「事業承継・引継ぎ補助金を利用したいが、現在も申請できるのか」「事業承継やM&Aに使える補助金はいくらなのか」と疑問を持つ方もいるでしょう。
従来の「事業承継・引継ぎ補助金」は、現在「事業承継・M&A補助金」として実施されています。事業承継に伴う設備投資だけでなく、M&Aの専門家費用やM&A後のPMI、廃業費用まで目的別に支援する制度です。現在は「事業承継促進枠」「専門家活用枠」「PMI推進枠」「廃業・再チャレンジ枠」の4つに分かれています。
2026年8月11日時点では15次公募の申請受付は終了しており、受付期間は2026年6月19日から7月24日17時まででした。今後申請を検討する場合は、次回以降の公募情報を公式サイトで確認する必要があります。
制度の現在の仕組みから対象者、補助額・補助率、対象経費、申請方法、申請前に確認したい注意点まで順番に確認していきましょう。
事業承継・引継ぎ補助金は現在「事業承継・M&A補助金」に変更されている

従来「事業承継・引継ぎ補助金」と呼ばれていた制度は、現在「事業承継・M&A補助金」として実施されています。
そのため、これから申請を検討する場合は、旧制度の補助額や対象要件ではなく、申請する公募回の「事業承継・M&A補助金」の公募要領を確認してください。現在の制度では4つの枠が設けられ、事業承継前後やM&Aの各段階に応じた支援が行われています。
旧制度から名称と支援枠が変更された
旧制度から現在の制度への変更では、単に名称が変わっただけではありません。支援内容も整理され、M&A後の経営統合を対象とするPMI推進枠などが設けられています。
古い情報を調べていると「経営革新枠」など、現在とは異なる名称が出てくることがあります。
現在申請する際は、次の4枠を基準に判断します。
| 現在の枠 | 主な目的 |
| 事業承継促進枠 | 事業承継を契機とした設備投資など |
| 専門家活用枠 | M&Aに伴う専門家費用など |
| PMI推進枠 | M&A後の経営統合や設備投資など |
| 廃業・再チャレンジ枠 | 事業承継・M&A等に伴う廃業など |
事業承継・引継ぎ補助金について過去の記事や資料を確認する場合は、当時の制度と現在の制度を混同しないよう注意が必要です。
現在は4つの枠から目的に合った支援を選ぶ
現在の事業承継・M&A補助金では、使いたい費用や事業承継・M&Aの段階に応じて申請する枠を選びます。
たとえば、後継者への事業承継を予定しており、その後に機械設備を導入したいのであれば事業承継促進枠が候補です。
M&Aを進めるために仲介会社やFAなどの専門家を利用するなら専門家活用枠、M&A成立後の統合作業を進めるならPMI推進枠を確認します。
「事業承継をするからどの枠でも使える」という仕組みではありません。
まず何に費用を使う予定なのかを整理し、その目的に対応した枠の公募要領を確認することが申請準備の第一歩となります。
事業承継・M&A補助金の4つの枠

事業承継・M&A補助金には4つの枠があり、それぞれ支援する段階や対象経費が異なります。
自社がどの枠に該当するか迷う場合は、「誰に事業を引き継ぐか」だけでなく、「何の費用について補助を受けたいか」から判断すると整理しやすくなります。
事業承継促進枠|事業承継に伴う設備投資などを支援
事業承継促進枠は、事業承継を契機として行う設備投資などを支援する枠です。
単に経営者を交代するだけではなく、承継を機に生産性向上などにつながる取組を行う事業者を対象としています。
たとえば、
- 製造設備の導入
- 店舗や事業所の改装
- 承継後の事業拡大に必要な設備投資
などを予定している場合に確認したい枠です。
15次公募では、公募申請時に事業承継計画書や事業承継実施に係る誓約書などの提出が求められていました。認定経営革新等支援機関による確認書も申請書類として案内されています。
事業承継の予定があるだけで対象になるわけではないため、公募要領に定められた承継期間や承継者の要件も確認してください。
専門家活用枠|M&Aの仲介や専門家費用などを支援
専門家活用枠は、M&Aを進める際に利用する専門家費用などの一部を補助する枠です。
後継者不在や経営力強化などを目的にM&Aを検討している中小企業者等が対象となり、買い手側・売り手側の双方に対応する類型があります。
補助対象となり得る費用には、M&Aの仲介・FAやデューデリジェンスに関する費用などがあります。
ただし、仲介・FA費用については、M&A支援機関登録制度に登録された仲介業者・FA業者への委託費用であることが必要です。相見積先についても登録された事業者であることが求められます。
15次公募からは「小規模売り手支援類型」も追加されました。M&Aで事業を譲渡する小規模事業者は、通常の売り手支援類型だけでなく、この類型についても確認するとよいでしょう。
PMI推進枠|M&A後の経営統合を支援
PMI推進枠は、M&A成立後の経営統合を支援する枠です。
PMIとは「Post Merger Integration」の略で、M&A後に経営体制や業務、組織などを統合し、M&Aによる効果を高める取組を指します。
15次公募では、
- PMI専門家活用類型
- 事業統合投資類型
の2つが設けられています。
PMI専門家活用類型は、PMIを進めるための専門家費用が対象です。
一方、事業統合投資類型では、統合効果を高めるための設備投資などを支援します。
M&Aの「成立まで」に使う専門家費用と、「成立後」のPMI費用は分けて考える必要があります。専門家活用枠では原則としてM&A後のPMI費用は対象とならないため、PMI推進枠との違いを確認して申請してください。
廃業・再チャレンジ枠|承継やM&Aに伴う廃業費用を支援
廃業・再チャレンジ枠は、事業承継やM&Aに伴って発生する廃業関連費用などを支援する枠です。
すべての事業をそのまま引き継ぐとは限りません。承継やM&Aを進める過程で、不採算事業や不要な設備を整理することもあります。
その際に発生する廃業費用について、一定の条件を満たせば補助対象として申請できます。
また、事業承継促進枠や専門家活用枠、PMI推進枠と組み合わせ、廃業費を上乗せして申請できる仕組みもあります。
たとえば15次公募の事業承継促進枠では、廃業費を併用する場合、300万円以内の補助額上乗せが案内されています。
単独申請と他枠との併用では条件が異なるため、実際の廃業内容に合わせて確認しましょう。
事業承継・M&A補助金の対象者

事業承継・M&A補助金は、主に国内の中小企業者や小規模事業者等を対象とした制度です。
ただし、「中小企業だから申請できる」と一律に判断することはできません。法人規模や事業年数、承継方法、申請する枠などによって細かな要件が設定されています。
中小企業・小規模事業者等が主な対象となる
申請対象となるのは、公募要領で定められた中小企業者等です。
資本金や従業員数などの中小企業要件だけでなく、一定の大企業に支配されている「みなし大企業」は対象外となります。
法人・個人事業主のどちらも申請できる枠がありますが、条件は同じではありません。
15次公募の事業承継促進枠では、法人について公募申請時点で3期分の決算・申告が完了していない場合は原則として対象外とされています。
個人事業主についても、開業届と所得税の青色申告承認申請書の提出から5年が経過していない場合は対象外です。また、白色申告者は対象外とされています。
公募回や申請枠によって対象者要件が異なるため、法人形態だけで判断せず、公募要領の「補助対象者」を確認してください。
親族内承継・従業員承継・第三者へのM&Aで利用できる枠がある
事業承継・M&A補助金は、親族内承継だけを対象とした制度ではありません。
親族への承継、従業員への承継、第三者へのM&Aなど、承継方法に応じて利用できる枠があります。
15次公募の事業承継促進枠では、親族であることだけで承継予定者の要件を満たすとは限りません。
法人の親族内承継では、被承継者の親族であることに加え、過去に対象会社の代表を務めていないことなどが求められています。個人事業主の承継でも、承継対象事業の代表経験がないことなどの要件があります。
親族以外への承継についても、一定期間の業務従事経験などが判断材料となります。
M&Aによる第三者承継なら専門家活用枠などが選択肢になるため、「誰に承継するか」と「どの費用を補助してほしいか」の両方から検討してください。
事業承継・M&A補助金の補助額・補助率

補助額と補助率は、申請する枠や類型、事業者の条件によって異なります。
「事業承継・M&A補助金なら一律○万円」と考えるのではなく、自社が利用する枠を特定したうえで確認してください。
補助上限額と補助率は申請する枠・類型によって異なる
15次公募では、枠ごとに補助率・補助上限額が設定されています。
たとえば事業承継促進枠の補助率は、小規模事業者に該当する場合は3分の2以内、それ以外は2分の1以内です。補助上限額は通常800万円で、一定の賃上げ要件を満たす計画では1,000万円まで引き上げられる仕組みとなっています。賃上げ要件を達成できなかった場合は1,000万円から800万円へ減額され、引き上げ分の返還が求められます。
専門家活用枠では、通常の事業費について補助上限額600万円以内です。デューデリジェンス費用について200万円以内の上乗せが利用できる場合があり、その場合は上限800万円以内となります。買い手支援類型の補助率は3分の2以内、売り手支援類型は原則2分の1以内で、一定条件を満たす場合は3分の2以内です。
PMI専門家活用類型は15次公募で補助率2分の1以内、補助上限額150万円です。事業統合投資類型は原則として補助率2分の1以内、補助上限額800万円以内とされています。小規模事業者は800万円相当部分まで補助率3分の2以内となります。
このように同じ制度でも金額は大きく異なります。
最新の金額は申請する公募回の公募要領で確認する
補助額や補助率は、公募回ごとに必ず最新情報を確認してください。
事業承継・M&A補助金では、新しい類型の追加や補助上限額、要件の変更が行われることがあります。
15次公募でも専門家活用枠に小規模売り手支援類型が追加されています。
インターネット上には旧「事業承継・引継ぎ補助金」の補助額を掲載したページも残っています。金額だけを見て資金計画を立てると、現在の制度と一致しないおそれがあります。
申請時には、
- 利用する枠を決める
- 対象となる類型を確認する
- 補助率を確認する
- 補助上限・下限額を確認する
- 自己負担額を計算する
という順番で整理すると分かりやすくなります。
事業承継・M&A補助金の対象経費

補助対象になるのは、申請した事業の実施に必要であり、公募要領で認められた経費です。
同じ支出でも、どの枠を利用するかによって対象可否が異なります。また、補助事業期間外に契約・発注・支払いをした経費は原則として対象になりません。
設備投資や店舗改装など事業承継に伴う経費が対象になる
事業承継促進枠では、承継を契機とした生産性向上等に必要な設備投資などが補助対象となります。
たとえば、事業承継後の事業展開に必要となる機械設備や店舗・事業所の改装などが候補です。
ただし、「承継する会社で使うから」という理由だけで経費が認められるわけではありません。
対象経費は、
- 補助事業の遂行に必要だと明確に特定できる
- 補助事業期間内に契約・発注する
- 補助事業期間内に支払いまで完了する
- 実績報告で金額や支払いを確認できる
といった条件を満たす必要があります。
事業承継前から購入を予定している設備でも、契約時期を誤ると補助対象外になるため注意してください。
M&Aの仲介・FA・デューデリジェンスなどの専門家費用が対象になる
専門家活用枠では、M&Aに必要な仲介・FAやデューデリジェンスなどの費用が対象となります。
デューデリジェンスとは、M&Aを行う前に対象企業の財務・税務・法務などを調査する手続きです。
15次公募の専門家活用枠では、通常の事業費は補助上限600万円以内とされ、必要に応じてデューデリジェンス費用を200万円以内で上乗せできる仕組みが設けられています。
一方、FA・仲介費用には事業者選びの条件があります。
M&A仲介・FA費用を補助対象にするには、M&A支援機関登録制度に登録された事業者へ依頼する必要があります。相見積を取る際の事業者についても同様です。
契約前に登録の有無を確認しておくと、申請後に対象外となるリスクを抑えられます。
PMIや廃業に必要な経費も対象となる枠がある
M&Aが成立した後に必要となる費用も、条件を満たせば支援対象になります。
PMI専門家活用類型ではPMIを進める専門家費用、事業統合投資類型では統合効果を高める設備投資等が支援対象です。
また、事業承継やM&Aに伴って事業の一部を廃止する場合などは、廃業費用について補助を受けられる仕組みがあります。
廃業費は他の枠に上乗せして申請できる場合もあります。
ただし、「不要な事業を閉じる予定だから何でも対象になる」というものではありません。申請する枠と廃業の関係、実施時期、証拠書類などの要件を確認してください。
どの枠を選ぶ?事業承継・M&A補助金の選び方

申請枠は、事業承継の方法だけでなく、補助金を何に使いたいのかで判断すると選びやすくなります。
大まかな目安は次のとおりです。
| やりたいこと | 確認する枠 |
| 親族や従業員へ承継し、設備投資したい | 事業承継促進枠 |
| M&Aの仲介・FAなどを依頼したい | 専門家活用枠 |
| M&A後に組織・業務を統合したい | PMI推進枠 |
| 承継・M&A等に伴って廃業したい | 廃業・再チャレンジ枠 |
複数の取組を行う場合は、一定の条件で同時申請・併用申請が認められる組み合わせもあります。
親族・従業員への承継と設備投資なら事業承継促進枠を確認する
親族や従業員などへの事業承継を予定しており、承継を契機に設備投資を行うのであれば、まず事業承継促進枠を確認します。
たとえば、親から子へ会社を引き継ぐと同時に古い製造設備を更新する場合などです。
ただし、親族だから自動的に対象になるわけではありません。
承継予定者の過去の代表経験や承継時期などにも条件があります。15次公募でも、親族内承継の承継予定者について細かな要件が定められています。
「設備投資だけが目的」で事業承継との関連が確認できない場合も制度趣旨と合わないため、承継計画と投資内容を一体で整理してください。
M&Aの実施前後で専門家を使うなら専門家活用枠を確認する
M&Aを成立させるために仲介会社やFA、デューデリジェンスの専門家を利用する場合は、専門家活用枠が候補です。
買い手・売り手のどちらにも対応する類型があります。
特に注意したいのが専門家との契約時期です。
15次公募では、仲介・FA費用も原則として交付決定後の補助事業期間内に契約し、同期間内に支払う必要があります。交付決定前に専門家と契約していた場合、支払いが補助事業期間内でも補助対象にはなりません。
M&Aは早い段階から専門家へ相談することが多いため、補助金の利用を考えているなら契約を結ぶ前に対象条件を確認しましょう。
M&A後の統合作業ならPMI推進枠を確認する
すでにM&Aを実施し、その後の統合作業に費用が必要ならPMI推進枠を確認します。
M&Aは株式や事業を取得して終わりではありません。
経営方針、人事制度、業務プロセス、システム、設備などを統合しなければ、想定していた効果を得られないこともあります。
PMI推進枠では、専門家によるPMI支援と、統合効果を高める設備投資等が別の類型として用意されています。
専門家活用枠とPMI専門家活用類型を同じ公募回で同時申請できる仕組みもあります。M&A前後を一体で支援してほしい場合は、申請条件を確認するとよいでしょう。
事業の一部・全部を廃業するなら廃業・再チャレンジ枠を確認する
事業承継やM&Aを進める過程で廃業が必要になる場合は、廃業・再チャレンジ枠を確認します。
たとえば、複数ある事業のうち採算性の低い部門を閉鎖し、残る事業を承継するといったケースです。
他の枠と組み合わせて廃業費を申請できることもあります。
15次公募では事業承継促進枠に廃業費を併用する場合、300万円以内の上乗せが設定されています。ただし、事業承継促進枠で廃業費だけを申請することはできません。廃業費のみを申請する場合は廃業・再チャレンジ枠を確認する必要があります。
廃業を伴うからといって自動的に対象になるわけではないため、承継やM&Aとの関係を整理して申請してください。
事業承継・M&A補助金の申請方法

事業承継・M&A補助金は、原則として電子申請システム「Jグランツ」から申請します。
申請にはGビズIDプライムが必要なため、公募締切直前ではなく、早めに申請環境と必要書類を準備しておく必要があります。
申請前に最新の公募要領と対象要件を確認する
最初に行うのは、利用する枠の最新公募要領を確認することです。
制度概要だけを見て申請準備を始めると、
- 対象者要件を満たしていない
- 事業承継の実施時期が対象外
- 経費の契約時期が合わない
- 必要書類が不足する
といった問題が起こりやすくなります。
公式サイトでは枠ごとに公募要領、申請フォーム項目定義書、必要書類チェックリストなどが公開されています。
まず自社が利用する枠を決めてから、その枠の資料を一式確認すると効率的です。
gBizIDプライムを準備してJグランツから申請する
公募申請は原則としてJグランツを利用します。
Jグランツへログインして申請するには「GビズIDプライム」アカウントが必要です。
GビズIDを取得していない場合は、公募開始を待たずに準備を進めておくと安心です。
申請では、事業者情報だけでなく、事業計画や事業承継・M&Aに関する情報、各枠で指定された書類などを提出します。
締切直前に作業を始めると、不備を修正する時間を確保できません。15次公募では、締切間際の申請集中を踏まえ、修正対応を希望する場合は申請期限の5営業日前までの提出が推奨されていました。
採択後は交付申請・事業実施・実績報告を行う
公募申請で採択された時点では、すぐに補助事業を始められるわけではありません。
採択後に交付申請を行い、交付決定通知を受けてから対象となる事業を実施します。
公式FAQでも、「採択」は交付申請する権利を得た状態であり、「交付決定」とは異なると説明されています。交付決定前に事業を開始すると補助対象になりません。
基本的な流れは次のとおりです。
- 公募申請
- 審査・採択
- 交付申請
- 交付決定
- 補助事業の実施
- 実績報告
- 補助金額の確定・交付
採択通知を受け取った直後に設備を発注したり、専門家と契約したりしないよう注意してください。
事業承継・M&A補助金を申請する際の注意点

申請時に特に注意したいのは、資金繰りと契約・支払いの時期です。
補助対象になる取組でも、手続きの順序を誤れば補助対象外になります。事業承継やM&Aのスケジュールと補助金のスケジュールを別々に考えないようにしてください。
補助金は原則後払いのため立替資金を準備する
補助金は、申請が採択された時点ですぐに振り込まれるものではありません。
交付決定後に事業者自身が対象経費を支払い、事業終了後の実績報告や審査を経て補助額が確定するのが基本です。
そのため、補助対象経費を一時的に自社で負担できる資金を用意する必要があります。
たとえば補助対象経費1,200万円、補助率2分の1として600万円の補助を見込んでいても、最初から600万円だけ準備すればよいわけではありません。
支払い時期や入金予定を含め、事前に資金繰りを確認しておきましょう。
また、申請した経費がすべて補助対象として認められるとは限りません。自己資金にはある程度余裕を持たせておく必要があります。
補助対象期間外の契約・支払いは対象外になることがある
補助金を利用するなら、契約や発注の時期を特に慎重に確認してください。
15次公募では、補助対象経費について、
- 補助事業期間内の契約・発注
- 同期間内の納品・検収
- 同期間内の支払い
などが求められています。
「どうせ補助対象になるから先に購入しておこう」と交付決定前に契約すると、その費用が対象外になることがあります。
専門家活用枠でも、交付決定前にM&A仲介・FA業者と契約していた場合は、支払いが補助事業期間内であっても対象にならないと明記されています。
特にM&Aはスケジュールを自由に止められないこともあるため、補助金申請と実際の契約時期を早い段階で調整してください。
M&Aの専門家費用は登録機関などの要件を確認する
M&Aの専門家費用を補助対象にしたい場合は、依頼先の要件も確認します。
15次公募では、仲介・FA費用についてM&A支援機関登録制度に登録された仲介・FA業者への委託費のみが補助対象です。
相見積を取る際も登録事業者である必要があります。
また、原則として対象経費には相見積が必要とされています。最低価格ではない事業者を選んだ場合、補助対象にならないとのFAQも示されています。
価格だけでなく専門性や実績なども含めて依頼先を選びたいところですが、補助金を利用する場合は公募要領上の見積ルールにも従う必要があります。
専門家との契約を締結する前に、登録状況と見積条件を確認してください。
公募回によって要件・補助額・対象経費が変わるため最新情報を確認する
事業承継・M&A補助金は、公募回によって条件が変わることがあります。
過去に利用した企業や、旧「事業承継・引継ぎ補助金」の経験者であっても、以前と同じ条件だとは限りません。
実際に15次公募では専門家活用枠へ小規模売り手支援類型が追加されています。
確認する際は、少なくとも次の項目を最新公募要領でチェックしてください。
- 公募期間
- 補助対象者
- 事業承継・M&Aの対象期間
- 補助上限額
- 補助率
- 補助対象経費
- 加点・上限引き上げ要件
- 必要書類
- 交付決定後の事業実施期間
特にWeb上の解説記事は旧制度の情報が残りやすいため、最終判断は申請する公募回の公式資料を基準にしてください。
事業承継・M&A補助金に関するよくある質問

事業承継・M&A補助金は承継方法や事業形態によって要件が異なるため、「親族への承継でも使えるのか」「個人事業主も対象になるのか」などの疑問が生じやすい制度です。
名称変更前の情報との違いも含め、申請前に迷いやすい点を整理します。
親子間の事業承継でも利用できる?
親子間の事業承継でも、対象要件を満たせば申請できる枠があります。
ただし、「親子だから対象」と単純に判断することはできません。
15次公募の事業承継促進枠では、法人の親族内承継について、承継予定者が被承継者の親族であることに加え、過去に対象会社の代表経験がないことなどが求められています。
また、補助金の対象となるには、事業承継そのものだけでなく、承継を契機とした設備投資等の補助対象事業を実施する必要があります。
親子間承継を予定している場合は、承継者・被承継者の要件と承継予定時期を確認してください。
個人事業主でも申請できる?
個人事業主でも、要件を満たせば申請できます。
ただし、法人とは申請条件や申請方法が異なります。
15次公募の事業承継促進枠では、個人事業主について青色申告者であることなどが要件となっており、白色申告者は対象外です。また、一定の事業年数も求められています。
個人事業主から別の個人事業主へ承継する場合は、被承継者と承継予定者による共同申請が必要となるケースもあります。
「個人事業主だから使えない」と考える必要はありませんが、法人と同じ条件だと思って準備するのは避けてください。
事業承継前でも申請できる?
申請する枠で定められた期間内に事業承継を行う計画であれば、承継前に申請する制度設計となっている枠があります。
事業承継促進枠では、承継予定者や承継計画について確認したうえで申請します。
一方で、PMI推進枠のように、M&Aの進捗状況が申請条件と関係する枠もあります。
PMI専門家活用類型では、単独申請と専門家活用枠との同時申請でM&Aの実施状況に関する条件が異なります。
そのため、「まだ承継していないから申請できない」「先に承継を済ませればよい」と一律には判断できません。
公募要領に記載された対象期間と、自社の承継・M&Aスケジュールを照らし合わせてください。
事業承継・引継ぎ補助金と事業承継・M&A補助金は別の制度?
現在申請を検討する際は、「事業承継・M&A補助金」を確認してください。
「事業承継・引継ぎ補助金」は以前使われていた名称であり、現在は制度名称や支援枠が変更されています。
現在の制度は、
- 事業承継促進枠
- 専門家活用枠
- PMI推進枠
- 廃業・再チャレンジ枠
の4枠で構成されています。
過去に事業承継・引継ぎ補助金の交付を受けた事業者が現在の制度へ申請できる場合もありますが、過去の事業化状況報告を適切に行っていることなどの条件があります。
古い制度の記事を参考に申請を進めるのではなく、現在の事業承継・M&A補助金の公募要領を確認しましょう。
まとめ|事業承継・引継ぎ補助金の現在の制度と自社に合う枠を確認しよう

従来の「事業承継・引継ぎ補助金」は、現在「事業承継・M&A補助金」として実施されています。
現在は事業承継促進枠、専門家活用枠、PMI推進枠、廃業・再チャレンジ枠の4つに分かれており、事業承継やM&Aの段階と補助を受けたい費用に応じて選びます。
申請を検討するときは、まず「設備投資」「M&A専門家費用」「PMI」「廃業」のどこに費用が発生するのかを整理すると、自社に合う枠を判断しやすくなります。
また、補助対象経費は契約・発注・支払いの時期にも条件があります。採択と交付決定も同じではありません。補助金を利用する予定だからと先に契約すると、対象外になるおそれがあります。
2026年8月11日時点では15次公募の受付は終了しています。今後申請する場合は、次回公募の有無と公募要領を公式サイトで確認し、補助額・補助率・対象要件・申請期間を最新情報に基づいて確認してください。
