開業時には、店舗の改装や設備導入、広告・販促などさまざまな費用がかかります。こうした負担を軽減する方法の一つが、国や自治体が実施する創業・開業向けの補助制度です。
ただし、「開業補助金」という名称の全国共通制度が1つあるわけではありません。
全国で利用できる小規模事業者持続化補助金<創業型>のほか、自治体が独自に実施する創業支援補助金などがあり、それぞれ対象者や対象経費が異なります。
実際の活用事例を見ると、飲食店や菓子店、美容院、宿泊施設、家具製造、鉄工、金属加工など、幅広い業種で創業支援が利用されています。自治体の公式ページでも、飲食業、美容業、製造業、宿泊業、小売業など多数の創業事例が公開されています。
また、2026年度も小規模事業者持続化補助金<創業型>の公募が続いています。第4回は2026年11月5日から12月15日まで申請受付が予定されており、創業後1年以内の小規模事業者等による販路開拓などを支援する制度として実施されます。
この記事では、実際に公的機関が公開している創業・開業事例をもとに、飲食、美容、製造、宿泊などの業種別事例や、補助金を活用するときに参考にしたいポイントを解説します。
開業・創業時の補助金はどんな事業で活用されている?

創業支援制度は、特定の業種だけを対象としているわけではありません。
自治体が公開している事例を見ると、飲食店や菓子製造、美容院、サロン、宿泊施設、家具製造、鉄工、小売業、設備工事業など、多様な事業で活用されています。
飲食・小売・美容・製造・宿泊など幅広い業種で活用されている
実際に公開されている創業事例には、次のような業種があります。
| 業種 | 公開されている主な創業事例 |
| 飲食 | イタリアン、炭火ダイニング、ラーメン店、コーヒー店 |
| 菓子・食品 | 焼き菓子・ケーキ店、米粉スイーツ、漢方茶専門店 |
| 美容 | 美容院、小顔矯正サロン、美容サロン |
| 宿泊 | 貸別荘、キャンプ場 |
| 製造 | 家具製造、鉄工、漆芸、金属加工 |
| 小売 | 生花、漢方薬、中古車販売 |
| 建設・設備 | 給排水設備工事、外構・設備関連 |
自治体によって支援内容は異なりますが、「店舗を構える事業でなければ使えない」というわけではありません。
製造業や工事業など、店舗販売を主目的としない事業でも創業支援の対象になっている例があります。
国の補助金と自治体の創業支援制度では対象経費が異なる
創業事例を見る際に注意したいのが、利用している制度です。
たとえば、小規模事業者持続化補助金<創業型>は、創業した小規模事業者等による販路開拓などを支援する制度です。2026年度の第4回では、創業後1年以内の小規模事業者等が対象とされています。
一方、自治体の創業補助金は、地域での創業促進を目的としています。
自治体によっては店舗改装や設備、広告などを対象にすることがありますが、対象経費や補助額は地域によって異なります。
そのため、事例を見るときは「同じ業種か」だけではなく、「どの制度を利用した事例なのか」まで確認することが重要です。
同じ業種でも利用できる制度は開業地域によって変わる
たとえば、美容院の創業事例が自治体の公式ページに掲載されていても、全国の美容院が同じ制度を利用できるわけではありません。
自治体の創業補助金には、
- 市内で開業する
- 市内に事業所を置く
- 一定期間事業を継続する
- 指定された創業支援を受ける
など、地域独自の条件が設定される場合があります。
事例は「こういう業種でも創業支援が利用されている」という参考にはなりますが、実際に申請するときは自分の開業地域で利用できる制度を探す必要があります。
飲食店・食品関連の開業補助金事例

飲食・食品関連は、創業支援の事例が比較的多い分野です。
店舗や厨房設備が必要になるため初期費用が大きくなりやすく、補助制度を利用できれば開業時の資金負担を抑えられる可能性があります。
イタリアンや菓子店など地域密着型店舗の創業事例がある
自治体が公開している創業事例には、地元食材を活用したイタリアンレストランがあります。
地元産の海産物などを使い、地域の食材を生かした飲食事業として創業されています。
また、焼き菓子と生ケーキを販売する菓子店や、漢方茶を販売する食品製造販売業などの新規創業事例もあります。
別の自治体でも、
- 炭火ダイニング
- ラーメン店
- 米粉スイーツ
- コーヒー店
- 洋菓子店
など、多数の飲食・食品関連事業が創業支援事例として紹介されています。
飲食店といっても業態はさまざまです。
地域の顧客を対象にする店舗もあれば、観光客や特定の嗜好を持つ顧客を狙う店舗もあります。
飲食店では設備・改装・販路開拓を分けて考える
飲食店を開業する場合、必要経費には、
- 厨房設備
- 冷蔵・冷凍設備
- 店舗改装
- 看板
- ホームページ
- チラシ
- 広告
- 販促物
などがあります。
ただし、すべての創業補助金でこれら全部が対象になるわけではありません。
全国向けの補助金では販路開拓を中心に支援する一方、自治体制度では店舗整備を広く対象にすることもあります。
「飲食店の開業事例があるから厨房設備も必ず対象」と考えず、利用する制度ごとに対象経費を確認しましょう。
事業計画では店舗を作る理由だけでなく顧客まで具体化する
飲食店の事例を自分の申請に生かすなら、「店を開きたい」という計画だけで終わらせないことが重要です。
たとえば、
- どの地域で営業するのか
- 主な顧客は誰か
- 客単価はいくらか
- 競合店との違いは何か
- どのように集客するのか
まで具体化します。
地域の食材を使うこと自体が採択を保証するわけではありません。
「誰に何を提供し、どのように売上を作るのか」まで一つの事業計画につなげる必要があります。
美容・サービス業の創業支援事例

美容やサービス業でも、自治体の創業支援を利用した事例があります。
大規模な製造設備を必要としない業種でも、店舗整備や専用設備、集客などに資金が必要になります。
美容院や小顔矯正サロンなどの創業事例がある
公的機関が公開している事例には、
- 美容院
- 小顔矯正サロン
- 美容サロン
などがあります。
美容・サロン業では、店舗そのものが顧客体験の一部になります。
そのため、施術環境や設備だけでなく、店舗の認知を広げる販促も開業後の重要な課題です。
自動車整備・設備工事などでも創業支援が活用されている
サービス業の創業事例は、美容分野だけではありません。
自動車関連、給排水設備工事、中古車販売などの事業も、創業支援の事例として公開されています。
このことからも、創業支援制度は「カフェや美容院向けの制度」と考える必要はありません。
地域で新しく事業を始める事業者を広く支援する制度であれば、技術系・工事系の事業も対象になり得ます。
サービス業では設備と販促費を分けて確認する
美容院やサロンを開業する場合、
- 施術設備
- 店舗改装
- 看板
- Webサイト
- 広告
- チラシ
など複数の経費が発生します。
しかし、設備費と広告費では補助対象になる条件が異なることがあります。
自分が最も補助してほしい費用を先に整理し、その経費を対象にしている制度を探す方が効率的です。
製造業・ものづくりの補助金活用事例

開業補助金というと店舗型ビジネスをイメージしがちですが、製造業でも創業支援は利用されています。
創業直後から機械設備が必要になる業種では、設備投資と資金計画を一体で考えることが重要です。
家具・鉄工・漆芸など製造業の創業事例がある
自治体の創業支援事例には、
- 家具・装備品製造
- 鉄工
- 漆芸作品の製造
などがあります。
製造業の場合、事業開始に必要な設備や作業場の確保が大きな負担になることがあります。
店舗型事業とは必要な経費が異なるため、設備投資に使える制度かどうかを確認することが重要です。
持続化補助金<創業型>は販路開拓を目的に利用する
全国向けの小規模事業者持続化補助金<創業型>は、単なる設備購入のための制度ではありません。
創業した小規模事業者等が、自ら作成した経営計画に基づいて行う販路開拓などを支援する制度です。
そのため製造業でも、
「新しい機械を買いたい」
だけではなく、
「機械導入によって新商品を生産し、新しい顧客層へ販売する」
といったように、設備投資と販路開拓の関係を説明する必要があります。
製造業では設備投資と売上拡大のつながりを明確にする
製造設備を導入する場合は、
現在の課題
↓
導入する設備
↓
何が改善されるか
↓
どの商品・サービスを提供できるか
↓
売上や販路がどう広がるか
という流れで整理すると、事業計画を作りやすくなります。
「古い設備だから買い替える」だけではなく、その投資が事業の成長にどうつながるのかまで示すことが重要です。
宿泊・観光・地域資源を活用した創業事例

観光地や地方では、地域資源を生かした宿泊・観光事業の創業支援事例もあります。
貸別荘やキャンプ場の創業事例がある
自治体が公開している事例では、海を望むサウナ付き貸別荘が第二創業の事例として紹介されています。
別の地域では、オートキャンプ場も創業支援事例として公開されています。
宿泊・観光分野では、土地や建物だけでなく、
- 地域の自然
- 食
- 文化
- 体験
などと組み合わせて事業を作るケースがあります。
地域資源を使うだけで採択されるわけではない
「地域活性化につながる事業なら採択されやすい」と単純に考えるのは避けましょう。
公的機関が事例を公開していても、その事業がどの審査項目によって採択されたかまで公表されているとは限りません。
参考にすべきなのは、
- 誰を顧客としているか
- 地域の何を活用しているか
- どのように収益化するか
- 事業を継続できるか
という事業設計です。
第二創業でも利用できる制度がある
創業支援は、必ずしも初めて事業を始める人だけを対象としているとは限りません。
自治体の公開事例には「第二創業」として新たな宿泊事業を始めた例もあります。
ただし、新規創業と第二創業の扱いは制度ごとに異なります。
既存事業者が新しい事業を始める場合は、「創業」の定義に該当するかを公募要領で確認しましょう。
開業補助金の事例から分かる主な使い道

実例を見ると、創業時には業種によって必要になる経費が大きく異なります。
自分の事業で「何に最もお金がかかるのか」を整理してから制度を探すことが重要です。
店舗改装・厨房設備など開業時の設備投資
飲食や美容など店舗型事業では、
- 内装
- 厨房
- 施術設備
- 店舗什器
などの初期費用が発生します。
自治体の創業補助制度では、こうした開業費用の一部が対象になる場合があります。
一方、全国制度では対象経費や目的が異なります。
「店舗を作る費用を補助してほしい」のか、「開業後の販路開拓を支援してほしい」のかで、確認すべき制度を分けましょう。
機械導入による生産性向上
製造・工事・技術系事業では、事業開始時から機械や専門設備が必要になることがあります。
この場合は、
- 設備によって作業時間がどう変わるか
- 生産量がどう増えるか
- 新しい商品を作れるか
- 外注していた工程を内製化できるか
などを整理します。
設備自体ではなく、設備導入後の事業成果まで考えることがポイントです。
広告・Web・販促による新規顧客の獲得
開業しても、顧客に知られなければ売上につながりません。
そこで、
- Webサイト
- チラシ
- 看板
- 広告
- 販促物
などを活用するケースがあります。
小規模事業者持続化補助金<創業型>は、経営計画に基づく販路開拓等を支援する制度です。
そのため、「開業に必要だった費用」ではなく、「開業後にどう顧客を獲得するのか」という観点で計画を作ることが重要です。
賃料・人件費は制度ごとに対象可否を確認する
賃料や人件費は金額が大きくなりやすいため、補助してほしいと考える人も多いでしょう。
しかし、これらを補助対象にできるかは制度によって大きく異なります。
自治体独自の創業支援では対象になる場合があっても、別の制度では対象外ということがあります。
事例だけで判断せず、最新の公募要領で経費区分を確認しましょう。
成功事例を自分の申請に活かすときのポイント

事例を見る目的は、その内容をコピーすることではありません。
自分の事業計画を具体化するための材料として使うことが重要です。
同じ業種の事例をそのまま真似しても採択されるとは限らない
同じ美容院、飲食店、製造業であっても、
- 商圏
- 顧客
- 価格
- 競合
- 設備
- 資金計画
は異なります。
また、自治体の補助制度は地域ごとに審査基準も異なります。
成功事例は「この業種なら採択される」という証拠ではありません。
どのように事業を組み立てているかを参考にしましょう。
顧客・課題・補助経費・売上への効果を一つにつなげる
事業計画を作るときは、次の順で整理すると分かりやすくなります。
誰が顧客なのか
↓
その顧客が抱えている課題は何か
↓
自社が何を提供するのか
↓
補助金で何を導入するのか
↓
その投資が売上や販路拡大へどうつながるか
たとえば「ホームページ制作費を補助してほしい」というだけでは不十分です。
「地域外の顧客からの問い合わせを増やすため、新たに予約機能付きのWebサイトを制作する」とすれば、事業目的との関係が明確になります。
補助金は後払いを前提に資金を準備する
創業時は資金に余裕がないケースも少なくありません。
しかし、多くの補助金は、
採択・交付決定
↓
事業者が費用を支払う
↓
事業を実施する
↓
実績報告
↓
補助金が支払われる
という流れです。
補助金を利用する場合でも、いったん自社で支払える資金を準備しておく必要があります。
自己資金や融資も含めて資金計画を立てましょう。
2026年に開業補助金を探すならどの制度を確認する?

実際に開業する場合は、過去の事例だけでなく、現在利用できる制度を確認する必要があります。
2026年は、国の創業支援だけでなく自治体独自の制度も実施されています。中小企業庁も創業・スタートアップ向け支援情報を継続して公開しています。
全国で創業後の販路開拓を行うなら持続化補助金<創業型>
全国でまず確認したい制度の一つが、小規模事業者持続化補助金<創業型>です。
2026年度の第4回では、創業後1年以内の小規模事業者等を対象に、経営計画に基づく販路開拓等の取り組みを支援します。
申請受付期間は2026年11月5日から12月15日までです。
ただし、申請には創業時期などの要件があります。
「創業型」という名称だけで判断せず、公募要領を確認しましょう。
自治体独自の創業補助金も確認する
市区町村では、地域内での創業促進を目的に独自の補助金を実施している場合があります。
たとえば、志摩市では2026年度も創業支援補助金に関する案内が掲載されています。過年度には、同制度を活用した飲食、食品、宿泊などの創業事例も公開されています。
自治体制度を探すときは、
「自治体名+創業補助金」
「自治体名+開業支援」
「自治体名+起業補助金」
などで確認すると見つけやすくなります。
開業前に使える制度か、開業後に使う制度かを確認する
創業支援制度では、申請できるタイミングにも注意が必要です。
制度によって、
- 開業前のみ
- 開業後一定期間まで
- 交付決定後に開業
- すでに創業した事業者が対象
など条件が異なります。
小規模事業者持続化補助金<創業型>第4回では、創業後1年以内の小規模事業者等が対象とされ、事業開始前の事業者も対象に含まれます。
開業日を決めてから制度を探すのではなく、事業計画を立てる段階で補助制度も確認しておく方がよいでしょう。
開業補助金の事例は「何に使ったか」と「事業につながる理由」を参考にしよう

開業・創業向けの補助制度は、飲食店や美容院だけでなく、宿泊、製造、小売、設備工事など幅広い業種で活用されています。
実際に自治体が公開している事例でも、
- イタリアン
- 菓子店
- 美容院
- 小顔矯正サロン
- 貸別荘
- キャンプ場
- 家具製造
- 鉄工
- 漆芸
- 生花小売
- 設備工事
など、多様な創業事例が確認できます。
ただし、事例と同じ業種だから同じ補助金を利用できるとは限りません。
開業地域や創業時期、対象経費、事業内容によって利用できる制度は変わります。
事例を見るときは、
どんな事業なのか
↓
どんな課題があるのか
↓
何に資金を使うのか
↓
その投資が売上・販路拡大にどうつながるのか
という流れを参考にしましょう。
2026年には小規模事業者持続化補助金<創業型>第4回の受付も予定されています。自治体独自の創業補助制度もあります。
補助金ありきで開業計画を作るのではなく、まず事業計画を固め、その計画に合う制度を探すことが重要です。
