- 銀行で投資信託を買うべきか悩んでいる
- 銀行が投資信託をすすめる理由を知りたい
- 銀行投資信託の手数料やリスクについて知りたい
本記事は、銀行での投資信託購入を検討している人に向けて、判断に必要な情報を整理したものである。
銀行が投資信託を積極的に勧める背景には、銀行員の業務目標や手数料収入の確保という事情がある。
このビジネスモデルを理解することは、投資家自身が適切な判断を下すために不可欠だ。
以下より、銀行での投資信託購入のメリット・デメリットを解説し、さらに代替となる相談先についても紹介する。
これから投資信託の購入を考える人だけでなく、すでに銀行で投資信託を保有している人にとっても、今後の投資判断に役立つ情報となるはずだ。
銀行が投資信託をすすめる理由とは
銀行が投資信託を積極的に進める背景には、銀行経営を取り巻く環境と、投資信託販売による収益への依存がある。
経営上の課題と、銀行員個人の評価制度が複雑に絡み合い、投資信託の販売が推し進められる仕組みとなっている。
銀行経営の厳しい現状
銀行の主要な収益源である「利ざや(預金と貸出金の金利差)」は、低金利政策の影響により縮小傾向にある。
とくに地方銀行では、本業利益が赤字となるケースが増加し、経営の厳しさが顕著だ。
さらに、法人向け融資の低迷も、銀行経営に追い打ちをかけている。
こうした中、投資信託販売による手数料収入が、銀行経営を支える重要な柱として位置付けられるようになったのだ。
組織も個人も「評価」を上げる必要がある
いまや投資信託販売は、銀行組織と銀行員個人の双方にとって重要な評価基準だ。
販売による手数料収入は、銀行の収益向上に寄与するだけでなく、銀行員個人の業績評価にも大きな影響を及ぼすからだ。
購入手数料と信託報酬の一部は「収益」となる
投資信託には、以下の3種類の手数料がある。
- 購入時手数料
- 購入時にかかる費用。販売会社が独自に設定でき、直接販売会社の利益となる
- 信託報酬
- 保有期間中に発生する運用管理費用。販売会社、運用会社、受託者(信託銀行)の間で分配される
- 信託財産留保額
- 解約時に徴収される費用。ファンドの信託財産に留保され、販売会社や運用会社の収益にはならない
このうち、銀行の収益源となるのは「購入時手数料」と「信託報酬」の2つだ。
購入時手数料は、投資信託購入時に一度だけ発生する費用で、販売会社である銀行が独自に設定できる。
投資額の3%程度となることもあり、この場合は100万円の投資信託であれば3万円が銀行の収益となる。
近年はネット証券を中心に「ノーロード(購入時手数料ゼロ)」の商品も増えているが、銀行窓口では依然として高額な手数料を設定するケースが多い。
一方の信託報酬は、投資信託を保有している期間中、継続的に発生する運用管理費用である。
年率0.5〜2.0%程度で設定され、この一部が銀行の収益となる。顧客が投資信託を保有し続ける限り、銀行には安定した収益がもたらされることになる。
投信販売手数料は組織と個人の成績に寄与する
投資信託の販売実績は、銀行全体の収益に貢献するだけでなく、銀行員個人の人事評価にも大きな影響を与える。
一般的な評価制度では、月間や四半期ごとの販売目標(ノルマ)が設定され、その達成度合いが昇進や賞与に直接影響する仕組みとなっている。
銀行によって目標の設定方法は異なるものの、販売額や収益への貢献度などは重要な評価指標となる。
このため銀行員には、手数料の高い商品を積極的に販売せざるを得ない状況が生まれているのだ。
銀行に投資信託を相談するデメリット
こうした背景があるため、銀行による投資信託販売は、必ずしも顧客本位とは言えない商品提案が行われることもある。
手数料が高い商品をすすめられることがある
銀行窓口では、手数料の高い商品を優先的に紹介されることがある。これは前のセクションで説明したとおり、手数料収入が銀行や銀行員個人の評価に直結することが関係している。
銀行も、収益が確保できなければ経営が成り立たない。よって、手数料が高くても提供されるサービスに見合う価値があれば、大きな問題にはならないだろう。
しかし、以下のような場合は、顧客にとってデメリットとなる可能性が高い。
- 購入時手数料や信託報酬について、十分な説明がない
- 費用についての理解が不十分なまま契約すると、後に不満や損失につながる可能性がある。
- 顧客の投資目的やリスク許容度に合わない商品が提案される
- リスクの高いアクティブファンドや複雑な仕組みの商品を購入した場合は、大きな損失を被ったり、思うようなリターンが得られなかったりすることがある
投資信託の取扱本数が少ない
銀行での投資信託の取扱本数は、ネット証券などと比較すると圧倒的に少ない。
たとえば、2024年11月時点での投資信託取扱本数は以下の通りである。
- SBI証券
- 2,553本
- 三菱UFJ銀行
- 603本
- みずほ銀行
- 252本
- りそな銀行
- 229件
- 三井住友銀行
- 168本
- PayPay銀行
- 769件
取扱本数の多さは、必ずしも優位性を意味するわけではない。しかし本数が少なすぎることで、以下のような懸念も生じる。
- 手数料の高い商品が中心となる可能性
- 少ない選択肢の中から、グループ会社の商品や高い手数料の商品を優先的に提案されるリスクがある
- 顧客の選択肢が制限される
- 情報提供が十分でない場合、顧客はより適した商品や低コストの商品を見逃す可能性がある
取扱本数が少ない中、顧客本位でない提案がなされた場合は、デメリットとなることは間違いない。
商品への理解が十分でないことがある
銀行員は、必ずしも投資信託の専門家ではないため、顧客のリスク許容度や投資目的を十分に理解しないまま提案を行う場合がある。
これには以下の問題が含まれる。
- 高リスク商品を過剰に提案する
- 短期的な目標達成のため、顧客の意向を軽視した提案が行われることがある
- 説明が不十分
- 商品のリスクやデメリットについての説明が不十分で、顧客が理解しない段階で販売してしまう
長期的なフォローが期待しづらい
銀行員は転勤が多いため、同じ担当者が長期間フォローを続けることが難しい。このため、以下のような問題が生じる。
- 一貫性の欠如
- 担当者変更により、投資方針や運用状況の確認に継続性がなくなることがある
- フォローの不足
- 顧客の長期的な資産形成をサポートする体制が未整備のこともある
銀行に投資信託を相談するメリット
とはいえ、銀行による投資信託の販売は、それ自体が否定されるものではない。顧客にとってのメリットも多いからだ。
気軽に相談できる身近な窓口である
全国に支店網を持つ都市銀行や地方銀行は、個人投資家にとってもっとも身近な金融機関だ。
日常的に利用している場所で相談できる、心理的なハードルの低さは大きなメリットと言える。
- 投資信託を専門に扱う窓口やスタッフを配置する銀行もあるり、投資信託の仕組みや運用の基本について学べる
- 口座開設や商品購入手続きなど、対面でのサポートが充実している
- 平日であれば予約なしで相談できる銀行が多く、思い立ったタイミングで気楽に相談できる
総合的な資産相談ができる
銀行の取扱商品は、預金・ローンから投資信託、保険商品まで多岐にわたる。
投資商品を中心としたサービス提供をする証券会社とは異なり、資産形成に関わる幅広い金融サービスが受けられるのはメリットだ。
すでに取引のある銀行なら、以下のような提案も期待できる。
- 取引履歴をもとにした、個別のニーズに合ったアドバイス
- 相続や贈与を見据えた提案
- ライフプラン全体を視野に入れた運用提案
盤石な経営基盤がある
銀行は金融庁の厳格な監督下にある金融機関であり、堅固な経営基盤を持つ。これは顧客が長期的に資産運用を任せる上での、重要なポイントである。
- 定期的な検査や報告義務により、財務の健全性が確保されている
- 「適合性の原則」に基づき、顧客のリスク許容度や投資目的に応じた適切な商品提案を行う体制が整備されている
- 問い合わせに迅速に対応する仕組みが整っており、万が一の際にも安心感を持って利用できる
投資初心者向けのサポートが充実している
銀行には、投資初心者に配慮した丁寧なサポート体制が整っている。これも銀行を利用する大きなメリットだ。
- 投資信託に関する基礎知識をわかりやすく解説してくれる
- 専門スタッフが商品の仕組みや選び方について直接説明を行うため、不明点をその場で解消できる
- 口座開設や積立設定、商品購入などの手続きが対面で進められるため、初めての投資でも安心して取り組める
銀行以外で投資信託の相談ができる先を紹介
投資信託を選ぶ際に重視すべきは、「どこで買うか」よりも「どのように自分の資産形成プランに活かすか」という点だ。
投資信託を資産形成に活かすため、その選択は慎重に行う必要がある。
投資信託を資産形成に活かす
資産運用の手段として投資信託を選んだ場合、以下のような確認が必要になる。
- 商品内容の理解
- 商品の仕組みやリスクを正しく理解し、自身のリスク許容度に合っているかを見極める
- コストの比較
- 購入時手数料や信託報酬などの詳細を確認し、同種の他商品と比較する
- 運用実績の分析
- 過去の実績を確認し、リスクとリターンのバランスが自身の目標に合致しているかを判断する
これらの分析を全て自力で行うことは、とくに投資初心者にとっては負担が大きい。より適切な判断を行うために、専門家の力を借りることが有効だ。
銀行で購入する場合でも、IFAなど他の専門家からセカンドオピニオンを得ることで、より確実な選択が可能となる。
IFAの力を活用し賢く選択する
投資信託の購入をサポートする専門家には、銀行、証券会社、FP(ファイナンシャルプランナー)、そしてIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)がいる。
銀行の窓口担当者は、預金や住宅ローンをはじめとする総合的な金融サービスを提供することに長けている。
ただし、本業が預金や貸出であるため、投資商品に関する知識や経験に乏しいこともある。
証券会社の窓口担当者は、投資商品に関する専門性が高い点で安心できる。
しかし、販売が自社商品に偏りがちで、銀行同様にノルマがあるため、顧客本位の提案が期待しづらい場合もある。
FPは、資産形成全般について幅広い知識を持ち、ライフプランに基づくアドバイスを提供する点で頼りになる。
ただし、具体的な金融商品の売買には関与できないため、提案が実行に直結しないケースもある。
これに対しIFAは、顧客の利益を優先し、中立的な立場でサポートを行う資産運用の専門家だ。
証券外務員の資格を持つ金融商品仲介業者として、商品提案から販売仲介、さらには長期的なモニタリングまでを一貫して担当できる。
投資信託購入は銀行でもOK〜ただし「賢い選択」にはIFAの力が不可欠!
銀行は、投資信託購入を検討する際に、身近で利用しやすい選択肢の一つである。
しかし、必ずしも顧客にとって最良の提案が行われるとは限らないため、活用には注意が必要だ。
賢明な投資判断を下すためには、中立的な立場から顧客本位の提案を行うIFAの活用が欠かせない。
IFAなら商品選択から売買仲介、長期的なフォローまで一貫したサポートを提供する。
銀行窓口の利便性を活用しつつ、IFAの専門性を取り入れることで、より効果的な資産形成が実現できるだろう。
IFAとの出会いを資産形成の第一歩にしてはいかがだろうか。