「IT補助金について調べているものの、今からでも申請できるのか分からない」
「2025年度と現在の制度には、どのような違いがあるのか」
このような疑問を持つ中小企業や個人事業主も多いのではないでしょうか。
一般に「IT補助金」と呼ばれている制度の正式名称は、IT導入補助金2025です。
IT導入補助金2025は、中小企業や小規模事業者がITツールを導入し、業務効率化や生産性向上を図る取り組みを支援した補助金です。
会計ソフト、受発注システム、顧客管理システム、勤怠管理システムなど、事務局に登録されたITツールの導入費用が補助対象となりました。
ただし、IT導入補助金2025の交付申請は、2026年1月7日17時をもって終了しています。現在は新たに申請できません。
2026年度からは、制度名がデジタル化・AI導入補助金へ変更されています。
そのため、IT補助金の情報を探している人も、これから申請するのであれば、2026年度のデジタル化・AI導入補助金の公募要領やスケジュールを確認する必要があります。
本記事では、IT補助金の概要や変更点を振り返りながら、現在のデジタル化・AI導入補助金との関係、申請枠、申請前に必要な準備まで解説します。
IT補助金とは

IT補助金は、中小企業や小規模事業者などによるITツールの導入を支援した制度です。
正式には「IT導入補助金2025」と呼ばれ、2025年3月31日から交付申請の受付が始まりました。
補助金の目的は、ITツールを導入することで、事業者の業務効率化や生産性向上を後押しすることです。
一般的な設備投資や研究開発を広く支援する制度ではありません。
中小企業・小規模事業者のIT導入を支援する制度
IT導入補助金2025では、日々の業務に課題を抱える中小企業や小規模事業者などが、ITツールを導入するための費用の一部を補助してもらえました。
対象となり得る課題には、次のようなものがあります。
- 会計入力を手作業で行っている
- 請求書の作成や送付に時間がかかる
- 受注情報を紙や表計算ソフトで管理している
- 顧客情報が担当者ごとに分散している
- 在庫数を正確に把握できていない
- 勤怠集計や給与計算に時間がかかる
- 店舗と本部の情報共有が遅れている
- セキュリティ対策が不足している
例えば、銀行口座やクレジットカードと連携できる会計ソフトを導入すれば、取引データを自動で取得できる可能性があります。
受発注システムを導入した場合は、注文内容を別のシステムへ転記する作業や、入力ミスの削減が期待できます。
顧客管理システムを使えば、顧客の購入履歴や問い合わせ内容を一元管理し、営業やアフターフォローへ活用しやすくなるでしょう。
ただし、ITツールを導入しただけで、自動的に業務が改善するわけではありません。
現在の業務フローを整理しないまま新しいツールを導入すると、従来の紙や表計算ソフトと併用することになり、かえって作業が増える可能性もあります。
補助金を申請するときは、導入したいツールだけでなく、解決したい経営課題を明確にすることが重要です。
登録されたITツールが補助対象になる
IT導入補助金2025では、一般に販売されているすべてのソフトウェアが補助対象になったわけではありません。
補助金事務局へ登録されたITツールの中から、自社の課題に合うものを選ぶ必要がありました。
主なITツールの例は次のとおりです。
- 会計ソフト
- 受発注管理システム
- 販売管理システム
- 顧客管理システム
- 在庫管理システム
- 生産管理システム
- 勤怠管理システム
- 給与計算システム
- 予約管理システム
- 決済システム
- セキュリティサービス
市販されている有名なソフトウェアであっても、IT導入補助金2025の対象ツールとして登録されていなければ申請できませんでした。
また、登録ITツールであれば、どれを選んでもよいわけではありません。
例えば、会計処理に課題がある事業者が会計ソフトを導入する場合は、課題と導入目的の関係が明確です。
一方、在庫を持たない事業者が、補助金を受け取るためだけに高機能な在庫管理システムを選んでも、導入の必要性を説明するのは難しいでしょう。
IT導入支援事業者と共同で申請する
IT導入補助金2025では、申請者が単独ですべての手続きを進めるのではなく、登録されたIT導入支援事業者と共同で申請しました。
IT導入支援事業者は、次のような支援を行います。
- 経営課題に合ったITツールの提案
- 補助対象となる費用の確認
- 交付申請に必要な情報の入力
- ITツールの導入や初期設定
- データ移行
- 操作方法の説明
- 導入後のサポート
- 事業実績報告の確認
ただし、申請手続きをIT導入支援事業者へ任せきりにするのは適切ではありません。
導入するITツールの機能や費用、補助対象外となる経費、契約期間などは、申請者自身も確認する必要があります。
補助金によって初期費用が軽減されても、月額利用料や保守費用は継続して発生する可能性があります。
導入時の費用だけでなく、数年間利用した場合の総額を確認することが大切です。
ITツールによる業務改善を支援した補助金
IT補助金は、登録されたITツールを導入し、中小企業や小規模事業者の業務効率化や生産性向上を支援した制度です。
自由にソフトウェアやパソコンを購入するための補助金ではありません。
経営課題を整理し、登録されたITツールとIT導入支援事業者を選んで申請する必要がありました。
IT補助金で変更された主な内容

IT補助金では、前年までの制度から一部の補助内容が拡充されました。
主な変更点は、ITツール導入後の活用支援、最低賃金近傍の事業者に対する通常枠の補助率、セキュリティ対策推進枠の補助額などです。
ITツール導入後の活用支援が追加された
IT導入補助金2025では、ITツールを導入した後の「活用支援」が補助対象へ追加されました。
ITツールは、購入や契約をしただけで十分に活用できるとは限りません。
初期設定やデータ移行、操作方法の説明、社内での運用ルールづくりなどが不足すると、導入後に使われなくなる可能性があります。
例えば、顧客管理システムを導入しても、入力項目や更新方法が決まっていなければ、担当者ごとに異なる情報が登録されてしまいます。
会計ソフトも、勘定科目や部門、取引先などの初期設定が適切でなければ、必要な集計結果を得られません。
2025年度は、ツールを導入する費用だけでなく、実際の業務で活用を定着させるための支援も重視されました。
対象になり得る費用の例は次のとおりです。
- ITツールの初期設定
- 既存データの移行
- 操作方法の説明
- 導入後の活用支援
- 保守・サポート
- マニュアル作成
- 運用開始に向けた支援
ただし、ITツールと関係のない一般的なコンサルティングや研修が、すべて補助対象になるわけではありません。
登録されたITツールと一体的に提供される支援であり、公募要領で認められた費用であることが必要でした。
通常枠の補助率が一部拡充された
IT導入補助金2025の通常枠では、一定の賃金条件を満たす事業者について、補助率が3分の2へ拡充されました。
対象となったのは、3か月以上にわたって、地域別最低賃金に50円を加えた金額以内で雇用している従業員が、全従業員の30%以上いる事業者です。
すべての中小企業や小規模事業者に、3分の2の補助率が適用されたわけではありません。
対象になるか確認するときは、次の情報が必要でした。
- 対象となる従業員の人数
- 全従業員に占める割合
- 従業員ごとの賃金
- 地域別最低賃金
- 対象となる雇用期間
- 賃金台帳などの証明資料
例えば、従業員が10人いる事業者で、条件に該当する従業員が2人の場合、割合は20%です。
全従業員の30%以上という条件を満たさないため、拡充された補助率の対象にはなりません。
補助率だけを見て申請するのではなく、自社が要件を満たしているかを確認する必要がありました。
セキュリティ対策推進枠が拡充された
IT導入補助金2025では、セキュリティ対策推進枠の補助上限額が150万円へ拡充されました。
また、小規模事業者に対する補助率も3分の2へ引き上げられています。
中小企業や小規模事業者も、次のようなサイバー被害を受ける可能性があります。
- ランサムウェアによるデータの暗号化
- 不正アクセス
- ウイルス感染
- 顧客情報や取引先情報の漏えい
- メールアカウントの乗っ取り
- Webサイトの改ざん
- 業務システムの停止
セキュリティ事故が起きると、自社の業務が止まるだけでなく、顧客や取引先にも影響を与えるおそれがあります。
ただし、一般的なウイルス対策ソフトやセキュリティ機器を自由に購入できたわけではありません。
補助対象として登録されたセキュリティサービスを、定められた条件で利用する必要がありました。
IT補助金の主な申請枠
IT導入補助金2025には、導入目的に応じて複数の申請枠が設けられていました。
| 申請枠 | 主な支援内容 |
| 通常枠 | 業務効率化や生産性向上に必要なITツール |
| インボイス枠 | 会計・受発注・決済ソフトなど |
| セキュリティ対策推進枠 | 登録されたセキュリティサービス |
| 複数社連携IT導入枠 | 複数の事業者が連携するIT導入 |
2025年度の公式資料でも、通常枠、インボイス枠、セキュリティ対策推進枠、複数社連携IT導入枠の公募要領が公開されています。
申請枠によって、対象となるツール、補助率、補助上限額、申請要件は異なります。
補助上限額の大きさではなく、自社の導入目的に合う枠を選ぶことが重要でした。
導入と定着を支援する内容へ拡充された
IT補助金では、ITツール導入後の活用支援が補助対象に加わりました。
さらに、一定の賃金条件を満たす事業者や、セキュリティ対策へ取り組む小規模事業者への支援も拡充されています。
ただし、IT補助金の公募はすでに終了しています。
これから申請する事業者は、過去の補助率や申請条件をそのまま使わず、現在のデジタル化・AI導入補助金を確認しましょう。
IT補助金の申請受付はすでに終了している

IT導入補助金2025の交付申請期間は、2025年3月31日から2026年1月7日17時まででした。
2026年1月7日には、公式サイトで公募終了が発表されています。
そのため、現在IT補助金へ新たに申請することはできません。
2025年度の最終申請日は2026年1月7日
IT導入補助金2025は、年度内に複数回の締切が設けられました。
通常枠、インボイス枠、セキュリティ対策推進枠では、最終回となる8次締切が2026年1月7日17時に設定されていました。
複数社連携IT導入枠も、最終回の締切は同日です。
申請受付は終了していますが、2025年度に交付決定を受けた事業者については、事業実績報告や効果報告などの手続きが続いています。
すでに採択されている事業者は、現在の制度ではなく、IT導入補助金2025の手引きや交付規程に従って手続きを行う必要があります。
過去年度の補助率や締切は現在の申請に使えない
補助金制度は、年度ごとに内容が変更される可能性があります。
特に、次の情報は変わりやすいため注意が必要です。
- 制度名
- 申請枠
- 対象事業者
- 補助対象経費
- 補助率
- 補助上限額
- 申請要件
- 申請期限
- 事業実施期間
- 実績報告期限
- 効果報告の内容
IT補助金について解説する記事は、制度の仕組みや過去の変更点を知るためには役立ちます。
しかし、2025年度の補助率や申請期限を、現在の申請へそのまま使用することはできません。
検索結果に「IT補助金」と書かれた記事が表示された場合は、公開日や更新日、対象年度を確認しましょう。
現在申請するなら現行制度を確認する
IT補助金は、すでに公募を終了しています。
これからITツールの導入へ補助金を利用したい場合は、2026年度のデジタル化・AI導入補助金を確認する必要があります。
ここからは、現在の制度について解説します。
IT補助金はデジタル化・AI導入補助金へ変更された

2026年度から、これまでのIT導入補助金はデジタル化・AI導入補助金という名称に変更されました。
現在の公式サイトでも、2025年度以前の資料と、2026年度の公募要領・マニュアルが分けて掲載されています。
名称は変わりましたが、中小企業や小規模事業者などが登録ITツールを導入し、生産性向上を目指すという基本的な方向性は続いています。
現在はデジタル化・AI導入補助金2026が実施されている
デジタル化・AI導入補助金2026では、次の申請枠が設けられています。
- 通常枠
- インボイス枠(インボイス対応類型)
- インボイス枠(電子取引類型)
- セキュリティ対策推進枠
- 複数者連携デジタル化・AI導入枠
2026年度の公式資料ページでも、それぞれの枠について公募要領や申請マニュアルが公開されています。
IT補助金から名称が変わったからといって、AI関連の設備やシステムであれば、何でも補助されるわけではありません。
現在も、補助対象として登録されたITツールを選び、IT導入支援事業者と申請するという基本的な仕組みです。
通常枠
通常枠は、幅広い業務の効率化や生産性向上に向けたITツール導入を支援します。
対象となり得るツールの例は次のとおりです。
- 会計ソフト
- 販売管理システム
- 受発注管理システム
- 顧客管理システム
- 在庫管理システム
- 生産管理システム
- 勤怠管理システム
- 予約管理システム
- AI機能を搭載した業務ツール
通常枠を利用するときは、自社の課題と導入するITツールの機能を結び付ける必要があります。
「AIを導入したい」「業務をデジタル化したい」といった抽象的な目的だけではなく、どの作業をどの程度改善したいのかを整理しましょう。
インボイス枠
インボイス枠は、インボイス制度に対応するためのITツール導入を支援します。
インボイス対応類型では、主に会計、受発注、決済機能を持つソフトウェアが対象です。
条件を満たす場合は、対象ソフトウェアと一体的に利用するパソコンやタブレット、レジ、券売機なども補助対象になる可能性があります。
ただし、パソコンやタブレットだけを購入する申請はできません。
対象となるソフトウェアとのセット導入が必要です。
セキュリティ対策推進枠
セキュリティ対策推進枠は、サイバー攻撃や情報漏えいへの備えを強化するための申請枠です。
対象として登録されたセキュリティサービスを利用し、サイバー事故による業務停止や取引先への影響を抑える取り組みを支援します。
すべてのウイルス対策ソフトや機器を自由に購入できるわけではありません。
自社が抱えるリスクと、サービスの監視範囲や支援内容が合っているかを確認しましょう。
複数者連携デジタル化・AI導入枠
複数者連携デジタル化・AI導入枠は、複数の事業者が連携してITツールを導入する取り組みを支援します。
例えば、次のような取り組みが考えられます。
- 商店街で共通のキャッシュレス決済を導入する
- 複数店舗で顧客分析ツールを利用する
- 地域内の事業者が共通の受発注システムを使う
- 商業施設全体でデータを収集・分析する
単独の事業者が一般的な会計ソフトや勤怠管理システムを導入する場合は、通常枠やインボイス枠のほうが適している可能性があります。
名称変更後も登録ITツールの導入を支援している
IT補助金の後継にあたる現在の制度は、デジタル化・AI導入補助金です。
制度名は変わりましたが、登録されたITツールをIT導入支援事業者と導入するという基本的な仕組みは続いています。
これから申請する場合は、IT補助金ではなく、デジタル化・AI導入補助金2026の公式資料を確認しましょう。
関連記事:デジタル化・AI導入補助金とは?2026年の制度概要と申請枠 スケジュール 変更点
IT補助金から現在の制度へ切り替えて確認しよう

中小企業や小規模事業者が登録ITツールを導入し、業務効率化や生産性向上へ取り組むための費用を支援しました。
2025年度には、次のような変更が行われています。
- ITツール導入後の活用支援が補助対象に追加された
- 一定の賃金条件を満たす事業者の通常枠の補助率が拡充された
- セキュリティ対策推進枠の補助上限額が拡充された
- 小規模事業者のセキュリティ対策推進枠の補助率が拡充された
ただし、IT導入補助金2025の交付申請は、2026年1月7日17時に終了しました。現在、新たに申請することはできません。
2026年度からは、制度名がデジタル化・AI導入補助金へ変更されています。
これからITツールの導入を検討する事業者は、次の流れで準備しましょう。
- 現在の経営課題を整理する
- 解決に必要なITツールを検討する
- GビズIDプライムを取得する
- SECURITY ACTIONを宣言する
- 登録ITツールとIT導入支援事業者を選ぶ
- 自社に合った申請枠を確認する
- 申請スケジュールから導入時期を逆算する
- 交付決定後に契約・導入する
過去のIT補助金の記事は、制度の概要や変更の流れを理解するためには役立ちます。
しかし、補助率、申請条件、対象経費、締切などは年度によって変わる可能性があります。
現在申請する場合は、デジタル化・AI導入補助金2026の公募要領と申請マニュアルを確認し、最新情報に基づいて準備を進めましょう。
