障害者作業施設設置等助成金は、障害者を雇用する事業主が、対象労働者の就労上の課題を軽減するために作業施設や設備を整備した場合、その費用の一部を支援する制度です。
助成率は原則として3分の2で、購入や工事によって整備する場合は「第1種」、施設や設備を賃借する場合は「第2種」に分かれます。
第1種では、障害者1人あたり450万円が基本的な支給限度額です。作業設備のみの場合は1人150万円が上限となります。第2種では、1人あたり月13万円を上限として、原則3年間の支援を受けられます。
ただし、一般的なオフィス改修や設備購入が幅広く対象になるわけではありません。その設備が対象障害者の障害特性による就労上の課題を軽減し、雇入れや雇用継続のために必要であることが重要です。
また、原則として契約・発注前に受給資格認定申請を行う必要があります。雇入れや職場復帰、人事異動などから6か月以内という申請時期にも注意が必要です。
障害者作業施設設置等助成金とは?

障害者作業施設設置等助成金は、障害者の雇入れや継続雇用を進めるため、職場の物理的な障壁や作業上の課題を軽減する事業主を支援する助成金です。
障害福祉サービス事業所の開設費を広く補助する制度ではありません。
障害者の就労上の課題を軽減する施設・設備を整備する事業主向けの助成金
対象となるのは、身体障害者、知的障害者、精神障害者などを雇用し、その人が働くうえで必要となる施設や設備を整備する事業主です。
たとえば、
- 車いすで移動しにくい
- 通路や出入口に段差がある
- トイレを利用しにくい
- 視覚障害により一般的な機器では作業が難しい
- 聴覚障害により情報伝達が難しい
といった課題を、設備面から軽減する場合に利用できます。
単なる職場の美観向上や、全社員向けの一般的な設備更新を支援する制度ではありません。
購入・工事は第1種、賃借は第2種
障害者作業施設設置等助成金は、整備方法によって第1種と第2種に分かれます。
| 項目 | 第1種 | 第2種 |
| 主な整備方法 | 購入・工事 | 賃借 |
| 助成率 | 2/3 | 2/3 |
| 基本上限 | 1人450万円 | 1人月13万円 |
| 作業設備のみ | 1人150万円 | 1人月5万円 |
| 支給期間 | 原則一括 | 原則3年間 |
自社で施設や設備を購入・改修するなら第1種、借りて利用するなら第2種を確認します。
障害福祉施設の開設費を広く補助する制度ではない
名称に「施設」とありますが、社会福祉施設や就労継続支援事業所の新設費を幅広く支援する制度ではありません。
対象となるのは、原則として雇用されている障害者が働くために必要な作業施設や設備です。
休憩室など福利厚生を目的とした施設は、別の障害者雇用関係助成金が対象になることがあります。
障害者作業施設設置等助成金はいくらもらえる?

支給額は、第1種か第2種かによって異なります。
どちらも助成率は原則3分の2ですが、第1種は購入・工事費、第2種は賃借費を基準として計算します。
第1種は助成率2/3・障害者1人あたり450万円が上限
第1種作業施設設置等助成金では、対象となる施設・設備の設置や整備にかかった費用の3分の2が助成されます。
基本的な支給限度額は、対象障害者1人につき450万円です。
たとえば対象費用が300万円で、全額が支給対象費用として認められた場合は、200万円が助成額の目安となります。
ただし、実際の支給額は対象費用や障害者数、設備内容によって変わります。
作業設備のみの場合は1人150万円が上限
作業施設全体の改修ではなく、作業設備のみを整備する場合は、支給限度額が異なります。
原則として、対象障害者1人につき150万円が上限です。
ただし、中途障害者に必要な作業設備など、条件によって別の限度額が適用される場合があります。
施設改修なのか作業設備のみなのかを最初に整理してください。
第1種は1事業所1会計年度4,500万円が上限
第1種では、対象障害者1人あたりの上限だけでなく、事業所単位の上限もあります。
1事業所につき、1会計年度4,500万円が支給限度額です。
複数人の障害者を対象として大規模な改修を行う場合でも、事業所全体の上限を超えて助成されるわけではありません。
第2種は助成率2/3・1人あたり月13万円が上限
第2種は、必要な施設や設備を購入するのではなく、賃借して利用する場合に対象となります。
助成率は第1種と同じく3分の2です。
支給限度額は、原則として対象障害者1人につき月13万円です。
賃借料が高額でも、月額上限を超える部分まで助成されるわけではありません。
第2種の作業設備のみは月5万円・支給期間は3年間
施設ではなく作業設備のみを賃借する場合は、対象障害者1人につき月5万円が基本的な上限です。
第2種は継続的な賃借費を支援するため、原則として3年間が支給期間となります。
購入と賃借のどちらが適しているかは、設備の使用期間や更新予定、事業所の賃貸契約なども含めて判断しましょう。
障害者作業施設設置等助成金の対象者

この助成金では、事業主だけでなく対象となる障害者にも条件があります。
障害者手帳を持っている人であれば、どのような設備でも対象になるわけではありません。
身体障害者・知的障害者・精神障害者が対象
主な対象者は、
- 身体障害者
- 知的障害者
- 精神障害者
です。
実際には障害の種類だけでなく、その障害によってどのような就労上の課題が生じているかが重要です。
たとえば同じ身体障害でも、必要となる設備は一人ひとり異なります。
在宅勤務の障害者も対象になり得る
在宅勤務であっても、要件を満たせば対象となる場合があります。
ただし、一般家庭向けの設備を広く補助する制度ではありません。
在宅勤務を行う対象障害者の業務遂行に必要であり、障害特性による就労上の課題を軽減する設備であることが必要です。
短時間労働者は支給限度額が半額になる場合がある
対象障害者が一定の短時間労働者である場合は、支給限度額が通常の2分の1となることがあります。
助成率が単純に半分になるという意味ではありません。
対象者の所定労働時間や雇用条件を確認したうえで、適用される上限額を確認してください。
設備がなければ雇入れ・雇用継続が難しいことが必要
この助成金で特に重要なのが、設備の「必要性」です。
対象となる施設・設備は、
その整備を行わなければ、対象障害者の雇入れや継続雇用が困難である
と認められる必要があります。
単に使いやすくしたい、職場環境をより快適にしたいという理由だけでは足りません。
障害特性と就労上の課題、その設備が必要な理由を具体的に整理しておくことが重要です。
助成対象になる作業施設・附帯施設・作業設備

対象となる設備は、大きく「作業施設」「附帯施設」「作業設備」に分けて考えると分かりやすくなります。
作業施設は障害特性に配慮した作業スペースの改修などが対象
作業施設とは、対象障害者が実際に仕事を行うために必要となる施設です。
たとえば、
- 車いすで作業できるようスペースを広げる
- 作業位置を変更する
- 障害特性に合わせて作業場所を改修する
などが考えられます。
通常の事務所改装ではなく、対象障害者の就労上の課題を解決する改修であることが必要です。
附帯施設は玄関・廊下・階段・トイレなどが対象
作業場所そのものではなくても、働くために利用する施設が対象になることがあります。
代表例は、
- 玄関
- 出入口
- 廊下
- 階段
- トイレ
などです。
たとえば車いす利用者が職場へ入るためのスロープや、利用できるトイレへの改修などが該当する場合があります。
作業設備は障害特性を補う機器・設備が対象
障害特性によって一般的な作業機器では業務が難しい場合は、専用の作業設備も対象になります。
例として、
- 視覚障害者向けの拡大読書器
- 聴覚障害者向けの補聴援助機器
- 身体障害に合わせた作業台
- 操作方法を変更した機械
などがあります。
設備名だけで対象可否が決まるのではなく、その人の障害特性との関係が判断されます。
一般社員も使う通常設備は原則として対象にならない
一般社員も通常利用する設備を単純に新しくするだけでは、助成対象にならない可能性があります。
たとえば、
- 一般的なパソコン
- 通常のデスク
- Wi-Fi設備
- 書類保管棚
- 一般的な空調設備
などは、それだけでは障害者の就労上の課題を軽減する設備とはいえません。
ただし、障害特性に合わせた特別な仕様や追加機能が必要であれば、対象になる可能性があります。
障害者作業施設設置等助成金の対象外になる主なケース

対象設備に見えても、必要性や購入・賃借方法によっては助成対象外となります。
設備を選定する前に確認しておきましょう。
障害者の就労上の課題と関係のない設備は対象外
最も基本的な考え方は、設備と障害特性との関係です。
たとえば、
オフィスをきれいにしたい
全社員向けに新しい設備へ交換したい
福利厚生を充実させたい
といった目的だけでは、本助成金の対象になりません。
対象障害者の業務遂行に必要であることを説明できる設備に絞る必要があります。
第1種では中古品・自社製品・一定の関係会社取引に注意する
第1種では、設備の購入先や整備方法にも注意が必要です。
中古品、自社で製造した設備、一定の関係会社との取引などは対象外または制限を受ける場合があります。
自社施工や関係会社へ発注する予定がある場合も、契約前に対象可否を確認してください。
第2種では中古品の賃借・転貸借などが対象外になる場合がある
第2種でも、賃借方法に条件があります。
中古品や自社製品の賃借、転貸借などは対象外になる場合があります。
また、対象障害者本人や一定の関係者が所有する施設・設備を借りるケースなどにも制限があります。
契約相手との関係まで確認したうえで申請します。
他の公的補助金がある場合は同じ対象費用から差し引かれる
自治体などの公的補助金を同じ設備に利用する場合は、単純に両方の満額を受け取れるとは限りません。
同じ支給対象費用について他の公的補助金の支給が確定している場合は、その金額を差し引いた残額を基に本助成金が計算されます。
二重に補助を受けられる制度と考えないようにしてください。
障害者作業施設設置等助成金の申請期限

本制度では、助成率や対象設備だけでなく「いつ申請するか」が非常に重要です。
設備を発注・購入してから申請するのでは遅い場合があります。
契約・発注前に受給資格認定申請を行う
原則として、施設工事や設備購入などの契約・発注を行う前に、受給資格認定申請を行います。
認定を受ける前に、
- 工事を発注する
- 設備を購入する
- 賃貸借契約を結ぶ
といった行為を進めると、助成対象外になる可能性があります。
設備導入を急いでいる場合ほど、最初にJEEDへ相談した方が安全です。
雇入れから原則6か月以内に申請する
新たに障害者を雇い入れ、その人のために設備整備が必要になった場合は、原則として雇入れから6か月以内に認定申請を行う必要があります。
雇用してから長期間経過した後に、
今になって設備が必要になった
というケースでは、雇入れ時から必要だった設備とは認められないことがあります。
職場復帰・中途障害・人事異動の場合も6か月以内が基本
対象になるのは、新規採用だけではありません。
たとえば、
- 在職中に障害を負った
- 休職から職場復帰した
- 人事異動によって新しい設備が必要になった
といったケースも対象になる可能性があります。
この場合も、職場復帰や異動などから原則6か月以内という期限を意識する必要があります。
雇用から6か月を超えると必要性が認められず対象外になる場合がある
6か月を超えたら必ず一律で対象外という単純な考え方ではありませんが、申請が遅いほど、
なぜこれまで設備なしで働けていたのか
という点が問われやすくなります。
設備の必要性が発生した時点を整理し、早い段階で相談・申請することが重要です。
障害者作業施設設置等助成金の申請方法

申請では、最初に対象障害者の課題と必要な設備を整理し、JEEDから受給資格認定を受けてから整備を進めます。
1.対象障害者の就労上の課題を整理する
まず、対象障害者が仕事をするうえで何に困っているかを明確にします。
たとえば、
- 車いすでは入口を通れない
- トイレを利用できない
- 視覚障害により文字確認が難しい
- 聴覚障害により指示を受け取りにくい
などです。
この課題が、設備の必要性を判断する基礎になります。
2.必要な施設・設備と第1種・第2種を確認する
次に、その課題を解消するために何が必要かを決めます。
購入・工事するなら第1種、賃借するなら第2種が基本です。
同じ設備でも、導入方法によって支給方法や上限が変わります。
3.見積書・図面などを準備して受給資格認定申請を行う
必要な施設や設備が決まったら、認定申請に必要な資料を準備します。
代表的なものは、
- 見積書
- 設備仕様書
- 工事図面
- 対象障害者の状況を確認できる書類
- 雇用関係を確認できる書類
などです。
必要書類は申請内容によって異なるため、最新の申請様式を確認してください。
4.認定後に契約・発注・工事・購入・賃借を行う
受給資格の認定を受けた後、計画に沿って設備整備を進めます。
認定された内容から設備仕様や金額を大きく変更する場合は、勝手に進めず確認してください。
変更手続きが必要になることがあります。
5.整備完了後に支給請求を行う
第1種では、認定された施設・設備の整備が完了した後に支給請求を行います。
実際に、
- 契約したこと
- 支払いを行ったこと
- 設備が設置されたこと
- 対象障害者が利用できる状態であること
などを確認できる書類が必要です。
第2種では賃借期間に応じて所定の支給請求を行います。
6.JEED都道府県支部またはe-Govから申請する
申請・相談窓口は、JEEDの都道府県支部にある高齢・障害者業務課等です。
自治体の障害福祉課へ申請する制度ではありません。
電子申請にも対応しているため、e-Govを利用できる手続きについてはオンライン申請も選択できます。
障害者作業施設設置等助成金と似た制度の違い

障害者雇用に関する施設系助成金には、似た名称の制度があります。
目的を混同すると、確認すべき制度を誤る可能性があります。
休憩室などの福利厚生施設なら「障害者福祉施設設置等助成金」
障害者作業施設設置等助成金は、業務を行うために必要な施設や設備が中心です。
一方、
- 休憩室
- 福利厚生施設
- 障害者の福祉を増進するための施設
などは、障害者福祉施設設置等助成金の対象になる場合があります。
「働くための設備」か「福利厚生のための施設」かで考えると区別しやすくなります。
通勤上の課題なら「重度障害者等通勤対策助成金」
対象障害者が仕事そのものではなく、通勤に困っている場合は別制度を確認します。
たとえば、
- 通勤用自動車
- 駐車場
- 住宅
- 通勤援助
など、通勤上の課題を軽減する措置には重度障害者等通勤対策助成金があります。
作業施設設置等助成金へ通勤費用まで含めないようにしてください。
重度障害者を多数雇用する大規模整備なら別の施設助成を確認する
重度障害者等を多数雇用する事業所が大規模な施設整備を行う場合は、別の助成制度が対象となることがあります。
対象障害者数や全労働者に占める割合など、通常の障害者作業施設設置等助成金とは異なる条件があります。
多数雇用を前提とした大規模整備なら、専用制度もあわせて確認しましょう。
障害者作業施設設置等助成金を利用するときの注意点

この助成金は、設備を購入した事実だけでは支給されません。
対象障害者の障害特性、設備の必要性、申請時期、契約内容まで確認されます。
一般的なバリアフリー工事なら自動的に対象になるわけではない
スロープやトイレ改修などは対象例として挙げられますが、工事内容だけで対象が決まるわけではありません。
重要なのは、
その工事が対象障害者の雇入れ・雇用継続に必要か
という点です。
建物全体の一般的なバリアフリー化を目的とした工事では、全額が支給対象費用になるとは限りません。
対象障害者の障害特性と設備の必要性を具体的に示す
申請では、
- どのような障害特性があるか
- 現在どのような就労上の課題があるか
- なぜ既存設備では対応できないか
- 導入後にどう改善されるか
を整理しておく必要があります。
「あると便利だから」という説明ではなく、雇用との関係を具体化することが重要です。
認定前に契約・発注しない
見積を取ることと、正式に契約・発注することは別です。
認定前に設備業者と契約したり、購入手続きを進めたりすると対象外になる可能性があります。
設備の納期が長い場合でも、自己判断で先に発注するのは避けましょう。
最新のJEED様式・支給要領を確認する
助成金制度は、申請書様式や取扱いが変更される場合があります。
以前利用した企業でも、過去の書類をそのまま使わない方が安全です。
申請前には、
- 最新の支給要領
- 申請様式
- 記入例
- 添付書類
- 電子申請の案内
を確認してください。
障害者作業施設設置等助成金は設備の必要性と申請時期を確認しよう

障害者作業施設設置等助成金は、障害者を雇用する事業主が、その人の就労上の課題を軽減する作業施設・附帯施設・作業設備を整備した場合に利用できる制度です。
購入や工事による整備は第1種、賃借による整備は第2種に分かれます。
第1種は助成率2/3で、基本的な支給限度額は障害者1人につき450万円です。作業設備のみの場合は1人150万円、1事業所1会計年度では4,500万円が上限となります。
第2種も助成率は2/3です。
基本的な上限は障害者1人につき月13万円、作業設備のみの場合は月5万円で、原則3年間支給されます。
ただし、金額より先に確認したいのが設備の必要性です。
対象となるのは、
- 障害特性による就労上の課題に関係している
- 設備がなければ雇入れや雇用継続が難しい
- 必要最低限の施設・設備である
と判断できるものです。
一般的な職場改修や全社員向け設備が、そのまま助成対象になるわけではありません。
さらに、原則として契約・発注前に受給資格認定申請を行う必要があります。新規雇入れの場合は、雇入れから6か月以内という時期も重要です。
職場復帰や人事異動をきっかけに設備が必要になった場合も、同様に早めの確認が必要となります。
利用を検討するときは、
- 対象障害者の就労上の課題を整理する
- 必要な施設・設備を決める
- 第1種か第2種か確認する
- 契約・発注前か確認する
- 雇入れ・復職・異動から6か月以内か確認する
- JEEDへ受給資格認定申請を行う
という順で進めると分かりやすくなります。
