中小企業からニッポンを元気にプロジェクト

顧客思考と挑戦心が新たなビジネスを生む 〜靴下の卸業者が医療業界に変革を起こすまで〜

2023.12.05


「中小企業からニッポンを元気にプロジェクト」へ2022年1月13日第3期より参画いただいている、株式会社三笠の取締役 磯村 典子さんに今年で創業61年を迎える株式会社三笠さんのこれまで辿ってきた成長の軌跡とこれからの展望、また常に挑戦し続ける理由や「中小企業からニッポンを元気にプロジェクト」参加後の効果についてインタビューしました。

 

株式会社三笠

1962年に靴下の卸売事業で創業、靴下の製造販売事業を軸として、キッズ用やスポーツ用などトレンドやお客様のニーズを柔軟に取り入れながら新たなプロダクトを生み続けている。今年で創業61年を迎え、医療トレーニング用の手袋や綿花畑プロジェクトなど靴下事業にとどまらず新たなプロジェクトに挑戦し続けている。

取材協力者 磯村典子さん

株式会社三笠 取締役
磯村典子

 

創業から61年間の軌跡

1962年に横浜で靴下の卸業者としての道をスタートさせました。販売を通して、お客様が本当に求めている商品が少ないと感じていました。よりお客様に寄り添い納得できるこだわりの商品を自ら作りたいと思い、他社が中国に進出する中、三笠は2011年に靴下工場を奈良に設立しました。今では笑い話ですが、初めて製造機械を中古で2,000万円で手に入れたのですが、機械が稼働しないトラブルに見舞われました。そこから全ての機械を入れ替え、ようやく製造事業をスタートすることができました。現在ではスポーツ用靴下や、医療用手袋、海外への展開と、お客様の声をもとに新たな商品を展開しています。創業からの61年間、お客様の困りごとを解決するために、まだ市場に存在しない新たな商品を生むことに情熱を注いでいます。挑戦するたびに多くの失敗も経験してきましたが、お客様を最優先に考え、挑戦する精神こそが、弊社の成長の原動力になったと思っています。
 

顧客思考の行動が会社や従業員の未来を創る

2020年から新型コロナウイルスが日本に蔓延し、全国的にマスク不足に陥りました。医療現場でもマスクが足りない状況が続いていました。私たちはいても立ってもいられず、中国の協力工場で10万枚の医療用マスクを急ピッチで製造し、町の病院や医大に無償で提供しました。これが契機となり、奈良県立医科大学との繋がりが生まれました。

その後、奈良県立医科大学より、パーキンソン病患者に関するご相談をいただきました。高齢化が進む中、パーキンソン病患者は増え続けていますが、リハビリ治療については通院しての器具を利用したリハビリは患者様にとって大きな負担になり、続けることが困難でやめてしまう人が多いそうです。そのため、先生から日常の中でリハビリできる機器のようなものを作れないかとのお話がありました。そこで世界初となるパーキンソン病患者向けのリハビリ手袋『にぎるくん』を奈良県立医科大学と共同開発することになりました。開発を始めてから第三種医療機器製造販売認可取得まで3年かかりましたが、諦めずに挑戦し続けてよかったです。困ったを解決するという創業から大切にしている精神がチャンスを掴み、新しい未来を創り出す源となっています。
 

 

新たな挑戦!綿花畑プロジェクト(めんかちゃんプロジェクト)

奈良県には古くから綿花文化が根付いており、江戸時代には生産が活発でした。ただ近年では労働人口の減少やコスト削減のため、海外生産が主流となり国内での綿花の生産はほぼ途絶えています。私たちは綿花文化を再興し、国産綿花を守るべく、「めんかちゃんプロジェクト」を大和高田市で立ち上げました。弊社が綿花畑を所有し、地域の子供たちや高齢者、そして障害を持つ方々と共に収穫を行うプロジェクトです。綿花は春の種まきから美しい花が咲き、秋には収穫の時を迎える、短い期間で多くの経験ができる作物です。プロジェクト開始当初より、利益を追求することよりも、このプロジェクトを通して雇用の機会創出や教育の場を提供すること、そして大和高田市の魅力を再燃させることができればと思い取り組んでいます。今後のビジョンとして、奈良県にある私たちの工場をオープンファクトリーとして、更なる地域との連携と貢献を目指して参ります。
 

 

グローバル展開の取り組み

人口減少による、日本市場の縮小に伴い、私たちは2022年ごろからヨーロッパやアジアへのグローバル展開を積極的に進めてきました。特に、5本指ソックスは日本国内では人気が高いものの、海外ではまだその魅力が十分に伝わっていないと感じました。私たちはメイドインジャパンのブランド力を活かして世界に広めることで新たなマーケットの開拓ができるのではないかと可能性を感じました。このプロジェクトが認められ、経済産業省の事業再構築補助金「サプライチェーン強靱化枠」に採択されました。昨年末にはドイツの展示会に初出展を果たし、現地のバイヤーさんとのコネクションを築くことができました。この経験を基に、さらなるグローバル展開に力を入れていきたいと考えています。

 

「中小企業からニッポンを元気にプロジェクト」に参加した背景

「中小企業からニッポンを元気にプロジェクト」は、Facebook広告を見て初めて知りました。正直広告だけでは具体的にどのような支援を受けられるのか理解できませんでしたが、「中小企業からニッポンを元気に」というワードに強く惹かれ、詳しく話を聞いてみたいと思いました。お打ち合わせを進める中で、有名タレントを起用したPR活動が可能であることも非常に魅力的でしたが、それ以上に、お打ち合わせの際のご担当者の中小企業に対する熱意と「中小企業からニッポンを元気にプロジェクト」のコンセプトに心を動かされ、「このプロジェクトに参加することで、確信はないけれども企業成長につながるのではないか」と思い参加を決意いたしました。

 

導入後の効果

弊社は郷ひろみさんをブランディングを目的に、HPやサービスサイトバナー、イベントでの等身大パネル等で活用させていただきました。

展示会イベントでは郷ひろみさんの等身大パネルを置くことで、ブース前で足を止めてくれるお客様が増え、商談設定の機会を増加させることが出来ました。

また郷ひろみさんがいることで、お客様が商品に対して安心感や信頼をもってくれて、サービスの詳細まで見てくれるようになりました。このような結果がサービスの知名度だけではなく、営業マンの自信や従業員のエンゲージメントにもつながり、社内に好循環が生まれたと感じています。

 

「中小企業からニッポンを元気にプロジェクト」に参加して感じたこと

とにかく中小企業のチカラさんが密にコミニュケーションを取ってくれることが大変ありがたかったです。今までタレント起用をしたことがなく、参画当初はどのようにタレントを使えば効果が出るか不安でしたが、中小企業のチカラの担当の方が事例や実績などを用いて密にコミニュケーションや相談に乗ってくれたおかげで、存分にタレントさんを活用することができています。また定期的にオフラインセミナーや交流会の機会があり参加させていただく中で、他企業様の新たなことへ挑戦する熱量や想いが大変刺激になっています。いつもセミナーで聞いた話は社内で活用できないか社内会議の議題にあげています。
 

今後の展望

今後目指しているビジョンとしては「日本の健康寿命を伸ばすこと」です。今後日本は高齢化が深刻化していく中で、まだまだ課題がたくさんあります。私たちは靴下製造販売事業が中心でしたが、日本の社会問題の解決のために少しでも貢献できることがあれば積極的に挑戦していきたいと思っています。

 

取材協力企業

株式会社三笠
所在地:神奈川県横浜市港南区日野南3-2-71
代表者:代表取締役社長 甘利 茂伸
資本金:3,000万円
​ホームページ:https://www.kk-mikasa.co.jp/
事業内容:各種靴下企画製造販売
     紳士・婦人・子供靴下、パンティストッキング、タイツ
     編み技術を利用した関連商品