人材開発支援助成金について、「研修費の何%が助成される?」「社員1人あたり、いくら受け取れる?」と気になる方も多いでしょう。
人材開発支援助成金の助成額は一律ではなく、利用するコースや企業規模、雇用形態、訓練内容によって変わります。主な仕組みは、研修費の一部を補助する「経費助成」と、訓練中の賃金負担を軽減する「賃金助成」です。
2026年度は、中小企業の人材育成支援コースで経費助成45%、賃金助成は1人1時間あたり800円となる訓練があります。高度デジタル人材育成やリスキリングでは、経費助成75%、賃金助成1人1時間あたり1,000円となるものもあります。
人材開発支援助成金の補助額はいくら?

人材開発支援助成金の金額は、経費助成・賃金助成・OJT実施助成などを組み合わせて決まります。そのため、「1人あたり一律○万円」という制度ではありません。
2026年度の主な助成内容を中小企業中心に整理すると、次のようになります。
| コース・主な訓練 | 経費助成 | 賃金助成 |
| 人材育成支援コース・正規雇用 | 45% | 800円/時・人 |
| 人材育成支援コース・非正規雇用 | 70% | 800円/時・人 |
| 人への投資促進コース・高度デジタル人材訓練 | 75% | 1,000円/時・人 |
| 事業展開等リスキリング支援コース | 75% | 1,000円/時・人 |
実際の支給額には、対象経費や訓練時間、1人あたり・1事業所あたりの上限なども影響します。
助成額は経費助成・賃金助成・OJT実施助成などで決まる
人材開発支援助成金では、主に複数の方法で企業の人材育成費用を支援します。
代表的なのは次の3つです。
- 経費助成:研修会社への受講料などの一部を助成
- 賃金助成:従業員が訓練を受けている時間の賃金負担を助成
- OJT実施助成:対象となるOJTを組み合わせた訓練に対して助成
たとえば、研修費20万円の45%が経費助成の対象になり、さらに受講時間に応じた賃金助成が加算される、といった計算です。
そのため、研修費だけを見て「20万円の45%だから9万円」と判断すると、賃金助成分を見落とすことがあります。
一方、すべての研修で経費助成と賃金助成の両方を受けられるわけではありません。訓練形式やコースごとの条件を確認する必要があります。
2026年度は7つのコースで助成内容が異なる
2026年度の人材開発支援助成金には7つのコースがあります。
- 人材育成支援コース
- 教育訓練休暇等付与コース
- 人への投資促進コース
- 事業展開等リスキリング支援コース
- 建設労働者認定訓練コース
- 建設労働者技能実習コース
- 障害者職業能力開発コース
一般企業が従業員研修を検討するときは、人材育成支援コース、人への投資促進コース、事業展開等リスキリング支援コースが主な候補です。
一方、教育訓練休暇等付与コースは、研修費そのものではなく、従業員が教育訓練を受けるための休暇制度を導入する企業向けです。
同じ社員教育でも目的によって利用するコースが変わるため、助成率だけを比較して選ぶのではなく、研修内容と制度目的を合わせる必要があります。
中小企業は大企業より助成率・助成額が高い
人材開発支援助成金では、多くのコースで中小企業の方が大企業より高い助成率・助成額に設定されています。
たとえば人材育成支援コースの人材育成訓練では、中小企業と大企業で次のように異なります。
| 区分 | 経費助成 | 賃金助成 |
| 中小企業 | 45% | 800円/時・人 |
| 大企業 | 30% | 400円/時・人 |
同じ20万円の研修を同じ時間受講しても、企業規模によって受け取れる助成額は変わります。
自社の企業規模がどちらに該当するかを確認してから、受給額を計算しましょう。
人材育成支援コースの助成額

人材育成支援コースは、従業員の職務に関連する知識や技能を習得させるための訓練を支援する基本的なコースです。
正規雇用と非正規雇用では経費助成率が異なり、OJTを組み合わせる訓練では実施助成も受けられます。
正規雇用の経費助成は中小企業45%・大企業30%
正規雇用労働者などを対象とした人材育成訓練では、中小企業の経費助成率は45%、大企業は30%です。
たとえば対象となる研修費が20万円の場合、中小企業なら、
20万円×45%=9万円
が経費助成の計算上の金額となります。
大企業なら、
20万円×30%=6万円
です。
対象経費には、訓練に直接必要な受講料や教材費などが含まれます。
ただし、研修に関連する費用なら何でも対象になるわけではありません。対象経費の範囲や上限を確認したうえで計算してください。
非正規雇用の人材育成訓練は経費助成70%
非正規雇用労働者を対象とした人材育成訓練では、経費助成率が70%となります。
たとえば対象経費20万円なら、
20万円×70%=14万円
が計算上の助成額です。
正規雇用向けの45%と比べると助成率が高く設定されています。
パートや有期契約労働者などのスキルアップを検討している企業は、正社員向け研修と同じ助成率で計算しないよう注意しましょう。
雇用形態や訓練内容によって適用される区分が異なるため、対象労働者の契約内容も申請前に確認する必要があります。
賃金助成は中小企業1人1時間800円・大企業400円
人材育成支援コースの賃金助成は、中小企業で1人1時間あたり800円、大企業では400円となる訓練があります。
たとえば中小企業で従業員1人が20時間の対象訓練を受けた場合、
20時間×800円=1万6,000円
です。
5人が同じ20時間の研修を受けるなら、
20時間×800円×5人=8万円
となります。
この賃金助成は、研修費そのものを補助する経費助成とは別に計算します。
研修を受ける人数や時間が多い企業ほど、賃金助成が受給額に与える影響も大きくなります。
OJTを組み合わせる訓練では実施助成も受けられる
対象となるOJTとOFF-JTを組み合わせた訓練では、経費助成や賃金助成に加えてOJT実施助成を受けられます。
たとえば認定実習併用職業訓練では、一定の要件を満たす場合、中小企業で1人あたり20万円、大企業で11万円の実施助成が基本となります。
OJT実施助成は、単に日常業務を教えれば対象になるものではありません。
訓練計画に沿って、
- OFF-JTとの組み合わせ
- 対象となる訓練期間
- 指導内容
- 実施状況
などの要件を満たす必要があります。
新入社員や若手社員を長期間かけて育成する場合は、外部研修だけでなくOJTを含む訓練制度も確認するとよいでしょう。
人への投資促進コースの助成額

人への投資促進コースは、高度デジタル人材の育成や定額制研修、自発的な職業能力開発などを支援するコースです。
訓練の種類によって経費助成率が異なるため、「人への投資促進コースならすべて75%」と考えないようにしましょう。
高度デジタル人材訓練は経費助成75%・賃金助成最大1,000円
高度デジタル人材訓練では、中小企業の経費助成率は75%、大企業は60%です。
賃金助成は、中小企業で1人1時間あたり1,000円、大企業では500円となります。
たとえば中小企業が対象研修に30万円を支払い、従業員1人が30時間受講した場合、
経費助成
30万円×75%=22万5,000円
賃金助成
30時間×1,000円=3万円
となります。
単純計算では合計25万5,000円です。
ただし、高度デジタル人材訓練として認められるには、対象となる資格や教育訓練などの要件を満たす必要があります。
一般的なパソコン研修を受講すれば自動的に75%助成されるわけではありません。
定額制訓練は経費助成60%が基本
定額制訓練では、一定のサブスクリプション型研修サービスなどを利用する際の経費が助成対象となります。
中小企業では経費助成60%、大企業では45%が基本です。
たとえば年間30万円の対象定額制研修を利用する中小企業なら、
30万円×60%=18万円
が計算上の助成額です。
ただし、定額制サービスなら何でも対象になるわけではありません。
業務に直接関係のない講座を中心としたサービスや、対象要件を満たさない研修サービスは助成対象から外れます。
社員が幅広い研修を継続的に受講する企業では、個別講座をその都度申し込む方法と比較して検討できます。
自発的職業能力開発訓練は経費助成45%
自発的職業能力開発訓練では、労働者が自ら希望して受講する職業訓練について、事業主が費用を負担する場合に経費助成を受けられます。
経費助成率は45%です。
会社が一方的に指定する研修とは異なり、従業員自身の主体的な学びを支援する仕組みです。
たとえば、従業員が業務に関連する資格取得や専門的な講座の受講を希望し、その費用を会社が負担する場合などが考えられます。
ただし、本人が学びたい内容なら何でも対象になるわけではありません。
職務との関連性や訓練要件などを確認したうえで制度を利用してください。
長期教育訓練休暇制度などは制度導入助成の対象
人への投資促進コースでは、長期間の教育訓練休暇を導入する企業への支援もあります。
社員に高度な専門教育を受けてもらいたくても、
長期間仕事を休ませると、人件費や業務負担が大きい
という企業は少なくありません。
こうした企業が従業員の長期的な学びを支援できるよう、制度導入や休暇取得に対する助成が設けられています。
研修費だけでなく、「社員が学ぶ時間を確保するための制度」を整えたい企業も対象となり得る点が特徴です。
休暇制度に関する要件は通常のOFF-JTとは異なるため、利用する制度ごとに支給条件を確認しましょう。
事業展開等リスキリング支援コースの助成額

事業展開等リスキリング支援コースは、新規事業への進出やDX・GXなどに対応するため、従業員に新たな知識や技能を習得させる企業を支援します。
中小企業では経費助成75%、賃金助成は1人1時間あたり1,000円と、高い助成水準が設定されています。
経費助成は中小企業75%・大企業60%
事業展開等リスキリング支援コースの経費助成率は、中小企業75%、大企業60%です。
たとえば中小企業が対象研修に40万円を支払った場合、
40万円×75%=30万円
が経費助成の計算上の金額です。
対象となるのは、新しい事業展開や業務のデジタル化などに伴って、新しい職務へ対応するための訓練です。
単に既存業務の知識を復習する研修ではなく、企業の事業展開や職務変更との関連性が求められます。
賃金助成は中小企業1人1時間1,000円・大企業500円
賃金助成は、中小企業で1人1時間あたり1,000円、大企業では500円です。
たとえば中小企業で5人が30時間の対象訓練を受けた場合、
30時間×1,000円×5人=15万円
が賃金助成の計算上の金額となります。
経費助成と合わせると、企業側の研修負担を大きく減らせることがあります。
ただし、対象となる訓練時間や受講方法などには条件があります。
研修費だけで受給額を試算せず、受講人数と対象時間も含めて計算しましょう。
1事業所1年度あたりの助成限度額は最大1億円
事業展開等リスキリング支援コースでは、1事業所1年度あたりの助成限度額は最大1億円です。
ただし、「リスキリング研修を行えば1億円もらえる」という意味ではありません。
実際の助成額は、
- 対象となる研修費
- 助成率
- 対象人数
- 訓練時間
- 1人あたりの上限
- 対象経費
などをもとに計算します。
多数の従業員を対象に大規模なリスキリングを実施する事業所でも利用できるよう、高い年間上限が設定されているという位置付けです。
小規模な研修を計画している企業は、年間上限よりも1人あたりの実際の対象経費と助成率を確認する方が実用的です。
教育訓練休暇等付与コースの助成額

教育訓練休暇等付与コースは、従業員が教育訓練を受講するための休暇制度を導入する企業を支援するコースです。
研修会社へ支払う受講料を直接補助する制度とは性質が異なり、制度導入や実際の休暇取得が助成条件となります。
有給教育訓練休暇制度の導入助成は30万円
有給教育訓練休暇制度を導入し、必要な要件を満たした場合は、30万円の制度導入助成を受けられます。
この制度は、
従業員にスキルアップしてほしいが、通常の有給休暇を使わせるだけでは学習機会を確保しにくい
といった企業が、教育訓練専用の休暇制度を設ける際に利用できます。
ただし、就業規則に制度を書き加えるだけでは助成対象になりません。
制度の整備だけでなく、対象従業員が実際に教育訓練休暇を取得することなどが必要です。
助成を受けるには制度導入と実際の休暇取得が必要
教育訓練休暇等付与コースでは、形式的に制度を作るだけでなく、実際に従業員が利用した実績が求められます。
そのため、
- 就業規則などへ制度を規定する
- 対象となる従業員を決める
- 教育訓練の内容を確認する
- 実際に休暇を取得させる
といった準備が必要です。
研修の受講料だけを助成してほしい場合は、人材育成支援コースなどの方が適していることがあります。
「何を助成してほしいのか」を整理したうえで、コースを選ぶと判断しやすくなります。
人材開発支援助成金はいくらもらえる?計算例

実際の助成額は、対象研修費に経費助成率を掛け、対象となる賃金助成を加えて計算するのが基本です。
企業規模やコースによって率・単価が変わるため、自社の条件で試算しましょう。
研修費20万円・20時間の人材育成訓練を行う場合
中小企業が正規雇用労働者1人に対して、対象経費20万円、20時間の人材育成訓練を行ったと仮定します。
経費助成は、
20万円×45%=9万円
です。
賃金助成は、
20時間×800円=1万6,000円
となります。
両方がすべて対象となる前提なら、
9万円+1万6,000円=10万6,000円
が計算例です。
実際には、対象経費の認定や助成限度額などによって支給額が変わります。
研修費30万円・30時間のリスキリングを行う場合
中小企業が対象となるリスキリング研修に30万円を支払い、従業員1人が30時間受講したとします。
経費助成は、
30万円×75%=22万5,000円
です。
賃金助成は、
30時間×1,000円=3万円
となります。
合計すると、
22万5,000円+3万円=25万5,000円
です。
同じ30万円の研修でも、人材育成支援コースの45%とリスキリング支援コースの75%では経費助成額が大きく異なります。
研修内容がどのコースに該当するかを先に判断する必要があります。
実際の支給額は対象経費と各コースの上限で決まる
計算式だけで算出した金額が、そのまま全額支給されるとは限りません。
人材開発支援助成金には、
- 1人あたりの経費助成限度額
- 1事業所1年度あたりの上限
- 対象訓練時間
- 対象となる研修経費
- 訓練形式ごとの助成対象
などが設定されています。
たとえば対象外の教材費や付随費用を研修費に含めて計算しても、その分は助成されません。
受給額を正確に見積もる際は、
見積総額ではなく、助成対象として認められる経費はいくらか
を基準に計算してください。
人材開発支援助成金の助成額を確認するときの注意点

人材開発支援助成金は、研修を受講した後に申請すれば必ず受け取れる制度ではありません。
特に訓練開始前の計画届や、訓練方法による助成対象の違い、年度ごとの制度改正に注意が必要です。
研修を始める前に職業訓練実施計画届を提出する
人材開発支援助成金を利用する場合は、原則として訓練を開始する前に必要な計画を届け出ます。
そのため、
すでに社員研修を始めたので、後から助成金を申請したい
という進め方では対象にならないことがあります。
利用する場合は、
- 研修内容を決める
- 利用するコースを確認する
- 訓練計画を作成する
- 必要な計画届を提出する
- 計画に沿って研修を行う
- 訓練終了後に支給申請する
という流れを意識してください。
研修会社との契約を進める前にも、助成対象となる訓練か確認しておくと安心です。
eラーニングなどは賃金助成の対象にならないことがある
eラーニングや通信制の訓練は、経費助成の対象となっても、受講方法によって賃金助成の対象にならないことがあります。
そのため、
オンライン研修だから経費助成も賃金助成も受けられる
とは限りません。
研修形式には、
- 対面
- 同時双方向型のオンライン
- eラーニング
- 通信制
- 定額制
などがあります。
同じ内容の研修でも実施方法によって助成対象が変わることがあるため、研修会社の案内だけで判断せず、利用予定コースの要件を確認してください。
助成率は雇用形態や企業規模で変わる
人材開発支援助成金は、同じ研修でも中小企業か大企業か、正規雇用か非正規雇用かによって助成額が変わります。
たとえば人材育成訓練の経費助成は、
- 中小企業の正規雇用:45%
- 大企業の正規雇用:30%
- 非正規雇用:70%
と差があります。
そのため、複数の雇用形態の従業員を同じ研修へ参加させる場合は、全員を同じ助成率で計算しないよう注意が必要です。
受講者ごとの雇用形態を確認し、適用される助成内容を整理しましょう。
制度改正があるため最新年度の助成額を確認する
人材開発支援助成金は制度改正が行われるため、過去の記事に掲載されている助成額をそのまま使わないようにしてください。
たとえば過去には賃金助成について「760円」「960円」といった金額が掲載されていた時期がありますが、2026年度は中小企業で800円や1,000円となる訓練があります。
また、コース名称や対象訓練、助成率そのものが変更されることもあります。
特に確認したいのは、
- 対象年度
- 利用するコース
- 経費助成率
- 賃金助成額
- 1人あたり上限
- 1事業所あたり上限
- 計画届の期限
です。
前年に利用した企業でも、次の研修を行う際は最新条件を確認してください。
人材開発支援助成金は研修内容に合うコースと助成額を確認しよう

人材開発支援助成金の助成額は一律ではなく、利用するコースや企業規模、雇用形態、訓練時間などによって決まります。
一般的な人材育成訓練では、中小企業の経費助成45%、賃金助成1人1時間800円となるものがあります。高度デジタル人材育成や事業展開に伴うリスキリングでは、経費助成75%、賃金助成1人1時間1,000円となる訓練もあります。
受給額を確認するときは、まず、
- どのような人材を育成したいか
- どんな研修を行うか
- 対象者は正規・非正規のどちらか
- 中小企業・大企業のどちらに該当するか
- 研修費と受講時間はいくらか
を整理しましょう。
また、助成金は研修終了後に思いついて申請するのではなく、原則として訓練開始前から必要な手続きを進めます。
助成率の高さだけでコースを選ばず、研修目的と制度の対象条件が一致しているかを確認したうえで、実際の受給見込み額を計算することが必要です。
