中小企業等海外展開支援事業費補助金のうち、外国出願を支援する事業では、外国への特許・実用新案・意匠・商標などの出願を予定している中小企業者や個人事業主などが主な対象です。
ただし、中小企業の規模に該当していれば必ず申請できるわけではありません。みなし大企業に該当しないことや、外国出願する案件が制度上の条件を満たしていることも必要です。
自社が対象になるか判断する際は、「事業者としての条件」と「外国出願案件の条件」を分けて確認すると整理しやすくなります。
中小企業等海外展開支援事業費補助金の対象企業とは?

中小企業等海外展開支援事業費補助金の外国出願支援では、外国で知的財産権を取得しようとする中小企業者が主な対象です。
法人だけでなく、一定の個人事業主や中小企業者で構成されるグループも対象になります。一方、大企業との資本関係などによって「みなし大企業」に該当する事業者は対象外です。
外国出願を予定する中小企業者が主な対象
主な対象は、外国への特許・実用新案・意匠・商標などの出願を予定する中小企業者です。
単に「海外へ進出したい」「海外で商品を販売したい」という企業を広く支援する制度ではありません。
たとえば、
- 自社技術について外国で特許を取得したい
- 商品デザインを外国で意匠登録したい
- 自社ブランドを海外で商標登録したい
といった企業が対象候補になります。
海外展示会への出展や越境EC、広告宣伝、市場調査などを行うだけでは、この外国出願支援の対象にはなりません。
個人事業主も補助対象になる
法人だけでなく、要件を満たす個人事業主も対象です。
「中小企業向け」と書かれていても、株式会社や合同会社だけに限定された制度ではありません。
個人で事業を営み、外国出願を行う予定があり、その他の対象要件を満たしていれば申請対象となります。
ただし、単なる個人として知的財産権を取得する場合ではなく、事業を行っている個人事業主としての申請が基本です。
中小企業者で構成されるグループも対象になる
単独の事業者だけでなく、中小企業者で構成される一定のグループも対象になります。
複数の事業者が共同で外国出願を行う場合などに利用できる仕組みです。
ただし、グループであれば無条件に対象になるわけではありません。
構成員に占める中小企業者の割合など、所定の条件を満たす必要があります。申請を検討する場合は、グループ全体の構成を確認してください。
みなし大企業は補助対象外
企業単体の資本金や従業員数が中小企業の基準内でも、みなし大企業に該当すると対象外です。
みなし大企業とは、大企業との資本関係などから、実質的に大企業の影響を強く受けていると判断される企業を指します。
たとえば、
- 同一の大企業が一定割合以上の株式を保有している
- 複数の大企業による株式保有割合が基準を超えている
といったケースがあります。
自社の規模だけで判断せず、株主構成や親会社との関係まで確認する必要があります。
対象となる中小企業の資本金・従業員数

対象となる中小企業者の基準は、業種によって異なります。
基本的には、資本金または従業員数のどちらかが基準以下であるかを確認します。
| 業種 | 資本金または出資額 | 常時使用する従業員数 |
| 製造業・建設業・運輸業・その他 | 3億円以下 | 300人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
| 旅館業 | 5,000万円以下 | 200人以下 |
| 一部のゴム製品製造業 | 3億円以下 | 900人以下 |
製造業・建設業などは資本金3億円以下または従業員300人以下
製造業・建設業・運輸業などでは、資本金3億円以下または常時使用する従業員300人以下が基本的な基準です。
たとえば資本金が4億円でも、従業員数が250人であり、その他の要件を満たしていれば中小企業者として扱われる基準に該当します。
反対に、資本金と従業員数の両方が基準を超える企業は対象になりません。
なお、業種区分を自己判断すると判定を誤ることがあります。自社がどの業種区分に当てはまるかも合わせて確認してください。
卸売業は資本金1億円以下または従業員100人以下
卸売業では、資本金1億円以下または常時使用する従業員100人以下が基準です。
製造業などと比べて基準となる資本金・従業員数が小さく設定されています。
たとえば従業員80人の卸売業者であれば、資本金が1億円を超えていても、従業員数側の条件から中小企業者に該当する余地があります。
資本金だけを見て対象外と判断しないようにしてください。
サービス業は資本金5,000万円以下または従業員100人以下
サービス業では、資本金5,000万円以下または従業員100人以下が基本的な基準です。
ソフトウェア関連、各種サービスなど、自社の事業がサービス業に分類される場合は、この基準を確認します。
ただし、一部の業種には個別の基準があります。
「サービスを提供しているからサービス業」と単純に決めず、事業内容に応じた業種分類を確認したうえで判断してください。
小売業は資本金5,000万円以下または従業員50人以下
小売業では、資本金5,000万円以下または従業員50人以下が基本です。
卸売業やサービス業よりも従業員数の基準が小さく設定されています。
たとえば海外で自社ブランドの商品を販売するために外国商標を取得したい小売事業者でも、この中小企業要件を満たせば対象候補になります。
ただし、海外販売を行うだけでは足りず、実際に外国出願を予定していることが必要です。
旅館業・一部のゴム製品製造業には別基準がある
一部の業種では、通常のサービス業や製造業とは異なる従業員基準が設定されています。
代表例は次のとおりです。
- 旅館業:資本金5,000万円以下または従業員200人以下
- 一部のゴム製品製造業:資本金3億円以下または従業員900人以下
そのため、一般的な業種表だけを見て対象外と判断するのは避けた方がよいでしょう。
自社の業種に特例的な基準がないかまで確認すると、対象企業かどうかを正確に判断できます。
法人以外で対象になる事業者・団体

外国出願支援の対象は法人だけではありません。
個人事業主、中小企業者で構成されるグループのほか、地域団体商標の外国出願では一部の団体も対象になります。
開業1年未満の個人事業主も申請できる
開業から1年に満たない個人事業主でも、要件を満たせば申請できます。
事業歴が短いことだけを理由に対象外になるわけではありません。
ただし、開業後間もない事業者は、通常の事業者と同じ期間の決算資料などを用意できないことがあります。
実際の申請では、現在の事業状況を確認するために何を提出する必要があるか、利用する窓口の最新案内を確認してください。
中小企業グループは構成員の3分の2以上が中小企業者であることが必要
中小企業者で構成されるグループについては、構成員の3分の2以上が中小企業者であることが基本的な要件です。
そのため、複数企業で共同出願するからといって、すべてのグループが対象になるわけではありません。
たとえば6社で構成するグループなら、中小企業者が4社以上含まれているかを確認する必要があります。
さらに、実際の申請では外国出願の内容や権利関係についても整理する必要があるため、企業構成だけで対象可否は決まりません。
地域団体商標では商工会・商工会議所・NPO法人等も対象になる
地域団体商標を外国へ出願する場合は、一般的な中小企業者以外の団体も対象になることがあります。
対象候補には、
- 商工会
- 商工会議所
- 事業協同組合等
- NPO法人等
があります。
地域ブランドを海外で保護するための商標出願などでは、こうした団体が申請主体になることがあります。
ただし、通常の特許や商標出願についてすべての団体が対象になるという意味ではありません。地域団体商標に関する特例として区別してください。
中小企業でも対象外になるケース

企業規模が中小企業の基準内でも、それだけで対象になるわけではありません。
みなし大企業、所在地要件、外国出願の有無などによって対象外になることがあります。
大企業との資本関係によるみなし大企業は対象外
中小企業の資本金・従業員基準を満たしていても、みなし大企業に該当すれば対象外です。
特に親会社や株主に大企業がいる場合は注意が必要です。
確認したい代表的な項目は、
- 同一の大企業による株式・出資の保有割合
- 複数大企業による保有割合
- 大企業との役員関係
- その他、公募で定められたみなし大企業要件
です。
「従業員が少ないから中小企業」と判断するのではなく、資本関係も含めて確認してください。
利用する地域窓口の所在地要件を満たさない場合は申請できない
地域の中小企業支援機関等が実施する公募では、その地域内に事業所を持つことなどが条件になります。
たとえば県単位の窓口へ申請する場合、その県内に本社や事業所を持つ中小企業者が対象とされます。
そのため、自社が中小企業に該当していても、申請先を自由に選べるわけではありません。
外国出願支援を利用する際は、制度そのものの対象要件に加えて、自社所在地を担当する実施機関の条件を確認してください。
外国出願を行わない企業は本事業の対象にならない
海外事業を行っていても、外国への知的財産出願を予定していなければ、この支援事業の対象にはなりません。
たとえば、
- 海外展示会だけに参加する
- 海外向け広告を出す
- 越境ECを始める
- 海外市場調査を行う
といった取組だけでは、外国出願支援の対象になりません。
対象となるのは、特許・実用新案・意匠・商標などについて、外国で権利取得を目指す案件です。
海外展開全般の補助金と混同しないようにしてください。
海外子会社のみでは対象にならない制度がある
日本企業の海外子会社だけで申請しようとする場合は、対象外になることがあります。
外国出願支援は、日本国内の中小企業者等を支援する制度として実施されているためです。
海外子会社で権利を取得する予定がある場合でも、日本国内の親会社との関係や出願人の扱いを確認する必要があります。
誰を出願人とするのか、誰が補助金を申請するのかを先に整理しておくと判断しやすくなります。
対象企業でも外国出願の要件を満たす必要がある

中小企業者や個人事業主としての条件を満たしただけでは、申請要件をすべてクリアしたことにはなりません。
実際に補助を受ける外国出願案件にも条件があります。
原則として基礎となる国内出願等の条件を満たす
外国出願支援では、原則として外国出願の基礎となる国内出願等が必要です。
たとえば日本で出願した特許を基礎として、優先権を主張して外国へ出願するケースなどが該当します。
ただし、出願方法や権利の種類によって扱いは異なります。
「これから初めて海外で出願すれば対象になる」と一律に判断せず、自社が予定する外国出願が制度上の条件を満たしているか確認してください。
外国での権利取得の可能性が明らかに否定されないことが必要
補助対象となるには、外国で権利を取得できる見込みが明らかにない案件ではないことが求められます。
外国出願には翻訳費や代理人費など多くの費用がかかります。
そのため、補助を受けて出願する以上、権利取得を目指せる案件であることが前提です。
たとえば先行する権利との関係などから取得可能性に大きな問題がある場合は、出願前に内容を整理する必要があります。
外国で取得した権利を活用する事業展開を計画する
外国で知的財産権を取得した後、その権利を活用した事業展開を予定していることも確認されます。
単に「海外でも権利を取っておきたい」というだけではなく、
- 海外で製品を販売する
- 外国企業と取引する
- ブランドを海外市場で展開する
- 技術を海外事業で活用する
など、権利取得後の利用を想定していることが求められます。
抜け駆け商標への対策など、制度上認められている目的については別途条件を確認してください。
外国出願に必要な資金能力・資金計画を用意する
外国出願に必要な費用を支払える資金計画も必要です。
補助金は、外国出願費用をすべて事前に負担してくれる仕組みではありません。
また、補助対象経費の全額が支援されるわけでもなく、自己負担が発生します。
そのため、
- 出願費用はいくらか
- 代理人費用はいくらか
- 翻訳費用はいくらか
- 補助対象外となる費用はないか
- 自社でどの程度を負担するか
を整理しておく必要があります。
補助金を受けることだけを前提にせず、外国出願を最後まで進められる資金計画を立ててください。
自社が対象か確認するチェックリスト

対象企業かどうかは、「企業規模」だけで判断せず、資本関係・所在地・外国出願の条件まで確認します。
次の項目を順番に確認すると、自社が申請対象になり得るか整理しやすくなります。
中小企業者または対象となる個人・団体に該当するか
最初に、申請主体として対象になるかを確認します。
主な対象候補は、
- 中小企業法人
- 個人事業主
- 一定の中小企業グループ
- 地域団体商標を外国出願する対象団体
です。
法人の場合は、自社の業種に応じて資本金・従業員数を確認してください。
「中小企業」という名称だけで判断せず、制度上の基準に当てはめる必要があります。
みなし大企業に該当しないか
次に、大企業との資本関係を確認します。
中小企業の規模要件を満たしていても、みなし大企業なら対象外です。
特に、
- 大企業の子会社
- 大企業が主要株主となっている企業
- 複数の大企業から出資を受けている企業
は、持株比率や最新の公募条件を確認してください。
スタートアップなどで大企業から出資を受けている場合も、資本関係を見ずに対象と判断しない方が安全です。
所在地の条件を満たしているか
地域窓口を利用する場合は、その窓口の対象地域に自社が該当するか確認します。
本社所在地だけでなく、制度によっては事業所所在地が判断基準となることがあります。
一方で、全国を対象とした支援では条件が異なることもあります。
申請先を決める際は、自社所在地と公募主体の対象地域を照らし合わせてください。
対象となる外国出願を予定しているか
次に、実際に外国への知的財産出願を予定しているか確認します。
対象となる主な権利は、
- 特許
- 実用新案
- 意匠
- 商標
です。
海外で商品を売る予定があるだけでは足りません。
何を、どの国・地域で、どの権利として出願するのかまで具体化しておく必要があります。
権利取得後の海外事業計画と資金計画があるか
最後に、外国で権利を取得した後の活用方法と、外国出願を進めるための資金計画を確認します。
たとえば、
- 海外販売を予定している
- 海外取引先との事業に活用する
- ブランド保護のために商標権を取得する
- 出願・翻訳・代理人費用を自社で負担できる
といった状況を整理します。
企業として対象でも、外国出願の目的や実行体制が制度要件と合っていなければ申請できません。
「会社が対象か」と「案件が対象か」の両方を確認してから準備を進めるのが適切です。
まとめ|企業規模と外国出願の両方の要件を確認する

中小企業等海外展開支援事業費補助金の外国出願支援では、外国への特許・実用新案・意匠・商標などの出願を予定する中小企業者が主な対象です。
法人だけでなく個人事業主や一定の中小企業グループも対象となり、地域団体商標では商工会・商工会議所などが対象になることもあります。
一方、中小企業の規模要件を満たしていても、みなし大企業に該当すれば対象外です。地域窓口を利用する場合は所在地要件も確認する必要があります。
また、対象企業に該当するだけでは申請条件を満たしません。
- 対象となる外国出願を予定している
- 基礎となる国内出願等の条件を満たしている
- 外国で権利取得を目指せる案件である
- 権利取得後の海外事業展開を計画している
- 外国出願に必要な資金計画がある
といった案件側の条件も確認してください。
まず事業者として対象かを確認し、その次に外国出願案件の要件を確認することで、自社が制度を利用できるか判断しやすくなります。
