2025年09月14日 更新
なぜトラブルが多い?SES契約の落とし穴と正しい対策法【法人向け】
- オフィス向け

- SES契約の基礎知識
- SES(システムエンジニアリングサービス)とは何か
- SES契約の仕組みと特徴
- 契約時に関わる三者の関係(発注元・SES企業・エンジニア)
- 請負契約・派遣契約との違い
- SES契約で法人が得られるメリット
- 必要なときに必要な人材を確保できる柔軟性
- 採用コストや育成リスクの軽減
- 新技術への対応力・専門性の外部確保
- 短期間プロジェクトやリソース調整への即応性
- SES契約に潜むリスクと注意点
- 指揮命令系統の誤解と偽装請負リスク
- SES契約では成果物が保証されない点に注意
- 契約と実態の不一致がもたらす法的リスク
- SESエンジニアの定着・稼働品質のばらつき
- 契約時に企業が確認すべき重要項目
- 契約形態(準委任契約)の正しい理解
- 契約書に明記すべき項目(業務範囲・稼働時間・成果の定義など)
- SES契約と成果物の扱い(請負との違い)
- 契約期間・更新・解除条件の整理
- 契約書で揉めやすい条項はここ|「稼働・請求・責任範囲」を具体化してトラブルを防ぐ
- 稼働条件の明確化(稼働時間・精算幅・残業発生時の扱い)
- 請求・支払い条件(報告書の扱い/支払いサイト/途中解約時の精算)
- 責任範囲と損害対応(免責・損害賠償上限・セキュリティ事故時の取り決め)
- トラブルを防ぐための運用管理と体制整備
- 指示系統の明確化と現場教育の徹底
- 常駐先での受け入れ準備とオンボーディング
- パフォーマンスの可視化と定期的なレビュー体制
- SESエンジニアのモチベーション管理と評価制度の工夫
- 自社にとって最適な契約スタイルの見極め
- SESと派遣・請負との違いを業務内容から判断する
- 自社の開発スタイルやプロジェクト特性に合わせた契約の選択
- 短期か長期か?導入目的別に契約形態を分ける戦略
- ハイブリッド契約(SES+派遣など)の活用方法
- 信頼できるSES企業と契約するためのチェックポイント
- スキルだけでなく人物像や現場適応力も確認する
- 契約前の情報開示やヒアリングの質を見極める
- 契約書の透明性・リスク説明の丁寧さ
- 稼働後のフォロー体制とコミュニケーション力
- SES契約のトラブル回避に必要な知識とは
- SES契約における成果物の取り扱いと注意点
- 指揮命令系統の混乱によるリスクとその対処法
- 責任の所在が曖昧になるケースと契約時の対策
- SES契約と他契約(派遣・請負)の違いを正しく理解する
- SESと派遣契約・請負契約の違いと見分け方
- SESが偽装請負とみなされる要因とは
- 契約書で明確にすべきポイント一覧(成果・期限・責任)
- SES契約を安定運用するためのチェックポイント
- 契約前に確認すべき項目チェックリスト
- 作業指示と責任範囲の明確化のための工夫
- 定期的な契約見直しと期間満了時の対応策
- SES契約を正しく活用すれば、法人の人材戦略が進化する
近年、IT人材不足を背景に「SES契約(システムエンジニアリングサービス契約)」を活用する法人企業が増加しています。
必要なスキルを持ったエンジニアを柔軟に確保できるという点で、SESは魅力的な手段です。
しかしその一方で、契約の仕組みや実務運用への理解不足からトラブルが発生するケースも少なくありません。
「偽装請負にあたるのでは?」
「成果が見えにくく、評価もしにくい…」
「契約内容と実態が食い違っていた」
こうした声は決して珍しくなく、SES契約は“正しく理解して使うこと”が成功の前提条件となります。
この記事では、法人担当者が押さえるべきSES契約の仕組み・リスク・実務上のチェックポイントを網羅的に解説。
さらに、契約トラブルを回避し、自社に最適な契約戦略を立てるための実践的な視点も紹介します。
「SES契約を安心して導入し、活用するには何を知っておくべきか?」
この疑問に対するヒントを、この記事で明確にしていきましょう。
SES契約の基礎知識

SES契約(システムエンジニアリングサービス契約)は、IT業界で広く活用されている人材活用のための準委任契約の一種です。
プロジェクト単位でエンジニアを確保できる柔軟さから、ITリソースの確保に課題を抱える法人企業にとって、有効な選択肢となっています。
しかし、請負契約や派遣契約との違いを理解しないまま導入すると、思わぬ法的リスクや運用トラブルを招く可能性があります。
この章では、SES契約の基本的な定義・仕組み・登場人物の関係性・他契約との違いを、法人担当者の視点でわかりやすく解説していきます。
SES(システムエンジニアリングサービス)とは何か
SESとは、システム開発やインフラ構築に必要なエンジニアを、業務委託(準委任)契約によって提供するサービスを指します。
この契約形態では、成果物の納品義務はなく、エンジニアが業務時間内にスキルを発揮すること自体が“成果”とみなされます。
つまり、成果物ではなく「労務提供」そのものを目的とする契約である点が最大の特徴です。
SES契約の仕組みと特徴

SES契約のポイントは、以下のような構造にあります。
- 契約は企業(クライアント)とSES企業の間で交わされる「準委任契約」
- エンジニアはSES企業の社員として、クライアント先に常駐またはリモートで稼働
- 業務の指揮命令はSES企業側が行う(が、現場での実態とズレが生じやすい)
また、契約は時間単位での報酬支払いが基本であり、月額○○円/人といった形で設定されます。
労働者派遣に似た構図になるため、適切な運用が求められます。
契約時に関わる三者の関係(発注元・SES企業・エンジニア)

SES契約は、次の三者が関与します。
| 役割 | 関係内容 |
| 発注企業 | SES企業と契約を結び、業務を委託する |
| SES企業 | エンジニアを雇用し、業務を請け負う |
| エンジニア | SES企業に所属し、現場で業務を行う |
この三者構造では、SES企業がエンジニアに対する責任を持ち、契約上の指揮命令権もSES企業側にあるという点が法的に重要です。
発注元が直接的に指示を出すと、偽装請負や派遣法違反に該当する可能性があるため、注意が必要です。
請負契約・派遣契約との違い
SES契約と混同されやすいのが「請負契約」と「労働者派遣契約」です。
法人として導入を検討する場合、それぞれの違いを理解することがトラブル防止の第一歩になります。
| 比較項目 | SES契約 | 請負契約 | 派遣契約 |
| 契約形態 | 業務委託(準委任) | 業務委託(請負) | 労働者派遣 |
| 指揮命令権 | SES企業側にあり | 請負企業側にあり | 派遣先企業側にあり |
| 成果物の有無 | 原則なし | 成果物納品が前提 | 原則なし |
| 適用法令 | 民法 | 民法 | 労働者派遣法 |
このように、SES契約は「成果物を出す契約」ではなく、「稼働そのものを提供する契約」であることが明確に異なります。
▷SES契約の“仕組みの理解”がトラブル防止の第一歩
SES契約は、柔軟で機動力のある人材調達手段として非常に有効ですが、正しく仕組みを理解していないと重大な契約ミスや法令違反につながる恐れがあります。
特に、請負・派遣との違いや、指揮命令権の扱いについては、法人側のコンプライアンス意識が強く問われる部分です。
SES契約で法人が得られるメリット

SES契約は、「人手が足りないときにとりあえず人を入れる手段」と思われがちですが、それだけではありません。
人材戦略や開発体制の柔軟性を高め、企業のスピードと競争力を支える仕組みとして、さまざまな現場で活用されています。
この章では、SES契約を導入することで得られる法人側の具体的なメリットを、4つの切り口から解説します。
必要なときに必要な人材を確保できる柔軟性
開発プロジェクトは常に変動します。要件変更や急な人材不足に対応できる体制を求める企業にとって、SES契約は大きな武器です。
- 新規プロジェクトの立ち上げ時に即戦力を短期で投入できる
- 業務の繁閑に応じて契約期間や稼働時間を柔軟に調整可能
- 内部人材の負荷が限界に近い時にもピンポイントで補完
例として挙げると、繁忙期に限って月単位で2名のエンジニアをSES契約で投入し、社内リソースを守った企業も少なくありません。
採用コストや育成リスクの軽減

自社で人材を採用・育成するには、時間もコストもかかります。
特にIT人材の獲得競争が激化している現在、「すぐに人が欲しい」という課題にはSESが最適です。
- 求人広告・面接・研修などにかかるコストが不要
- 育成途中での退職リスクを回避できる
- 必要なスキルを持った即戦力人材を事前選定の上で導入可能
育成が難しいニッチスキル(例:AWSアーキテクト、レガシー言語など)を短期間で必要とする際も、SESなら確保が現実的です。
新技術への対応力・専門性の外部確保

技術トレンドの変化が激しいIT分野では、社内だけで全ての技術領域に対応することは困難です。
SES契約を活用すれば、クラウド・AI・IoTなどの先端分野にも即座に対応可能になります。
たとえば:
- PythonやTensorFlowを使ったAI開発を外部の専門人材に任せる
- SalesforceやSAPなど、特定の業務システムに精通した人材を短期導入
- セキュリティ監査対応やゼロトラスト設計など一過性の専門業務にも対応
これにより、スキルの属人化を防ぎながら高品質な成果を期待できます。
短期間プロジェクトやリソース調整への即応性
新規事業や短納期プロジェクトでは、「社内人員を一時的に割く余裕がない」ケースが頻発します。
SES契約は、こうした場面で即座にリソースを確保し、短期間で体制を整えるための最適な手段です。
- 2〜3ヶ月単位のPoCやβ開発に外部人材を投入
- 社内では対応しきれない急な追加開発にも柔軟対応
- PMやブリッジSEなどのポジション限定採用にも適応しやすい
特にスタートアップや新規部署立ち上げのように、スピードが命となる場面でSESの即効性は強みになります。
▷人材戦略を支える“柔軟な選択肢”としてのSES契約
SES契約は、単なる「外部委託」ではありません。
戦略的な人材活用手段として、自社の成長フェーズや技術課題に応じて活用できる柔軟性を持っています。
- 内製と外注の中間に位置する存在として柔軟な稼働が可能
- 採用・育成リスクの回避、先端技術へのスピード対応
- 開発現場の即戦力として短期プロジェクトにも有効
このように、SES契約は人材リスクと事業スピードのギャップを埋める存在として、多くの企業で重宝されています。
SES契約に潜むリスクと注意点

SES契約は柔軟な人材調達手段として多くの企業に導入されていますが、誤った運用や認識のまま進めると法的リスクや現場トラブルを招く可能性があります。
特に「誰が指揮命令を出すのか」「成果の基準は何か」といった点で誤解が生じやすく、企業側がトラブルの火種を見逃してしまうケースが少なくありません。
この章では、SES契約において法人が注意すべき代表的なリスクを4つの視点から解説します。
指揮命令系統の誤解と偽装請負リスク
SES契約は準委任契約であり、エンジニアへの業務指示は原則としてSES企業側が行う必要があります。
しかし、実務上は発注元企業が直接「この機能をこの日に仕上げて」などと指示してしまうケースが多く、それが**“偽装請負”と見なされるリスク**を生み出します。
具体的なリスク
- 労働者派遣法や職業安定法の違反に該当する可能性
- 労働基準監督署から是正勧告を受ける
- 社会的信用やコンプライアンス体制の信頼低下
たとえば、SESエンジニアに日々のタスク指示をSlackなどで発注元が直接出していた場合、形式上はSESでも、実態が派遣契約と見なされてしまうリスクがあります。
SES契約では成果物が保証されない点に注意

SES契約はあくまで“業務遂行の時間”に対して報酬が支払われる形態です。
請負契約とは異なり、成果物の完成は保証されません。
そのため、以下のような状況が発生しても契約違反とはなりません。
- 仕様が曖昧でエンジニアのアウトプットにばらつきがある
- プロジェクトの遅延や品質問題が発生しても責任の所在が曖昧
- 成果物完成に対する責任が発注元にあることを認識していない
法人としては、「納品ベースの成果」を求めたい場合は、請負契約と使い分ける判断が重要です。
契約と実態の不一致がもたらす法的リスク

SES契約では、「契約内容」と「現場での運用実態」の乖離がトラブルを引き起こす大きな原因となります。
具体的には以下の内容には注意が必要です。
- 契約書では「準委任」とされているのに、実際は業務指示や勤務管理を発注元が行っている
- 成果報酬ではないのに「何日までにこれを完成させて」とスケジュールを押し付ける
- 稼働実績を超えた業務を求めるケースがある
こうした場合、「実態は派遣・請負に近い」と判断され、契約違反とされる恐れがあります。
契約時には内容を明文化し、実態と常に整合性が取れているか定期的に見直すことが必要です。
SESエンジニアの定着・稼働品質のばらつき
SES契約では、提供されるエンジニアのスキルや対応力にバラつきが出やすいという特性があります。
とくに長期的な稼働が前提となる場合、エンジニアが途中交代になるとプロジェクトに大きな影響が出るリスクがあります。
よくある課題
- 面談では好印象だったが、実務でのスキルが期待値に届かない
- コミュニケーションが現場に合わず、チームとの連携が取れない
- モチベーションが不安定で、突然の離任が起きる
このような事態を防ぐには、SES企業の人材選定力やフォロー体制、交代時のバックアップ体制の有無を契約前に確認することが不可欠です。
▷“SES契約=便利”ではなく“適切な運用が前提”と心得る
SES契約は企業にとって柔軟な人材戦略の一環ですが、リスクとセットであることを忘れてはいけません。
- 指揮命令の線引き
- 成果物への期待と契約のズレ
- 法的リスクの管理
- 稼働人材の定着性
これらに対する理解と対策が不十分なままでは、「便利な仕組み」のはずが、逆にコンプライアンスリスクや品質低下の原因となりかねません。
契約時に企業が確認すべき重要項目

SES契約は、準委任という特殊な契約形態であるがゆえに、契約書の内容や認識のズレが後々の大きなトラブルにつながることもあります。
たとえ法的には問題のない契約であっても、実務運用において不備や不明瞭な点があると、企業側にとって大きな損失となりかねません。
この章では、SES契約を締結する前に必ず確認しておくべきポイントを、法人の立場からわかりやすく解説します。
契約形態(準委任契約)の正しい理解
SES契約は「準委任契約」にあたります。
これは、成果物の完成ではなく、業務の遂行自体に対して対価を支払う契約です。
請負契約のように完成責任がなく、成果物の品質や納期に法的な強制力はありません。
この違いを理解していないと、「業務を完遂してもらえなかった」としてトラブルに発展するケースもあります。
法人担当者が注意すべき点は以下の通りです。
- 業務の遂行=成果として契約される
- 完成責任や損害賠償義務は基本的に発生しない
- 「納期」「納品」という言葉の使用には慎重さが必要
契約形態に対する正確な理解が、後々のトラブルを防ぐ第一歩です。
契約書に明記すべき項目(業務範囲・稼働時間・成果の定義など)

SES契約では、成果物がない分、業務範囲や稼働条件の明文化が極めて重要です。
契約書に具体的に記載されていない内容は、後の認識違いや支払いトラブルを招きやすくなります。
契約書に明記すべき主な項目
- 業務範囲と業務内容の具体的な記述
- 稼働時間帯、1日の標準作業時間、残業対応の有無
- 作業場所(常駐/リモート)、必要機材の準備負担者
- 成果の定義(例:タスク進捗・工数報告の形式)
- エンジニアの交代ルール、代替要員の対応
例として挙げると、「開発補助業務」など曖昧な表現ではなく、「Javaによる既存Webアプリケーションの保守運用・機能追加」といった明確な文言にすることが大切です。
SES契約と成果物の扱い(請負との違い)

SES契約では、成果物=納品物の完成や検収は原則求められません。
この点は請負契約との大きな違いであり、特に「責任範囲」を見誤ると誤解や契約違反につながります。
【比較イメージ】
| 項目 | SES契約(準委任) | 請負契約 |
| 主な目的 | 労務の提供 | 成果物の完成 |
| 成果物の有無 | 原則なし(工数報告など) | あり(納品+検収) |
| 完成責任 | なし | あり |
| 責任の所在 | 委任元と分担 | 請負側に集中 |
法人側としては、“納品物が欲しい案件”にSES契約を選ぶと齟齬が出やすいため、目的に応じた契約形態の選定が必要です。
契約期間・更新・解除条件の整理
SES契約は、プロジェクト単位や月単位での稼働が一般的なため、契約期間や更新条件、途中解除の取り決めが非常に重要です。
企業側が整理しておくべきポイント
- 契約期間と終了日の明確化
- 自動更新の有無と更新の通知期限
- 契約途中での解除条件(例:○日以上前の書面通知)
- 解除時の工数精算や途中解約手数料の扱い
- エンジニアの交代時に契約を引き継ぐか再締結か
これらを曖昧にしたまま稼働が始まると、急な人員入れ替え時に二重請求や責任不在が生じるリスクがあります。
▷“契約書の整備”がSES契約成功の前提条件
SES契約は柔軟でスピーディに導入できる一方で、契約書に曖昧な表現や抜けがあるとトラブルの温床になります。
法人としては、単に価格やスキルだけで判断せず、契約内容の粒度・透明性・合意形成プロセスに目を向けることが不可欠です。
契約前に以下を必ず確認しておきましょう:
- 契約形態と指揮命令権の理解
- 業務内容・稼働条件・成果基準の明文化
- 契約期間と解除条件の整備
- 成果物が必要な場合は請負契約への切り替えを検討
正しい契約内容の整備こそが、SES導入を成功させる鍵となります。
契約書で揉めやすい条項はここ|「稼働・請求・責任範囲」を具体化してトラブルを防ぐ

SES契約のトラブル原因は、だいたい「稼働」「請求」「責任範囲」のどれかが曖昧なことに集約されます。
ここを数値化・条件化しておくと、現場色が強い案件(小売・コールセンター・運用保守など)でも揉めにくくなります。
さらに近年はクラウドPBXや業務委託の周辺契約でも、同じ“条項の曖昧さ”が火種になりやすいので、SESでも先に潰しておくのが得策です。
稼働条件の明確化(稼働時間・精算幅・残業発生時の扱い)
まず固めたいのは「いつ・どれだけ働く前提か」です。
おすすめは、最低でも次の3点を契約書(または別紙の業務仕様書)で明文化すること。
- 稼働時間:例)平日9:00〜18:00、土日祝除外、休憩60分
- 精算ルール:例)精算幅(140〜180h等)/15分単位の端数処理(切り捨てor切り上げ)/超過・控除の計算方法
- 残業の扱い:例)事前承認制、月◯時間超で単価の割増・増額、緊急対応の定義
準委任(SESで一般的)でも「時間精算(精算幅)」はよく使われ、精算幅や超過控除の考え方を定義しておかないと、請求と稼働実態のズレが起きやすいです。
また、「待機時間」「手待ち時間」をどう扱うかが曖昧だと、後から“稼働だった/稼働じゃない”で揉めやすいので、稼働=成果ではなく時間・業務遂行の範囲として定義しておくと事故が減ります。
請求・支払い条件(報告書の扱い/支払いサイト/途中解約時の精算)
次に揉めるのが「請求の成立条件」です。
ここは“相手の不安”を消すつもりで、先回りして条件を書き切るのがコツ。
- 報告書の取り扱い:提出形式(週次/月次)、承認方法(電子承認OK)、未承認時の扱い(◯営業日でみなし承認など)
- 支払いサイト:例)月末締め翌月末払い(30日)/検収の概念をどう置くか(準委任なので“成果物検収”と混ぜない)
- 途中解約の精算:例)当月稼働分の日割り・時間割り精算、違約金の有無、引継ぎの稼働上限
特に「報告書未提出=支払拒否」みたいな揉め方はよくあるので、“何をもって請求OKか”を条件化しておくのが効きます。
逆にここが薄いと、契約より運用が強くなって、現場の認識ズレがそのまま火種になります。
責任範囲と損害対応(免責・損害賠償上限・セキュリティ事故時の取り決め)
最後に、いちばん痛い揉め方が「損害賠償・責任範囲」です。ポイントは、感情論を排して“起き得る事故”を前提に上限と分担を決めること。
- 免責事由:不可抗力(天災・大規模障害等)/顧客指示や顧客環境起因/第三者サービス起因など
- 損害賠償の上限:例)契約金額総額の◯%まで、故意・重過失は除外(または別扱い)
- セキュリティ事故時の取り決め:ログ提供義務、一次切り分けの担当、復旧費用の負担ルール、再委託・持ち出しの禁止/条件
「特別損害(予見できないレベルの損害)」まで無制限に負う前提にすると、受託側はリスクが読めず、結果として単価が上がるか契約が破綻しがちです。
損害の範囲は民法416条の考え方(通常損害+予見可能な特別損害)に沿って整理し、“どこまでが想定内か”を文章にしておくと実務が安定します。
なお、派遣契約(労働者派遣)では契約に記載すべき事項が法律上定められており、運用の曖昧さが問題になりやすい領域があります。
SESは別スキームですが、“派遣っぽい運用(指揮命令・就業管理の強さ)”に寄るほど揉めやすいので、なおさら条項で境界線を引いておくのが安全です。
▷「稼働・請求・責任範囲」を数値化・条件化するとSESトラブルは一気に減る
SES契約の揉めポイントは、稼働条件(精算幅・残業)、請求条件(報告・支払いサイト・解約精算)、責任範囲(免責・賠償上限・セキュリティ対応)の3点が曖昧なことに集中します。
最初にここを数値化・条件化しておけば、現場運用が強い案件でも「言った/言わない」を防げて、トラブルを大幅に減らせます。
トラブルを防ぐための運用管理と体制整備

SES契約において、トラブルの多くは契約締結後の「運用フェーズ」に潜んでいます。
いくら契約書を適切に作成しても、現場でのマネジメントが不十分であれば、エンジニアの稼働品質やチーム連携に支障が出るのは避けられません。
この章では、SES契約を円滑に機能させるために法人が取り組むべき運用管理の要点と体制整備のポイントを解説します。
指示系統の明確化と現場教育の徹底
SES契約では、発注側が直接エンジニアに指示を出すことは原則NG(偽装請負リスク)です。
そのため、現場における指示系統の明確化と、SES契約特有の制約を理解させる現場教育が必要不可欠です。
【具体的な取り組み例】
- 契約形態に基づいた指揮命令のルールを明文化
- 現場リーダー向けの「SES契約理解セミナー」を実施
- SES企業担当者と連携し、現場調整役を配置
誤った指示で契約違反になる前に、全関係者への認識共有が鍵となります。
常駐先での受け入れ準備とオンボーディング

エンジニアがSES契約で常駐する際、現場とのギャップを最小限にする「受け入れ体制の整備」が重要です。
初日の混乱や早期離脱を防ぐために、オンボーディングの仕組み化が求められます。
【整備すべき事項】
- 社内イントラやツールへのアクセス権限の事前付与
- 案件概要・役割分担・連絡ルートなどの初回説明資料の準備
- 常駐初週に「ウェルカムガイド」やメンター制度を設ける
受け入れ側の準備不足は、エンジニアの不信感やモチベーション低下に直結するため、抜け漏れなく対応しましょう。
パフォーマンスの可視化と定期的なレビュー体制

SES契約では、成果物がない代わりに“稼働の質”をいかに可視化するかが運用の成否を分けます。
また、継続的なパフォーマンスレビューの実施により、課題の早期発見と改善につながります。
【実務での取り組み】
- 月次の稼働報告に「作業内容・課題・次月計画」を含める
- チームリーダーとの面談を定期化し、ミスマッチの早期解消
- クライアント側もフィードバックを返す双方向の仕組みを構築
これにより、契約継続可否の判断材料にもなり、運用の透明性が高まります。
SESエンジニアのモチベーション管理と評価制度の工夫
SESエンジニアは、自社社員と異なり“社内文化”への帰属意識が薄くなりがちです。
そのため、やりがいや貢献度をきちんと認める評価と配慮あるコミュニケーションが必要です。
効果が期待できるコミュケーションの内容は以下です。
- 発注元から「ありがとう」のフィードバックをSES企業経由で伝える
- 定期的に目標や悩みをヒアリングする1on1の場を設定
- プロジェクト完了時に簡易表彰やコメント共有を行う
こうした姿勢が、離脱防止・パフォーマンス向上・企業イメージ向上に直結します。
▷「契約後こそ重要」なSES運用の現場力
SES契約における最大の落とし穴は、「契約が終わったら運用も終わり」と捉えてしまうことです。
実際には、日々の現場での調整・配慮・透明性ある管理こそが契約を“機能”させるカギになります。
法人としては、以下を実行すべきです
- 現場レベルでのルールと教育の徹底
- 初期オンボーディングの標準化
- 定期レビューと稼働可視化の仕組みづくり
- モチベーション維持の工夫と関係性の構築
トラブルを未然に防ぐのは、契約書ではなく現場の柔軟な対応力です。
自社にとって最適な契約スタイルの見極め

SES契約は柔軟な契約形態として広く利用されていますが、すべての業務に万能というわけではありません。
業務内容や開発体制によっては、派遣契約や請負契約の方が適しているケースも多く、誤った選択は生産性の低下や法的リスクの原因になりかねません。
この章では、自社にとって最適な契約スタイルを選ぶための判断基準を、実務的な観点から解説します。
SESと派遣・請負との違いを業務内容から判断する
契約スタイルは、業務の性質と期待する成果によって適切な選択肢が異なります。
以下に3つの契約形態の違いを簡潔に整理します。
| 契約形態 | 主な目的 | 指揮命令権 | 成果物責任 | 契約の特徴 |
| SES(準委任) | 労務提供 | SES企業にあり | なし | 時間単位で稼働を管理、柔軟性が高い |
| 請負 | 成果物納品 | 請負企業にあり | あり | 納品と検収が必須、責任が明確 |
| 派遣 | 労働力の提供 | 発注元にあり | なし | 労働者派遣法の適用対象 |
ポイントは、「成果物が必要かどうか」「誰が指揮命令を行うか」です。
たとえば、明確な仕様があるプログラムの開発委託であれば請負が適しており、日々の運用保守や変更対応が中心であればSESの方が向いています。
自社の開発スタイルやプロジェクト特性に合わせた契約の選択

契約形態は業務内容だけでなく、自社の開発手法やプロジェクト体制にも大きく関係します。
- アジャイル開発中心の現場では、進捗や仕様が流動的なため、SES契約による柔軟な人員投入がフィットしやすい
- ウォーターフォール型で明確な工程・成果物がある案件では、請負契約の方がトラブルを防ぎやすい
- 社内にPMやリードが不在で進行管理が困難な場合、派遣契約によって直接的な指示ができる体制が望ましい場合もある
このように、開発スタイルによって相性の良い契約形態は異なります。
現場レベルの運用も含めて、体制全体から判断しましょう。
短期か長期か?導入目的別に契約形態を分ける戦略

契約期間の長短によっても、選ぶべき契約形態は変わってきます。
- 短期・スポット対応が目的の場合、SES契約が柔軟でスピーディ
- 中長期で安定稼働を前提とする場合、業務委託契約のうちでも派遣や請負の検討余地あり
- 試験導入やPoC(概念実証)段階では、まずSESで試し、継続性が見えた段階で請負へ切り替えるといった戦略も有効
たとえば、「3ヶ月だけAWSインフラの構築支援をしてほしい」という場合にはSESが有効ですが、「1年かけて社内システムを開発する」といった案件なら請負契約が望ましいことが多いです。
ハイブリッド契約(SES+派遣など)の活用方法
実際の現場では、単一の契約形態で全てをまかなうことが難しいケースも多くあります。
そこで注目されるのが、複数契約のハイブリッド運用です。
- 一部の役割をSESでカバーし、指示が必要な領域は派遣契約で補う
- 要件定義は請負、実装はSESで進めることでスピードと品質を両立
- 同じベンダーに対して業務別に契約形態を分けることで法的整理もしやすくなる
このように、業務ごとに最適な契約を組み合わせることで、柔軟性・効率・法令順守のバランスが取れた体制構築が可能になります。
▷契約は「一択」ではなく「最適解」を選ぶ時代へ
SES契約は有効な選択肢ですが、それが常にベストとは限りません。
法人担当者が押さえておくべきポイント

- 「指示」と「成果物」どちらに重きを置くかで契約形態が変わる
- 開発プロセスの特性に合った形態を選ぶことで、トラブルや非効率を防げる
- 複数契約を適切に使い分けることが、柔軟かつ安全な体制づくりに直結
業務内容、プロジェクト規模、開発スタイル、期間などに応じて、派遣・請負との比較やハイブリッドの検討も重要な視点です。
信頼できるSES企業と契約するためのチェックポイント

SES契約における成功のカギは、「誰と契約するか」に大きく左右されます。
いくら契約書が整っていても、実際に稼働するエンジニアの質や企業の対応力が伴っていなければ、現場では成果が出にくいのが現実です。
この章では、法人が信頼性の高いSES企業を見極めるためにチェックすべき重要なポイントを、契約前・契約後の視点でご紹介します。
スキルだけでなく人物像や現場適応力も確認する
SES企業の選定でまず注目されるのはエンジニアの「スキル」ですが、技術力だけでは十分ではありません。
業務の生産性は、現場との相性やコミュニケーション力にも大きく依存します。
確認すべき視点
- 面談時に、スキルの深さだけでなく性格や対応力も把握する
- チーム構成や文化に合うかどうかも考慮
- 状況変化に柔軟に対応できる姿勢や意欲を見極める
たとえば、開発チームが若手中心であれば、コミュニケーション能力の高い協調型のエンジニアが向いているなど、人物像のフィット感は成果に直結します。
契約前の情報開示やヒアリングの質を見極める
信頼できるSES企業は、契約前から誠実で具体的な情報開示を行います。
ヒアリングの質を見れば、その企業がどれだけ業務理解と課題解決に真剣かが分かります。
見極めのポイント
- 候補エンジニアの経歴や過去案件の開示が十分か
- 案件の目的・背景まで踏み込んで質問してくるか
- 技術要件だけでなく現場の状況や課題にも関心を示すか
こうした丁寧な姿勢がある企業は、契約後も継続的な連携や提案を行ってくれるパートナーになりやすい傾向があります。
契約書の透明性・リスク説明の丁寧さ

契約書類の整備状況も、SES企業の信頼性を測る大切なポイントです。
特に、リスクに関する説明や条件交渉の柔軟性があるかどうかは要チェックです。
確認項目
- 契約形態、稼働条件、責任範囲が明文化されているか
- 契約解除や交代対応などトラブル時のルールが明確か
- 注意点や法的リスクを丁寧に説明してくれるか
単にテンプレートの契約書を提示するだけでなく、自社の状況に合わせた調整を行ってくれる企業は安心感があります。
稼働後のフォロー体制とコミュニケーション力
SES契約は「契約して終わり」ではありません。
エンジニアの稼働開始後にどれだけフォローしてくれるか、改善提案をしてくれるかが、その企業の価値を決めます。
チェックポイント
- 稼働開始後の定期フォロー面談や状況確認の頻度
- エンジニアのモチベーションや業務量のケアをしているか
- トラブル時の対応スピードと調整力
たとえば、クライアントとエンジニアの間で認識齟齬が起きた際、即座にミーティングを設定し、原因の明確化と解決提案をしてくれる企業であれば、長期的な信頼関係を築くことが可能です。
▷「契約する相手」を間違えないことが最大のリスク回避
SES契約は、制度や書面だけで守られるものではありません。
最終的にプロジェクトの成否を左右するのは、人と組織の信頼性です。
法人として、以下の観点から慎重に判断することが求められます。
- スキルだけでなく、人物面・現場適応力の確認
- ヒアリングの丁寧さと情報開示への誠実さ
- 契約内容の透明性とリスク説明の質
- 稼働後の継続的なフォローと提案力
信頼できるパートナーと出会えれば、SES契約は単なる外部委託にとどまらず、ビジネス推進の大きな力となるでしょう。
SES契約のトラブル回避に必要な知識とは

SES(システムエンジニアリングサービス)は、柔軟な技術者派遣が可能である一方、契約内容や現場運用次第で「偽装請負」と判断されるリスクをはらんでいます。
とくに成果物の取り扱い方や指揮命令系統の不明確さは、トラブルの温床となるため、契約段階から明確な対策が求められます。
SES契約における成果物の取り扱いと注意点
SES契約は基本的に「労働力の提供」が主目的であるため、成果物の納品責任はSES事業者側には発生しないのが原則です。
たとえば、エンジニアが対応した設定作業やトラブルシュートの結果を「報告書」として求めるケースもありますが、内容次第では請負契約とみなされる恐れがあります。
具体的な注意点
- 契約書には「成果物の責任を負わない旨」を明記
- 成果物提出ではなく「作業日報の提出」に留める
- 「設定完了報告書」など具体的成果物の要求は避ける
これにより、成果責任の所在が明確になり、偽装請負のリスクを回避できます。
指揮命令系統の混乱によるリスクとその対処法
SESエンジニアがクライアントから直接業務指示を受けることは偽装請負に該当します。
これはSES契約の最も多いトラブルの一つであり、現場で自然発生的に起こりやすいのが実情です。
指揮命令のリスクを避けるための対策
- エンジニアへの業務指示はSES元請け企業経由とする
- 業務指示書を元請けから発行し、記録を残す
- 現場混乱を避けるため「指揮命令系統図」を添付
- 重大違反時には「契約解除条項」を発動できるよう設定
これにより、指揮命令の一元化と契約上の責任分離が可能となります。
責任の所在が曖昧になるケースと契約時の対策
現場でトラブルが発生した際に、「誰が責任を負うべきか」が不明瞭だと対応が後手に回ります。
業務範囲や責任分界を契約段階で明記することが、スムーズな運用のカギとなります。
| トラブルケース | 想定される責任者 | 契約で講じるべき対策例 |
| VPN設定ミス | SES元請け | 「日次バックアップ必須」など業務範囲を明記 |
| 工事の遅延 | SES元請け | 月次稼働率95%未満時の減額条項を設定 |
| 情報漏洩 | クライアント | NDAの締結とアクセス制限の明記 |
| 偽装請負の認定 | クライアント・元請け | 「指揮命令不可」条項と第三者監査権の設定 |
実務では、「月次稼働報告義務」や「業務マニュアルへのフロー明記」などを契約書や別添資料として定め、技術的・組織的な責任分離を可視化することが標準化されています。
▷SES契約でトラブルを防ぐには“契約設計と運用ルールの明確化”が鍵
SES契約におけるトラブルは、成果物の誤解・指揮命令の曖昧さ・責任の不明確さという3つの構造的リスクに集約されます。
これらを防ぐには、契約段階でのリスク排除と、運用現場でのルール徹底が不可欠です。
契約時に成果物責任の範囲を明示し、指揮命令系統を一元化し、トラブル発生時の責任分界を明文化しておくこと。これらを徹底することで、90%以上のトラブルは予防可能です。
実務ベースでも、このような対応は各地で定着しつつあります。クライアント・SES企業ともに「形式だけでなく、実態でも適法である契約運用」を意識しておくことが、これからの標準となるでしょう。
SES契約と他契約(派遣・請負)の違いを正しく理解する

IT業務委託においては、SES(準委任)契約・派遣契約・請負契約の区別が極めて重要です。
特にクライアント企業がIT保守やネットワーク診断などを外部に委託する際、契約形態を誤ると「偽装請負」とみなされ、行政指導や契約解除リスクに直面する可能性もあります。
ここでは、それぞれの契約の違いや見分け方、SES契約で偽装請負とならないための具体的対策を解説します。
SESと派遣契約・請負契約の違いと見分け方
まず基本となるのは、指揮命令権・報酬対象・成果責任の違いです。
以下の比較表が最もわかりやすいでしょう。
| 契約形態 | 指揮命令権 | 報酬の対象 | 成果責任 |
| SES(準委任) | SES企業 | 労働時間(例:月160h) | なし |
| 派遣契約 | クライアント | 労働時間(例:日5件対応) | なし |
| 請負契約 | 請負企業 | 成果物(例:報告書納品) | あり |
SES契約では、クライアントが作業者に直接指示を出すことはNGで、業務指示はすべて委託元(SES企業)経由で行われます。
作業の対価は時間単位で支払われ、成果物の納品義務は発生しません。
一方で派遣契約は、クライアントが作業者に直接業務命令を出せる点が最大の特徴。請負契約では、時間管理よりも成果物の完成責任が重視されます。
現場では混同されがちですが、以下のように業務記述で明確に分けることが可能です。
- SES:診断業務160時間/月
- 派遣:診断作業1日5件を直接指示
- 請負:100世帯分の診断報告書を納品
これらの違いを意識せずに契約・運用を行うと、偽装請負のリスクが高まります。
SESが偽装請負とみなされる要因とは
SES契約でよくあるトラブルが偽装請負です。
主な発生要因は以下のようなものです。
- クライアントが直接作業指示を出す
- 現場での進捗・日報報告をクライアントが直接求める
- 残業や休日出勤の許可をSES企業を経由せず依頼
- 作業ミス発生時に即座にクライアントが修正指示を出す
たとえばVPN設定ミスがあった際、「このままじゃ困るから今すぐ直して」とクライアント担当者が作業者に言ってしまうのはNGです。
本来はSES元請け企業経由で業務指示書を再発行するなどの対応が必要になります。
また、厚労省はこうしたリスクを回避するために「SESモデル契約書」やガイドラインを公表しています。
クライアント側もその内容を把握しておくことが、安全な委託運用に直結します。
契約書で明確にすべきポイント一覧(成果・期限・責任)
偽装請負リスクを回避するには、契約書の文言で各責任範囲を厳格に定義することが不可欠です。
以下に、実務で使用される文言例を紹介します。
- 成果不存在の明記
「本契約は労働力の提供を目的とするものであり、成果物の納品責任は一切負いません」 - 指揮命令のルール
「業務指示はSES企業を経由して書面で行うものとし、クライアントによる直接指示は不可とする」 - 稼働時間の制限
「稼働時間は月160時間を上限とし、残業・休日勤務はSES企業の事前承認が必要」 - 責任分界の明記
「設定不具合についてはSES企業の対応とし、クライアント環境による障害は責任の対象外とする」 - 監査・違反時の条項
「契約内容に反する行為が確認された場合、即時契約解除および違約金500万円を請求することができる」
これらを踏まえて契約書を整備することで、後々のトラブルを防ぎやすくなります。
▷契約形態を理解すればトラブルは防げる
SES契約は労働時間ベースの準委任契約であり、指揮命令権はSES企業にあります。
これを逸脱し、クライアントが現場に直接指示を出すような運用は、偽装請負と見なされるリスクが極めて高くなります。
派遣や請負との違いを正しく理解し、契約書で指揮系統・報酬対象・成果責任を明文化することが、実務トラブルを未然に防ぐ最善策です。
厚労省のガイドラインやSESモデル契約書のチェックリストも積極的に活用し、委託業務を安全かつ柔軟に運用していきましょう。
SES契約を安定運用するためのチェックポイント

SES契約は、委託元企業とSES提供企業との間に明確な業務委託関係を構築する必要があります。
にもかかわらず、現場では「派遣との違いが曖昧」「指揮命令系統が不明確」「偽装請負リスクが高まる契約内容」などの問題が頻発しています。
こうした課題を未然に防ぐには、契約締結前のチェック体制や運用ルールの整備が欠かせません。
ここでは、SES契約を安定して運用するためのチェックリストや実務上の注意点を紹介します。
IT保守・光回線・インフラ系業務などでSES契約を採用している企業にとって、実効性のある運用改善策となるはずです。
契約前に確認すべき項目チェックリスト
契約を締結する前に確認すべき事項を整理することで、後のトラブルを防止できます。
特に「SESか派遣か請負か」の判断が分かれやすいケースでは、厚生労働省のガイドラインやモデル契約書に準拠することが重要です。
- 契約形態の明示:準委任であるSES契約である旨を契約書に記載し、成果責任は負わないことを明文化。
- 業務内容の記述:業務範囲を具体的に記載(例:光回線の診断、月160時間を上限とする作業時間)。
- 指揮命令権の所在:クライアントから直接の指示は禁止し、業務はすべてSES企業を通じて行うことを明記。
- 勤務時間と稼働範囲の制限:残業の可否や範囲、超過時の承認手順なども記載。
- 成果物不在の明記:「成果物の納品義務はない」ことを明文化。
これらは、モデル契約書の「チェックリスト」部分を活用して一つずつ確認し、書面上での抜け漏れを防ぐことが有効です。
作業指示と責任範囲の明確化のための工夫
SES契約では、業務の実施に関する責任はSES企業側にあるため、クライアントが日常的に直接業務指示を出してしまうと偽装請負と見なされる恐れがあります。
実務上でこのリスクを避けるためには、次のような対応が求められます。
- 業務指示書の発行:クライアントはSES企業宛に業務内容を書面で伝達し、SES企業が自社のエンジニアに展開する流れを徹底。
- 障害対応の責任切り分け:たとえば「VPN設定ミスはSES企業が対応するが、クライアントネットワーク側の障害は対象外」と契約に記載。
- 作業日報の運用管理:日報提出はクライアントではなくSES企業へ。日報内容もタスク進捗や作業時間などに限定。
- 監査リスク条項の設定:「偽装請負の疑いが生じた場合は契約解除とする」などの条項を盛り込む。
クライアントとエンジニアの接点を業務フローで整理することが、継続的な契約安定化の鍵となります。
定期的な契約見直しと期間満了時の対応策
SES契約は、業務内容の変更や法律の改正、運用体制の変化に応じて柔軟に見直しをかける必要があります。
特に長期プロジェクトにおいては、見直しのタイミングを見失いやすいため、あらかじめサイクルを定めておくことが重要です。
- 契約期間の区切り設定:3か月〜6か月単位での更新契約にして、契約内容のレビュー機会を確保。
- 稼働実績の振り返り:稼働時間、作業範囲、トラブル発生件数などのログを元に、契約内容と実態の乖離を分析。
- 契約更新判断フロー:継続か打ち切りかを判断する社内フローを文書化。更新条件も事前明記。
- 終了時のデータ回収ルール:エンジニアが扱ったファイル・設定情報などの管理方法を明確にしておく。
これにより、契約期間満了時の「終了後に何も残っていなかった」「誰が何を管理していたか不明」といった事態を避けることができます。
▷SES契約を安定して運用するための実務ポイント
SES契約を安定運用するためには、契約締結前のチェック、実務上の指示系統整理、契約更新サイクルの整備が欠かせません。
特に偽装請負リスクを防ぐ観点からは、クライアントとSES企業との役割分担を明確にし、現場運用が契約内容に準拠しているかを常にモニタリングすることが重要です。
厚労省が公開する「SESモデル契約書」やチェックリストを活用しながら、トラブルを未然に防ぎ、信頼性の高いパートナー関係を築くことが、長期的なIT運用の安定に繋がります。
SES契約を正しく活用すれば、法人の人材戦略が進化する

SES契約は、単なる「人手不足対策」にとどまらず、柔軟性・専門性・スピード感を兼ね備えた戦略的な人材調達手段です。
ただし、その活用には正しい知識とリスク管理、そして信頼できるパートナーの選定が不可欠です。
今回の記事で押さえておきたい重要ポイントは以下の通りです。
- 契約形態の違い(SES・派遣・請負)を理解し、業務に最適な選択をすること
- 契約書に業務範囲・稼働条件・成果定義などを明確に記載すること
- 契約後も、指示系統の明確化・パフォーマンスの可視化・定期的なフォローを怠らないこと
- スキルとともに人物像や現場適応力を重視し、信頼できるSES企業と連携すること
「契約して終わり」ではなく、「パートナーとしてともに成長する姿勢」が、法人にとって最大の成果を生み出します。
今後の人材戦略を加速させる一手として、SES契約を賢く活用していきましょう。
関連キーワード







