- FIREを目指すためにいくら資産が必要か知りたい
- 早期退職を実現するための資産運用の方法が知りたい
- 退職金をどう運用すれば良いか、具体的なプランを知りたい
近年、経済的に自立して早期リタイアを行う「FIRE」が注目されている。
「FIREするためにいくらお金が必要なのか知りたい」「具体的にどのようにFIREを目指せばよいかわからない」などと悩んでいる方もいるだろう。
今回の記事では、FIREの概要やメリット・デメリット、FIREを目指すための道のりなどを詳しく解説していく。
FIREに興味のある方は、ぜひ参考にしてみてほしい。
「FIRE」するにはどれだけの資産が必要?
まずは、FIREとはどのような意味の言葉なのか、どれだけの資金を目安にすれば良いかを考えていこう。
FIREとは
FIREは「Financial Independence, Retire Early」の頭文字を取って略した造語で、経済的な自立による早期リタイアを意味する。
早期退職後の生活に必要な資金を投資などの収入やそれまでの貯蓄で賄い、働くことで得られる給料に頼らずに生活できる仕組み作りを行うことで、早い段階で仕事を辞めて残りの人生を過ごしていけるという考え方だ。
定年退職よりも早めに仕事を辞めるという意味では、単純な「早期退職」とほぼ同じだが、細かい部分では違いもある。
一般的に早期退職を行う場合は、残りの人生を送るのに必要な資金を働きながら貯めて、十分なお金が貯まった時点で会社を退職することが多い。
早期退職後は、残った貯蓄や退職金、年金を使いながら生活をしていくため、資産運用を行うことは前提とされていない。
FIREでは、残りの人生に必要なお金をすべて貯めてから辞めるのではなく、資産運用の元本を確保した上で、運用益で残りの人生の生活費を賄うという考え方が基本となる。
運用を継続しながら必要な資産を取り崩して生活していくことで、最低限の元本を準備したら会社を退職できる。
FIREするために必要な資産の目安
FIREを実践するために必要な資金の目安を考える上では、「4%ルール」を用いるのが一般的だ。
4%ルールとは、リタイア後の生活費を投資元本の4%以内に抑えられれば、資産が減っていくことなく生活を続けられるという考え方だ。
この「4%」は米国株式市場の平均的な成長率である7%からインフレ率3%を引いた数値だ。米国市場に投資を行い続ければ、年3%のペースでインフレが進んでいったとしても、資産は4%ずつ増えていくとも言い換えられる。
資産が増えた部分で日々の生活費を賄うことで、元本は目減りせずに生活を続けられるのだ。
この4%ルールに基づくと、年間生活費を25倍することで元手資金の目安を計算できる。
仮に、年間の生活費が300万円の人の場合、7,500万円あればFIRE達成できるだろう。
サイドFIREやバリスタFIREという選択肢も
4%ルールから計算すると、FIREのためには退職後の生活費の25倍の金額を元手資金として用意する必要がある。
しかし、数千万円〜1億程度の資金を準備するのはハードルが高いと感じる人もいるだろう。
そのような方には、「サイドFIRE」や「バリスタFIRE」という選択肢もある。
サイドFIREとは、生活費のすべてを資産運用の収益で賄うのではなく、副業収入なども含めて生活費を確保することだ。
年間生活費の半分を勤労収入で準備すると仮定した場合、資産運用の元本として用意すべき金額も半分になるため、FIREまでの道のりが近づくだろう。
一方、バリスタFIREとは、パートタイム労働やアルバイトなど雇われることによって得られる給料と、資産運用による収益でFIREを目指す方法だ。
バリスタFIREもサイドFIREの一種として語られることも多い。
FIREのメリット
FIREを実現するメリットには、以下のような点が挙げられる。
- 時間を自由に使える
- お金に対する不安が解消され経済的に自立する
- 人生に対する幸福感を得られ自己実現を達成できる
時間を自由に使える
FIREを実現したあとは、それまで会社で働いていた時間や通勤に充てていた時間も自分の時間として自由に使える。
趣味や自己啓発に時間をかけるなど、仕事以外の好きなことを中心にしたライフスタイルを送ることも十分可能だ。
住む場所も自由になりやすいため、世界各国を転々としながら暮らしていくこともできるだろう。
お金に対する不安が解消され経済的に自立する
FIREでは、今後の人生にかかるお金をある程度シミュレーションしてから会社を退職するため、お金に対する不安が解消されやすいのもメリットだ。
老後に必要なお金がどのくらいかかるかわからずに、なんとなく不安を抱えながら働き続けるのに比べて、安心して人生を送れるだろう。
趣味や自己実現のために必要なお金もあらかじめ準備しておけば、「お金がないからできない」「貯金のためにやりたいことを我慢する」といった経済的な不満も出ないだろう。
人生に対する幸福感を得られ自己実現を達成できる
FIREを実現すると、自分の時間やお金を好きなことに使いやすくなるため、必然的に幸福度がアップする。
働く意味を見出せなかったり、人に雇われて働いている状況が辛いと感じたりしている場合は、FIRE実現によって自己実現を達成しやすくなるだろう。
生活費のために仕事をする必要がなくなるため、自分の本当にやりたかった仕事やボランティアにも挑戦できるというメリットがある。
FIREのリスク・デメリット
一方、FIREには以下のようなリスク・デメリットもある。
- 財政面のリスク
- キャリアへの影響
- 社会保障の問題
- 心理的な課題
財政面のリスク
想定通りに資産を準備できて早期退職を実践した場合も、資産運用が必ず思い通りにいくとは限らない。
運用益は常に一定ではないどころか、相場の状況や運用パフォーマンスによっては損失が生じる可能性もある。
また、想定外の突然の支出によって、準備していた以上の資金が必要となり、FIREが破綻してしまうリスクも存在する。
キャリアへの影響
仮にFIREしたとしても、何らかの事情でFIREを断念せざるを得ないタイミングが来るかもしれない。
そのような場合、改めて仕事を探して就職しようとしても、FIREの期間はキャリアに空白があるため、再就職が難しくなる可能性がある。
自分のキャリアに影響を与えやすいのも、FIREのリスクと言えるだろう。
社会保障の問題
FIREを行うと、健康保険や年金などの社会保障が手薄になりやすい。
FIREを行うと、会社員の場合は労使折半だった保険料が折半ではなくなるため、保険料は全額自己負担となる。
また、会社員や公務員の場合は国民年金に上乗せされて厚生年金が給付されるが、FIRE後は国民年金のみとなる。
心理的な課題
FIRE後は会社という組織に属することがなくなるため、社会的な関わりやつながりを感じにくくなるという点をデメリットと捉える人もいる。
他社との関わりを大事にするタイプの人の場合、趣味やボランティア、新たな仕事などで積極的に他人と関わる必要があるだろう。
また、FIRE後は資産運用による収益が主な生活費の原資となる。
運用成果によって資産額が日々変動するのは、人によっては大きなストレスになる場合もあるだろう。
FIREを実現するための資産運用方法
FIREのためには、資産運用によってお金を増やすことが欠かせない。
ここでは、具体的な運用手法や投資先を紹介する。
基本的な運用スタイルは「長期・積立・分散」
FIREを目指すにあたって、基本的な運用手法は「長期・積立・分散」投資だ。
長期投資とは、一般的に10年以上の長期目線で投資を継続する投資手法を指す。
運用期間が長くなるほど、複利効果によって効率よく資産を増やしやすいというメリットがある。
積立投資とは、金融商品を一定額ずつ定期的に買い続ける投資手法のことだ。
これによって、価格が安い時は多く、高い時は少なく購入することができて、購入単価を平準化しやすいというメリットを得られる。
分散投資とは、特定の資産や銘柄に集中して投資するのではなく、複数の資産に少しずつ分けて投資を行う投資方法だ。
特定の資産が値下がりした場合も、他の資産の値動きでカバーしやすくなり、リスクの低減が図れるというメリットがある。
「長期・積立・分散」は、FIREを目指す期間だけでなく、FIRE達成後も重要な運用スタイルだ。
FIREを目指すのにおすすめの投資先
賢く資産を増やすための投資先としては、以下のような金融商品が挙げられる。
- 投資信託・ETF
- 株式
- 不動産投資信託(REIT)
特におすすめなのが、投資信託だ。
投資信託は、運用のプロであるファンドマネージャーに管理・運用を任せられて、少額から分散投資を手軽にできるというメリットがある。
世界中のあらゆる資産に分散投資を行うバランス型ファンドを選べば、投資信託1本を購入するだけで、さまざまな資産・銘柄に簡単に分散して投資ができる。
NISAやiDeCoなどの非課税制度を活用する
効率よく資産運用を行うためには、NISAやiDeCoなどの非課税制度の活用も大切だ。
NISAは、投資によって得られる利益を非課税で受け取れるという制度で、成長投資枠とつみたて投資枠の2つの投資枠を併用できる。
年間で360万円、保有限度額1,800万円までは投資できるため、まずはNISAの非課税投資枠を使い切ることを目標にしてみよう。
iDeCoは、自分で老後に向けて準備する私的年金制度で、運用益が非課税になる他、掛金の拠出時や資金の受取時にも所得控除を受けられるというメリットがある。
FIRE達成後は公的年金が手薄になりやすいため、iDeCoを活用するのも良いだろう。
FIRE「後」におすすめの資産運用方法
続いて、FIREした後に適した運用方法を紹介していく。
FIRE後の資産運用目的
FIRE達成までは、ある程度リスクも取りつつ、どんどん資産を増やしていくことが重要となる。
一方、FIRE後は運用によって安定的な収入を得つつ、資産をしっかりと守っていくことも大事だ。
そのため資産の保全やインフレ対策・生活水準の維持、安定的な不労所得の確保といった目的を念頭に置いた上で、運用方針や投資先を検討するのを推奨する。
FIRE後におすすめの資産運用方法
FIRE後は、複数の資産に分散して投資を行うポートフォリオ運用がおすすめだ。
資金を運用目的別に分類し、それぞれを適した金融商品で運用していく。
例えば、債券は定期的な収入を確保できる金融商品として活用しつつ、投資信託やETFは資産の増加を狙う金融商品として利用する。
また、不動産やREITなどはインフレ対策やインカムゲイン狙いで投資をすると良いだろう。
これらに投資をしてもまだ余裕がある場合は、ヘッジファンドやPEファンド、VC、コモディティなどのオルタナティブ投資も検討してみよう。
FIRE前後に気をつけたい資産運用の注意点
FIREを行うにあたっては、資産運用の方法にも注意したい点がいくつかある。順番にチェックしていこう。
自分に合った運用ポートフォリオ作成
まずは、自分に合った運用ポートフォリオの作成が重要だ。
SNSやネットなどで見た「おすすめポートフォリオ」通りに運用を行ったとしても、自分の運用ニーズやリスク許容度に合うポートフォリオとは限らない。
FIREを目指すのであれば、しっかりと金融商品の特徴やリスクを理解した上で、自分の運用ニーズに則した投資先や投資配分を決定するようにしよう。
自分でポートフォリオを組み立てるのが難しい場合は、資産運用の専門家に相談するのもおすすめだ。
相場や状況に応じたリスクコントロール
早くFIREを達成したいからといって、利益を追求するあまりリスクを取りすぎるのはよくない。
突然相場が急落した際に資産の大部分を失うことにもなりかねず、FIRE実現が一気に遠のいてしまうかもしれないだろう。
また、短期的な相場の動きに振り回されないように心がけるのも重要だ。
短期的な動きに囚われすぎると、相場の下落時、急騰時に冷静な判断ができなくなることが多い。
相場や状況に合わせて冷静に判断して、適切なリスクコントロールを行うようにしよう。
定期的な運用方針・ポートフォリオの見直し
資産運用を始めた後、定期的に運用方針やポートフォリオを見直すのも重要だ。
相場の状況やライフスタイル、運用ニーズの変化によって、最適なポートフォリオは常に変動する。
また、金融商品の価格が変動することで、ポートフォリオ内の配分比率もどんどん変わっていってしまうため、半年〜1年程度のスパンで元の資産配分に調整する「リバランス」を行うようにしよう。
FIREを実現するには資産運用のプロに相談しよう
自分に適した資産運用方法やポートフォリオを知ってFIRE実現を目指すなら、資産運用のプロに相談するのがおすすめだ。
ここでは、FIREを目指す上でおすすめの相談先や、適切なアドバイザーの選び方を解説する。
FIREを目指すのにおすすめの相談先
FIRE実現に向けた資産運用方法を相談できる選択肢には、証券会社やFP、IFAなどが挙げられる。
証券会社の営業担当者は、豊富な知識や経験に基づくアドバイスを提供してくれるが、会社の営業方針や販売ノルマに提案内容が左右されやすい点に注意が必要だ。
また、外務員資格を持たないFPの場合、家計の見直しや資産運用についての基礎知識についてアドバイスしてくれるものの、具体的な個別銘柄の相談や提案には対応していない点がデメリットとなる。
IFAの場合、特定の会社に所属していないため、中立的な立場から質の高いアドバイスが期待できる。
具体的な商品の提案・販売まで担うため、初心者でも安心してサポートしてもらえるだろう。
信頼できるアドバイザーの特徴
FIREを目指す上では、信頼できるアドバイザー選びが重要だ。
信頼できるアドバイザーを選ぶためには、以下のポイントに注目した上で、複数の候補を比較してみよう。
- 資産運用に対する知識・経験は十分か
- FIRE達成に向けてのサポートは得意か
- 料金内容・報酬体系に納得できるか
- 自分と相性・雰囲気が合うか
- 長期的に資産運用を任せられるか
資産運用で早期退職を実現するためにプロに相談してみよう
FIREを達成すれば、経済的に自立して幸福度の高い人生を送りやすい。
しかし、財政面やキャリアのリスク、突発的な支出による破綻の可能性などは、あらかじめ考慮しておくことが重要だ。
本記事では、FIREという目的を達成するための運用手法や、リタイア後の運用方法などを紹介した。
自分に適したポートフォリオや投資先は人によって異なるため、自分の運用ニーズやリスク許容度をよく理解して、適切な運用計画を策定することが重要だ。
自分一人で計画を立てるのが難しい場合は、運用のプロに相談するのをおすすめする。
IFA検索サービスなどを利用すれば、簡単なステップで自分に適したアドバイザーを手軽に探しやすい。
これからFIREを目指したいという方は、ぜひ活用してみてほしい。