両立支援等助成金の「出生時両立支援コース」は、男性労働者が育児休業を取得しやすい職場環境や業務体制を整備した事業主を支援する制度です。「子育てパパ支援助成金」とも呼ばれています。
2026年度は、男性労働者が子の出生後8週間以内に育児休業を開始した場合、1人目は20万円、2人目・3人目はそれぞれ10万円が支給されます。1人目について雇用環境整備措置を4つ以上実施した場合は10万円が加算され、合計30万円です。
さらに、男性労働者の育児休業取得率を一定以上引き上げた場合は60万円の支給対象になります。
ただし、男性社員が育休を取得しただけで支給されるわけではありません。会社側で雇用環境整備や業務体制の見直しを行い、必要な育休日数や申請期限などの要件を満たす必要があります。
この記事では、2026年度の両立支援等助成金「出生時両立支援コース」について、支給額、必要な育休日数、会社側の取り組み、男性育休取得率の要件、申請方法まで解説します。
両立支援等助成金の出生時両立支援コースとは

出生時両立支援コースは、男性労働者が育児休業を取得しやすい環境づくりを行い、実際に育児休業を取得した労働者が生じた事業主などを支援する制度です。
2026年度は、大きく次の2つに分かれます。
- 男性労働者の育児休業取得
- 男性労働者の育児休業取得率の上昇等
男性労働者の育児休業取得については中小企業事業主が対象です。取得率上昇等については、2026年度から一定の「特定事業主」が対象とされています。
2026年度は男性の育休取得と育休取得率の向上を支援する
支給額の概要は次のとおりです。
| 支給区分 | 主な要件 | 支給額 |
| 男性育休取得・1人目 | 子の出生後8週間以内に一定日数以上の育休を開始 | 20万円 |
| 1人目+環境整備措置4つ以上 | 上記に加えて雇用環境整備を4つ以上実施 | 30万円 |
| 男性育休取得・2人目 | 一定日数以上の育休 | 10万円 |
| 男性育休取得・3人目 | 一定日数以上の育休 | 10万円 |
| 男性育休取得率の上昇等 | 取得率を一定水準まで引き上げる | 60万円 |
以前の制度では57万円や72万円などの支給額が使われていましたが、2026年度は内容が異なります。申請時は必ず最新年度の支給要領を確認しましょう。
対象は男性労働者の育休取得を促進する事業主
男性労働者の育児休業取得に対する助成は、中小企業事業主が対象です。
会社側では、男性労働者が育児休業を取得しやすい環境を整えるだけではなく、休業期間中の業務をどのように回すかまで考える必要があります。
たとえば、
- 育児休業に関する研修
- 相談窓口の整備
- 育休取得事例の共有
- 制度や取得促進方針の周知
- 業務分担や人員配置の見直し
などです。
子の出生後8週間以内に育児休業を開始する必要がある
男性労働者の育休取得分では、対象労働者が子の出生後8週間以内に育児休業を開始することが基本要件です。
そのため、
「子どもが生まれて半年後に育休を取得した」
といったケースでは、出生時両立支援コースの男性育休取得分の対象にならない可能性があります。
出生後早い段階で育児休業を取得する男性労働者を支援する制度と考えると分かりやすいでしょう。
男性労働者が育児休業を取得した場合の支給額

2026年度は、対象となる男性労働者が1人目なのか、2人目・3人目なのかによって必要な育休日数と支給額が異なります。
| 対象 | 必要な育休日数 | 支給額 |
| 1人目 | 5日以上 | 20万円 |
| 1人目+環境整備4つ以上 | 5日以上 | 30万円 |
| 2人目 | 10日以上 | 10万円 |
| 3人目 | 14日以上 | 10万円 |
「男性社員が5日育休を取れば毎回同じ助成額」という制度ではありません。
1人目は20万円・雇用環境整備措置4つ以上なら30万円
1人目の男性労働者については、子の出生後8週間以内に5日以上の育児休業を取得するなどの要件を満たすと20万円が支給されます。
さらに、雇用環境整備措置を4つ以上実施している場合は10万円が加算され、合計30万円です。
そのため、初めて制度を利用する場合は、育児休業の取得日数だけでなく、会社側でどの雇用環境整備を行っているかも確認しましょう。
2人目は10日以上の育児休業で10万円
2人目は、子の出生後8週間以内に開始する育児休業を10日以上取得する必要があります。
支給額は10万円です。
1人目と比べると必要な育休日数が長くなるため、過去に1人目の申請を行っている企業は注意しましょう。
3人目は14日以上の育児休業で10万円
3人目については、必要な育児休業期間が14日以上となります。
支給額は10万円です。
したがって、男性育休取得分は、
1人目:5日以上
↓
2人目:10日以上
↓
3人目:14日以上
と必要日数が増えていきます。
申請対象者ごとに何人目に該当するかを確認しておくことが重要です。
出生時両立支援コースで必要な会社側の取り組み

出生時両立支援コースでは、育児休業を取得した日数だけでなく、会社側が育休を取得しやすい職場環境と業務体制を整えていることが求められます。
育児休業の雇用環境整備措置を複数実施する
雇用環境整備では、育児・介護休業法に基づく取り組みを実施します。
主な例は、
- 育児休業に関する研修
- 育児休業について相談できる体制の整備
- 自社の育児休業取得事例の収集・提供
- 育児休業制度や取得促進方針の周知
- 育児休業を取得しやすくするための業務配分や人員配置
などです。
1人目の申請では、このうち4つ以上の雇用環境整備措置を行うことで10万円が加算されます。
つまり、通常20万円のところ、条件を満たせば30万円になります。
育休取得者の業務を代替する労働者の業務見直しを行う
男性労働者が育児休業を取得すると、その期間中の業務をほかの従業員が担当することがあります。
出生時両立支援コースでは、こうした業務代替についても会社側で体制を整えることが求められます。
厚生労働省は、業務代替者の業務見直しに関する規定等を作成し、業務体制を整備することを主な要件として案内しています。
単に、
Aさんが休むのでBさんが全部担当する
という状態にするのではなく、業務量や人員配置を確認し、必要に応じて仕事そのものを見直すことが重要です。
育児休業制度を就業規則等に整備する
会社として育児休業制度を適切に整備していることも重要です。
実際の申請では、
- 就業規則
- 労働協約
- 育児休業規程
など、育児休業制度を確認できる資料の提出が求められることがあります。
育児休業を取得した社員が出てから規定を整えるのではなく、事前に自社の就業規則等を確認しておきましょう。
男性育休取得率が上昇した場合は60万円

出生時両立支援コースでは、個別の男性労働者が育休を取得した場合だけでなく、企業全体として男性育休取得率を引き上げた場合も支給対象になります。
2026年度の支給額は60万円です。
育休取得率を30ポイント以上上げ50%以上にすると対象
基本的な要件は、申請年度の前事業年度における男性労働者の育児休業取得率が、前々事業年度と比較して30ポイント以上上昇し、さらに50%以上となることです。
たとえば、
前々事業年度:30%
↓
前事業年度:60%
なら、
- 30ポイント上昇
- 取得率50%以上
の両方を満たします。
注意したいのは「30%増加」ではなく、「30ポイント上昇」という点です。
20%から26%になった場合は30%増えていますが、上昇幅は6ポイントなので、この要件には該当しません。
出生した男性労働者が少ない場合は2年連続70%以上でも対象
前々事業年度に子が出生した男性労働者が5人未満の場合には、別の判定方法があります。
この場合、申請前事業年度と前々事業年度の男性育休取得率が2事業年度連続で70%以上などの条件を満たすことで対象になる場合があります。
男性の出生者数が少ない中小企業などでは、30ポイント上昇だけでは評価しにくいため、別要件が用意されています。
プラチナくるみん認定事業主は15万円加算
男性育休取得率の上昇等を申請する際、一定の条件を満たすプラチナくるみん認定事業主には15万円が加算されます。
そのため、該当する企業では60万円に加えて加算を受けられる可能性があります。
認定状況だけでなく、どの時点で認定を受けている必要があるかなどの条件も確認しましょう。
出生時両立支援コースの申請期限と必要書類

助成金は、育児休業を取得しただけで自動的に支給されるわけではありません。
必要な取り組みを行ったうえで、定められた期間内に支給申請を行います。
男性育休取得分は育児休業終了後2か月以内に申請する
男性労働者の育児休業取得分は、対象となる育児休業が終了した日の翌日から2か月以内が申請期限です。
たとえば育児休業が9月10日に終了した場合は、翌日の9月11日から申請期間を確認します。
期限を過ぎると受給できなくなる可能性があるため、育休取得時点で申請スケジュールまで管理しておきましょう。
取得率上昇分は対象事業年度の翌事業年度開始後6か月以内
男性育休取得率の上昇等については、支給要件を満たした事業年度の翌事業年度が始まってから6か月以内に申請します。
個別の育休終了日を基準にする男性育休取得分とは、申請期限の考え方が違います。
取得率の算定対象期間や申請対象年度を整理してから手続きを進めましょう。
就業規則・出勤簿・賃金台帳などを準備する
申請では、会社が支給要件を満たしていることを確認できる書類が必要です。
主な資料として、
- 支給申請書
- 就業規則や育児休業規程
- 育児休業の申出を確認できる書類
- 出勤簿・タイムカード
- 賃金台帳
- 雇用環境整備を実施したことが分かる資料
- 業務体制整備を確認できる資料
などがあります。
実際に必要となる書類は申請区分や企業の状況によって異なります。
2026年度の支給申請の手引きと申請様式を確認しながら準備しましょう。厚生労働省は2026年度版の支給要領、Q&A、申請様式を公開しています。
雇用関係助成金ポータルから電子申請できる
両立支援等助成金は電子申請にも対応しています。
出生時両立支援コースについても電子申請用の様式が用意されています。
電子申請を利用する場合でも、育児休業取得実績や雇用環境整備などを確認する資料は必要です。
「オンライン申請なら書類が少なくなる」と考えず、事前に必要資料を揃えておきましょう。
申請前に確認したい注意点

出生時両立支援コースは、育休日数だけを確認して申請すると要件を満たせないことがあります。
会社側の取り組みや申請回数、他コースとの関係まで確認しておくことが重要です。
男性育休取得分は3人目までが支給対象
男性労働者の育児休業取得分については、
- 1人目
- 2人目
- 3人目
までが支給対象です。
また、それぞれ必要な育休日数が異なります。
過去の申請実績を管理し、「今回が何人目なのか」を申請前に確認しましょう。
男性育休取得率の上昇等は支給回数に注意する
男性育休取得率の上昇等については、個別の男性育休取得分とは異なる支給回数や申請条件があります。
また、どの事業年度を基準とするかによって判定結果が変わります。
「取得率が50%を超えたから受給できる」と判断するのではなく、
- 前々事業年度の取得率
- 前事業年度の取得率
- 子が出生した男性労働者数
まで確認しましょう。
同じ育児休業で他コースと重複受給できない場合がある
出生時両立支援コースと、育児休業等支援コースは目的が異なります。
出生時両立支援コースは、主に男性労働者の出生直後の育児休業取得を促進する制度です。
一方、育児休業等支援コースは、育休復帰支援プランに基づき3か月以上の育児休業取得から職場復帰まで支援します。
同一労働者の同一の育児休業について、重複して受給できない組み合わせがあります。
「両方の条件を満たしそうだから両方申請する」と考えず、どちらのコースを利用するか事前に確認しましょう。
情報公表を行うと加算を受けられる場合がある
両立支援等助成金では、一定の育児休業等に関する情報を「両立支援のひろば」で公表した場合、情報公表加算の対象になることがあります。
2026年度の加算額は2万円です。
対象となる情報や公表時期などにも条件があります。
加算を利用する場合は、通常の支給要件と合わせて確認しましょう。
出生時両立支援コースと他の育児支援コースの違い

両立支援等助成金には、育児に関する複数のコースがあります。
自社が支援したい内容によって利用するコースを選びます。
| 会社が行う取り組み | 主に確認するコース |
| 男性の出生直後の育児休業を促進 | 出生時両立支援コース |
| 育休取得から職場復帰まで本人を支援 | 育児休業等支援コース |
| 育休中の業務代替者へ手当・新規雇用 | 育休中等業務代替支援コース |
男性育休取得の促進なら出生時両立支援コース
男性労働者が子の出生後8週間以内に育児休業を開始し、会社が雇用環境や業務体制を整備する場合は、出生時両立支援コースが主な候補です。
特に、
- 出生直後に男性社員が育休を取得する
- 男性育休取得者を増やしたい
- 会社全体の男性育休取得率を高めたい
という場合に確認します。
育休取得から職場復帰までの支援なら育児休業等支援コース
育児休業等支援コースは、育休復帰支援プランを作成し、対象労働者の育児休業取得から職場復帰までを支援する制度です。
2026年度は、育休取得時30万円、職場復帰時30万円となっています。
出生時両立支援コースとは育休期間や目的が異なるため、混同しないようにしましょう。
業務代替者への手当・新規雇用なら育休中等業務代替支援コース
育休中の業務を代わりに担当する従業員へ手当を支払ったり、代替要員を新規雇用したりする場合は、育休中等業務代替支援コースが主な候補です。
出生時両立支援コースでも業務体制整備は必要ですが、代替者への手当そのものを支援する制度とは目的が異なります。
出生時両立支援コースは育休取得前から準備しよう

2026年度の両立支援等助成金「出生時両立支援コース」は、男性労働者の育児休業取得を促進する企業を支援する制度です。
男性育休取得分の支給額は、
- 1人目:20万円
- 1人目で雇用環境整備措置4つ以上:30万円
- 2人目:10万円
- 3人目:10万円
です。
必要な育児休業期間は、
- 1人目:5日以上
- 2人目:10日以上
- 3人目:14日以上
となっています。
また、会社全体の男性育休取得率を前々事業年度から30ポイント以上引き上げ、50%以上にするなどの要件を満たした場合は60万円の支給対象です。
制度を利用するときは、男性社員が育休を取得してから準備するのではなく、
育児休業制度を整備する
↓
雇用環境整備を実施する
↓
業務体制を見直す
↓
子の出生後8週間以内に育休を開始する
↓
必要な育休日数を確保する
↓
期限内に支給申請する
という流れで進めることが重要です。
男性育休取得分の申請期限は、対象労働者の育児休業終了日の翌日から2か月以内です。取得率上昇等の場合は、要件を満たした事業年度の翌事業年度開始後6か月以内となります。
2026年度は制度内容や対象範囲にも変更があります。
過年度の「57万円」「72万円」などの情報ではなく、厚生労働省が公開する最新の支給要領・Q&A・申請様式を確認しながら手続きを進めましょう。
