2025年09月14日 更新
UTM比較表あり|中小企業向けセキュリティ製品の選び方と失敗しない導入法
- オフィス向け
- 小売店向け
- 不動産向け
- 飲食店向け

- UTMとは?基本機能と導入の背景
- UTM(統合脅威管理)の定義と主な役割
- ファイアウォールやアンチウイルスとの違い
- 中小企業や自治体でUTM導入が進む理由
- UTMに搭載されている代表的な機能一覧
- ファイアウォール・VPN・IPS/IDS
- アンチウイルス・アンチスパム・Webフィルタリング
- アプリケーション制御や可視化機能も
- 法人向けUTMの比較ポイントと選び方
- 処理能力(スループット)と同時接続数
- ライセンス体系と保守サポートの有無
- 操作性・UI・管理画面の違いも重要
- 主要UTM製品の比較表(性能・価格・特徴)
- FortiGate/WatchGuard/Sophosなど主要製品の概要
- 中小企業向けおすすめモデルとその理由
- 自治体・医療・教育など業種別の導入例
- クラウド型UTMとオンプレ型の違いと導入基準
- 導入方法とコスト構造の比較
- クラウド型のメリット・デメリット
- 社内運用体制による選び分けのポイント
- UTM導入時に気をつけるべきセキュリティ運用の課題
- 過信は禁物?UTMだけで守れる限界
- 運用負荷や誤検知の影響と対応策
- 定期的なログ監視と設定更新の必要性
- UTM導入でよくある質問と選定時の注意点FAQ
- UTMの設置場所や初期設定に関する不安
- 複数拠点やテレワーク環境への対応は可能?
- UTM導入とISMSやPマーク対策との関連性
- まとめ|中小企業に最適なUTMの選び方とは?
- 要点の振り返り
- 導入時に意識すべきアクション
インターネットを活用したビジネスが当たり前になった今、企業にとって情報セキュリティ対策は欠かせません。
特に中小企業では、限られたITリソースでも多層的な脅威に対応できるセキュリティ対策が求められており、その中核を担うのがUTM(統合脅威管理)です。
UTMは、ファイアウォールやウイルス対策、Webフィルタリング、IPS(侵入防止)などの複数のセキュリティ機能を一台に集約した機器。
中小企業・自治体・医療機関などで急速に導入が進んでいます。
とはいえ、FortiGateやWatchGuard、Sophosなど製品の種類が多く、「どれを選べばいいのか分からない」と悩む担当者も少なくありません。
本記事では、ITreview、OFFICE110、ASPIC JAPANといった信頼性の高い情報源をもとに
法人向けUTM製品の価格・性能・機能を比較しながら、導入時のポイントや選び方の基準をわかりやすく解説します。
- 初めてUTMを導入する中小企業の情シス担当者
- 現在のセキュリティ機器に不安を抱えている企業の経営層
- 社内のセキュリティ体制を見直したいIT管理者
こうした方々に向けて、実際に導入すべき製品や構成の判断材料となる比較情報を提供します。
まずは、UTMの基本的な仕組みと導入の背景から見ていきましょう。
UTMとは?基本機能と導入の背景

サイバー攻撃が高度化・多様化する中、セキュリティ対策も一層複雑になっています。
複数のセキュリティ機能を個別に導入・管理するのは負担が大きく、特に中小企業ではコストとリソースの両面で課題を抱えるケースが少なくありません。
そうした背景から注目を集めているのが、UTM(Unified Threat Management:統合脅威管理)です。
UTMは、必要なセキュリティ機能をひとつにまとめた“オールインワン”型の機器であり、複雑な対策をシンプルに、かつ効果的に行える点が強みです。
このセクションでは、UTMの定義や基本的な役割、他のセキュリティ機器との違い、そして中小企業や自治体で導入が進んでいる理由を整理します。
UTM(統合脅威管理)の定義と主な役割
UTM(Unified Threat Management)は、日本語では「統合脅威管理」と訳され、複数のセキュリティ機能を1台の機器に統合したソリューションを指します。具体的には以下のような機能を備えています。
- ファイアウォール(外部からの不正侵入をブロック)
- アンチウイルス(ウイルス・マルウェア検出)
- IPS/IDS(侵入防止/侵入検知システム)
- Webフィルタリング(危険なサイトへのアクセス制限)
- アンチスパム(迷惑メール対策)
- VPN(拠点間通信の暗号化)
これらを一括管理できることにより、セキュリティ体制の強化と運用負荷の軽減を同時に実現できます。
ITに専任担当がいない中小企業にとっては、特に導入効果の高いソリューションといえるでしょう。
ファイアウォールやアンチウイルスとの違い
UTMは、単体機能のセキュリティ機器とは根本的な考え方が異なります。
ファイアウォールは不正アクセスの防御、アンチウイルスはマルウェアの検出・駆除というように、単一の目的に特化しているのに対し、UTMは多層的な防御を1つの機器で実現する点が特徴です。
従来のセキュリティ構成では、「ファイアウォール+アンチウイルス+IPS+Webフィルター」と複数の機器やソフトを連携させる必要があり、構成が煩雑になる上に、設定や運用管理の手間がかかっていました。
一方UTMは、そうした多機能を単一UIで一元管理できるため、トラブル対応や設定変更も容易です。
また、セキュリティイベントの相関分析ができる製品もあり、脅威の早期検知・可視化にも有効です。
中小企業や自治体でUTM導入が進む理由
近年、UTMの導入が加速しているのは、セキュリティの高度化に加えて組織側の事情にも変化があったためです。
特に以下のような背景が、UTMの需要を押し上げています。
- 専任のセキュリティ担当者がいない中小企業でも導入・管理がしやすい
- 新型コロナ以降のテレワーク・クラウド活用の普及で、境界防御だけでは不十分に
- 個人情報保護やISMS、自治体情報セキュリティポリシーの強化で対策の必要性が増加
- 中小企業庁や自治体支援による補助金・助成金の対象となることもある
特に自治体では、総務省が推進する「LGWANセグメント分離」や「三層構造」の整備が進み、一括導入しやすいUTMが標準的な選択肢となっています。
✅UTMは「導入しやすく、管理しやすく、効果が出やすい」ため、リソースが限られる組織でもセキュリティ強化が可能になります。
▼UTMは“複雑なセキュリティ課題をシンプルに解決する”有効手段
UTMは、1台で多層的な防御が可能な統合型セキュリティ製品であり、従来のファイアウォールやアンチウイルスとは異なる思想で構成されています。
特に中小企業や自治体のようにIT担当者が限られる現場においては、「低負荷かつ高機能」なUTMの価値は非常に高いといえます。
このあとは、具体的にUTMに搭載されている主要機能を比較・解説しながら、製品ごとの違いや選定ポイントを整理していきます。
導入検討中の方は、ぜひチェックしてみてください。
関連記事:【初心者向け】UTMとは?意味・仕組み・使い方をわかりやすく解説
UTMに搭載されている代表的な機能一覧

UTMは複数のセキュリティ機能をひとつに統合した製品です。
メーカーやモデルにより若干の違いはありますが、どのUTMにも共通して搭載されている「主要機能」がいくつか存在します。
ここでは、法人向けUTM製品に一般的に備わっている代表的なセキュリティ機能を紹介し、それぞれの役割や目的を解説します。
「なぜ必要なのか」「どんなリスクを防げるのか」という視点で把握することで、製品選定時にも迷いが少なくなります。
ファイアウォール・VPN・IPS/IDS
- ファイアウォール(Firewall)
 ネットワークの出入口で通信を制御するセキュリティの基盤です。
 許可された通信だけを通し、不審な通信を遮断することで、外部からの侵入や内部からの情報漏洩を防ぎます。UTMの中核機能として、ポート単位・プロトコル単位での詳細な制御が可能です。
- VPN(Virtual Private Network)
 安全な遠隔通信を実現するための機能。
 特に拠点間接続やテレワーク利用時に不可欠で、インターネット上でも暗号化された安全な通信ができます。UTMにはIPSecやSSL-VPNなど複数の方式が搭載されており、ゼロトラスト型の運用にも対応可能なモデルもあります。
- IPS/IDS(侵入防止/侵入検知システム)
 内部に侵入しようとする不正なアクセスやマルウェアの動きをリアルタイムで検知・遮断する機能です。IDSは検知のみ、IPSは自動遮断まで行える仕組みで、UTMでは多くの場合IPS機能が標準搭載されています。サイバー攻撃の“兆候”を可視化できる点も重要です。
アンチウイルス・アンチスパム・Webフィルタリング
- アンチウイルス(Anti-Virus)
 ウイルスやマルウェアのファイルベース検出を担います。
 多くのUTMではクラウド型のウイルス定義データベースと連携しており、最新の脅威にも対応可能です。特にメールの添付ファイルやダウンロード時の検査機能が企業利用では重視されます。
- アンチスパム(Anti-Spam)迷惑メールやフィッシングメールのフィルタリング機能。
 メールセキュリティは企業の情報漏洩リスクと直結しているため、業種を問わず重要です。
 ホワイトリスト/ブラックリストの管理や、スコアリング型の迷惑メール判定機能を備えた製品も多くあります。
- Webフィルタリング
 従業員がアクセスするWebサイトをカテゴリ別に制限する機能で、不適切サイトへのアクセス防止や情報漏洩対策に役立ちます。ポリシー設定により、業務中の私的利用(SNS・動画視聴など)もコントロール可能で、生産性向上やコンプライアンス対策にも貢献します。
アプリケーション制御や可視化機能も
- アプリケーション制御(Application Control)
 Teams、Zoom、Dropboxなど特定アプリケーションの通信可否を細かく制御できる機能です。
 特にクラウドサービスの利用が広がる中、業務に不要なアプリケーションの遮断や、バージョン制限・暗号化制限なども可能な製品が増えています。
- 可視化・レポート機能
 ネットワークの使用状況や通信履歴をグラフィカルに表示し、誰が・いつ・どこにアクセスしているかを一目で確認できる機能です。これにより、内部からの情報漏洩リスクの早期発見や、ポリシー違反の特定が可能になります。ログの自動保存・レポート出力も可能です。
▼「1台で複数機能」こそUTM最大の強み
UTMは、ファイアウォールやアンチウイルスだけでは防ぎきれない複合的な脅威に対応するために設計された製品です。
VPNやIPS、Webフィルタ、アプリ制御などが1台にまとまっていることで、セキュリティ対策の抜け漏れを防ぎつつ、運用負担を最小限に抑えることができます。
製品を選ぶ際は、単に機能の有無だけでなく、自社の業務内容やネットワーク構成に応じて、必要な機能をしっかり見極めることが重要です。
法人向けUTMの比較ポイントと選び方

UTMはどれも「多機能でセキュリティ強化に役立つ」製品に見えますが、導入する企業のネットワーク規模・使用状況・運用体制によって、最適なモデルは大きく異なります。
とくに法人用途での導入では、スペック表や価格表だけでは見落としがちなポイントが多く存在します。
このセクションでは、UTM選定時に必ず比較すべき基本性能・運用性・サポート体制の観点から、押さえるべき項目を具体的に解説していきます。
「高性能=最適」とは限らないため、自社に合うモデル選びの参考にしてください。
処理能力(スループット)と同時接続数
UTM製品の性能を比較するうえで最も重要なのが「スループット」と「同時セッション数(接続数)」です。
スループットは、データ通信の処理速度のこと。
単位は「Mbps」や「Gbps」で表され、UTMを通過するデータ量にどれだけ耐えられるかを示します。
同時接続数は、UTMを通じて同時に何台の端末が通信できるかという指標。
小規模拠点でもリモートワークやスマートフォン利用がある場合は、意外とセッション数が増えるため注意が必要です。
例として、従業員20人程度の事務所でWeb・メール中心の運用なら、スループットは「100Mbps〜300Mbps程度」で十分。
ですが、動画会議やクラウド業務が多い場合は1Gbps以上の余裕を持ったモデルが望ましいとされます。
実際の通信量より「1.5倍〜2倍」の性能を目安に選ぶと、将来の業務拡大にも柔軟に対応できます。
ライセンス体系と保守サポートの有無
UTMはハードウェア本体の購入だけで完結しない点も、比較時の注意ポイントです。
多くの製品では、以下のような年間ライセンス契約が必要となります。
- セキュリティ機能の定義ファイル更新ライセンス
- クラウド管理ポータルの利用ライセンス
- ファームウェア更新や機能拡張の権利
- 24時間365日対応の保守サポート契約
メーカーや販売代理店によって提供内容は異なり、最初は安く見えても、年単位で見るとコスト差が大きくなるケースもあります。
また、「保守対応が平日昼間だけ」「機器交換が翌営業日対応のみ」など、対応スピードや範囲にも差があるため、事前確認は必須です。
特に中小企業では、専門知識がなくても安心して使えるサポート体制の有無が、運用のしやすさを大きく左右します。
操作性・UI・管理画面の違いも重要
導入時には見落とされがちですが、UTMの管理画面の使いやすさ(UI)も選定の重要ポイントです。
どれだけ高機能でも、「設定が難しい」「ログが見づらい」「警告の意味がわかりにくい」
といったUIの不親切さは、セキュリティ運用の質とスピードに直結します。
たとえば以下の点は、事前に製品デモなどで確認しておくと安心です。
- Webベースの管理画面が日本語に対応しているか
- アラート通知の内容が直感的に理解できるか
- 複数拠点や複数管理者での運用がしやすいか
- ログ分析やレポート作成の手間が少ないか
特に、IT担当が1名または兼務体制の企業では、UIの直感性は“運用可能かどうか”に直結します。
メーカーによっては、「使いやすさ」や「可視化機能の豊富さ」に特化した管理コンソールを提供している場合もあります。
▼「スペック+運用目線」でUTMを選ぶのが賢い選択
法人向けUTMを選ぶ際は、単にカタログスペックだけを見るのではなく、実際の運用体制や業務の特性に合ったバランスを考えることが重要です。
- 通信量や端末数に見合った性能があるか
- 保守体制やライセンス体系に無理がないか
- 管理者の負担が大きくなりすぎないUIか
この3点を軸に比較検討することで、長期的に安定したセキュリティ環境を実現できるUTM選びにつながります。
主要UTM製品の比較表(性能・価格・特徴)

UTM製品は数多くのベンダーから提供されていますが、企業規模・ネットワーク構成・運用体制によって選ぶべき製品は大きく異なります。
特に中小企業や自治体では、コストと管理負荷のバランスを考慮する必要があります。
このセクションでは、国内でも導入実績が多い主要UTM製品を取り上げ、価格帯・機能・得意とするユースケースの違いを比較します。
これにより、自社にとって最適なUTM製品を見極めるための視点が得られるでしょう。
FortiGate/WatchGuard/Sophosなど主要製品の概要
以下は、代表的な法人向けUTMの比較概要です(※価格は目安。詳細は代理店ごとに異なります)。
| 製品名 | 特徴 | 価格帯目安(税込) | 備考 | 
| FortiGate | 高性能・豊富な機能。中堅企業・自治体に人気 | 約10万〜80万円 | 日本市場でも高い導入実績 | 
| WatchGuard | 操作性が直感的で、UIが使いやすい | 約15万〜60万円 | 管理のしやすさに定評あり | 
| Sophos XG | クラウド連携が強く、エンドポイントと連携可 | 約12万〜50万円 | セキュリティ一元管理が可能 | 
| SonicWall | SMB向けに強み。価格が手頃で導入しやすい | 約8万〜30万円 | 低価格でVPN・IPSも標準搭載 | 
| UTM500(BBソフト) | 国内サポート重視で中小企業に人気 | 約10万〜25万円 | 月額プランあり | 
各製品とも、ファイアウォール・IPS・アンチウイルス・Webフィルターなどの主要機能は網羅しています。
違いは管理画面の操作性、処理能力、連携機能の柔軟さなどに現れます。
中小企業向けおすすめモデルとその理由
中小企業に最も適しているUTM製品の条件は、以下の3点です。
- 導入・設定が簡単で専門知識が不要
- コストパフォーマンスが高く、ライセンスが明確
- サポート体制が整っている(日本語対応含む)
この観点で選ばれることが多いのが以下のモデルです。
FortiGate 40F/60Fシリーズ
小規模オフィスに最適。処理能力と機能バランスが高く、長期利用に耐えられる構成。VPNやSD-WANとの連携にも強い。
WatchGuard Firebox T20/T40シリーズ
初期設定のガイドが丁寧で、UIが非常に分かりやすい。IT担当が兼務体制でも十分に運用可能。ランニングコストも抑えられる。
UTM500(BBソフトサービス)
月額レンタルモデルがあり、初期費用が抑えられる。小規模事業者や個人事業主でも導入しやすい。
専任IT担当者がいない企業では、使いやすさや日本語サポートの有無が決め手になるケースが多いです。
自治体・医療・教育など業種別の導入例
UTMは幅広い業種に対応していますが、それぞれに求められるセキュリティ要件が異なります。
- 自治体 – FortiGateが最多導入
 総務省が定める三層分離構成に適合しやすく、LGWAN環境にも対応。ベンダーの対応実績が多く、信頼性が高い。
- 医療機関 
 SophosまたはWatchGuardが選ばれやすい 電子カルテや個人情報保護の観点から、EPP/EDR連携が評価される。また、GUIのわかりやすさが現場運用に向いている。
- 教育機関
 SonicWallやUTM500が多数導入 コスト重視+基本セキュリティを満たせばよいという学校法人などでは、価格重視で手軽に導入できるモデルが好まれる。
業種ごとに、導入パターンや利用目的が明確に異なるため、「業界別の導入事例」が豊富なメーカーを選ぶのも有効です。
▼「どの製品が最適か」は自社の規模と用途次第
UTM製品の選定では、「どのメーカーが優れているか」ではなく、自社の業務・セキュリティ要件に合っているかが最も重要です。
- コスト・UI重視ならWatchGuardやBBソフト系
- 長期運用や高機能を求めるならFortiGateやSophos
- 教育・小規模現場ならSonicWallも選択肢に
業種や運用体制に合わせて、「必要十分」な機能と将来の拡張性を両立するモデルを選ぶのがベストです。
次は「クラウド型UTMとオンプレ型の違い」について解説し、導入方式の選び方を明確にしていきます。
導入後の運用イメージを掴むうえでも重要な視点となりますので、ぜひご覧ください。
クラウド型UTMとオンプレ型の違いと導入基準

UTM(統合脅威管理)は、従来は「オンプレミス型」として物理機器を社内に設置するのが主流でしたが、近年では「クラウド型UTM」の選択肢も広がってきました。
テレワーク・多拠点・BYODなどの新しい働き方が普及する中で、導入方法の選定はより重要な判断ポイントとなっています。
このセクションでは、クラウド型とオンプレ型の違いを「導入方法・コスト・運用体制」などの軸で比較しながら、どういう企業にどちらが適しているかを解説します。
導入方法とコスト構造の比較
| 比較項目 | クラウド型UTM | オンプレ型UTM | 
| 初期費用 | 低い(月額制/導入支援付きが多い) | 高め(機器購入+ライセンスが必要) | 
| ランニングコスト | 月額3,000円〜数万円/台 | 年額ライセンス+保守費用が発生 | 
| 導入期間 | 数日~1週間(リモート設定可能) | 数週間~1ヶ月(設置・設定に時間要) | 
| 導入対象 | モバイル・テレワーク・支店など柔軟 | 拠点内の有線ネットワークを前提とする | 
クラウド型は「利用開始の早さ」「初期費用の低さ」「リモート対応の柔軟さ」で有利ですが、長期的に見ればオンプレ型の方がトータルコストを抑えやすいケースもあります。
ポイント – ITインフラに精通していない企業では、保守込みのクラウド型が運用しやすく、導入ハードルも低いです。
クラウド型のメリット・デメリット
クラウド型UTMのメリット
- 初期導入が簡単・即日稼働も可能
- 端末ベースでの柔軟なポリシー制御が可能(PC/スマホ問わず)
- システム担当が不在でも運用可能な“マネージド型”サービスが多い
- 拠点追加・リモートワーク対応にも柔軟
クラウド型UTMのデメリット
- インターネット接続が前提のため、ネットワーク障害時は機能停止
- 大量トラフィックや高度な通信制御には不向き
- セキュリティレポートの取得項目に制限がある場合もある
- 物理層(LAN・WAN)との統合管理はできないことが多い
特に「IT担当者が兼任で不安」「全国に複数拠点がある」「BYODを推進している」といった企業では、クラウド型の手軽さとスケーラビリティは非常に相性が良いと言えます。
社内運用体制による選び分けのポイント
UTMの導入方法を選ぶ上で忘れてはならないのが、「自社のIT運用体制に合っているか」という視点です。
- IT専任者が在籍/ネットワーク知識がある
 → オンプレ型でも適切に管理・チューニングが可能
 → 通信トラフィックが重く、可視化・分離が必要な環境に有効
- IT担当が兼務・外部委託が中心
 → クラウド型で外部ベンダーのサポートに依存しやすい仕組みがベター
 → 管理ポータルやログレポートの自動化なども活用可能
また、複数拠点を持つ企業ではクラウド型をベースに、拠点ごとのオンプレUTMで補完する“ハイブリッド運用”も増えています。
自社での運用が不安な場合は、マネージドUTM(保守付き一体型サービス)を提供するベンダーを選ぶと導入後も安心です。
▼クラウドかオンプレかは「目的と体制」で選ぶ
UTM導入におけるクラウド型とオンプレ型の選択は、単なるコスト比較ではなく「業務形態」「インフラ環境」「運用能力」によって最適解が変わります。
- コストを抑えて早く導入したい→クラウド型
- 高性能・拡張性・細かい制御が必要→オンプレ型
- IT人員に余裕がない→クラウド型やマネージドサービス
- 拠点統合・一元管理を強化したい→オンプレ×クラウドのハイブリッド型
UTM導入後に実際に起こりやすい「セキュリティ運用上の落とし穴」について解説します。
関連記事:クラウド型・オンプレ型どっちが正解?おすすめUTMを用途別に比較紹介
UTM導入時に気をつけるべきセキュリティ運用の課題
UTMは多機能で便利なセキュリティ機器ですが、「導入しただけで安心」と思い込んでしまうのは大きな落とし穴です。
実際には、運用面の不備や誤った設定によって、UTM本来の効果が十分に発揮されていないケースも少なくありません。
このセクションでは、UTMの過信によって発生するリスクや、運用に伴う具体的な注意点を解説します。導入後のセキュリティを持続的に強化するためにも、避けて通れないポイントです。
過信は禁物?UTMだけで守れる限界
UTMはファイアウォール・IPS・アンチウイルスなど複数の防御機能を統合していますが、「万能なセキュリティ対策」ではありません。
UTMでカバーできるのは、主に以下のような“ゲートウェイ”における脅威です。
- 社外からの不正アクセスやマルウェア侵入
- 危険なWebサイトへのアクセス制御
- 簡易的なスパムやフィッシングの遮断
しかし、以下のようなリスクはUTMだけでは対応できません。
- 社内PCに侵入したマルウェアによる内部拡散
- 許可されたポートからの情報漏えい
- ソーシャルエンジニアリングや人的ミス
- サプライチェーンからの侵害
つまりUTMは“入り口対策”の一部にすぎず、エンドポイント対策や社内のセキュリティ教育とセットで初めて効果が最大化されるのです。
運用負荷や誤検知の影響と対応策
UTMは高性能である反面、運用には一定の知識と手間がかかります。
特に以下の点で注意が必要です。
- 誤検知による業務影響
 正当なメールがスパム扱いされる、業務上必要な通信が遮断されるケースも。
- 通知頻度が多すぎる
 ログや警告が多く、何が本当に重要なのか分からないまま放置されるリスク。
- 設定ミスによる穴あき
 初期設定のまま放置されていたり、例外設定が多すぎて機能しなくなっている場合も。
これらは、次のような対策で緩和できます。
- 初期導入時にベンダーによる設定支援を受ける
- 月1回以上のログ確認とフィルター精査を習慣化
- 重要アラートと軽微アラートを分類する運用ルールを明確にする
- ポリシーテンプレートの活用で設定ミスを最小限に
特に中小企業では、UTMの設定・監視をアウトソースする「マネージド型」の活用も視野に入れると良いでしょう。
定期的なログ監視と設定更新の必要性
UTMの真価を発揮させるためには「入れっぱなし」ではなく定期的なメンテナンスが欠かせません。
- ログ監視の目的 – 不審な通信の兆候や、社内の不適切なアクセス傾向を早期発見する
- 設定の更新が必要な理由 – 新たな脅威や業務環境の変化に対応するため
設定が古くなると、以下のようなリスクが発生します。
- 意図しない通信が許可されている
- 本来ブロックすべきマルウェアが通過する
- 脆弱性対応のパッチが適用されていない
UTMのログは「セキュリティの鏡」とも言えます。
毎日は難しくても、最低でも月1回のレビューと、四半期ごとのポリシー更新は習慣づけるべきです。
▼UTMは“使いこなしてこそ”真価を発揮する
UTMは多機能で高性能なセキュリティ機器ですが、導入しただけでセキュリティが完成するわけではありません。
- 過信せず、エンドポイント対策や教育と連携する
- ログ監視・アラート精査・設定更新を定期的に実施
- 専門知識に不安がある場合は運用支援サービスを活用
このように“運用してこそ守れる”という意識を持つことが、UTMの効果を最大化するための第一歩です。
UTM導入でよくある質問と選定時の注意点FAQ

UTMの導入を検討している企業では
「設置や初期設定の難しさ」「複数拠点対応」「ISMSなどの認証との関係性」
といった実務的な疑問が多く寄せられます。
セキュリティ機器としては万能に見えるUTMですが、導入前の認識がズレていると、期待した効果を得られない可能性もあります。
このセクションでは、中小企業・自治体・医療機関などで実際に多い質問と注意点をQ&A形式で整理し、導入判断に役立つ情報を提供します。
UTMの設置場所や初期設定に関する不安
UTMは社内ネットワークのインターネット接続口(ゲートウェイ)に配置するのが一般的です。
LANとWANの間に設置し、すべてのトラフィックを監視・制御します。設置にあたっては以下の点を確認しましょう。
- ルーターとの接続方式(PPPoE/DHCP/固定IPなど)
- LAN構成(VLAN、複数セグメントなど)の整理
- PoE給電・ファンレス設計など設置場所に合った仕様の選定
- 初期設定は難しい?
最近のUTMはウィザード形式で簡単に初期設定できる機種も増えています。
とはいえ、以下の設定は誤ると通信遮断や誤検知につながるため、導入時はベンダーやIT支援業者のサポートを活用するのがおすすめです。
- 管理者アカウント/パスワード設定
- Web/メールフィルターのポリシー
- アップデートとライセンス適用
- 管理画面アクセスの制限設定
複数拠点やテレワーク環境への対応は可能?
- 拠点が複数ある場合でも1台で対応できる?
基本的には各拠点ごとにUTMを1台ずつ設置するのが理想です。
ただし、以下のようなケースではクラウド型やVPN連携で対応することも可能です。
- 拠点に常駐スタッフがいない(無人)
- 通信量が少ない
- クラウドPBXや社内システムがクラウド化されている
このような状況下では、拠点ごとに物理UTMを設置せずともセキュアな通信環境を実現できることがあります。
- テレワーク社員にもUTMの保護は届く?
オンプレ型UTMは拠点内の通信しかカバーできませんが、クラウド型UTMやエンドポイント側にVPN・セキュリティソフトを導入することで遠隔でも保護可能になります。
テレワーク併用の場合は、「UTM+VPN+EDR」のような多層防御の構成をおすすめします。
UTM導入とISMSやPマーク対策との関連性
- ISMSやプライバシーマーク取得にUTM導入は有利?
UTMそのものが認証取得の必須条件ではありませんが、以下のような観点で導入が評価されることはあります。
- 技術的安全管理措置の強化(アクセス制限、通信制御)
- ログの保存と監査証跡の記録
- マルウェア侵入対策の一環としての位置付け
ISMSやPマークの審査では、「UTMを設置していること」よりも「セキュリティポリシーに基づいてUTMを適切に運用しているか」が重要視されます。
- ログや設定の管理は必要?
はい。設定記録や操作履歴、通信ログなどを定期的に保存・レビューしている体制が求められます。
監査では「いつ、誰が、何を設定・確認したか」を証明できる体制があるかが確認されることがあります。
▼疑問をクリアにして、最適なUTM選定を
UTMの導入にあたっては、価格や性能だけでなく、運用体制・自社のネットワーク環境・今後の働き方の変化まで考慮して選定することが重要です。
- 設置や設定はベンダー支援を活用すれば心配不要
- 複数拠点やテレワークにも柔軟に対応可能
- ISMSやPマーク取得にもつながる技術的対策として有効
これらの疑問や不安を一つずつ解消しながら導入を進めれば、企業全体のセキュリティ水準を確実に底上げできるはずです。
まとめ|中小企業に最適なUTMの選び方とは?

UTM(統合脅威管理)は、コストと運用のバランスを重視する中小企業にこそ相性が良いセキュリティ対策です。
本記事では、UTMの基本から主要製品の違い、導入形態(クラウド/オンプレ)、運用時の注意点、導入FAQまでを網羅的に解説しました。
ここで、重要なポイントを整理しておきましょう。
要点の振り返り
- UTMは複数のセキュリティ機能を1台に統合できる機器
 ┗ ファイアウォール、アンチウイルス、VPN、Webフィルターなどを一元管理
- 中小企業や自治体でも導入が進む背景
 ┗ 限られた人員・予算でもセキュリティ体制を強化できる利点がある
- 製品選びのポイント
 ┗ スループット・同時接続数・UIの使いやすさ・サポート体制が重要
- クラウド型 or オンプレ型の選択基準
 ┗ 自社のIT運用体制、拠点数、テレワークの有無で判断
- UTMだけに依存せず、エンドポイントや教育との連携が不可欠
 ┗ ログ監視・定期メンテナンス・多層防御で本来の効果を発揮
導入時に意識すべきアクション
- 複数製品を比較表などで可視化し、要件に合うモデルを選定
- 初期設定・運用の外部サポートを活用してリスクを最小化
- 「クラウドでも守れるか?」「ISMS取得に繋がるか?」といった長期的視点を持つ
UTMは導入そのものよりも、「いかに安全に、効率よく運用し続けられるか」が最重要です。
選定時はスペック表だけにとらわれず、業務スタイルや社内リソース、成長スピードに合うかどうかを見極めて、最適な1台を選びましょう。
セキュリティ対策を一歩進めることで、業務の信頼性も確実に向上します。
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