開始後すぐ申請できる状態を整えておきましょう。
