2026年08月14日 更新

電話・チャット・Web会議が増えすぎた会社へ|コミュニケーションツールを整理・統合する判断基準

電話、メールに加えて、ビジネスチャット、Web会議、ファイル共有、社用スマートフォンなど、企業が利用するコミュニケーション手段は増えています。

コクヨが2022年に実施した「コミュニケーションツールの利用変化」調査では、コロナ禍前と比べて利用が増えたツールとしてWeb会議を挙げた人が約75%に達し、チャット・メッセージ・SNSの利用も増加していました。

一方、電話やメールがなくなったわけではありませんので、問題は、ツールの数が増えたこと自体ではないということがわかります。

社内連絡がメール、チャット、電話に分散している、部署ごとに異なるWeb会議サービスを契約している、使われていないアカウントへ料金を払い続けているなど、役割を決めないままツールだけが積み重なっている状態が問題なのです。

新しい統合サービスを探す前に、現在の契約を棚卸しし、「継続・統合・縮小・廃止・要再設計」の5つに分類することから始めましょう。

1.「ツールが増えすぎた」は数ではなく役割の重複で判断する

コミュニケーションツールが5種類あるから多すぎる、3種類なら適正という基準はありません。

経営者が確認すべきなのは、ツール数ではなく、同じ目的を複数のサービスが担っていないかです。

1-1.役割が分かれていれば、複数ツールがあっても問題ない

例えば、顧客からの緊急連絡は電話、社内の短い確認はチャット、正式な社外連絡はメール、遠隔商談はWeb会議というように、用途が明確なら複数の手段を残す意味があります。

コクヨの調査でも、タイムリー性を重視するならチャット、記録を残すならメール、相手の考えを引き出すなら対面など、用途による使い分けの重要性が示されています。

一方、次のような状態なら整理が必要です。

状態判断
ツール数は多いが役割が明確無理に減らさない
同じ用途のサービスを複数契約統合候補
部署ごとに同用途で別サービスを利用統一を検討
契約しているが利用者が少ない縮小・廃止候補
ツールは一つだが使い方が部署ごとに違う運用再設計

つまり、「何個使っているか」ではなく、同じ仕事を複数の場所で行っていないかが増えすぎを判断する基準です。

2.最初に全コミュニケーションツールを棚卸しする

整理・統合を検討するとき、いきなり「Teamsにまとめよう」「チャットを一本化しよう」と決めると失敗しやすくなります。

まず、会社が何を契約し、誰が使い、いくら払っているのかを一枚にまとめます。

2-1.会社契約だけでなく部署単位の契約まで確認する

対象は電話、メール、チャット、Web会議だけではありません。

法人スマホ、ファイル共有、オンラインストレージ、バーチャルオフィスなど、情報伝達や共有に利用しているサービスまで確認します。

IPAが2026年3月に公開した「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン第4.0版」では、中小企業向けに資産管理台帳のサンプルも提供されています。

コミュニケーションツールについても「会社が管理すべきIT資産」と考え、契約状況を一覧化することが重要です。

棚卸しでは、次の項目を揃えます。

項目確認する内容
サービス名契約中のツール
主な用途電話、チャット、会議、共有など
契約ID数購入しているライセンス
実利用者数実際に使っている人数
年間費用月額・年額を年間へ換算
管理部署契約・アカウント管理者
更新時期自動更新日・解約期限
代替サービス同じ役割を持つツール

この一覧を作るだけでも、「営業部だけ別のWeb会議サービスを契約していた」「退職者分までライセンスを購入していた」といった無駄を見つけられます。

3.ツールではなく「コミュニケーションの目的」を整理する

棚卸しの次は、各ツールを比較するのではなく、会社で発生しているコミュニケーションの種類を整理します。

ツール名から考えると「どの製品を残すか」という議論になりがちですが、先に「何のために連絡するのか」を決めれば、必要なツールも見えやすくなります。

3-1.社内・社外、緊急・通常、同期・非同期で分ける

例えば、次のように第一手段を決めます。

場面第一手段補助手段
顧客からの緊急連絡電話社用スマホ
社内の日常的な確認チャット
社外への正式連絡メール電話
遠隔商談Web会議電話
ファイル共有指定ストレージメールは通知に使用

「第一手段」が複数ある業務は注意が必要です。

例えば、「社内の質問はメールでもSlackでもChatworkでもよい」という状態なら、社員はどこを確認すべきか判断できません。

情報が分散し、既読確認や検索にも余計な時間がかかります。

コクヨの2025年の記事「職場の『なんで伝わらない?』の正体─増え続ける“コミュニケーションコスト”とは」でも、明確なルールがないままメールやチャット、社内SNSなどを多用すると、重要な情報が埋もれる可能性が指摘されています。

ツール統合の目的は契約数を減らすことではなく、社員が「この連絡はどこでするか」で迷わない状態を作ることです。

4.月額料金ではなく「会社全体の年間コスト」で評価する

月額数千円のサービスでも、利用者数が増えれば年間費用は大きくなります。

しかし、利用料金だけを見て解約すると、別のサービスへ作業負担が移る場合があります。

利用料と管理工数を合わせて評価します。

4-1.未使用アカウントの費用を計算する

例えば、1ID月額1,500円のサービスを100人分契約しているものの、実利用者が80人だったとします。

未使用20IDの年間費用は、

20ID×1,500円×12か月=36万円です。

単純に20IDを減らせるなら、サービス自体を変更しなくても年間36万円を削減できます。

4-2.管理する時間もコストとして見る

サービスが増えれば、契約更新、請求確認、入社時のアカウント発行、退職時の削除、問い合わせ対応も増えます。

NECプラットフォームズの「Web会議やチャットは一元管理が重要? コミュニケーションツールの選び方」でも、複数ツールを個別に利用する場合、契約や利用者変更、支払いなどの管理がサービスごとに必要になる点が挙げられています。

年間コストは、

サービス利用料+端末費+管理工数+教育・問い合わせ対応工数

で比較します。

安いツールを複数契約する方が、一つの統合サービスより実質的なコストが高くなる場合もあります。

5.管理できていないツールは料金より先に整理する

コミュニケーションツールを放置するリスクは、利用料金だけではありません。

管理者が分からないサービスや、退職者のアカウントが残っているサービスは、情報セキュリティ上の管理対象として優先的に見直す必要があります。

5-1.「誰が管理しているか」を確認する

各サービスについて、管理責任者、利用者、保存されている情報、退職・異動時の削除方法を確認します。

IPAの「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン第4.0版」には「中小企業のためのクラウドサービス安全利用の手引き」も含まれており、クラウドサービスを利用する企業側にも適切な管理が求められます。

また、IPAの2026年公開事例「自前でのシステム運用の負担が大きく、セキュリティ対策に不安を感じる」でも、クラウドへ移行してもベンダー任せにせず、ID管理やセキュリティ設定など自社で担保すべき部分が残ることが示されています。

そのため、年間数万円しかかかっていないツールでも、管理者不明、利用者不明、保存データ不明なら優先的な確認対象です。

6.各ツールを5つに分類して判断する

棚卸しと役割整理が終わったら、「残す・解約する」の二択ではなく、5つに分類します。

これにより、必要なツールまで無理に廃止したり、逆に「一部の社員が使っているから」という理由だけで契約を維持したりすることを防げます。

判断主な条件
継続利用率が高く、役割が明確
統合同じ目的のツールが複数ある
縮小必要だが契約ID・プランが過剰
廃止利用率が低く、他サービスで代替可能
要再設計ツールは必要だが運用ルールに問題

例えば、Web会議Aを全社で利用している一方、営業部だけWeb会議Bを契約している場合、Bでしか使えない機能が営業上必要なのかを確認します。

差がなければ統合候補です。

一方、チャットの利用率が高くても、部署ごとにチャンネルの作り方や連絡ルールが異なり情報を探せないなら、解約するのではなく「要再設計」とします。

ツールの問題と運用の問題を分けることが、無駄な乗り換えを防ぐポイントです。

7.整理後は「どの場面で何を使うか」を会社のルールにする

ツールを整理しても、利用ルールを決めなければ再びサービスが増えていきます。

統合後は、社員が判断に迷いやすい場面だけでも会社共通のルールを決めます。

7-1.細かい禁止事項より「第一手段」を決める

例えば、

日常的な社内連絡はチャット。
緊急性が高い場合は電話。
社外への正式連絡はメール。
会議資料は指定ストレージへ保存し、チャットではURLを共有する。

という程度でも、コミュニケーションの分散を減らせます。

重要なのは「メール禁止」のようなルールを増やすことではありません。

社員がどの手段を最初に選べばよいか明確にすることです。

8.統合・廃止は「データ移行→試行→解約」の順で進める

不要と判断したサービスも、すぐ解約するのは危険です。

過去のチャット、会議録画、ファイル、顧客との連絡履歴など、後から必要になる情報が残っている場合があります。

8-1.廃止前に移行対象を確認する

まず、保存されているデータと保持期間を確認します。

次に、代替サービスで同じ業務を実行できるか一部の部署で試し、問題がなければ全社へ切り替えます。

例えば、

1週目:データ・利用者確認
2~4週目:代替サービスを並行利用
5週目:旧サービスへの新規投稿を停止
6週目:最終確認後に解約

という移行期間を設けます。

統合による年間削減額が大きくても、移行時に業務が止まれば本末転倒です。契約解除より業務移行を先に行うことが原則です。

9.半年ごとに「また増えていないか」を確認する

コミュニケーションツールは一度整理しても、新しいサービスの登場や部署独自の契約によって再び増えていきます。

整理を一度きりのコスト削減策にせず、新規導入のルールまで作る必要があります。

9-1.新規ツールは3か月後に継続判断する

新しいサービスを試すこと自体を禁止する必要はありません。

ただし、

「既存サービスで代替できない理由」

を確認してから導入し、トライアルまたは契約開始から3か月後に利用者数、利用頻度、代替可能性、費用を再評価します。

さらに半年ごとに契約一覧を更新し、未使用IDや重複サービスを確認します。

新規導入時と定期見直しの両方をルール化することで、「気付いたらまたツールが増えていた」という状態を防げます。

まとめ|減らすことではなく「何のために使うか」を決める

電話、メール、チャット、Web会議には、それぞれ異なる役割があります。

すべてを一つのサービスに統合することが正解とは限りません。

問題なのは、役割が重複したまま契約が増え、社員が連絡先を迷い、管理者が複数の契約やアカウントを維持し続ける状態です。

最初に新しい統合サービスを探す必要はありません。

経理・総務・情報システム担当者が持っている情報を集め、現在利用しているコミュニケーションサービスについて、

「サービス名」「用途」「契約ID数」「実利用者数」「年間費用」「管理部署」「代替できるサービス」

の7項目を一枚の表にしてください。

そのうえで、各サービスを継続・統合・縮小・廃止・要再設計の5つに分類します。

最初に確認すべきなのは、利用率が低いツールよりも、「同じ役割のサービスが複数存在しているもの」と「管理者や利用者を把握できていないもの」です。

ツールを減らすことを目的にせず、会社として必要なコミュニケーション手段と役割を決め、その結果として不要な契約をなくす。この順番で進めることが、コミュニケーションツールを整理・統合する基本です。

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