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業務改善助成金とキャリアアップ助成金の違い|目的・対象者・要件・助成額を比較して解説

業務改善助成金とキャリアアップ助成金は、どちらも賃上げや雇用改善に関係する助成金です。

そのため、「どちらを使えばいいのか」「同じ賃上げでも何が違うのか」と迷いやすい制度でもあります。

結論からいうと、業務改善助成金は、最低賃金付近の労働者の賃金を引き上げながら、設備投資や業務効率化を進めたい事業者向けです。

一方で、キャリアアップ助成金は、有期雇用労働者・パート・アルバイトなど非正規雇用労働者の正社員化や処遇改善を進めたい事業者向けです。

目的が違うため、同じ「賃上げ」でも見るべき制度は変わります。

たとえば、レジシステムや機械設備を導入して生産性を上げ、そのうえで事業場内最低賃金を引き上げたいなら業務改善助成金が候補になります。

反対に、有期契約社員を正社員に転換したい、パートの賃金規定を見直したい、非正規雇用労働者の処遇を改善したい場合はキャリアアップ助成金を確認する流れです。

制度の大枠を最初に整理すると、次のようになります。

まずはこの違いを押さえると、自社に合う制度を判断しやすくなります。

比較項目業務改善助成金キャリアアップ助成金
主な目的最低賃金引上げと生産性向上非正規雇用労働者の正社員化・処遇改善
主な対象中小企業・小規模事業者有期雇用労働者等を雇用する事業主
主な取組設備投資、システム導入、業務改善正社員化、賃金規定改定、賞与・退職金制度導入など
申請の考え方賃上げ計画と設備投資計画を立てる取組前にキャリアアップ計画を出す
向いているケース設備投資で生産性を上げたい非正規雇用労働者の待遇を改善したい

この記事では、業務改善助成金とキャリアアップ助成金の違いを、目的・対象者・要件・助成額・手続き・選び方に分けて整理します。

制度名だけで迷わず、自社ならどちらを先に見るべきかが分かるように解説します。

目次

業務改善助成金とキャリアアップ助成金は目的が違う

業務改善助成金とキャリアアップ助成金の一番大きな違いは、制度の目的です。

どちらも賃金に関係しますが、業務改善助成金は「最低賃金引上げと生産性向上」、キャリアアップ助成金は「非正規雇用労働者の正社員化や処遇改善」を支援します。

ここを混同すると、申請すべき制度を間違えやすくなります。

業務改善助成金は賃上げと設備投資をセットで支援する制度

業務改善助成金は、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げ、生産性向上に資する設備投資等を行った場合に、その費用の一部を助成する制度です。

対象になる設備投資等には、機械設備導入やコンサルティングなどが含まれます。

厚生労働省の案内でも、賃金引上げ計画と設備投資等の計画を立てて申請し、交付決定後に計画どおり事業を進める流れが示されています。

つまり、業務改善助成金は単なる賃上げ補填ではありません。

最低賃金を上げるために、業務効率化や生産性向上の投資をセットで進める制度です。

現場では、POSレジ、受発注システム、厨房機器、業務管理システム、作業効率を上げる機械などを導入したい場合に検討されやすい制度です。

キャリアアップ助成金は非正規雇用労働者の処遇改善を支援する制度

キャリアアップ助成金は、有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者など、いわゆる非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するための制度です。

正社員化、賃金規定等の改定、賞与・退職金制度の導入、社会保険適用時の処遇改善など、複数のコースがあります。

厚生労働省も、非正規雇用労働者の正社員転換や賃金アップに向けた取組を支援する制度として案内しています。

こちらは、設備投資よりも雇用管理の改善が中心です。

たとえば、有期契約社員を正社員に転換する、パートの基本給を3%以上引き上げる、非正規雇用労働者に賞与や退職金制度を導入する、といった場面で検討しやすい制度です。

設備投資をしたいなら業務改善助成金、人材の処遇改善ならキャリアアップ助成金を確認する

制度選びで迷ったら、まず「何をしたいのか」で分けると分かりやすいです。

設備投資や業務効率化を行いながら事業場内最低賃金を引き上げるなら、業務改善助成金が候補になります。

非正規雇用労働者の正社員化や賃金規定の改定など、人の処遇を改善するならキャリアアップ助成金を確認する流れです。

判断しやすいように、目的別に整理すると次のとおりです。

やりたいこと確認したい制度
最低賃金付近の労働者の時給を上げたい業務改善助成金
設備やシステムを導入して生産性を上げたい業務改善助成金
有期契約社員を正社員にしたいキャリアアップ助成金
パート・アルバイトの基本給を上げたいキャリアアップ助成金
非正規雇用労働者に賞与・退職金制度を導入したいキャリアアップ助成金

このように、両制度は似ているようで支援する取組が違います。

金額だけで選ぶより、設備投資なのか、雇用管理改善なのかで分けたほうが自然です。

制度選びは「設備投資」か「非正規雇用の処遇改善」かで分ける

業務改善助成金とキャリアアップ助成金は、どちらも賃上げに関係しますが、目的は違います。
業務改善助成金は最低賃金引上げと設備投資、キャリアアップ助成金は非正規雇用労働者の正社員化や処遇改善が中心です。
まずは自社の目的が生産性向上の投資なのか、人材の処遇改善なのかを整理すると、どちらを確認すべきか判断しやすくなります。

業務改善助成金とは

業務改善助成金は、最低賃金引上げの影響を受けやすい中小企業・小規模事業者にとって、かなり実務寄りの制度です。

単に賃金を上げるだけではなく、生産性向上のための投資とセットで取り組む点が特徴です。

最低賃金対応と業務効率化を同時に進めたい場合に、まず候補に入ります。

事業場内最低賃金の引上げが前提になる

業務改善助成金は、事業場内で最も低い賃金を一定額以上引き上げることが前提です。

令和7年度の案内では、事業場内最低賃金を30円以上引き上げ、生産性向上に資する設備投資等を行った場合に、その費用の一部を助成する制度とされています。

対象事業者は、中小企業・小規模事業者であり、事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内であることなども示されています。

ここで重要なのは、会社全体の平均賃金ではなく、事業場内最低賃金を見られる点です。

たとえば、パートやアルバイトの時給が地域別最低賃金に近い事業場では、制度の対象になる可能性があります。

反対に、すでに最低賃金から大きく離れた賃金水準の事業場では、制度の要件に合わないことがあります。

設備投資やシステム導入など生産性向上の取組が必要になる

業務改善助成金は、賃上げだけで受けられる制度ではありません。

生産性向上に資する設備投資等が必要です。

厚生労働省の案内では、機械設備導入やコンサルティングなどが例として示されており、助成される金額は、設備投資等にかかった費用に一定の助成率をかけた金額と助成上限額を比較し、いずれか安い方になるとされています。

現場でよくある相談としては、「レジを入れ替えたい」「予約システムを導入したい」「作業効率を上げる機械を入れたい」といったケースです。

こうした投資が、労働時間の短縮や作業効率の改善につながり、その結果として賃上げしやすくなるなら、制度の趣旨に合いやすくなります。

中小企業・小規模事業者向けの制度として使われる

業務改善助成金は、中小企業・小規模事業者向けの制度です。

令和7年度案でも、中小企業・小規模事業者であること、大企業と密接な関係を有するみなし大企業でないことなどが対象要件として示されています。

また、労働者の事業場内最低賃金を引き上げる支援制度であるため、労働者がいない場合は助成対象になりません。

つまり、個人事業主でも労働者を雇用していれば対象になり得ますが、代表者だけ、役員だけ、従業員なしといった状態では制度の趣旨に合いません。

賃上げ対象となる労働者がいるかどうかは、最初に確認したいポイントです。

業務改善助成金の基本を整理すると、次のようになります。

項目内容
主な目的事業場内最低賃金の引上げと生産性向上
対象中小企業・小規模事業者
必要な取組賃金引上げ+設備投資等
対象になりやすい費用機械設備、システム、コンサルティング、人材育成など
注意点交付決定前の契約・納品は対象外になり得る

この表のとおり、業務改善助成金は「賃金」と「設備投資」の両方を見ます。

どちらか片方だけでは制度に乗りにくい点を押さえておきたいところです。

業務改善助成金は最低賃金引上げと生産性向上を同時に進める制度

業務改善助成金は、事業場内最低賃金を引き上げながら、設備投資やシステム導入などで生産性向上を進める制度です。
中小企業・小規模事業者向けであり、賃上げ対象となる労働者がいることが前提になります。
単なる賃上げ助成ではなく、賃上げできる業務体制を作るための助成金と考えると分かりやすいです。

キャリアアップ助成金とは

キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者の待遇を改善したい事業者に向いている制度です。

正社員化、賃金規定の改定、賞与・退職金制度の導入など、複数のコースがあり、設備投資よりも雇用管理や人事制度の見直しに近い助成金です。

業務改善助成金と混同しやすいですが、対象となる取組はかなり違います。

有期雇用労働者等の正社員化や処遇改善を支援する

キャリアアップ助成金は、有期雇用労働者等の企業内でのキャリアアップを促進するための制度です。

厚生労働省は、非正規雇用労働者の正社員転換や賃金アップに向けた取組の一助として活用を案内しています。

対象になるのは、正社員ではない労働者の処遇改善です。

たとえば、有期契約社員を正社員に転換する、パートの基本給を引き上げる、短時間労働者の社会保険加入に伴って賃金や労働時間を見直す、といった取組です。

制度名のとおり、非正規雇用労働者のキャリアアップを後押しする制度と考えると理解しやすくなります。

正社員化コースや賃金規定等改正コースなど複数のコースがある

キャリアアップ助成金には複数のコースがあります。

代表的なのは、正社員化コース、賃金規定等改定コース、賞与・退職金制度導入コース、社会保険適用時処遇改善コースなどです。

令和7年度版の案内でも、有期雇用労働者等の基本給の賃金規定等を3%以上増額改定し、その規定を適用させた場合に助成する賃金規定等改定コースなどが示されています。

つまり、キャリアアップ助成金は「1つの使い方」だけではありません。

正社員化したいのか、賃金表を見直したいのか、賞与・退職金制度を導入したいのかによって、見るべきコースが変わります。

制度選びでは、まず自社の取組がどのコースに近いかを確認する必要があります。

取組実施前にキャリアアップ計画の提出が必要になる

キャリアアップ助成金で特に重要なのが、取組前の計画提出です。

令和7年度版の案内では、各コースの実施日の前日までにキャリアアップ計画の提出が必要とされています。

つまり、正社員化や賃金規定改定を行ったあとに、あとから助成金を使いたいと考えても間に合わない可能性があります。

この点は実務でかなりミスが起きやすいところです。

現場では「すでに正社員化した社員がいるので申請したい」という相談もありますが、計画提出のタイミングを外していると難しくなります。

キャリアアップ助成金は、先に計画、あとで取組という順番を守ることが大切です。

キャリアアップ助成金の基本を表にすると、次のようになります。

項目内容
主な目的非正規雇用労働者の正社員化・処遇改善
対象有期雇用労働者等を雇用する事業主
代表的な取組正社員化、賃金規定改定、賞与・退職金制度導入
必要な準備取組前のキャリアアップ計画提出
注意点コースごとに要件や支給額が異なる

このように、キャリアアップ助成金は人事制度の見直しと深く関係します。

設備投資ではなく、雇用区分や賃金制度を改善したい場合に確認したい制度です。

キャリアアップ助成金は非正規雇用労働者の待遇改善に向いた制度

キャリアアップ助成金は、有期雇用労働者等の正社員化や賃金アップ、賞与・退職金制度の導入などを支援する制度です。
業務改善助成金のような設備投資中心の制度ではなく、雇用管理や処遇改善を進めるための助成金です。
取組前にキャリアアップ計画を出す必要があるため、実施前の準備が非常に重要になります。

業務改善助成金とキャリアアップ助成金の違いを比較

ここまで見ると、両制度の違いはかなりはっきりしています。

とはいえ、実際にはどちらも「賃上げ」に関係するため、比較して見たいところです。

目的・対象者・助成対象となる取組を並べると、自社に合う制度を判断しやすくなります。

目的の違い

業務改善助成金の目的は、事業場内最低賃金を引き上げると同時に、生産性向上につながる設備投資等を支援することです。

キャリアアップ助成金の目的は、非正規雇用労働者の正社員化や処遇改善を支援することです。

どちらも賃金改善に関係しますが、入口が違います。

目的の違いを表で整理すると、次のとおりです。

比較項目業務改善助成金キャリアアップ助成金
制度の中心最低賃金引上げ非正規雇用労働者のキャリアアップ
目的生産性向上と賃上げの両立正社員化・処遇改善
主な課題最低賃金対応、業務効率化雇用区分、賃金制度、処遇差
向いている会社設備投資を伴う賃上げをしたい会社非正規雇用労働者を改善したい会社

この違いを見れば、同じ「賃上げ」でも制度の考え方が違うことが分かります。

業務改善助成金は現場の生産性向上、キャリアアップ助成金は雇用管理改善が軸です。

対象者の違い

業務改善助成金は、中小企業・小規模事業者が中心です。

さらに、事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額など、最低賃金に近い労働者がいるかどうかが重要になります。

労働者がいない場合は対象にならないと明示されています。

一方で、キャリアアップ助成金は、有期雇用労働者等を雇用している事業主が中心です。

正社員だけの会社では、正社員化コースや賃金規定等改定コースの対象となる非正規雇用労働者がいないため、使いにくくなります。

対象者の違いは、次のように整理できます。

比較項目業務改善助成金キャリアアップ助成金
企業規模中小企業・小規模事業者コースごとに対象事業主を確認
労働者の条件事業場内最低賃金付近の労働者が重要有期雇用労働者等が重要
従業員なし対象外対象労働者がいなければ使いにくい
見るべき単位事業場単位の賃金対象労働者・雇用区分

どちらも「労働者がいること」が前提になりますが、見ている労働者の種類が違います。

最低賃金付近の労働者なのか、非正規雇用労働者なのかを切り分けると判断しやすくなります。

助成対象となる取組の違い

業務改善助成金の取組は、賃金引上げと設備投資等です。

設備投資には、機械設備、システム導入、コンサルティング、人材育成・教育訓練など、生産性向上につながるものが含まれます。

キャリアアップ助成金の取組は、正社員化、賃金規定等の改定、賞与・退職金制度の導入、社会保険適用時の処遇改善などです。

設備を買う制度ではなく、雇用契約や賃金制度を変える制度です。

助成対象となる取組を比較すると、次のようになります。

取組内容業務改善助成金キャリアアップ助成金
設備投資対象になりやすい基本的に中心ではない
システム導入対象になり得る中心ではない
最低賃金引上げ中心要件コースによって賃上げ要件あり
正社員化対象外正社員化コースで対象
賃金規定改定中心ではない賃金規定等改正コースで対象
賞与・退職金制度導入中心ではない対象コースあり

この表のように、助成対象となる取組はかなり違います。

制度名が似ていても、使える場面は別物と考えたほうが安全です。

比較すると設備投資型と処遇改善型の違いが見える

業務改善助成金とキャリアアップ助成金の違いは、目的・対象者・取組内容を並べると明確です。
業務改善助成金は最低賃金引上げと設備投資を組み合わせる制度、キャリアアップ助成金は非正規雇用労働者の正社員化や処遇改善を進める制度です。
どちらも賃金に関係しますが、使う場面は大きく異なります。

助成額・助成率の違い

助成金を比較するとき、金額はどうしても気になるポイントです。

ただし、業務改善助成金とキャリアアップ助成金は、支給額の決まり方そのものが違います。

業務改善助成金は設備投資額と助成上限額で計算し、キャリアアップ助成金はコースごとに1人あたり・1事業所あたりの支給額が決まる仕組みです。

業務改善助成金は設備投資額と助成上限額で支給額が決まる

業務改善助成金は、生産性向上に資する設備投資等にかかった費用に一定の助成率をかけた金額と、助成上限額を比較し、いずれか安い方が支給されます。

令和7年度の案内では、最大600万円と示されています。

つまり、支給額は「何人を賃上げしたか」だけで決まるわけではありません。

設備投資額、助成率、賃金引上げ額、引き上げる労働者数などが関係します。

大きな投資をする場合でも、上限額を超えて支給されるわけではないため、事前にシミュレーションしておく必要があります。

キャリアアップ助成金はコースごとに1人あたり・1事業所あたりの助成額が決まる

キャリアアップ助成金は、コースごとに支給額の考え方が異なります。

たとえば、正社員化コースは対象労働者1人あたりの助成額、賃金規定等改定コースは対象労働者数に応じた助成額、賞与・退職金制度導入コースは1事業所あたりの助成額といった形です。

令和7年度版の案内では、賃金規定等改定コースについて、有期雇用労働者等の基本給の賃金規定等を3%以上増額改定し、その規定を適用させた場合に助成するとされています。

このため、キャリアアップ助成金は「どのコースを使うか」で金額がかなり変わります。

正社員化なのか、賃金規定改定なのか、賞与・退職金制度導入なのかを先に決めないと、助成額の比較ができません。

金額だけでなく対象となる取組に合うかで判断する

助成額が大きい制度を選びたくなるのは自然です。

ただ、業務改善助成金とキャリアアップ助成金は目的が違うため、金額だけで選ぶとズレます。

設備投資をしないのに業務改善助成金を見ても使いにくく、非正規雇用労働者がいないのにキャリアアップ助成金を見ても対象になりにくいです。

助成額の見方を整理すると、次のようになります。

比較項目業務改善助成金キャリアアップ助成金
金額の決まり方設備投資額×助成率と上限額で決まるコースごとの支給額で決まる
金額に影響する要素設備投資額、助成率、上限額、賃上げ人数対象労働者数、コース、取組内容
見るべきポイント投資額と賃上げ計画のバランスどのコースに該当するか
判断基準生産性向上投資があるか非正規雇用労働者の処遇改善があるか

金額を比べる前に、まず自社の取組が制度に合うかを確認することが大切です。

制度に合わない助成金は、いくら助成額が大きく見えても使えません。

助成額の比較は支給の仕組みの違いまで見る

業務改善助成金は、設備投資額と助成率、上限額で支給額が決まります。
キャリアアップ助成金は、コースごとに1人あたり・1事業所あたりの助成額が決まります。
金額だけを見るのではなく、自社の取組がどちらの制度に合うかを先に判断することが重要です。

申請要件と手続きの違い

業務改善助成金とキャリアアップ助成金は、申請の流れも違います。

どちらも「先に準備」が重要ですが、業務改善助成金は交付決定後に設備投資等を進めること、キャリアアップ助成金は取組前にキャリアアップ計画を提出することが特に大切です。

手続きの順番を間違えると、本来使えた制度でも対象外になることがあります。

業務改善助成金は交付決定後に設備投資等を進める

業務改善助成金では、賃金引上げ計画と設備投資等の計画を立てて申請し、交付決定後に計画どおり事業を進め、結果を報告することで助成金が支給されます。

厚生労働省のQ&Aでも、設備投資として申請した導入機器等の納品や契約は、必ず交付決定後でなければならず、交付決定前に納品や契約された場合は助成を受けられないとされています。

これは非常に重要です。先に機械を買ってしまった、システム契約を済ませてしまった、納品が終わってしまったという場合、助成対象外になる可能性があります。

業務改善助成金では、交付決定前に動かないというルールを徹底する必要があります。

キャリアアップ助成金は取組前のキャリアアップ計画提出が重要

キャリアアップ助成金では、各コースの実施日の前日までにキャリアアップ計画の提出が必要です。

令和7年度版の案内でも、正社員化や賃金規定改定などの取組を行う前に計画を提出する流れが示されています。

たとえば、すでに有期契約社員を正社員化した後で「助成金を使いたい」と考えても、計画提出が済んでいなければ難しくなります。

キャリアアップ助成金は、実施前に計画を出し、その計画に沿って取組を進める制度です。

ここを外すと、かなりもったいないです。

どちらも事前準備と就業規則・賃金台帳などの整備が重要

業務改善助成金もキャリアアップ助成金も、賃金に関わる制度です。

そのため、就業規則、賃金規定、賃金台帳、雇用契約書、出勤簿などの整備が重要になります。

実際に賃金を引き上げたか、正社員化したか、対象労働者に適用されているかを確認できなければ、申請は進みにくくなります。

手続きの違いを整理すると、次のようになります。

項目業務改善助成金キャリアアップ助成金
事前準備賃上げ計画・設備投資計画キャリアアップ計画
重要なタイミング交付決定後に契約・納品・支払い取組実施前日までに計画提出
主な証拠書類見積書、契約書、請求書、支払証憑、賃金台帳就業規則、雇用契約書、賃金台帳、出勤簿
間違いやすい点交付決定前に設備を導入する計画提出前に正社員化や賃金改定を行う

どちらも「あとから整えればよい」ではありません。

特に賃金や雇用区分の変更は、証拠書類との整合性が見られるため、事前準備がかなり大切です。

どちらも事前準備が重要だが見るタイミングが違う

業務改善助成金は、交付決定後に設備投資等を進めることが重要です。
キャリアアップ助成金は、正社員化や賃金規定改定などの取組前にキャリアアップ計画を提出する必要があります。
どちらも事前準備が必要ですが、守るべきタイミングが違うため、申請前に手続きの順番を確認しておくことが大切です。

どちらの助成金を選ぶべきか

制度の違いが分かっても、実際に自社がどちらを選ぶべきか迷うことはあります。

判断のポイントは、取組の中心が「設備投資による業務改善」なのか、「非正規雇用労働者の処遇改善」なのかです。

ここを軸に考えると、かなり整理しやすくなります。

設備投資で生産性を上げながら最低賃金を引き上げたい場合

設備投資で生産性を上げ、その結果として事業場内最低賃金を引き上げたい場合は、業務改善助成金が向いています。

たとえば、飲食店でセルフオーダーシステムを導入する、小売店でPOSレジを入れる、製造業で作業効率を上げる機械を導入する、といったケースです。

この場合のポイントは、設備投資が賃上げの原資づくりにつながるかどうかです。

単に便利な設備を買うのではなく、労働時間の削減、作業効率化、売上管理の改善など、生産性向上との関係を説明できる必要があります。

非正規雇用労働者を正社員化したい場合

有期雇用労働者やパート、アルバイトなどを正社員化したい場合は、キャリアアップ助成金の正社員化コースが候補になります。

非正規雇用労働者の安定雇用を進めたい会社には相性がよい制度です。

たとえば、長く働いている契約社員を正社員にしたい、優秀なパートをフルタイム正社員へ転換したい、といったケースです。

この場合、設備投資ではなく、雇用区分の変更や処遇改善が中心になります。

非正規雇用労働者の賃金規定を見直したい場合

非正規雇用労働者の基本給を見直したい場合は、キャリアアップ助成金の賃金規定等改定コースが候補になります。

令和7年度版の案内では、有期雇用労働者等の基本給の賃金規定等を3%以上増額改定し、その規定を適用させた場合に助成するとされています。

このケースでは、最低賃金付近の労働者だけでなく、非正規雇用労働者全体の賃金制度を整える視点が重要です。

賃金表や就業規則を見直し、制度として処遇改善を行うなら、キャリアアップ助成金のほうが合いやすくなります。

判断しやすいように、ケース別に整理します。

自社の状況向いている制度
設備投資と最低賃金引上げを同時に進めたい業務改善助成金
業務効率化のために機械やシステムを入れたい業務改善助成金
有期契約社員を正社員化したいキャリアアップ助成金
パート・アルバイトの賃金規定を見直したいキャリアアップ助成金
非正規雇用労働者に賞与・退職金制度を導入したいキャリアアップ助成金
どちらも該当しそう取組と対象労働者を分けて確認

このように、どちらを選ぶかは、制度名ではなく取組内容で判断します。

設備投資が中心なら業務改善助成金、人の雇用区分や賃金制度が中心ならキャリアアップ助成金です。

設備投資なら業務改善助成金、非正規雇用の改善ならキャリアアップ助成金

どちらの助成金を選ぶべきかは、取組の中心で判断します。
設備投資で生産性を上げながら最低賃金を引き上げるなら業務改善助成金、非正規雇用労働者の正社員化や賃金規定の見直しならキャリアアップ助成金が向いています。
迷ったときは、何にお金を使い、誰の処遇をどう変えるのかを整理すると判断しやすくなります。

業務改善助成金とキャリアアップ助成金は併用できるのか

制度を比較していると、次に気になるのが「両方使えるのか」という点です。

業務改善助成金とキャリアアップ助成金は目的が違うため、別々の取組として検討できる場合はあります。

ただし、同じ取組や同じ経費に対して二重に助成を受ける考え方は避ける必要があります。

ここは慎重に確認したい部分です。

同じ取組や同じ経費への重複受給はできないと考える

助成金では、同じ取組や同じ経費に対して二重に支給を受けることは基本的に認められません。

たとえば、同じ賃上げや同じ教育訓練、同じ制度改定を複数の助成金で重複して申請するような考え方は危険です。

特に賃金改善に関係する制度は、対象労働者や対象期間が重なりやすくなります。

業務改善助成金で最低賃金引上げを行い、キャリアアップ助成金でも同じ賃金改定を使うような場合は、事前確認が必要です。

自己判断で進めると、不支給や返還のリスクが出ます。

目的と対象労働者が違えば別制度として検討できる場合がある

一方で、目的と対象取組が明確に分かれているなら、別制度として検討できる場合があります。

たとえば、業務改善助成金では設備投資と事業場内最低賃金の引上げを行い、別の対象労働者についてキャリアアップ助成金で正社員化を進める、といった形です。

重要なのは、取組、対象労働者、対象経費、対象期間を分けて説明できることです。

制度ごとの目的が違うため、正しく切り分けられれば検討余地はあります。

ただし、実際の可否は個別事情で変わります。

併用を考える場合は労働局や社労士に事前確認する

併用を考える場合は、必ず申請前に確認したほうが安全です。

制度間の重複、対象期間のズレ、賃金引上げの扱い、就業規則や賃金台帳の整合性など、細かい論点が出やすいからです。

確認するときは、次のように整理して相談すると話が進みやすくなります。

  • どの制度を使いたいのか
  • 対象労働者は誰か
  • どの取組に対して申請するのか
  • 対象経費や支給対象期間が重なっていないか
  • 賃金引上げや正社員化の実施日がいつか
  • 就業規則・賃金台帳で説明できるか

このように整理しておけば、併用できるかどうかを確認しやすくなります。

助成金は「使えるかもしれない」というだけで進めるより、申請前に確認してから動くほうが安全です。

併用は取組と対象を切り分けて事前確認する

業務改善助成金とキャリアアップ助成金は、目的が違うため別制度として検討できる場合があります。
ただし、同じ取組や同じ経費への重複受給は避ける必要があります。
併用を考えるなら、対象労働者、取組、経費、時期を切り分けたうえで、労働局や社労士へ事前確認することが大切です。

業務改善助成金は設備投資型、キャリアアップ助成金は処遇改善型で選ぶ

業務改善助成金とキャリアアップ助成金は、どちらも賃上げや雇用改善に関係する制度ですが、目的も対象も違います。

業務改善助成金は、事業場内最低賃金の引上げと生産性向上のための設備投資等をセットで支援する制度です。

キャリアアップ助成金は、有期雇用労働者等の正社員化や賃金規定改定など、非正規雇用労働者の処遇改善を支援する制度です。

最後に、選び方を整理します。

判断ポイント業務改善助成金キャリアアップ助成金
目的最低賃金引上げ+生産性向上非正規雇用労働者の処遇改善
使いやすい場面設備投資・システム導入をしたい正社員化・賃金制度改定をしたい
対象中小企業・小規模事業者有期雇用労働者等を雇用する事業主
手続きの注意点交付決定後に設備投資を進める取組前にキャリアアップ計画を提出
判断の軸設備投資で賃上げ原資を作る人の処遇を制度として改善する

業務改善助成金は、現場の効率化や設備投資を通じて賃上げを進めたい事業者に向いています。

キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者を正社員化したい、賃金規定を見直したい、賞与や退職金制度を導入したい事業者に向いています。

どちらを選ぶか迷ったら、まずは設備投資をするのか、雇用区分・賃金制度を変えるのかを整理してください。

ここが決まれば、自社に合う制度はかなり見えやすくなります。

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