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【今さら聞けない】資産運用とは?基本知識からおすすめの運用方法まで徹底解説!

この記事で解決できるお悩み
  • 資産運用にはどんな方法があるのか知りたい
  • 資産運用したいが、自分に合った運用方法がわからない
  • 資産運用で気をつけるべきポイントが知りたい

将来への不安から、資産運用への関心が高まっている。

しかし、「リスクが怖い」「何から始めれば良いかわからない」「資産運用って何歳かはじめればいいの」という不安から、一歩踏み出せない人も多いのが現実だ。

また、「資産運用はしないほうがいい」という意見を目にすることもあるが、その真偽も知りたいところだろう。

本記事では、資産運用の基礎知識から資産運用のおすすめのポートフォリオまで、投資初心者が気になる点を網羅して解説した。

資産運用はいくらからはじめられるのか?」といった具体例や数値を交えた実践的な内容となっているので、最後までお読みいただき、これからの資産運用に活かして欲しい。

目次

資産運用ってなぜ必要?

資産運用は、単に「お金を増やすための手段」ではなく、将来の安心や生活の安定に関わる重要なプロセスだ。

「預貯金だけで十分だから、資産運用など必要ない」という考え方は、実は大きなリスクを伴う。理由は以下のとおりである。

インフレによって資産は目減りする

「物価が上がると同じお金でも買えるものが減る」という現象をインフレーションという。預貯金だけに頼ると、物価上昇により実質的な資産価値が目減りする可能性がある。

たとえば、物価が年2%上昇すると、現在の100万円は10年後には81万円分の価値しか持たなくなる。資産運用を行うことで、インフレに対抗し、資産の価値を維持することが可能だ。

長い老後生活への備えが必要だから

寿命が伸びた現代では、退職後も20〜30年の生活が続くのが一般的だ。

年金だけでは生活費をすべて賄えない場合も多いため、早い段階から資産運用を始めることが、老後の安心につながる。

不確実な将来に備える必要があるから

ライフイベントや突発的な出費、予期せぬ事態への備えとしても資産運用は重要だ。

子どもの教育費や医療・介護費、さらには万が一の病気や失業など、予測できない事態に備えるため、十分な資金が確保されていることは心の支えとなる。

資産運用とは?種類や方法をわかりやすく解説

資産運用は、お金を賢く増やしていく取り組みだ。順を追って、詳しく確認していこう。

資産運用と投資は違うの?

資産運用は、手持ちの資産を活用し、将来のために資産を増やしていくこと全般を指す。

これには、利息を得るための定期預金や、将来のために資産を守る保険といった選択肢も含まれる。

一方、投資は資産運用の一つの手段であり、リスクを取ることで利益獲得を目指すことを言う。たとえば、株式投資や不動産投資、投資信託が代表例だ。

したがって、資産運用は投資よりも広い概念であり、さまざまな方法を内包する包括的な取り組みであると言える。

投資に対する誤解

中には、「投資は危ない」という誤ったイメージを持つ人もいるだろう。

これは、「投資」と「投機」がよく混同されることが原因である。

投機とは、短期間で利益を得ることを目的に、価格の急激な変動を狙って行う高リスク・高リターンの取引だ。

そのため、投機は大きなリターンを得ることもあるが、大きな損失を被るリスクも非常に高い。

このように「投資」と「投機」を誤って認識することにより、「投資=危険」というイメージを抱く人も少なくない。

正しい知識を持って「資産運用」「投資」を行うことで、安定的に資産を形成していくことができるだろう。

資産運用の「3つの基本」

ここでは、資産運用を始めるにあたって、まず確認しておきたい3つの基礎知識を紹介しよう。

1. 資産運用の収益には2つの形がある

資産運用で得られる収益には、主に以下の2つがある。

  • 値上がり益(キャピタルゲイン)
    • 資産価値の上昇による利益(例:株価の値上がり)
  • 定期的な収益(インカムゲイン)
    • 定期的に得られる収入(例:預金利息、株式配当)

2. リスクとリターンは関連している

以下は、金融市場において必然的に成り立つ、投資における基本的な法則だ。

  • リターン(期待収益率)が高い商品ほど、リスク(損失の可能性)も高くなる
  • 安全性が高い商品は、一般的に収益率が低くなる

3. 資産運用では「期間」の概念が重要

運用期間の違いにより、取れる戦略や選ぶべき商品が変わってくる。

  • 短期(1年未満)
    • 安全性重視
  • 中期(1〜5年未満)
    • 安定性と収益性のバランス
  • 長期(5年以上)
    • 収益性重視が可能

資産運用のさまざまな方法

続いて、資産運用のさまざまな方法を紹介しよう。以下は、リスクレベル別に主な運用方法および商品を表として整理したものだ。

スクロールできます
リスクレベル運用方法・商品特徴
低リスク預貯金(定期預金、普通預金)元本保証があり、安全性が高い。利率は低めだが、流動性が高く、いつでも引き出し可能。
債券投資(国債、地方債、大企業が発行する社債)元本保証はないが、リスクが低く、利回りも安定。
中リスク投資信託プロが運用し、分散投資によるリスク軽減が可能。
不動産投資信託(REIT)不動産収益に依存し、安定収入が期待できるが、不動産市場と金利の影響を受けやすい。
貯蓄型の保険(変額保険、外貨建て保険、個人年金保険など)死亡保障付きで長期的な資産形成に適しているが、解約リスクや為替リスク、運用実績に応じた変動リスクがある。
高リスク株式投資価格変動が大きく、リターンも高いがリスクも大きい。企業成長により大幅な利益が期待できる。
不動産投資安定収入が得られる可能性は高いが、初期投資が大きく、流動性に欠ける。
外国為替証拠金取引(FX)為替差益を狙えるが、通貨の変動リスクが大きく、短期間での値動きが激しい。レバレッジにより損益増幅のおそれがある。
その他(暗号資産、先物取引など)高いリターンを期待できるが、価格変動が非常に大きい。短期的なトレンドに左右されやすい。

資産運用のリスクとは

資産運用の全体像がつかめたところで、次は「リスク」について理解していこう。

一般的なリスクと「資産運用におけるリスク」

「リスク」は、一般的に「危険性」「危険度」という意味として使われる。

しかし資産運用の文脈では、主に「不確実性」を指す概念として使われる。

具体的には、リターンの変動が予測しにくい状況や、予測と結果に差が生じる可能性などを言う。損失か利益かに関わらず、変動の可能性が「リスク」と呼ばれるのだ。

資産運用におけるリスクには、以下の2つの側面がある。

①「リターンの不確実性」という側面

ひとつ目は、「リターンの変動幅」として表されるリスクである。これは「期待したリターンと、実際のリターンのずれ」として数値化できる。

リスクとは「不確実性の大きさ」を表すもので、マイナス方向だけでなく、プラス方向への変動も含む。

たとえば、以下のようなケースも「リスク」に含まれる。

  • 予想以上に価格が上がる
  • 想定より高い配当が得られる
  • 為替レートが有利な方向に動く

定期預金と株式投資を比較してみよう。定期預金のリターンはほぼ固定されているが、株式投資ではリターンの変動幅が大きい。

リスクの大きさで表現すると、以下のようになる。

  • 定期預金(年利0.01%)
    • ほぼ確実に0.01%の利回りが得られる→リスクは小さい
  • 株式投資
    • -20%から+30%まで変動する可能性がある→リスクは大きい

②「リターンが変動する要因」という側面

二つ目は、リターンの変動を引き起こす、さまざまな要因に関する不確実性だ。これらの要因自体が「リスク」として扱われる。

たとえば「投資先の国の政治状況」は、カントリーリスクと呼ばれるリスクだ。以下のように、リターン変動を引き起こす。

  • 政情が安定している
    • 政策の予測可能性が高く、突発的な変更が少ない→リスクは小さい
  • 政情が不安定である
    • 予期せぬ政策変更や規制強化の可能性が高い→リスクは大きい

資産運用におけるリスク

資産運用に伴うリスクは、大きく以下の7つに分類できる。

これらのリスクは互いに関連し合い、複数の要因が重なって資産価値に影響を及ぼすため、総合的に理解することが重要である。

①価格変動リスク

価格変動リスクは、資産運用において最も基本的なリスクで、投資対象の価格の変動によって生じる損失の可能性を指す。

価格変動リスクの主な指標には、以下がある。

  • 標準偏差
    • 価格変動の幅を示す数値で、過去のデータから算出される。標準偏差が大きいほど、価格の変動が大きく、リスクが高いとされる
  • ベータ値(β)
    • 特定の資産が市場全体に対してどの程度変動するかを示す。ベータ値が1より大きければ市場平均より変動が大きく、1未満であれば市場平均より変動が小さいことを表す
  • ボラティリティ
    • 標準偏差と同様に、価格の変動頻度や規模を表す。ボラティリティが高いと、価格の振れ幅が大きく、価格変動リスクも増大する

この価格変動リスクは、以降で解説する他のリスク要因から影響を受けることが多い。たとえば、債券価格は、市場金利の変動や発行体の信用リスクにより上下する。

②為替リスク

為替リスクとは、外貨建て資産を運用する際に、為替レートの変動が資産価値や運用成績に与える影響を指す。

為替リスクの大きさは、為替の変動幅や通貨ペアによって異なる。ボラティリティが高い通貨ではリスクが大きくなり、慎重な管理が必要となる。

  • 円安・円高の影響
    • ドル建て資産を持っている場合、円安になると円換算での価値は上昇するが、円高になると逆に価値が減少する
  • 為替変動によるリターンの減少
    • 外貨建て資産で利益が出ていても、円高が進行すると円換算でのリターンが減少し、期待した収益が得られないこともある

為替リスクの管理手法には、以下のようなものがある。

  • 為替ヘッジ付き商品を選ぶ
  • 分散投資によりリスクを管理する(複数の通貨建ての資産を持つことで、特定通貨の為替リスクを抑制する)

③金利変動リスク

金利変動リスクとは、市場金利の変動が資産価値や投資収益に与える影響のことを指す。とくに。債券やローンに関わる資産運用で重要なリスクとなる。

  • 債券の価格への影響
    • 金利が上昇すると、既発債券の価値が下がる。逆に金利が低下すると既発債券の価値が上がる。これは、金利と債券価格が逆の関係にあるためだ
  • ローン利息の変動
    • 変動金利のローンに依存する投資では、市場金利の上昇が借入コストを増加させ、収益性に影響を及ぼす

④信用リスク

信用リスク(クレジットリスク)とは、債券や借入に関わる資産において、発行体や借り手の信用状況が悪化し、元本や利息の支払いが滞るリスクを指す。

信用リスクが高まると、発行された債券などの価値が下がり、損失が発生する可能性も高まる。

信用リスクは、以下のような状況で発生しやすい。

  • 企業の経営破綻
    • 企業が経営破綻すると、その企業が発行する債券の利息や元本の返済が滞るおそれが高まる
  • 格付けの変更
    • 信用格付け機関(例:S&Pやムーディーズ)による企業の格付けが引き下げられると(信用力の低下が示されると)、その企業の債券価値が下落する可能性は高くなる

⑤流動性リスク

流動性リスクとは、資産を売却したいときに買い手がつかず、希望のタイミングで現金化が難しくなるリスクを指す。

とくに不動産や一部の社債、あるいは市場の規模が小さい資産において、このリスクが高まることがある。

流動性リスクが高いと、以下のような問題が生じやすい。

  • 売却価格が下がる
    • 流動性が低い資産を売却する際、希望する価格よりも低い価格でしか売却できないことがある
  • 緊急時に資金化できない
    • 市場が低迷している際には、流動性が低い資産の売却が難しくなり、急な資金需要に応じられなくなる場合がある

⑥カントリーリスク

カントリーリスクとは、投資先の国や地域における政治・経済情勢が資産価値に影響を与えるリスクのことを指す。

カントリーリスクには、以下のような要因が含まれる。

  • 政変や社会不安
    • 政治的な不安が増すと、株式や債券、不動産の価格が下落することもある
  • 経済政策の変化
    • 経済政策の変更により、影響が企業活動に及び、投資価値が変動することがある
  • 法規制の変更
    • 法規制や税制の変更などにより、投資資産が思い通りに管理できなくなることがある

⑦インフレリスク

物価の上昇によって、実質的なお金の価値が目減りするリスクである。預金や債券など、リターンが低い資産ほどインフレの影響を受けやすい。

インフレリスクの例には、以下のようなものがある。

  • 預金の価値低下
    • 定期預金など低利回りの資産がインフレに追いつかなくなり、実質的な購買力が下がる
  • 債券価格への影響
    • インフレ率が上がると市場金利も上昇し、既発債券の価格が下落することで、債券資産の価値が目減りする

インフレリスクに対応するためには、インフレ率に影響されにくい資産やリターンが見込める資産への投資が効果的だ。

  • 株式や不動産を保有する
    • インフレ時には企業収益や不動産収益も増加する傾向があるため、株式やREIT(不動産投資信託)などのインフレに強い資産をポートフォリオに組み込む
  • インフレ連動債に投資する
    • インフレに応じて利回りが調整される債券(例:インフレ連動国債)を活用することで、インフレリスクを軽減できる
  • 分散投資
    • インフレリスクの影響が異なる複数の資産に投資することで、ポートフォリオ全体の安定性を保つ

資産運用でリスクを取ることの重要性

資産運用では、適切にリスクを取ることが不可欠だ。目標とするリターンを得るためには、リスクを適切に受け入れる必要があるからである。

とはいえ、リスクを取る際には計画性が求められる。次のポイントを意識しながら、リスクとリターンのバランスを適切に管理しよう。

  • 自己のリスク許容度を知る
    • 資産状況や年齢、投資目的に応じて、自分が取れるリスクの程度を見極める
  • 長期的な視点を持つ
    • 短期的な価格変動に一喜一憂せず、長期的な目標に向かって投資を継続する
  • 分散投資を行う
    • リスクの種類や程度が異なる複数の資産に投資し、リスクの分散を図る

資産運用はNISAやiDeCoなど国の制度も充実!

続いて、個人投資家でも利用できる税制優遇制度を紹介しよう。

なぜ税制優遇制度を活用することが重要なのかを理解したうえで、新NISAとiDeCoという2つの制度について詳しく確認していく。

税制優遇制度とは「資産形成の効率を高められる制度」

個人投資家は、税制優遇制度を利用することで、投資収益に対する税負担を軽減または非課税にできる。これは長期の資産形成において大きなメリットとなる。

投資から得られる利益には税金がかかる

一般的に、投資による利益は「所得」として扱われ、所得税が課される。これに住民税や復興特別所得税が加わるため、実質的に負担する税率は20.315%となる。

つまり、投資で得た利益の約20%が、税金として差し引かれる仕組みなのだ。

たとえば、個人投資家Aさんが証券会社の特別口座(源泉徴収あり)で株式投資を行い、以下のような収益を得たとしよう。

  • 2024年の収益(譲渡益と譲渡損失の合計)
    • プラス20万円
  • この投資に関係する経費
    • 2万円

この場合、Aさんの2024年の収益は、収益20万円から経費2万円を差し引いた18万円となる。

この18万円が「課税所得」として扱われ、20.315%の税率が適用される。

課税額は36,567円(18万円×20.315%)となるので、Aさんの手元にはこの額を差し引いた143,433円が残るというわけだ。

NISAやiDeCoでの運用益は非課税となる

このように、税制優遇制度を活用しないと、投資収益から税金が差し引かれるため、収益の一部が目減りする結果となる。

これに対して、NISAやiDeCoといった税制優遇制度を利用すれば、収益が非課税となり、資産形成の効率が大幅に高まる。

先ほどの個人投資家Aさんに、再び登場いただこう。Aさんが税制優遇制度を利用して利益を再投資する場合、その額は税引後の14万3,433円ではなく、税引前の18万円となる。

この差は1年でも十分大きいが、20年や30年といった長期で見ると最終的に数百万円にも及ぶ可能性があるのだ。

また、2024年からスタートした新NISA制度では、非課税期間の制限がなくなった。この期間は、何度売買をしても非課税が適用されるため、資産を効率的に増やせるというわけだ。

このように、税制優遇制度の活用は、長期の資産形成において非常に大きな効果をもたらす。

単なる節税対策ではなく、効率的な資産形成のための重要なツールとして活用を検討すべきである。

NISA(少額投資非課税制度)とは

NISAは、個人投資家の資産形成を後押しするために作られた税制優遇制度だ。投資で得た利益(売却益や配当金など)が非課税となる。

2024年1月から制度が大幅に改正され、より長期的な資産形成に適した内容となっている。新NISAの主な特徴は、以下の6点に集約できる。

  • NISA口座開設はいつでもできる
  • 非課税で保有できる期限に制限がない
  • つみたて投資枠と成長投資枠があり、併用が可能
  • 生涯にわたり利用できる非課税枠は1,800万円
  • 年間に投資できるのは360万円まで(つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円)
  • 売却して空いた枠は、翌年以降に再利用が可能

iDeCo(個人型確定拠出年金)とは

iDeCoとは、個人が自ら掛金を拠出し、老後の資産を積み立てていくための私的年金制度のことだ。加入は任意であり、20歳以上60歳未満のすべての人が対象となる。

iDeCoの最大の特徴は、税制優遇措置が充実している点にある。

具体的には、次の3つのメリットが挙げられる。

  • 掛金が全額所得控除の対象(所得税と住民税の負担が軽減される)
  • 運用益が非課税になる
  • 受け取り時も条件を満たせば控除の対象となる

掛金は月額5,000円から選べ、職業や収入に応じて上限が設定されている。

iDeCoは、老後の生活資金を効率的に準備するための有力な手段であるが、引き出しは60歳までできないため、計画的な運用が求められる。

初心者必見!おすすめの運用戦略とは

さて、ここからは、個人が資産運用を始めるための具体的な方法について解説する。

なお、ここからの解説では、主に株式、債券、投資信託などの金融商品を活用した運用方法にのみ触れ、現物不動産投資や保険商品は含めない。

資産運用の始め方

前のセクションで確認したとおり、資産運用とは「手持ちの資産を活用し、将来のために資産を増やしていくこと全般」のことだ。

単に現金や普通預金で資産を保有している状態は、資産運用には該当しない。

「資産運用を始める」という場合は、資産を投資や貯蓄などの金融商品やサービスに配分し、リスクとリターンを考慮しながら目標達成を目指すことを指す。

資産運用を始めるステップ

資産運用は、以下のように「方針→戦略→戦術⇄方法/手法」へと落とし込んでいく形で始めるのが一般的だ。

STEP
資産運用方針を決める

全体の方向性や基本理念を定める。

  • 例:「長期的な資産形成を目指す」「リスクを抑えて安定したリターンを得る」
STEP
資産運用の戦略を定める

方針に基づき、長期的な目標達成のための計画を策定する。

  • 例:「グローバル分散投資をし、リスクを分散させる」「成長株と債券の組み合わせでバランスを取る」
STEP
戦術を決める

戦略を現実化するための、具体的な手段や行動を考える。

  • 例:「毎月一定額をインデックスファンドに積立投資する」「市場が下落したときに追加投資を行う」
STEP
方法や手法に落とし込む

戦術を実行する際の具体的な手順やプロセス、またはそのための専門的な技術や技能を決める。

  • 例:「ネット証券で、自動積立設定をする」「売買タイミングはテクニカル分析で決める」

「計画」「スタイル」「アプローチ」

ステップを詳しく見ていく前に、ここで資産運用においてよく使われる用語について確認しておこう。

資産運用計画は、ステップを通じて作成するアウトプットだ。戦略と戦術を、具体的なスケジュールや手順に落とし込んだものを指す。

たとえば、「戦略を実行に移すための10年計画」や「年間の投資計画」など、必要に応じて作成できる。

また、スタイルやアプローチという言葉も、投資商品の説明などに登場する。

スタイルとは?

投資家の特徴的なやり方で、戦略の選択やアプローチに影響を与えるもの。

  • 例:「グロース投資」「バリュー投資」「アクティブ運用」「パッシブ運用」
アプローチ(Approach)とは?

戦略や戦術を具体化する際の取り組み方や考え方。

  • 例:「ファンダメンタル分析を用いて銘柄を選定する」「市場のトレンドに基づいた投資判断を行う」

資産運用方針を決める

ここからは、各ステップに沿って運用戦略を具体的に作成していこう。

概念の説明に加えて、「45歳で1,000万円の貯蓄を持つAさん」を例に挙げつつ、実際にどのように戦略を立てるかを解説する。

まずは、「ステップ1 資産運用方針を決める」段階だ。

以下の3つのポイントを順に確認していくことで、明確な方針を立てることができる。

  1. 現状把握
    • 年齢や家族構成、収入と支出の状況、現在の資産と負債、将来の収支見通しについて確認する
  2. 資産運用の目的を明確にする
    • 「老後の資金を準備したい」「子どもの教育資金を用意したい」など、運用の目的と具体的な目標を設定する
  3. 運用方針を決める
    • 目的と目標に基づき、投資期間、リスクの許容度、必要な運用利回りを考慮して運用方針を決定する

45歳で1,000万円の貯蓄を持つAさんは、「65歳までに老後資金を1,800万円以上にする」という目標を立て、資産運用を始めることにした。

この場合、Aさんが設定できる運用方針の選択肢には、以下のようなものがある。どの方針を選ぶかは、Aさんのリスク許容度や投資スタイルに応じて決めることができる。

  • 保守的(年平均リターン 3%)
    • リスクを最小限に抑えつつ、堅実に資産を増やす
  • バランス型(年平均リターン 5%)
    • リスクとリターンのバランスを考慮し、安定性と成長性を両立する
  • 積極的(年平均リターン 7%)
    • リスクを積極的に取って、大きなリターンを狙う

運用戦略を決めて具体策に落とし込む

次は、運用戦略を決める段階だ。以下の3つの観点から戦略を検討しよう。

  1. 投資対象の選択
    • 目的や投資期間に応じて、資産クラスを選ぶ。
    • 選択肢には、預貯金、投資信託、株式、債券、不動産、貯蓄性保険などがある。
  2. リスク分散の方法
    • 複数の資産クラスに分散投資をすることで、リスクを軽減する。
    • たとえば、「株式と債券を組み合わせる」や「国内外に資産を分散する」といった方法を考える。
  3. 制度の活用
    • NISA、iDeCo、財形貯蓄などの税制優遇制度を利用して、効率良く資産を運用する方法も検討する。

ここで再びAさんに登場していただこう。

Aさんは、「できれば損をしたくない」と考える保守的な投資家だ。そこで、運用方針は「リスクを最小限に抑えつつ、堅実に資産を増やすこと」と決めた。

この運用方針に基づき、Aさんは以下の投資初心者向けアドバイスを参考にしながら、戦略を練っていった。

投資初心者が戦略立案において気をつけるべきこと
  • 投資の原則は「長期・分散・積立」
  • 自分に合った運用戦略を選択すべき
  • 目的と用途に合わせて制度を利用すべき

これらを踏まえ、Aさんは「リスクとリターンをバランスさせるバランス型戦略」を採用することに決めた。

現在の資産
  • 緊急資金
    • 現在の資産の20%(200万円)を普通預金として確保
  • 投資資金
    • 残りの80%(800万円)を投資に回す
バランス型戦略を実現するための投資対象
  • 現在の投資資金(800万円)を利用して、バランス型投資信託を購入
  • 毎月、iDeCoとNISAで積立投資を行う

Aさんは、これらの戦略と戦術が自身の運用方針に適合し、「長期・分散・積立」の基本原則に沿ったものであることを確認した。

少し駆け足にはなったが、Aさんはステップ1から4までのプロセスを完了させたことになる。

【年代・属性別】おすすめの資産運用方法とは

ここからは、前のセクションでAさんが選択した「バランス型」という戦略について掘り下げていく。

投資戦略としての「バランス型」とは

 個人のリスク許容度を基に運用・投資戦略を考える際、一般的には「安定型」「バランス型」「積極型」の3つに分類することが多い。

バランス型投資戦略(Balanced Investment Strategy)とは、リスクとリターンの両面を重視し、安定性と成長性のバランスを取った投資戦略のことだ。

この戦略では、株式、債券、現金といった複数の資産クラスに分散投資する。主に中程度のリスク許容度を持つ投資家に適している戦略で、以下のような特徴がある。

  • リスクが高い資産と、安定した資産を組み合わせることで、市場変動からの影響を抑える
  • 資産の組み合わせにより、成長と安定の両方が目指せる
  • 複数の資産クラスに分散することで、リスク分散が可能になる

バランス型の投資商品には、以下のようなものがある

  • バランス型投資信託
  • ターゲットデートファンド(投資家のリタイア時期に合わせて、資産配分が自動的に調整されるファンド)
  • バランス型ETF(上場投資信託)

理想のバランスを実現する

個人投資家がバランス型投資戦略を取る場合、戦略を実現する方法は主に以下の3つとなる。

1 バランス型商品を購入する

バランス型投資信託やバランス型ETFは、すでに複数の資産クラスに分散されたポートフォリオが組まれている。

  • 手軽に分散投資ができ、運用の手間がかからない
  • 自分のリスク許容度や投資目的に合った商品を選ぶ必要がある

2 バランス型商品に他の資産クラスを追加する

既存のバランス型商品に、自分で特定の資産クラスを追加することで、ポートフォリオをカスタマイズする方法もある。

たとえば、バランス型投資信託に株式型投資信託を追加したり、個別株式や不動産投資信託(REIT)を組み入れるなどのアプローチが考えられる。

  • 資産クラスを加えることで、リスク分散効果を強化したり、運用目的に柔軟に合わせたりできる
  • 過度に分散しすぎると管理が複雑になり、運用のコストがかさむこともある
  • 商品を追加した結果、全体の資産配分が理想から外れてしまうことがある。リスクとリターンのバランスが崩れないか定期的にチェックすることが重要である

3 自分で資産クラスを組み合わせる

投資信託やETFを使って、株式、債券、現金などを自分で組み合わせてポートフォリオを構築する方法もある。これにより、自分のリスク許容度や投資目的に合った資産配分を実現できる。

  • 自由にポートフォリオを構築でき、特定の資産クラスに重点を置くことが可能となる
  • やり方によっては、運用コストを低く抑えられることがある
  • 市場の変動により資産配分が崩れた場合、意図しないリスクを負担する可能性がある
  • 自分で管理する必要があるため、各資産クラスについて理解しておくことが不可欠

年齢に応じた「バランス」を目指す

適切なバランスを維持するためには、年齢、ライフステージ、リスク許容度の変化に合わせて調整することが重要だ。

資産運用においては、年齢に応じてリスクとリターンのバランスの考え方が大きく異なる。これは、運用期間や資金の用途がライフステージごとに変わっていくためだ。

若い世代は、資産運用の時間軸を長めに設定できる。この時間の余裕は、市場の変動の「乗り越えやすさ」につながる。

このため、一般的にはリスクの高い株式を中心にポートフォリオを構築し、長期的な資産成長を目指すことが推奨される。

一方で、年齢を重ねると資産運用の時間的な余裕は限られてくる。

そのため、運用方針にも「資産を守る」や「必要な時期に取り崩す」といった視点を加え、安定性を重視した資産配分を検討することが重要となる。

かつては、資産配分の目安として「110-年齢」という考え方が一般的だったが、平均寿命が伸びたことにより、「120-年齢」「130-年齢」という考え方も登場している。

いずれにしても、資産運用のバランスは年齢とともに変化するライフステージに応じて適切に調整する必要があるのだ。

ここからは、年代ごとの最適なバランスについて詳しくみていこう。

20代:収入は限定的だが自由度が高い「現役世代」

20代は一般的に、収入は少なめだが、ライフイベントの多い30代以降と比べると、資金に余裕があることも多い。

また、投資期間を確保できるため市場の変動リスクを受け入れやすく、リスクを取る余裕も十分にある。

そのため、この年代では、リスクとリターンのバランスを考慮しながら株式比率を比較的高めに設定することが推奨される。

おすすめの資産配分:株式70%、債券30%

たとえば、楽天投信投資顧問の「楽天・インデックス・バランス・ファンド(株式重視型)」は、株式ETFに69%、債券ETFに30%、その他0.1%という配分だ。

この1本のファンドで、世界の株式市場と債券市場に分散投資ができる。

30〜40代:ライフイベントが多い「現役・子育て世代」

30〜40代は、仕事が安定し収入は増える一方で、結婚や子育て、住宅購入などのライフイベントが重なる時期である。

このため、中期的な資金需要に対応しつつ、長期的な目標に向けた資金・リスク管理が重要となる。

おすすめの資産配分:株式50〜60%、債券40〜50%

この配分であれば、「4資産バランス」を使うことで達成できる。

もう少し分散を加えたい場合は、新興国株式・新興国債券、国内REIT、海外REITを加えた8資産に分散投資する選択もある。

大和アセットマネジメント株式会社の「iFree 8資産バランス」なら、複数の資産クラスから安定的なリターンを目指すことができる。

また、中期と長期に分けて運用するやり方もある。

この場合、中期的ニーズ向けに、円資産バランス型商品などのリスクが低めの商品を選び、長期的ニーズには株式比率が高い商品を選ぶと良い。

もちろん、株式型商品や債券型投資信託を組み合わせて、自分に合ったポートフォリオを作成する方法もある。

50〜60代:定年が視界に入る「プレリタイア世代」

50〜60代は、リタイアが視野に入ってくる時期であり、資産の保全を重視する必要がある。これまで積み上げてきた資産を守りながら、安定した収入を確保することが重要になる。

おすすめの資産配分: 株式40〜50%、債券50〜60%

この配分の実現には「4資産均等型」の投資信託を活用するのがおすすめだ。

たとえば、ニッセイアセットマネジメント株式会社の「ニッセイ・インデックスバランスファンド(4資産均等型)」は、国内株式、国内債券、外国株式、外国債券に25%ずつ均等配分されている。

定期的な収入確保を目指すなら、日本の高配当株ファンドを組み入れるのも有効な方法だ。定期的な配当収入を得ることは、生活資金を補完する手段になる。

とくにエネルギーや消費財などのインフレに強いセクターに属する企業を含む場合は、インフレ対策としても期待できる。

70代:資産を守り収入も確保したい 「リタイア世代」

70代は、リタイア後の生活が本格的に始まり、資産を保全することが最優先となる時期だ。年金収入の補完に加え、資産が目減りしないように運用することが重要である。

おすすめの資産配分: 株式20〜30%、債券70〜80%

70代の運用については、以下の点に注意することが必要だ。

  • インフレヘッジのために株式は保有しておく
    • 20〜30%と控えめであっても、インフレリスクへの備えとして、株式はポートフォリオに組み入れておこう。
  • 管理のしやすさを重視する
    • 無理に複雑な「物価変動対応の債券型ファンド」や特殊な商品に手を出すよりも、シンプルな「低リスクのバランス型投資信託」を選ぶ方が無難である。

すでに金融資産をお持ちの方なら、現在のポートフォリオを見直して、株式比率を20〜30%に下げるように債券型商品を加えると良い。

これから新たに投資対象を選ぶなら、「債券重視型のバランスファンド」を検討すると良いだろう。

Webサイトや目論見書の情報をしっかり確認し、理解したうえで納得できる商品を選ぶことが大切だ。

なお、月分配金が支払われる商品(毎月決算型)は、現金収入が定期的に得られるメリットがある。

ただし、分配金が元本から支払われるケースでは、資産が徐々に減少するリスクもある点は理解しておこう。

【金融資産別】おすすめの資産運用方法とは

ここからは、金融資産という切り口で、資産運用方法を考えていく。

資産500万円以下の運用戦略

資産が500万円以下の場合、まずは緊急資金の確保(一定程度の預金)が重要になる。緊急資金として、生活費の3〜6か月分を普通預金や流動性の高い資産で確保しておこう。

この段階で緊急資金が確保できていると、不測の事態があっても投資を中断せずに済む。

次に重要なのが、コストおよびリスク管理だ。まずは、現在の資産を維持することと、現状での投資額を確保することに専念するのがおすすめだ。

  • 制度の活用
    • 税制優遇制度(NISA、iDeCo)の活用し、効率の良い運用を目指す
  • 資産配分
    • 自分のリスク許容度に合わせて決める
  • 投資対象
    • コストが低く分散効果の高い投資信託やETFを中心に、必要に応じて個別株式(大型株や高配当株)を組み合わせる
  • リスクの高い投資
    • リスクの高い資産(新興国株式や高ボラティリティ商品)への投資は、全体の5〜10%程度に抑える
  • 時間分散投資
    • 一度に投資可能額の全額を投資しない
  • 投資対象
    • バランス型や全世界型など、分散が十分な商品を選ぶ

むしろ「やらないこと」「手を出さない商品」を決め、焦らず着実に資産を積み上げていくことを優先させよう。

資産500〜1000万円の運用戦略

この段階でも、基本的な方針は500万円以下のケースと同じだ。

NISAやiDeCoを活用して非課税枠を最大限利用し、一般的な金融商品を中心に投資を続けることが望ましい。

ただし、資産が増えたことで、新たな投資の選択肢も検討できる。

すでに資産運用を始めている人の場合

すでに資産運用を始めていて、運用により資産を500〜1000万円に増やした人は、引き続き堅実な戦略の継続をおすすめする。

NISAの非課税枠(最大1,800万円)はまだ残っているので、引き続きこの枠を使い切ることを優先すると良い。

もし、もう少しリスクを取りたい場合には、以下の選択肢が考えられる。

  • 資産配分を変える方法
    • たとえば、株式と債券の比率を調整することで、リスクとリターンを再設計する。このアプローチでは、株式の比率を増やすことでリターンの向上を目指せるが、その分リスクも高まる。
  • 資産配分は変えず、投資商品を変える方法
    • 既存の資産配分を維持しつつ、より成長が期待できる分野(たとえば、新興国株式や特定のセクターETFなど)に投資する。

リスクを減らしたい場合は、債券の比率を増やすか、より低リスク商品を追加すると良い。

新たに資産運用を始める人の場合

500〜1,000万円の資産を預金等で保有し、これを元手に資産運用を始める場合は、前述の「資産運用を始めるステップ」を使って進めていくと良い。

資産配分は、「年齢に応じた「バランス」を目指す」を参考に、自分のリスク許容度に応じてアレンジして欲しい。

投資戦略や商品を決める手順と並行して、非課税制度を活用する戦略(運用口座の配分)についても考えていただきたい。

以下のようなステップで検討すると良い。

  • iDeCo口座の利用を検討
    • iDeCoは拠出・運用・受け取りについて、税優遇の対象となるが、60歳まで引き出せないという制約がある。その点を考慮して毎月の積立額を決めることが重要だ。
  • NISA口座の年間投資枠の活用
    • NISAでは、比較的柔軟に運用できるため、NISA口座を優先して運用すると良い。個人が年間に利用できるのは、360万円(つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円)までである。
  • 残額の運用を検討する
    • さらに余裕があるなら、このお金の運用先を考えると良い。来年度のNISA投資資金として温存しても良いし、課税口座を使ってほかの投資商品を購入しても良い。

資産1,000〜5,000万円の運用戦略

資産が1,000万円を超えてくると、資産管理はより複雑になってくる。

まずは、NISAの非課税枠の利用状況に応じて、次の戦略を取ると良い。

  • 非課税枠を使い切っていない場合
    • NISA口座を活用し、老後資産形成を優先的に進める
  • すでに使い切ってしまった場合
    • その時点で、資産運用の目標やリスク許容度を見直し、新たな投資計画を策定する

資産が増えてくれば、投資対象の選択肢は広がる。たとえば、検討対象には以下のような方法が加わる。

  • 不動産投資信託(REIT)による不動産市場への投資
  • 仕組債による安定的な収益確保
  • 変額保険などによる資産形成と保障の両立
  • 外国債券の戦略的活用による利回り追求
  • 優良企業の株式による配当収入確保

ただし、投資対象が増えても、投資の基本原則は変わらない。

複雑なポートフォリオを適切に管理するため、IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)などの資産運用のプロに相談することは、非常に重要な戦略となる。

理由は以下のとおりだ。

  • 投資商品の選択肢が増えることに伴い、保有ポートフォリオも複雑になる
  • 投資対象に不動産や保険商品、仕組債が加わることで、資産配分が「株式X%:債券X%」などの単純な資産配分では対応しきれなくなる
  • それぞれの商品特性(流動性、リスク、税制)を理解したうえで、総合的な判断が必要になる
  • 相続や税金対策など、より専門的な判断が増える

資産5,000万円以上の運用戦略

この資産規模ではより一層、プロの運用アドバイスが重要になる。

検討できる商品には、以下のようなより高度な運用手法を使った投資商品が加わる。

  • ヘッジファンド
  • プライベートエクイティ
  • オーダーメイド型の仕組債
  • 不動産直接投資
  • オルタナティブ投資(未公開株式、アート、貴金属など)

また、資産承継を見据えた資産運用方法には、以下のような商品の利用も考えられる。

  • 生命保険や個人年金保険の戦略的活用
  • 信託を活用した資産承継スキーム
  • 収益不動産のポートフォリオ構築

資産規模が大きくなり、商品の複雑さが増すほど、一つの判断ミスが致命的な損失につながる。

そのため、信頼できる専門家との長期的な関係構築が、個人で取り得る重要な戦略であることは間違いない。

資産運用でよくある失敗

ここでは、資産運用を始めたばかりの人が陥りやすい失敗パターンを紹介していこう。

残念ながら、資産運用は最初から完璧にうまくいくことは稀である。

しかし、よくある失敗のパターンを理解することで、同じ過ちを避け、より効果的な運用を目指すことができる。

資産運用の準備段階における失敗

ここでは、資産運用の準備段階でやってしまいがちな失敗を紹介しよう。適切な準備をせずにスタートすると、長期的な資産形成が難しくなり、リスク管理にも支障をきたす。

計画を立てずに運用を初めてしまう

「とりあえず始めてみよう」と運用を開始し、具体的な目標や戦略を持たずに資産を投じてしまうケースは、とくに初心者によく見られる。

計画を立てない場合、次のような問題が生じがちだ。

  • 目的が不明確で、投資判断が迷走する
    • 具体的な目標や計画がないと、投資の成功や失敗を評価できず、結果としてどのように運用を続けるべきか判断に迷ってしまう
  • 投資対象に矛盾が生じる
    • 明確な計画がないと、ポートフォリオの一貫性がなくなり、リスクとリターンのバランスが崩れがちになる
  • 短期的な市場の変動に振り回される
    • 計画がないと、相場の変動に一喜一憂しがちで、感情的な売買を繰り返してしまう

資産運用は、目的を明確にし、自分のリスク許容度に合わせた計画を立てて初めて、長期的な資産形成の道筋が見えてくる。

はじめは簡単なものでも構わない。自分なりの資産運用方針と実行計画を作っておこう。

余裕資金以上に投資してしまう

資産運用においては、この余裕資金を用いて投資を行うのが原則だ。

余裕資金とは、生活に必要な費用や緊急時に備えた資金を差し引いた後に残る、自由に使える資金のことだ。

これ以上のお金を投じてしまうと、資産運用が持続可能でなくなり、生活や緊急事態への備えが不十分になる恐れがある。

一般的には、月の生活費の3〜6か月分を確保した残りが余裕資金となる。これをもとに、投資に回す金額を検討すると良い。

たとえば、月の生活費が30万円の場合、最低でも90万円〜180万円を確保した残りが余裕資金となる。

預金が500万円ある人なら、約300〜400万円が余裕資金となり、この範囲内で投資する金額を決めれば良い。

まだ資産が十分にない人なら、収入から生活費を引いた額を貯蓄に回し、90万円〜180万円を目指す。

貯まってから運用を始めても良いし、少額から積立投資を始めてみる方法もある。「3〜6か月分」という期間はあくまで目安だ。

職業の安定性や家族構成、健康状態によって異なるため、不安定な職業やフリーランスの場合は「1年分」の生活費を確保する方が安心だろう。

独自判断で投資を始める

投資初心者が独自の判断だけで投資を始めると、リスクの把握が不十分になりがちだ。市場の動きを誤解したり、必要な情報を見落としてしまうことが多い。

少額から投資を始める場合は、学びながら経験を積むのも良いだろう。自己判断で試行錯誤しつつ、投資の基本を理解していくことは、貴重な学びになる。

しかし、まとまった資金を運用する際には、リスクが大きくなるため、中立的な立場の専門家の意見を取り入れる方が賢明である。

客観的な視点からアドバイスを受けることで、偏った判断を回避できる。

資産運用の実行段階における失敗

ここでは、資産運用における典型的な失敗例を紹介していく。

リスク許容度を無視して投資する

投資を行う際に、自分のリスク許容度を無視してしまうと、残念な結果に至ることが多い。

リスク許容度とは、自分が投資でどれだけの損失に耐えられるか、または市場の変動にどれほど冷静でいられるかを指す。

この点を理解せずに投資を始めると、精神的な負担が大きくなり、冷静な判断ができなくなりがちだ。

たとえば、リスク許容度の低い人が、株式偏重のポートフォリオを作ってしまう場合について考えてみよう。

一時的に株式市場が暴落すると、パニックに陥り、慌てて資産を売却してしまい、損失を確定することになる。

逆に、安全志向が強すぎてリスクを全く取らない場合は、本来得られるはずのリターンを逃してしまう。

感情に流されて投資してしまう

投資において、冷静な判断を保つことは非常に重要である。しかし、市場の変動が大きいときには、恐怖や欲望などの感情に流されやすく、多くの失敗につながる。

たとえば、以下のようなケースは失敗の例だ。

  • 市場が下落したときの「パニック売り」
    • 市場が急落すると、損失を恐れるあまり、感情に左右されて冷静な判断ができなくなる。その結果、資産を早まって売却し、後に価格が回復した際に後悔することになる。
  • 過度な楽観による買い
    • 市場が上昇しているときに、「この流れに乗らないと損をする」という焦りから、十分な分析や戦略を無視して資産を大量に購入してしまうことがある。これにより、相場が反転したときに大きな損失を抱えるリスクが高まる。
  • 欲望や恐怖からのオーバートレード
    • 短期間で利益を得たいという欲望や、損失をすぐに取り戻したいという焦りから、頻繁に売買を繰り返してしまう。これにより、取引コストが増加し、資産が減少する結果となる。

分散投資を怠る

分散投資は、リスク管理の基本中の基本であるが、投資初心者はこれを軽視しがちだ。

分散投資とは、複数の資産クラスや地域、セクターに資金を分けて投資し、リスクを分散させる戦略のことだ。

これにより、一つの資産が値下がりした場合でも、他の資産がその影響を和らげる効果が期待できる。

分散投資が不十分だと、市場変動が資産全体に与える影響が大きくなり、次のようなリスクが生じる。

  • 特定の株式や業種に集中投資した場合
    • 投資先の企業に悪材料が出た場合や、業界全体が不振に陥ると、ポートフォリオ全体に深刻な影響を及ぼすこともある。
  • 特定の国や地域に集中投資した場合
    • 投資先の経済状況が悪化したり、政策リスクや為替変動が生じたりした場合、投資資産に甚大な影響を及ぼすことがある。新興国に集中投資した場合に、政情不安や通貨の急激な下落により資産価値が大幅に減少するのは、代表的な例だ。

金融商品の選択を誤る

銀行や証券会社は自社の商品を優先的に勧めることが多い。

そのため、一つの金融機関の提案だけを受け入れると、商品の選択肢が狭まり、本来の目的に合った最適な運用ができなくなるおそれがある。

たとえば、リターンが低いのにコストが高い商品や、自分のリスク許容度に合わない商品を選んでしまうことも考えられる。

資産運用の見直し・調整段階における失敗

資産運用には、定期的な見直しと調整が必要だ。市場の変動や自分のライフステージの変化に合わせてポートフォリオを適切に管理することが、長期的な成功につながるからだ。

しかし、この見直しと調整を怠ると、予期せぬリスクが増大し、資産形成に悪影響を及ぼすことがある。

リバランスを怠る

ポートフォリオの構成比率は、市場の変動によって変わってくる。

たとえば、株式市場が好調な場合、ポートフォリオ内の株式などのリスク資産の割合が大きくなり、リスクを取りすぎた状態になってしまう。

この結果、自分のリスク許容度を超えたリスクを負担することとなり、本来の運用方針から大きく逸れてしまう。

したがって、投資家は定期的にポートフォリオを見直し、資産配分を元のバランスに戻すこと(リバランス)が必要である。

これを怠ると、市場が急落したときに大きな損失を被るリスクが高まってしまう。

パフォーマンス評価を怠る

定期的に資産運用の成果を評価しないと、運用が計画通りに進んでいるかどうかを把握できない。

評価を怠ると、自分の資産が予定通りに成長しているかを確認したり、調整が必要かを判断したりする機会を逃してしまう。

少なくとも年に1回は、自分の運用成績を確認し、目標に向かっているかを評価しよう。また、運用環境の変化やライフステージの変動に応じた見直しも大切だ。

これらを怠ると適切な調整が行えず、期待したリターンが得られなかったり、無駄なリスクを負担することになったりする。

資産運用の悩み解消はプロにおまかせ!

資産運用に成功するのは難しいが、失敗を回避することは十分に可能だ。おすすめは、専門家のアドバイスを受けることである。

なぜ専門家への相談がおすすめなのか

実際のところ、資産運用を始めるのは難しくない。Webや書籍にはやり方が書いてあるし、なんならAIに質問してみても答えは得られる。

しかし、資産運用には、誰にでも適用できる成功の方法は存在しない。あるのは、投資家ごとに最適な方法と、よくある失敗を避ける方法のみだ。

よって、投資家は自分に合った運用の方法を探さなければならない。しかし残念ながら、投資において当事者は自分の能力を過信しがちで、情報を正確に判断できないと言われる。

だからこそ、専門家への相談は大事なのだ。相談することで、以下のようなメリットが期待できる。

  • 客観的な視点から資産状況を分析できる
  • 自分では気付きにくいリスクを発見できる
  • 市場動向や最新の金融商品情報を入手できる
  • 長期的な資産形成プランを立てられる
  • 税制や制度改正への対応が可能になる

資産運用の3つの相談先

資産運用の相談先は大きく分けて3つある。

ひとつは、証券会社や銀行の窓口での相談だ。予約などが必要なく、気楽に立ち寄れる点はメリットだが、取り扱う商品が自社のものに限られるため、提案が偏るおそれがある。

もう一つは、ファイナンシャルプランナー(FP)だ。

FPは、ライフプランに基づいた総合的なアドバイスが強みである一方、具体的な商品提案や取引仲介はできず、相談料の負担が必要となる。

最後は、昨今注目を集めている独立系ファイナンシャルアドバイザー「IFA」である。

IFAは、中立的な立場で商品を提案できる点が強みで、基本的に相談料は無料である。長期的なサポートを受けられる点も魅力となっている。

資産運用は基本を押さえて始めよう!運用方法に迷ったらIFAに相談を

資産運用では、基本的な知識を身につけ、自分に合った運用方法を選択することが重要だ。しかし、情報があふれる現代では、かえって正しい判断が難しくなっている。

運用方法を間違えれば、せっかく貯めた資産を失うリスクもある。

これを避けるために、とくに以下のような方は、専門家への相談を検討してみて欲しい。

  • 資産運用を始めたいが、何から始めれば良いかわからない
  • 現在の運用方法が適切か確認したい
  • 将来に向けた資産形成プランを立てたい
  • 税制優遇制度を活用した運用について検討したい

IFAなら、中立的な立場で、あなたの状況に合った最適な運用方法を提案してくれる。しかも、相談料は無料だ。

さっそくIFA検索サービスなどを活用して自分に合ったIFAを探してみよう。

資産運用に関するよくある質問

資産運用を始めるのに最低限必要な金額はいくらですか?

資産運用を始めるための最低金額は、選ぶ投資方法や運用商品により異なる。

  • 投資信託の積立投資
    • ネット証券では100円から始められる
  • 株式の積立投資
    • 楽天証券「かぶツミ」では1,000円から始められる
  • 国内株式投資
    • 単元未満株が取引できる証券会社なら1株単位で購入できる
  • 米国株
    • 1株から購入できる

さらに、「ポイント投資」の仕組みがあれば、現金を使わずに投資を始められる。

毎月の積立額の目安はいくらくらいですか?

毎月の積立額は、月収の10〜20%程度を目安とするのが一般的だ。ただし、これはあくまで目安であり、個人のライフスタイルや家計の状況に応じて調整が必要だ。

生活費や固定費を考慮したうえで、無理なく継続できる金額を設定することが重要だ。収入が増えたら増額を検討し、逆に収入が減ったり支出が増えた場合には減額して柔軟に対応すると良い。

損をしない資産運用の方法はありますか?

完全に損失を避けることができる資産運用方法は存在しない。しかし、以下の3つの原則を守ることで、リスクを最小限に抑えることは可能である。

  • 分散投資を徹底する
    • 株式や債券など、異なる値動きをする商品に分散して投資する
  • 長期投資を心がける
    • 短期的な価格変動に一喜一憂せず、時間分散効果を活用する
  • 余裕資金の範囲内で投資する
    • 生活資金とは明確に分け、無理のない金額で運用する

これらに加えて、投資信託などの分散投資商品を利用し、定期的な積立投資を行うことで、リスクをさらに抑制できる。

どのくらいの頻度で資産運用を見直すべきですか?

定期的な見直しは、年に1回か半年に1回程度とする。その際は、以下のようなポイントを確認すると良い。

  • 当初設定した資産配分が維持されているか
  • 運用成績は目標に沿っているか
  • 手数料は適正な水準か(より低コストの商品はないか)
  • リスク許容度に変化はないか
  • 投資目的は変わっていないか

これに加えて、結婚や住宅購入などのライフイベント発生時や、投資環境に大きな変化があった場合(市場の大きな変動、制度の変更など)も、見直しの機会として活用すべきである。

この記事を書いた人

当社は、日本の中小企業を支援し、活性化を図ることを目的として「中小企業からニッポンを元気にプロジェクト」を運営している。有名タレントを活用したプロモーション支援を通じて、企業の魅力を効果的に発信し、ビジネスの成長を促進する。また、金融メディア事業においては、メディアを通じた情報発信により、社会全体の金融リテラシー向上に貢献することを使命としている。

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