- 法人資産運用を始めるべきか迷っている
- 余剰資金の運用に最適な方法を知りたい
- 法人資産運用のメリットや節税効果について理解したい
法人で資産運用を始めると、本業での収益に加えて運用益も期待できるというメリットを得られる。
ただし、適切な投資先を選ばないと、想定上の損失が発生したり、突然の支出に対応できなかったりするリスクも生じてしまう。
今回の記事では、法人で資産運用を行うメリット・デメリットを紹介しつつ、法人の資産運用のポイントを具体的に解説する。
法人で資産運用を始める際のおすすめの相談先についても紹介しているため、これから運用に挑戦したいと考えている場合は、ぜひ参考にしてみてほしい。
法人で資産運用をするメリット・デメリット
まずは、法人で資産運用を始めるメリット・デメリットを順番に確認していこう。
法人で資産運用を行うメリット
法人で資産運用を行うメリットには、以下のようなものが挙げられる。
- 収益力のアップが見込める
- 本業の利益と損益通算が可能
- 長期的な運用を行いやすい
順番に確認していこう。
収益力のアップが見込める
資産運用による売却益や利息・分配金などの収入があった場合、本業にプラスする形での収入が得られることとなり、収益力のアップが期待できる。
営業外収益を定期的に得られるようになれば、現在および将来にかけての経営体制・財務基盤の強化にもつながるだろう。
特に、現在は預金に余剰資金を預けていても、それほどお金が増えていかない時代だ。
ゼロ金利時代から多少預金金利が上がったとはいえ、それでもお金を増やす実感を得られるほど高い金利は適用されない。
本業を助ける形で少しでもお金を増やしていきたいという法人にとって、資産運用による収益は魅力的な収入源だと言える。
利用できるお金や運用資金が増えていけば、本業の設備投資や商品開発などに振り向ける資金にも余裕が出てくるため、結果的に本業の業績向上も期待できる可能性がある。
税制上の優遇を受けられる
資産運用によって収益が発生した場合、利益に対して税金を納める必要がある。
ただし、法人の場合は本業の損益と資産運用の損益を通算して納める税額を計算するため、運用成績や業績によっては節税に繋げられる。
例えば、本業で500万円の赤字が生じて、資産運用によって1,000万円の利益を得たとする。
本来は資産運用によって得られた1,000万円の利益に対して課税されるところを、損益通算することによって課税対象となる利益を500万円に抑えられる。
逆に、資産運用で損失が出た際は、本業の利益と損益通算することによって、やはり支払う税額を抑えられるというメリットもある。
その他、法人で運用を行った場合は最大10年間損失を繰り越せたり、資産運用によって生じた費用を経費に算入できたりといった点もメリットだ。
長期的な運用を行いやすい
個人口座で運用する場合に比べて、長期的な目線で運用を行いやすいのもメリットだ。
個人で運用する場合、自分や家族の健康状態や年齢に応じて運用方針を変更したり、ポートフォリオを見直したりする必要がある。
法人口座で運用する場合は、年齢などを気にせずにより長期的な視点で運用しやすくなるだろう。
また、法人口座の運用によって生じた損益は最大10年間繰り越すことができる。
個人の場合は最大3年しか繰り越せないのに対して、損失を長い期間繰り越せる法人口座のメリットは大きいと言えるだろう。
法人で資産運用を行うデメリット
一方、法人で資産運用を行う際のデメリットもある。
- 投資商品の選定・管理に手間がかかる
- 収益額や資産価格が変動する
- 投資商品によってはすぐに換金できない
- NISAや特定口座は利用できない
どのようなデメリットがあるのか具体的にチェックしていこう。
投資商品の選定・管理に費用や手間がかかる
資産運用を始める際は、「どのような商品に投資するのか」「どのくらいの資金を運用に回すのか」など、決めるべきことが多数ある。
特に、大企業で資産運用を始める場合は、定款や規則の制定や役員会での承認、運用ポートフォリオの設計などにも手間や時間がかかる。
そのため、これまでまったく資産運用に取り組んでこなかった法人が一から投資に取り組むのは、なかなかハードルが高いと言えるかもしれない。
専門家やコンサルなどにアドバイスを依頼する場合は、相応の費用も必要となるため、これもネックに感じられるケースがあるだろう。
収益額や資産価格が変動する
投資する商品によっては、資産運用によって得られる収益や日々の資産価格が変動しやすい点に注意が必要だ。
本業の利益が安定していたとしても、ハイリスクな投資商品に多数投資してしまうと、本業の利益以上に企業業績や財務状況に影響を与えかねない。
また、複数の投資商品を保有するほど、経理的な管理や処理が面倒に感じられる可能性もある。
投資商品によってはすぐに換金できない
投資する商品によっては、お金が必要なタイミングですぐに換金できないという点もデメリットになり得る。
投資信託などでは売却の申し出から換金までに4〜7営業日程度かかることも珍しくなく、すぐに資金が必要なタイミングでは困る可能性もあるだろう。
また、中途換金することで元本割れの可能性が生じる場合もある。
例えば、債券はあらかじめ満期までの期間が決まっているため、数年後に使う予定のある資金の置き場として適している金融商品だ。
しかし、運用期間中に突然の支出などによってお金が足りなくなってしまった場合、債券を途中売却する必要が生じるかも知れない。
債券を中途換金する際は時価での売却となり、相場の状況によっては元本割れしてしまうリスクがある点に注意が必要だ。
NISAや特定口座は利用できない
法人で運用を行う場合、一般口座のみでの取引となり、NISA口座や特定口座は利用できない。
個人の場合は、特定口座を利用することで税金の計算や源泉徴収を証券会社に任せられたり、NISA口座を利用することで税制上の優遇を受けられたりするが、法人の一般口座の場合はこれらの恩恵を受けられない。
法人での資産運用に適したポートフォリオとおすすめの投資先とは?
続いて、法人での資産運用に適したポートフォリオやキャッシュと運用資金のバランス、おすすめの投資先について紹介していく。
キャッシュと投資資金のバランス
法人として資産運用を行う際は、本業を圧迫しない範囲で運用を始めることが重要だ。
特に、余剰資金をすべて資産運用に回すのではなく、一定程度はキャッシュで確保しておくようにしよう。
業績が安定している企業であっても、災害や突然の金融危機などによって突然現金が必要になる可能性は存在する。
すぐに手元に使えるお金がないと、投資している資産を切り崩したり、金融機関からお金を借りたりしないといけなくなるかもしれない。
業種や業績によっても異なるが、月次運転資金の3〜6ヶ月程度はキャッシュとして確保しておくのをおすすめする。
また、投資資金に回すお金は、余剰資金の中から30%〜50%程度を回すのが一般的だ。
キャッシュと投資資金の最適なバランスは法人の状況によっても異なるため、不安な場合は専門家などに相談するのも良いだろう。
法人におすすめのポートフォリオ
法人の資産運用におすすめのポートフォリオをいくつか紹介する。
リスク・リターンについてのニーズ別に「安定型」「バランス型」「積極型」に分けたとすると、それぞれにおすすめの資産配分は下記の通りだ。
安定型 | 国内債券100% |
---|---|
バランス型 | 国内債券60%、外国債券40% |
積極型 | 国内債券25%、外国債券25%、国内株式25%、外国株式25% |
余剰資金で運用するとはいっても、やはり個人の資産運用に比べると法人の資産運用は慎重になるべきだろう。
リスクをあまり取れない、投資に初めて挑戦する、といった場合はまずは「安定型」の国内債券100%のポートフォリオから組んでみることをおすすめする。
法人の資産運用におすすめの投資先
法人の資産運用におすすめの投資先としては、以下のような金融商品・投資商品が挙げられる。
- 投資信託
- 株式
- 債券
- 不動産投資信託(REIT)
- JOL
- 保険
純粋に投資による利益を狙うのであれば、投資信託や株式、債券などが挙げられる。
それぞれリスクの大きさや特徴などが異なるため、しっかりと違いを理解して投資先を選ぼう。
なお、株式の場合は取引先の株式など、事業での関係維持に活用される場合もあるが、近年こうした株式持ち合いは徐々に解消傾向にある。
また、安定収入を期待する狙いで不動産投資信託(REIT)に投資をする法人も存在する。
不動産を直接保有するのと違い、管理・運用の手間が省けるため、手軽に不動産投資をしたいという法人にも人気がある。
また、JOLや法人向け保険の場合、資産運用以外にも利益の繰延による税金対策や、経営者の万が一の場合への対策ができるといったメリットもある。
法人での資産運用での注意点
法人で資産運用を始める際は、いくつか注意したいポイントもある。
以下の点はあらかじめしっかりと確認しておこう。
- リスクとリターンのバランスを見極める
- 短期運用と長期運用の使い分け
- 法人資産運用における法規制と注意点
リスクとリターンのバランスを見極める
まずは、リスクとリターンのバランスを見極めることが重要だ。
投資におけるリスクとは「不確実性」を意味し、価格変動の振れ幅を表現する際に用いられる。
市場で取引される金融商品は、需給のバランスによって常に価格が変動しており、この振れ幅は金融商品の種類や銘柄によって異なる。
振れ幅の小さい商品は「リスクが小さい」、振れ幅の大きい商品は「リスクが大きい」と表される。
一方、リターンとは投資によって得られる利益のことで、リスクと表裏一体の関係にある。
リスクが大きい金融商品は大きなリターンが期待できるし、リスクの小さい金融商品はリターンも小さくなる。
金融商品ごとのリスク・リターンの違いをしっかりと把握し、運用方針や許容できる変動幅、求める収益などに合わせて金融商品を選ぶことが肝心だ。
短期運用と長期運用の使い分け
法人で資産運用を行う場合、短期運用と長期運用をしっかり使い分けることも大事だ。
1年後〜3年程度で使う予定のあるお金については、運用期間が決まった定期預金や国内債券などで運用するのが良いだろう。
運用が終わるタイミングがあらかじめわかり、収益額の予測もしやすいため、短期的な収益の見込みもつきやすい。
一方、10年以上先に使う予定のある資金や、当面使う予定のない資金については、若干リスクをとった運用にも回しやすい。
投資信託や外国債券、株式などリターンが見込める金融商品に分散して投資することで、リスクを分散させつつ高いリターンも期待しやすいだろう。
なんとなく運用を始めるのではなく、資金の使途や適した運用期間、求めるリターンなどを明らかにした上で、投資する金融商品を決めていこう。
法人資産運用における法規制と注意点
法人の税務申告は、個人の確定申告に比べて非常に煩雑な点に注意が必要だ。
個人と違って特定口座を開設できないため、損益をすべて計算して自分で税金を申告する必要がある。
税理士などに依頼すると手間を省きやすいが、その分コストがかかる点に注意しよう。
また、新たに運用を始めるにあたっては、社内での運用体制や規程、ガイドラインなどの整備も欠かせない。
どのように投資判断を下すのかといった意思決定プロセスや、実務担当者の任命、定期的な運用パフォーマンスのチェック方法など、さまざまな事項を決めておかないといけないことを認識しておこう。
法人の資産運用についておすすめの相談先
ここまで解説した通り、法人の資産運用についてはさまざまな事項を考慮した上で、自分の会社に合わせた運用方針を決めていく必要がある。
これから資産運用に挑戦しようと思う法人や、法人での資産運用方法に迷っているという方は、資産運用の専門家への相談がおすすめだ。
ここでは、資産運用の専門家への相談がおすすめな理由や、おすすめの相談先などについて具体的に紹介する。
法人の資産運用は専門家への相談がおすすめ
法人で資産運用を検討する際は、業績や財務状況、今後の事業計画などを踏まえた上で、慎重に準備を進めていく必要がある。
資産運用規程の整備や運用担当者の選任、ポートフォリオの管理など、準備すべきことは非常に多く、正しい金融の知識や判断力が重要とされるだろう。
金融や資産運用とあまり関係のない法人の場合、自社でこれら全てを完結するのは難しいかもしれない。
そこで、法人の資産運用に詳しい専門家に相談することで、それほど手間をかけずに資産運用を始めやすくなるだろう。
法人の資産運用の相談先の選択肢としては、証券会社の営業担当者やコンサルティング会社、FP、IFAなどが挙げられる。
ただし、証券会社の営業担当者の場合は、自社の営業方針や販売ノルマなどに提案内容が左右されやすい点に注意が必要だ。
また、金融商品仲介業者等の登録を受けていないコンサルティング会社やFPの場合、具体的な商品提案や商品仲介などはできない。
中立的な立場から的確なアドバイスをもらいつつ、具体的な商品提案まで任せたいと言う場合は、IFAへの相談がおすすめだ。
信頼できるアドバイザーの特徴
信頼できるアドバイザーを選ぶためには、特に以下の5つのポイントに注目しよう。
- 資産運用の目的や状況に応じて提案をもらえるか
- 長期的にサポートを受けられるか
- 資産運用に付随する税金対策などにもアドバイスをもらえるか
- 相性・雰囲気が合うか
- 料金・サービス内容について納得できるか
これらのポイントを押さえているアドバイザーは、信頼して資産運用を任せられる専門家だと言えるだろう。
どの点を最も重視するかは人によって異なるが、譲れないポイントや最も大事にしたいポイントを決めておくことで、複数のアドバイザーの比較もしやすくなるだろう。
法人での資産運用を検討して資金を有効活用しよう
法人が資産運用をすることで、本業の収益に加えて運用益を確保できたり、税制上の優遇を受けられたりするなどのメリットを得られる。
一方、投資にはリスクが伴うため相場の状況によっては損失が生じることや、NISA口座や特定口座を利用できないこと、管理や銘柄選定に手間がかかることなどはデメリットとなる。
資産運用を検討する際は、業績や財務状況、今後の事業計画などから、どの程度を運用に回して良いかを検討し、本業に差し支えない範囲で運用を始めるのをおすすめする。
キャッシュと投資資金のバランスをうまく取りながら運用をコントロールすることで、万が一の支出などにも余裕を持って対応できるだろう。
本記事では、法人におすすめの運用ポートフォリオや投資先、資産運用についての注意点なども詳しく解説した。
法人によって状況やニーズは異なるため、資産運用を検討する際は専門家に相談するのがおすすめだ。
特にIFAは、豊富な知識・経験をもとに中立的な立場から最適な助言をくれる資産運用の専門家だ。
法人の資産運用に強いIFAに相談することで、運用のみならず税金対策や資産承継などについてアドバイスをもらいながら安心して資産運用を進められるだろう。
興味のある方は、ぜひIFA検索サービスなどを活用して、最適なアドバイザーを探してみてほしい。