- 資産運用は何歳から始めるのがベストなのか悩んでいる
- 年代ごとの資産運用の始め方やリスクについて知りたい
- 自分に合った資産運用の方法を見つけたい
将来に向けた資産形成の必要性は感じているものの、「まだ早すぎる」「今からだと遅いのでは」と躊躇する人は多い。
資産運用に「早すぎる」ことはなく、「遅すぎる」こともない。大切なのは、自分の年齢や状況に合った投資方法を選ぶことである。
本記事では、25歳から60歳までの年代別シミュレーションと、各年代に適したポートフォリオ、そして失敗しないためのポイントを詳しく解説する。
これから資産運用を始めようとする人も、すでに運用している人も、より良い資産形成の方法を見つける一助として活用してほしい。
資産運用を始めるベストな年齢は?
資産運用に「最適な年齢」はない。ただし、早く始めれば始めるほど、時間の力を味方につけられる。
できるだけ若いうちに始めた方が良い
資産運用に大きく影響する要素の一つに「時間」がある。
時間を味方にできれば、投資の利益が再び元本に組み込まれ、新たな利益を生み出す「複利効果」を最大限に活用できるのだ。
たとえば、月1万円を年利5%で運用した場合のシミュレーションを見てみよう。25歳で始めて65歳まで40年間積み立てた場合、将来の資産は約1,526万円に達する。
これに対して、45歳で始めて20年間積み立てた場合は、411万円にとどまる。
元本 | 運用収益 | 将来の資産 | 資産に占める元本の割合 | |
---|---|---|---|---|
25歳から40年間積立 | 480万円 | 1,046万円 | 1,526万円 | 31% |
45歳から20年間積立 | 240万円 | 171万円 | 411万円 | 58% |
複利効果の威力は、資産に占める元本の割合を見ても明らかだ。40年間積み立てた場合、元本は資産全体の31%にとどまるが、20年間の場合は58%を占めてしまう。
つまり、運用期間が長いほど、元本よりも運用収益が大きな割合を占めることになり、資産形成が効率的に進むのだ。
資産運用に「遅すぎる」はない
資産運用を始めるのに、「遅すぎる」時期はない。むしろ、経済的な余裕ができてから始めることで、無理のない投資計画が立てられる。
たとえば、65歳の時点で目標とする資産額を設定し、50歳から年利5.0%で運用した場合の毎月の積立額をシミュレーションしてみよう。
目標資産額 | 積立額 | 初期500万円投資した場合 |
---|---|---|
1,000万円 | 37,413円 | 0万円 |
2,000万円 | 74,826万円 | 35,285円 |
3,000万円 | 112,239万円 | 72,699万円 |
たとえ現在の資産がゼロであっても、毎月約7万5,000円を積み立てられるなら、15年後の資産は2,000万円になる。
もし初期投資額として500万円を用意できるなら、資産2,000万円を目指す毎月の積立額は、約3万5,000円に抑えられる。
大切なのは、自分の経済状況に合わせて、できるところから無理なく始めることである。
最良のタイミングは「今」だ
資産運用を始めるのに最良のタイミングは「今」である。
理想をいえば、以下の3つの条件が揃ったタイミングがベストだ。
- 安定的な収入が得られている
- 緊急資金が確保できている
- 生活設計の見通しが立っている
これらの条件が揃っていないと、急な出費で投資の中断を余儀なくされたり、継続的な資産運用が難しくなってしまう。
そのため、まずはこれらの条件を整えておくことが大切になる。
とはいえ、現在は少額から投資を始められる環境が整っているため、条件を整えることと並行して少額投資をスタートするのも有効だ。
たとえば、NISAやiDeCoなどの税制優遇制度を活用し、長期的に大きな資産を築くこともできる。
資産運用は一歩踏み出すことが何よりも大切だ。「今から始める」という行動力こそが、将来の資産形成を支える大きな力となる。
【年代別シミュレーション】老後2,000万円の資産を作るために必要な月々の投資額は?
ここでは、65歳を目標年齢とし、その時点に資産を2,000万円にするためには、毎月いくらの投資額が必要になるかをシミュレーションしていく。
利回り3%で2,000万円を達成する
以下は、投資開始年齢ごとの毎月の投資額をまとめた表である。投資を開始する年齢が遅くなれば、毎月の負担額が大きくなることがわかる。
開始年齢 | 運用期間 | 毎月の投資額 |
---|---|---|
25歳 | 40年 | 21,597円 |
30歳 | 35年 | 26,971円 |
40歳 | 25年 | 44,843円 |
50歳 | 15年 | 88,117円 |
60歳 | 5年 | 309,374円 |
運用利回り3%を目指す場合のリスク(標準偏差)の目安は、おおよそ3〜5%だ。投資対象の候補になるのは、国内債券、先進国債券、または低リスクのバランス型投資信託などである。
運用目標を利回り3%に設定する場合、安定性は確保できるが大きなリターンは期待できない。
元本割れのリスクは比較的低いものの、インフレや将来の生活費の上昇を考慮すると、より高い利回りを狙った運用も併用する必要があるかもしれない。
利回り5%で2,000万円を達成する
運用利回り5%にする場合は、毎月の積立額は以下のようになる。
開始年齢 | 運用期間 | 毎月の投資額 |
---|---|---|
25歳 | 40年 | 13,106円 |
30歳 | 35年 | 17,605円 |
40歳 | 25年 | 33,585円 |
50歳 | 15年 | 74,826円 |
60歳 | 5年 | 294,092円 |
利回り5%を目指す場合、リスク(標準偏差)はおおよそ7〜10%となる。
適切な投資対象としては、バランス型投資信託、配当利回りの高い大型株、REIT(不動産投資信託)などが挙げられる。
利回り5%は中程度のリスクを伴うが、長期的に見れば、適切な資産配分と分散投資によって、安定した成長を狙うことができる。
ただし、市場の影響を考慮して、定期的な見直しと調整が求められる。
利回り8%で2,000万円を達成する
利回り8%で運用する場合、以下のように毎月の積立額はかなり小さくなる。
しかし、利回り8%を目指す運用はリスクが高く、価格の変動も激しい点に注意が必要である。
開始年齢 | 運用期間 | 毎月の投資額 |
---|---|---|
25歳 | 40年 | 5,730円 |
30歳 | 35年 | 8,719円 |
40歳 | 25年 | 21,030円 |
50歳 | 15年 | 57,798円 |
60歳 | 5年 | 272,195円 |
運用利回り8%を目指す場合、リスク(標準偏差)は20〜30%を超えることもあり、大幅な元本割れの可能性がある。
とくに短期間の運用では、市場の急変動による影響を受けやすく、想定通りのリターンを得られない可能性が高い。
たとえば、50歳や60歳からの運用で、運用期間を15年程とする場合は、大きなリスクを取って資産を増やす戦略はおすすめできない。
老後の資産を形成するための重要な時期に、資産が大幅に減少するリスクを負うのは非常に危険である。
むしろ、こうした高リスクの運用は、若いうちに長期的な視点で行うのが適している。
若ければ市場の上下を乗り越える時間的な余裕もあるが、50歳や60歳ではその余裕がなく、リスク分散や安定した投資方法に重点を置く方が無難である。
【年代別】おすすめの投資ポートフォリオとは
ここでは、年代別おすすめポートフォリオを紹介しよう。株式、債券など投資資産について、リスクとリターンを組み合わせる「バランス型」を紹介していく。
20代:成長を重視した適切なバランスを目指す
株式比率を高めにしたバランス型の資産配分は、成長を目指しつつリスクは抑えたい20代に適している。
- 資産配分(目標リターン:6%)
- 株式60%(国内25%、海外35%)
- 債券30%(国内10%、海外20%)
- REIT10%(国内5%、海外5%)
20代は、資金の余裕や投資経験が少ないことも多い。もっとも大切なのは、無理のない積立を継続することだ。
以下の3つのポイントを押さえて、シンプルかつ効率的な運用を目指そう。
- 投資信託を中心に選ぶ
- 分散効果が高く管理も楽な投資信託は、20代の強い味方だ。株式・債券・REITを含むバランス型ファンド1本に絞るのも、わかりやすく賢い選択である。
- 証券会社の検索機能で商品を探そう
- Webの検索機能を使って、「ファンド分類:バランス型」「リスク分類:やや高め」などの条件にチェックを入れれば、選択肢を絞り込める。資産配分やリスクを確認し、自分の方針に合うファンドを探してみよう。
- 投資信託を組み合わせる方法もある
- 人気の投資信託をいくつか組み合わせて独自のポートフォリオを作成する方法もある。たとえば、株式の「全世界型(オールカントリー)」と「債券重視のバランス型」を組み合わせることで、成長と安定のバランスがとれる。
30代〜40代:多様な資金ニーズに対応する
30代〜40代は長期の資産形成を見据えつつ、住宅購入や教育費など中期的な資金ニーズも増えてくる年代だ。中長期の運用をどう両立させるかが、この年代の運用のポイントとなる。
65歳を目標とするなら、30歳で始めれば35年、40歳でも25年という運用期間が確保できる。
そのため、以下のポートフォリオでは株式比率を高めに維持し、成長性を重視したバランスとしている。
- 資産配分(目標リターン:6%)
- 株式55%(国内25%、海外30%)
- 債券35%(国内15%、海外20%)
- REIT10%(国内5%、海外5%)
中期と長期の資金ニーズに対しては、以下のような使い分けも選択できる。
- 口座による使い分け
- iDeCo:老後資金向け(引き出しは60歳以降)
- NISA:中期的資金ニーズ対応(住宅・教育資金など)
- 商品選定による使い分け
- 中期資金向け:安定重視型の商品を選択(価格変動リスクが小さいもの)
- 長期資金向け:グローバル株式型や成長重視型の商品を組み入れ、長期リターンを追求
資金ニーズに応じた商品選択を行うことで、途中換金時の価格変動リスクに備えやすくなる。
たとえば、5年後に必要な資金を安定型商品で運用すれば、必要なタイミングでの損失確定リスクを抑えることができる。
50代〜60代中盤まで:退職後を見据えて安定を加える
ライフイベントが落ち着くこの時期は、資金の自由度が高まり資産拡大を狙える時期だ。一方で、退職が視野に入るため、将来の資産取り崩し計画も立てておく必要がある。
株式比率をやや抑えつつ、成長性を取り入れた配分とした。収入状況や退職までの期間に応じて、適切なリスク調整を行うことが重要である。
- 資産配分(目標リターン:5%)
- 株式45%(国内30%、海外20%)
- 債券50%(国内35%、海外15%)
- REIT5%(国内のみ)
65歳以降に仕事を続ける場合でも、年齢に応じて安全資産へのシフトを進めるのが無難だ。
50代〜60代中盤は、急な健康上の出費など予測しづらい資金ニーズが発生しやすい。
年金の受給見込額、個人年金保険、財形貯蓄なども確認し、将来の収支見通しも立てておこう。
資産取り崩しが必要になる場合は、リスクの低い商品や安定したインカム収入を得る商品でポートフォリオを補完するのが効果的だ。
以下のような商品の選定により、リスクを抑えながらの運用が可能となる。
- 外貨建て商品の比率を抑える
- 株式は、優良企業や高配当銘柄中心のファンドを選択
- REITは国内物件に限定
65歳以降:資産保全を最優先にする
退職後は年金受給が始まり、資産運用の目的も「増やす」から「維持する」へとシフトする。インフレリスクに備えながらも、安定性を重視した運用が基本となる。
- 資産配分(目標リターン:3%)
- 株式30%(国内20%、海外10%)
- 債券60%(国内45%、海外15%)
- REIT10%(国内のみ)
上記の配分は、個々のリスク許容度に応じて調整すると良い。以下の点を考慮し、自分に合ったバランスを設定しよう。
- 現預金の保有額に応じてリスクを調整
- 生活費2〜3年分に相当する現預金を確保している場合、投資ポートフォリオではややリスクを取る余裕がある。しかし、1年分程度の現預金しかない場合、リスクを抑えた運用が望ましい。
- 時間軸を見据えたリスク管理
- 想定する運用期間が短い場合は、値動きの少ない安全資産の比率を高めた運用がおすすめだ。反対に、長期間運用する予定がある場合は、株式やREITなど成長性を含むリスク資産の比率をやや増やすのも良い。
全年代必見!資産運用で失敗しないためのポイント
資産運用を成功させるためには、守るべき基本的なポイントが複数ある。ここでは、とくに気をつけるべきポイントを解説する。
資産運用の目的をはっきりさせる
資産運用を始める際には、目的を明確にすることが大切だ。「何のために運用するのか」をはっきりさせ、計画を立てて実践することで、以下のような失敗を避けられる。
- 市場下落時や、成果が上がらない時期に、投資継続のモチベーションを失ってやめてしまう
- 焦ってリスクの高い投資商品に手を出し、資産を大きく減らしてしまう
- 目先の利益やトレンドに流されやすくなり、無駄な売買や不必要なリスクを抱えてしまう
余裕資金の範囲で投資する
緊急時に備えるための資金を確保することは、どの年代においても重要だ。
一般的に、生活費の3〜6か月分の資金を確保しておくのが望ましい。これにより、急な出費が発生した場合でも、投資を中断せずに済む。
投資に回せるのは「当面使う予定のないお金」だけである。
まずは生活費をしっかり確保し、そのうえで余裕資金を投資に充てることが、長期的な資産運用を成功させる鍵となる。
適切なリスク管理を行う
資産運用を始める前には、リスクとリターンが密接に関連していることを十分に理解しておくこと。
リスク管理手法を活用することで、損失を抑えながら資産を増やすことが可能になる。
効果的なリスク管理のポイントは、以下のとおりだ。
- 分散投資を実践する
- 資金を複数の商品や異なる資産クラスに分けることで、特定の資産が下落した場合でも全体の影響を軽減できる
- 自分のリスク許容度に合わせた投資をする
- 自分がどれだけのリスクを許容できるか把握し、それに合わせた投資方法を選択することが大切である
- 投資目的に合った商品を選ぶ
- 短期的な利益を狙う投機的な取引は避け、長期的な資産形成を目指す商品を選ぶ
- 理解できる投資商品を選ぶ
- 投資商品の仕組みやリスクを理解できない場合は、購入を見送るべきである
- 一度に全額を投資しない
- 資産を分割して投資する「時間分散投資」を取り入れることで、相場の変動によるリスクを抑えられる
感情に流されない投資判断を心がける
感情的な判断は、資産の増加を妨げ、最悪の場合大きな損失を生む原因にもなる。
注意すべき感情的な行動には、次のようなものがある。
- パニック売り
- 市場が急落したときに恐怖心から保有資産を売却する行動。相場が下落した際に冷静さを欠くことで、本来は長期的に回復するはずの資産で損失を出してしまう
- 過度な楽観による過剰投資
- 市場が好調なとき、「今こそ大きく利益を出すチャンス」と考え、リスクの高い投資商品を購入したり、資産を集中させたりする行動。大きな市場調整が起きたときに、予想以上の損失を抱えるおそれがある
感情に流されない投資判断を心がけることで、安定した資産形成が可能となる。感情が高ぶる場面でも冷静さを保ち、計画に基づいた判断を行うよう意識しよう。
定期的に資産配分を見直す
資産運用においては、定期的な見直しが不可欠である。市場の状況や自分のライフステージが変わることで、最初に設定した資産配分が適切ではなくなることがあるからだ。
とくに長期的な投資では、時間の経過とともにリスク許容度や資産運用の目標が変化することもある。
定期的な見直しのタイミングとしては、次のような例がある。
- 年1〜2回の決まったタイミング(年始や年末など)
- 大きなライフイベントの後
資産配分を見直す際には、以下の点を考慮しよう。
- 運用目標に合っているか
- 現在のリスク許容度に合っているか
- 市場環境の変化に対応しているか
リバランスを怠ると、意図しないリスクを抱えることになりかねない。定期的に資産配分を見直し、計画的な運用を続けることで、長期的な資産形成がより安定する。
いつから・何から資産運用を始めるか悩んだらプロに相談
資産運用を始めるにあたって、「どの金融商品を選べば良いのか」「いくらくらい投資すればよいのか」と悩む人は多い。
そんなときは、専門家への相談がおすすめだ。不安や疑問を解消しながら、着実な一歩を踏み出せる。
資産運用の主な相談先
良い相談先を選ぶため、資産運用の相談先について確認しよう。
以下は、主な相談先のメリット・デメリットを整理したものだ。
メリット | デメリット | 費用 | |
---|---|---|---|
金融機関の窓口 | 対面での丁寧な説明が受けられる | 自社商品が中心の提案になりがち | 取引時に発生 |
ファイナンシャルプランナー(FP) | ライフプランに基づく総合的なアドバイス | 具体的な商品提案や取引はできない | 相談料が必要 |
独立系ファイナンシャルアドバイザー(IFA) | 中立的な立場での商品提案が可能 | 専門家が限られている | 取引時や資産残高によって手数料が発生 |
信頼できるアドバイザーの特徴
個人投資家にとっての身近な相談先といえば、金融機関の窓口での相談だろう。気軽に相談できる一方、提案の中心は自社商品となることが多い。
そのため、中立的な視点からのアドバイスが得られるとは限らない。
ファイナンシャルプランナー(FP)は、ライフプランに沿ったアドバイス提供において頼れる存在だ。
しかし、FPは投資商品の売買仲介ができないため、具体的な運用手段の提案には限界がある。
これらの弱みをカバーできるのが、独立系ファイナンシャルアドバイザー(IFA)という存在だ。
特定の金融機関に属していないため、幅広い商品の中から投資家に最適な運用方法を提案できる。
また、金融庁に登録された「金融商品仲介業者」であるため、売買サポートまで一貫して行える点も大きな強みだ。
資産運用は何歳からでもOK!適切な運用方法を選ぶことが大切
資産運用には「早すぎる」も「遅すぎる」もない。大切なのは、自分の年齢や状況に合わせて、適切な運用方法を選ぶことだ。
本稿を含め、書籍やネットでも年代別の運用例は学べるが、実際のところは一人ひとりの状況に応じた調整が必要になる。
そのため、資産運用を始める際は、専門家に相談することをおすすめする。とくに商品提案から売買サポートまで行えるIFAなら、個人投資家の心強い味方となるだろう。
年齢や状況に応じたアドバイスにより、安心して資産運用を始められるはずだ。