2025年09月14日 更新

「安いから」で選んで後悔?クラウドPBX導入の失敗パターンと対策法

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目次
  1. クラウドPBXでよくある失敗事例と課題
  2. 通話品質・音質の低下
  3. 電話番号が引き継げなかったケース
  4. トータルコストが割高になった
  5. 必要な機能が利用できなかった
  6. セキュリティ上の問題
  7. 既存PBXリースの残債がネックになった
  8. ベンダーサポートが不十分だった
  9. 従業員が操作を使いこなせなかった
  10. よくある失敗事例から“自社の落とし穴”を先に見つけよう
  11. 通信品質・ネットワークに起因する失敗
  12. インターネット回線の不安定さによる音声途切れ
  13. QoS未設定やネット構成不備による品質低下
  14. 複数ISPや有線接続の未整備
  15. セキュリティ・サポート関連の失敗パターン
  16. 暗号化・認証の不備による情報漏洩リスク
  17. サポート体制の不足・対応の遅さ
  18. プラン構成とコスト設計のミスによる失敗
  19. 自社に不適切なプランを選んだ例(過剰スペックや不足)
  20. 電話番号変更による業務/信用の損失
  21. 準備不足・ベンダー選定ミスによる導入失敗
  22. 自社要件とサービスのミスマッチ
  23. 計画や社内体制の整備不足による混乱
  24. ネット回線・電話機・PBXを別業者でバラバラに契約
  25. 原因特定の難しさによる障害長期化
  26. クラウドPBX導入を成功に導く“本質的な視点”とは
  27. システム選定の前に明確化すべき「自社の通信課題」
  28. 「使える」から「使いこなせる」へのギャップを埋める方法
  29. ベンダー任せにしないための“ITリテラシーの壁”対策
  30. まとめ|クラウドPBX導入の鍵は「安易な選定回避」と「準備・運用設計」
  31. 最後に|クラウドPBX導入は「システム選び」ではなく「経営判断」

クラウドPBXは「安くて便利」と評判ですが、その導入で後悔している企業も少なくありません

音質トラブル、予想外の費用増、セキュリティ面の不備、操作の複雑さ…。

「導入してみたら想定と違った」「これなら従来の電話の方がよかった」と感じるケースも多発しています。

本記事では、クラウドPBXの導入でありがちな失敗パターンを具体的に紹介しながら、その原因と対策を徹底解説します。

「失敗しないクラウドPBX選び」をするために、導入前に知っておくべき注意点やチェックポイントを押さえておきましょう。

クラウドPBXでよくある失敗事例と課題

クラウドPBXは柔軟で便利な通信手段として注目される一方で、導入後に「こんなはずじゃなかった」と感じる企業も少なくありません。

導入のハードルが低くなったからこそ、サービス内容の理解不足や事前確認の甘さが思わぬトラブルを招くことがあります。

ここでは、企業がクラウドPBX導入時によく直面する代表的な8つの失敗パターンと、その背景にある課題を整理して解説します。

通話品質・音質の低下

クラウドPBXはインターネット回線を使うため、回線品質によって音声が途切れたり、ノイズが入ったりするトラブルが起こることがあります。

とくにWi-Fiのみの運用や回線の混雑時間帯に音質が不安定になることが多く、業務に支障をきたす原因になりかねません。

安定した有線接続やQoS(通信優先制御)の導入が不可欠ですが、その重要性に気づかないまま導入してしまうのが典型的な失敗例です。

電話番号が引き継げなかったケース

クラウドPBXへの切り替え時、既存の固定電話番号(特に03や06などの市外局番)を引き継げないケースがあります。

これにより名刺・パンフレット・Webサイトなどの各種媒体を修正しなければならなくなるほか、顧客や取引先に混乱を招くリスクも。

「番号移行が可能」と明記されていても、サービス提供エリアや事業者間の調整に制限がある場合もあるため、事前の確認が不可欠です。

トータルコストが割高になった

「初期費用が安いから」とクラウドPBXを導入したものの、オプション機能・サポート費用・録音保存などの追加課金が積み重なり、結果的に割高になるケースもあります。

また、ID課金や端末数に応じた料金体系を誤って見積もってしまい、想定外のランニングコストを抱えることも少なくありません。

月額費用だけでなく、長期的な運用コストをトータルで試算する視点が重要です。

必要な機能が利用できなかった

導入してみたら、「通話録音ができない」「外線転送が不安定」「スマホとの連携が不便」など、自社業務に必要な機能が搭載されていなかったというケースもあります。

これは、自社の業務要件を明確にせず、機能表の表面的な比較だけで選んでしまったことが原因です。

クラウドPBXはサービスごとに対応機能が大きく異なるため、導入前に「自社にとって必要な機能」の洗い出しを行うことが欠かせません。

セキュリティ上の問題

インターネット経由で通話を行うクラウドPBXでは、通信の盗聴・なりすまし・不正アクセスなどのリスクが常に存在します。

暗号化(SRTPやTLS)やアクセス制限などのセキュリティ対策が不十分なサービスを選んでしまうと、顧客情報や通話内容の漏洩に発展する恐れもあります。

サービス提供者のセキュリティ対策や、運用ルールの整備状況を確認することが大前提です。

既存PBXリースの残債がネックになった

クラウドPBXを新たに導入したくても、現在使用中のPBX機器がリース契約中で途中解約ができない、あるいは高額な解約金が発生してしまうケースもあります。

このような状況では、クラウドPBXへの移行を断念せざるを得ない、または二重コストが発生してしまうことになります。

リース契約や保守契約の内容を事前に確認し、「いつから乗り換えられるのか」「コスト重複は何カ月あるか」を見極める必要があります。

ベンダーサポートが不十分だった

「導入まではスムーズだったが、運用中のトラブル時にベンダーからのサポートが受けられなかった」という声も多く聞かれます。

  • 問い合わせへの対応が遅い 
  • 原因特定に時間がかかる 
  • 管理画面や設定が難しく、自社で解決できない

このようなサポート不全が続くと、現場の混乱を招き、導入効果を大きく損なってしまいます。

導入前にサポート内容・対応時間・対応チャネルを明確に確認することがトラブル防止のカギです。

従業員が操作を使いこなせなかった

クラウドPBXの管理画面や通話アプリは、サービスごとにUIや操作性が異なり、一部の従業員にとっては使いにくく感じることもあります。

特に、電話応対が日常業務の中心となる総務部門や受付などの担当者にとって、操作ストレスは大きな負担になります。

社内での操作研修やマニュアルの整備、またはベンダーによる初期教育の有無も含めて検討すべき重要ポイントです。

よくある失敗事例から“自社の落とし穴”を先に見つけよう

クラウドPBX導入の失敗は、「サービスが悪かった」ではなく「自社に合っていなかった」ことが原因であるケースが非常に多いです。

代表的な失敗パターン

  • 音質が悪くて業務に支障が出た 
  • 電話番号を引き継げず信用を損なった 
  • コストが想定より高くなった 
  • 欲しい機能が使えなかった 
  • セキュリティが甘く情報リスクが残った 
  • 契約中のPBXリースが足かせになった 
  • ベンダー対応が遅くて困った 
  • 社内にうまく浸透しなかった

こうした事例は導入前に少し立ち止まり、事前確認・ヒアリング・シミュレーションを行えば十分に防げるものばかりです。

導入の成否は「選ぶ前の準備」で決まると言っても過言ではありません。

このあとのセクションでは、通信環境やセキュリティ、ベンダー選定で失敗しないための具体的な視点をさらに掘り下げていきます。

通信品質・ネットワークに起因する失敗

クラウドPBXはインターネット経由で音声通話を行う仕組みのため、通信環境の整備状況が通話品質に直結します。

高機能なクラウドPBXを導入しても、ネットワーク設計が不十分であれば「音が途切れる」「聞き取りづらい」などのトラブルが頻発します。

ここでは、通信品質・ネットワークまわりで起こりやすい代表的な失敗とその背景を詳しく解説します。

インターネット回線の不安定さによる音声途切れ

クラウドPBXに切り替えた企業で最も多いトラブルのひとつが、通話中の音声の途切れや遅延です。
これは、利用しているインターネット回線の帯域不足や混雑によって発生します。

たとえば、以下のようなケースが典型的です。

  • 社内のWi-Fiに多数の端末が同時接続している 
  • オンライン会議やクラウドストレージなどと帯域を取り合っている 
  • 利用回線がベストエフォート型(品質保証なし)である

音声通話は一瞬のラグでも相手の話が聞き取れなくなるため、通信の安定性が損なわれれば、通話業務そのものが成り立ちません。

そのため、ビジネス用途ではWi-Fiではなく有線接続を基本とし、安定した法人向けインターネット回線の利用が推奨されます。

QoS未設定やネット構成不備による品質低下

クラウドPBXの通話品質は、「ネットワークの設計・チューニング」に大きく依存します。

中でも、QoS(Quality of Service)という通信優先制御の設定がないと、音声データが他の通信に埋もれて遅延や劣化が生じる可能性があります。

特に問題になるのは以下のような状況です。

  • ファイル転送やクラウド同期と同時に通話が発生 
  • 音声用のVLAN(仮想ネットワーク)を分けていない 
  • ルーター・スイッチが音声品質に非対応(家庭用など)

つまり、クラウドPBXを導入する際はサービスそのものの比較だけでなく、ネットワーク構成の見直しや機器の最適化も必須なのです。

これを怠ると、「PBXは悪くないが、ネットワークがボトルネックで品質が出ない」という結果になります。

複数ISPや有線接続の未整備

クラウドPBXを安定運用するには、「インターネットが常に使える環境」を維持することが不可欠です。

しかし、以下のようなネットワークの冗長化対策がなされていない企業では、通信断による通話不能リスクが高まります。

  • ISP(プロバイダ)が1社のみで、障害時に復旧の目処が立たない 
  • 回線が1本しかなく、停電や断線に備えていない 
  • Wi-Fi運用しかなく、有線LAN環境が未整備

こうした環境では、通話業務が完全に止まるリスクが常に付きまといます。

万が一に備えて、バックアップ回線や無停電電源装置(UPS)、最低限の有線LAN環境を整えておくことが重要です。

◆クラウドPBXの性能は“ネットワーク設計力”にかかっている

クラウドPBXを導入しても、ネットワークまわりが整っていなければ通話品質は大きく損なわれます。

主な失敗要因

  • 回線混雑による音声の途切れや遅延 
  • QoS未設定による通話品質の不安定化 
  • 有線・冗長化対策の不足による通信断

クラウドPBXは、サービスのスペックだけでなく、「ネットワークをどう支えるか」まで含めて設計・導入するべきものです。

導入前には、社内インフラ担当や専門ベンダーと連携し、通話をビジネスで安心して使える環境を整備することが成功の鍵になります。

セキュリティ・サポート関連の失敗パターン

クラウドPBXはインターネット経由で通話を行う仕組みのため、セキュリティとサポート体制が万全でなければ、業務リスクが増大します。

特に、通信の暗号化・認証体制の不備や、障害時のベンダー対応の遅れによって、大きな被害を招くケースも少なくありません。

ここでは、実際によくあるセキュリティ・サポート面の失敗事例と、その背景にある課題について詳しく解説します。

暗号化・認証の不備による情報漏洩リスク

クラウドPBXの通話データは、インターネットを通じてやり取りされるため、通信内容の盗聴や不正アクセスのリスクが常につきまといます。

とくに以下のような状態で導入してしまうと、重大なセキュリティインシデントにつながる恐れがあります。

  • 通話が暗号化(SRTPやTLS)されていない 
  • 管理画面へのアクセスに多要素認証が設定されていない 
  • ID・パスワードの運用が属人化している or 共有されている

これにより、顧客との通話内容が漏洩したり、悪意ある第三者がなりすまして外部に発信する事態も発生しかねません。

導入前には、以下のような確認が重要です。

  • 通信プロトコルは暗号化対応か? 
  • アクセス制限(IP制限・多要素認証など)はあるか? 
  • 管理者操作のログ取得は可能か?

セキュリティ要件は「使える」かどうか以上に、「安心して使い続けられるか」という運用リスクの視点で見ることが重要です。

サポート体制の不足・対応の遅さ

クラウドPBXの利用中にトラブルが発生した際、ベンダーのサポートが迅速かつ的確であるかどうかは、業務継続性を左右する重要なポイントです。

しかし、次のような課題に直面したという声は少なくありません。

  • 問い合わせの返信に数日以上かかる 
  • 電話対応がない/チャットやメールのみで解決しづらい 
  • 専門的な質問に明確な回答が返ってこない 
  • サポートが外注化されており対応品質にばらつきがある

このようなサポート不備が原因で、通話不能状態が長時間続いたり、社内の不満が爆発するケースもあります。

導入前には、以下を必ず確認しましょう。

  • 問い合わせ窓口の種類と対応時間 
  • 有償サポートと無償サポートの違い 
  • 導入後の設定支援やトレーニングの有無 
  • FAQやマニュアルの整備状況

「導入して終わり」ではなく、“使い始めてからの支援体制”まで含めてサービスを比較する視点が必要です。

◆クラウドPBXは“守りの仕組み”を整えて初めて安心して使える

クラウドPBXは便利で拡張性の高いシステムですが、セキュリティとサポートが不十分であれば、利便性以上にリスクを抱えることになります。

主な失敗例

  • 暗号化されていない通信により、通話内容が盗聴されるリスク 
  • アクセス制御が甘く、不正利用の危険性がある 
  • トラブル発生時にベンダー対応が遅く、業務が止まる 
  • サポート範囲が狭く、導入後の設定に苦労する

導入前には、「何があったときに困るのか」「それに対応できる体制はあるか」という視点で確認することが、安心・安全なクラウドPBX運用への第一歩となります。

プラン構成とコスト設計のミスによる失敗

クラウドPBXは柔軟なプラン設計ができる一方で、選定を誤ると過剰なコスト負担や機能不足につながる危険性があります。

また、番号変更などの見落としが、社外との信頼関係や業務効率に大きな影響を及ぼすことも

ここでは、プラン選定やコスト設計にまつわる典型的な失敗事例と、その背景にある注意点をわかりやすく解説します。

自社に不適切なプランを選んだ例(過剰スペックや不足)

クラウドPBXは多機能でカスタマイズ性が高い反面、必要以上の機能を契約してしまったり、逆に最低限のプランを選んで業務に支障をきたすという失敗がよくあります。

過剰スペックの例

  • 録音・モニタリング・IVRなど、使わない機能がすべて有料オプションで契約されていた 
  • 従業員数に比べてID数を過剰に契約し、使われないIDに無駄な費用が発生

機能不足の例

  • 営業チームが外出先でスマホから使いたかったが、モバイル連携機能がない 
  • 複数拠点の内線連携が必要なのに、基本プランが単拠点仕様だった 
  • 通話録音が欲しかったのに、プラン対象外で別途導入費用が必要だった

このように、現場の運用ニーズと契約内容がズレてしまうことで、費用対効果の低い導入になってしまうケースが後を絶ちません。

事前に「誰が、どこで、何のために、どう使うのか」を整理し、導入目的に合った最適なプラン設計をすることが不可欠です。

電話番号変更による業務/信用の損失

クラウドPBXサービスによっては、既存の固定電話番号(特に03・06などの市外局番)を引き継げない場合があります。

この制限を事前に把握していなかったことで、番号が変わり、想定外の業務コストや信用損失につながるケースもあります。

典型的な問題例

  • 名刺・パンフレット・Webサイト・広告などの修正対応が大量発生 
  • 長年使っていた番号を変更したことで、既存顧客からの信頼感が低下 
  • FAXや配送システムなど、番号依存の業務ツールに支障が出た

番号移行の可否はサービスごとに異なり、地域・回線種類・契約形態などの条件によって制限されることもあります。

そのため、「今使っている番号がそのまま使えるのか?」という点を必ずベンダーに事前確認し、

番号変更が避けられない場合は、段階的な移行スケジュールやアナウンス体制の構築が重要です。

◆価格だけで判断せず、“自社にフィットするか”を見極めることが重要

クラウドPBXの導入で失敗しがちなのが、「安いから」「よく使われているから」という理由で選び、実際の業務にフィットしないプランを契約してしまうことです。

よくある失敗例

  • 高額なオプション機能を使わずに払い続けている 
  • 必要な機能がプラン外で、別途コストが発生している 
  • 番号変更により、顧客対応や信用に悪影響が出た

こうした失敗を避けるには、導入前に業務要件を整理し、ベンダーにしっかりと要望を伝えることが基本です。

また、料金表の「最低価格」だけを見るのではなく、長期的な運用コストと社内活用のしやすさをセットで判断する視点が、導入成功のカギを握ります。

準備不足・ベンダー選定ミスによる導入失敗

クラウドPBXの導入は、通信インフラの根幹に関わる重要な施策です。

しかし、導入時の準備不足や業者選定の失敗により、想定以上の混乱や運用トラブルが発生するケースも少なくありません。

ここでは、実際に起こり得る失敗例をもとに、導入前の注意点を整理します。

自社要件とサービスのミスマッチ

クラウドPBXを導入する際、「とりあえず評判が良いから」という理由でサービスを選んでしまうと、現場に合わずにトラブルの原因となります。

たとえば、コールセンター業務に最適化された機能を持つサービスを、営業部門中心の企業が導入した場合、使わない機能にコストを払ってしまう一方で、必要な柔軟性が得られないという事態が起こり得ます。

また、海外拠点との通話が多い企業が、国内通話中心の設計になっているPBXを選んでしまうと、国際通話料金がかさみ、かえって通信コストが上がることもあります。

サービスの選定は、「価格」や「知名度」ではなく、自社のユースケースとの適合性を最優先にするべきです。

計画や社内体制の整備不足による混乱

クラウドPBXの導入には、ネットワーク構成の再設計や端末設定、社員への利用方法の周知など、多くの事前準備が必要です。

導入時期だけを先に決め、社内の準備が整わないまま切り替えを進めてしまうと、業務に支障をきたすトラブルが連続して起こります。

たとえば、社内のIT担当者の負担が大きすぎて対応が遅れたり、現場社員が使い方を理解しておらず電話対応に支障をきたしたりといった事例が散見されます。

システムだけでなく、運用体制・人材リソースも含めて導入計画を立てることが極めて重要です。

ネット回線・電話機・PBXを別業者でバラバラに契約

クラウドPBXは「クラウド上の電話交換機能」だけで成り立つものではなく、安定したネット回線、対応機器(電話機・ヘッドセットなど)、業務に応じたソフトウェアが一体となって機能します。

しかし、ネット回線はA社、電話機はB社、PBXサービスはC社とバラバラに契約してしまうと、設定やサポートの一貫性が失われ、トラブル時の責任範囲も曖昧になります。

特に導入トラブル時には「どこに問い合わせればよいか分からない」状態に陥り、対応が遅れて業務に大きな影響を与える恐れがあります。

可能であれば、ワンストップで回線・PBX・機器を提供してくれるベンダーを選ぶか、主幹業者にすべて一元管理してもらう体制を整えるのが望ましいです。

原因特定の難しさによる障害長期化

複数の業者が関与する構成や、自社内のネットワーク構成が複雑な場合、障害発生時に「どこで問題が起きているのか」が分からないという状況になりがちです。

たとえば、通話が途切れるトラブルが発生した場合、PBX側の設定ミスなのか、ネットワーク帯域不足なのか、ルーターの不具合なのかを素早く切り分けることが困難になります。

結果として、各業者が「自社の問題ではない」と主張し合い、対応が遅れ、障害が長引くという事例は実際に数多く報告されています。

こうした事態を防ぐには、一括サポート可能な業者に依頼するか、監視体制と原因切り分けのフローをあらかじめ整備しておくことが必要です。

◆導入成功のカギは“準備”と“責任の一本化”

クラウドPBXの導入を成功させるには、サービスの機能だけでなく、導入体制やベンダー構成までトータルで設計することが欠かせません。

自社の業務に合ったサービスを見極め、社内準備と体制を万全に整えた上で、トラブル時の責任所在が明確な業者選びを行うことが、導入失敗を防ぐ最大のポイントです。

準備に時間をかけることで、後の混乱やコスト増を未然に防ぐことができます。

クラウドPBX導入を成功に導く“本質的な視点”とは

クラウドPBXを導入する際、多くの企業が注目するのは「料金」や「機能」ですが、これだけでは本質的な成功にはつながりません。

導入後に活用しきれなかったり、社内に混乱を招いたりといった失敗の原因は、導入前の視点や準備不足にあることが多いのです。

このセクションでは、導入を“失敗させない”ために必要な根本的な考え方や視点に焦点を当てます。

システム選定の前に明確化すべき「自社の通信課題」

システム選びの前にやるべきことは、「何が課題で、どこを改善したいのか」を社内で明確にすることです。

たとえば、「出先でもオフィス電話を使いたい」「営業所との連携をスムーズにしたい」「取引先との通話を録音しておきたい」など、企業によって求めるゴールは異なります。

課題があいまいなままシステムを導入してしまうと、いくら高機能なPBXであっても「使いこなせない」「無駄が多い」といった事態を招きがちです。

課題の棚卸しと優先順位の明確化を事前に行うことが、最適な選定への第一歩です。

「使える」から「使いこなせる」へのギャップを埋める方法

クラウドPBXは多機能な反面、社内で使いこなすための運用設計や教育が欠けると形骸化しやすいという側面があります。

音声メニュー(IVR)の設計、電話帳の整備、外線転送のルールなどを細かく設定し、実務に即した活用方法をチームで共有しておくことが不可欠です。

また、管理者や現場担当者への操作教育も見落とせないポイントです。

マニュアルの整備だけでなく、動画解説や導入初期のハンズオン支援なども、ベンダーに依頼して活用しましょう。

「とりあえず使える」ではなく、「業務の効率が上がる運用」にすることが成功への鍵です。

ベンダー任せにしないための“ITリテラシーの壁”対策

導入をベンダー任せにしてしまい、内容を深く理解しないまま進めると、トラブル時に社内で対応できないリスクが高まります

そこで重要になるのが、最低限のITリテラシーと、システム理解を促す“内部の橋渡し役”の存在です。

たとえば、社内に1人でもベンダーの説明を正しく理解し、現場に落とし込める人材がいれば、導入後のスムーズな活用が可能になります。

また、マニュアル整備・Q&Aの集約・トレーニング資料の内製化などによって、属人化を防ぐ体制を構築することも重要です。

◆成功の鍵は「導入前の内省」と「導入後の運用設計」にあり

クラウドPBX導入を本当の意味で成功させるには、「製品ありき」の視点ではなく、「自社にとって何が必要か」という課題ドリブンの視点が欠かせません。

さらに、使いこなすための仕組みづくりや、ITリテラシーへの対応も軽視できません。

導入前に立ち止まり、自社の課題と体制を見直すことで、クラウドPBXは真の戦力として企業成長を支えてくれる存在になるでしょう。

まとめ|クラウドPBX導入の鍵は「安易な選定回避」と「準備・運用設計」

クラウドPBXは、コスト削減や柔軟な働き方の実現を可能にする一方で、準備不足やサービス理解の浅さによって“思わぬ失敗”を招くリスクも抱えています。

この記事では、導入時に起こりやすい代表的な失敗例とその原因、そして成功へ導くための視点を段階的に解説しました。

◎よくある失敗は「選定」ではなく「準備不足」から始まる

  • 通話品質の劣化、機能の不一致、セキュリティ不安、コスト増、こうしたトラブルの多くは、自社要件の把握不足や事前検証の甘さに起因しています。 
  • 「クラウドPBXなら何でも同じ」という思い込みを捨て、目的に応じた選定とネットワーク環境・社内体制の整備が不可欠です。

◎導入後の“運用フェーズ”を見据えることが成否を分ける

  • ベンダー任せのまま進めると、トラブル時に社内で何も対応できず、業務停止につながるリスクがあります。 
  • 「使える」だけでなく「使いこなす」ための運用マニュアルや教育体制、ITリテラシーに配慮した社内支援環境の整備が重要です。

最後に|クラウドPBX導入は「システム選び」ではなく「経営判断」

クラウドPBXの導入は、単なる通信手段の刷新ではなく、業務効率・顧客対応・BCP・テレワーク体制などに直結する経営判断です。

失敗しないためには、ベンダー情報や価格比較だけでなく、「自社に必要な通話環境とは何か?」を深く掘り下げる視点が不可欠です。

短期的なコストだけで判断せず、中長期的な成長と安定運用を見据えた選定・導入・運用設計を行うことで、クラウドPBXは“後悔しない投資”へと変わります。

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